
【国内ニュース】2024年10月のウイスキーニュースまとめ
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2025年6月3日、国産ウイスキーを通じた地方創生を目指す「国産ウイスキー振興議員連盟」の総会が開催されました!
Dear WHISKYは、日本各地のクラフトウイスキー蒸溜所を支援し、海外の最新ウイスキー情報を発信する立場として発信の機会をいただき、地元に蒸溜所を有する国会議員に向けてプレゼンテーションを行いました!
国産ウイスキー新興議員連盟 総会
国産ウイスキー新興議員連盟の総会とは、国産ウイスキー新興議員連盟に加盟している国会議員が集い、生産者団体、関係省庁よりヒアリングを行う会です。
イベント名 | 国産ウイスキー振興議員連盟 総会 |
日時 | 2025年6月3日(火)15:00 |
会場 | 衆議院第二議員会館B1第2会議室 |
会長 | 中村 裕之議員 |
式次第
国産ウイスキーの振興を通じて地域創生を目指す「国産ウイスキー振興議員連盟」は、2024年6月20日に発足しました。
本議連は、国内外で需要が高まる国産ウイスキーのさらなる発展を目指し、議員による業界関係者へのヒアリングや蒸溜所の現地視察を通じて、国産ウイスキーの認知度向上と理解促進に努めています。
また、国内外の販路拡大や需要喚起を通じて、日本各地のウイスキー産業の発展を後押しし、ひいては地域経済の活性化に貢献することを目的としています。現在、地元に蒸溜所を有する国会議員を中心に約50名が加盟しています。
会長の中村裕之議員(左)、事務局の堀内詔子議員(右)
会場には、国産ウイスキー振興議員連盟の議員の方々、関係省庁として国税庁と農林水産省、関係団体として日本洋酒酒造組合と株式会社クレア・ライフ・パートナーズ(Dear WHISKY運営会社)が参加しました。司会を務めたのは、衆議院議員 堀内詔子議員です。
昨年6月に第1回総会が行われ、その後衆議院選挙が行われた関係で、約1年ぶりの開催となりました。
会長の中村裕之議員よりご挨拶
会長として、中村裕之議員、事務局として堀内詔子議員が任命されました。
早速、会長の中村裕之議員より、ご挨拶がありました。
北海道第4区から選出された中村裕之議員は、北海道余市に住んでおり、家の隣が国指定重要文化財でもあるニッカウヰスキー余市蒸溜所とウイスキーとも縁の深い人物です。
ジャパニーズワインを例に、国産ウイスキーの定義について議論した前回の総会の振り返りから、国産ウイスキーの現状を正しく把握するために、集められた関係団体の紹介。議連の今後の展望として、蒸溜所の視察を含め積極的に勉強会を開催していく旨をお話しされました。
国税庁の発言
国産ウイスキーをめぐる環境が大きく変化する中、国税庁の長官官房審議官である斎須朋之氏が、最新の市場動向や制度整備の必要性について語りました。
まず注目されるのは、ウイスキーの製造免許場が急増している点です。
令和5年時点で、全国の免許場数は100箇所に達し、過去に類を見ない勢いとなっています。しかし、そのうち上位2社で企業数124社の出荷量計143千kLのうち約75%を占めており、小規模な免許場が数多く存在しているという構造が浮き彫りになっています。
国内のウイスキー消費も堅調に推移しています。
課税数量はコロナ禍で一時的に減少したものの、その後は持ち直し、令和5年度には173,000キロリットルに達しました。
これは700mlボトルに換算すると、約2億4,700万本に相当します。ウイスキー人気の継続と市場の安定性がうかがえます。
発言する宮崎政久議員
輸出の動きについても見逃せません。令和4年にかけて中国市場などを背景に急伸しましたが、その後は中国の景気後退などの影響を受けて、5〜6年間ほど伸び悩みました。
しかし、現在は回復傾向にあり、再び海外市場での存在感を高めつつあります。
輸出先として最も多いのはアメリカであり、同国ではかつてウイスキーに関税がかかっていませんでした。
しかし、トランプ政権下で導入された追加関税により、現在は10%の関税が発生しており、1本あたり約298円の負担となっています。
さらに、7月9日まで猶予されている24%の追加関税が発動された場合、700mlボトル1本あたり714円の関税がかかることになります。
酒税収入の面でも、ウイスキーは重要な位置を占めています。令和5年度の国税収入は総額で77.4兆円となり、そのうち酒税は1.5%にあたる約1.2兆円を占めました。
このうち、ウイスキーが生み出す酒税収入は約700億円に上ります。
酒税の課税方法については、アルコール度数37度未満のウイスキーには1キロリットルあたり37万円の税率が適用されます。これを超える度数の場合は、1度ごとに1万円が加算されます。たとえば700ml・43度のウイスキーには、1本あたり301円の酒税がかかります。
世界五大ウイスキーの保護政策
国際的には、スコッチウイスキーやアイリッシュウイスキーなど、いわゆる五大ウイスキーの多くが「地理的表示(GI)」という形で保護されています。
日本にも同様の酒類保護制度があり、①その産地に主として帰せられる酒類の特性が明確であること、②その特性を維持するための管理が行われていること、という2つの要件を満たすことで、国税庁長官が地理的表示として指定することが可能です。
現在、日本国内では約30の酒類がGIとして指定されており、日本酒などもその対象となっています。
GI制度を活用することで、外国との相互保護も可能となるため、今後ジャパニーズウイスキーにおいても制度の整備が期待されます。
なお、令和7年度の当初予算では、酒類業振興のために21.5億円が計上されており、制度整備や輸出支援などを通じて、国産ウイスキーの国際競争力向上が図られる見込みです。
発言する石田昌宏議員
農林水産省 大臣官房の輸出促進審議官である高山成年氏は、「海外から稼ぐ力の強化」というテーマのもと、農林水産物や食品の輸出拡大に向けた取り組みについて語りました。
高山氏は冒頭、日本のウイスキーが海外展開において極めて重要なコンテンツの一つであることを強調しました。
農林水産物・食品全体の輸出額は、2012年以降、右肩上がりで成長を続けており、ウイスキーもそのけん引役の一つとして注目されています。
政府は2024年4月に閣議決定した政策コンセプトに基づき、海外で人口が増加し、所得水準も向上している地域を中心に、日本の農林水産物・食品の輸出をさらに加速させようとしています。特にアジア市場など、今後の成長が期待される地域での展開に力を入れています。
農林水産物の輸出は、単にモノを海外に運んで販売するだけでなく、現地でのレストラン展開や小売り事業など、日本の食品産業全体の海外展開へと広がっています。ウイスキーもその一環として、レストランや小売店を通じて現地の消費者に届ける取り組みが進められています。
また、インバウンド需要の拡大も大きな柱の一つです。
2024年時点で、訪日観光客による食関連消費は2.3兆円に達しており、輸出額1.5兆円を上回る規模となっています。
外国人旅行者が日本で本物の味に触れ、帰国後も継続して日本産食品を消費するようになることを目指し、ファンづくりに力を注いでいます。
このような取り組みは観光庁とも連携しており、食をテーマにした観光コンテンツの開発や、蒸溜所を観光資源として活用するなど、地域と連携した施策も展開されています。
ウイスキーの輸出拡大に向けては、海外の見本市や商談会を通じた現地での需要開拓のほか、日本国内で開催される見本市に海外のバイヤーを招待する取り組みも進められています。
加えて、国際的に信頼される高い衛生基準を満たす施設整備の支援も行われており、日本産食品・酒類の品質と信頼性を一層高める体制づくりが進められています。
日本洋酒酒造組合 専務理事 新井智男氏
続いて、日本洋酒酒造組合の専務理事を務める新井智男氏より、ジャパニーズウイスキーの認知向上に向けた取り組みについてお話がありました。
日本洋酒酒造組合は、酒造業組合法に基づいて昭和28年に設立された組織であり、ウイスキーの製造業者のみならず、ブランデーやスピリッツなど洋酒全般の製造業者が加盟しています。現在は104社が組合員として活動しています。
同組合は、2021年4月に「ジャパニーズウイスキー」の定義に関する自主基準を策定しました。
この基準では、原材料や製造過程に関して厳しい条件が設けられており、例えば使用する水は日本国内で採取されたものに限るとされています。また、「ジャパニーズウイスキー」に該当しない商品であっても、日本の地名や人名、国旗をラベル等に使用する場合には、それが定義外の製品であることを自社ホームページ等で明確に表示する必要があります(いわゆる打消し表示)。
「ジャパニーズウイスキー」の定義
この定義が設けられた背景には、海外向けに日本のウイスキーとして販売されていた製品の中に、実際には外国産原酒のみを輸入し、日本国内で瓶詰めしただけのものが含まれていたという問題があります。
こういった製品が、海外で「ジャパニーズウイスキー」として流通していたことから、ジャパニーズウイスキーの評判と信頼を守るため、業界として明確な基準を設定するに至りました。
昨年、海外市場におけるジャパニーズウイスキーの認知度に関して、販売店を対象に調査を行ったところ、定義が十分に浸透していない現状が浮き彫りになりました。特にロサンゼルスやニューヨークでは、定義に合致しない商品が「ジャパニーズウイスキー」として販売されているケースが確認され、全体の17〜18%が基準に適合していないものでした。
一方で、ウイスキーの輸出額は着実に伸びており、2024年には2016年の4倍に達しています。
今後さらに輸出を拡大していく上では、国内外の消費者からの信頼獲得が重要な鍵となります。
現在、地理的表示(GI)の指定や、国税庁による製法品質表示基準の告示といった、法的裏付けのある制度の導入を目指しており、組合としても国税庁への要望事項を検討しています。
あわせて、ジャパニーズウイスキーのロゴマークも特許庁へ申請しており、組合員が使用できるよう手続きを進めています。海外でも同様に特許の取得を進め、ブランド価値の保護と普及を図っています。
さらに、2025年の大阪・関西万博では、酒造組合との契約により、迎賓館や日本館で行われる公式午餐会において、ジャパニーズウイスキー22製品がオンメニューで提供される予定です。
これにより、国際的な舞台でジャパニーズウイスキーの魅力を広く発信していくことが期待されています。
発言する金子やすし議員
最後に、新井氏は毎年提出している税制改正要望書についても言及しました。
現在、アルコール度数に応じた段階的な酒税制度が導入されていますが、1〜8度、12〜37度といった特定の度数帯に対しては、アルコール1度あたりの酒税が相対的に高く設定されており、洋酒に対する税負担の格差が生じています。
これらの不均衡を是正することで、商品開発の多様化を促し、業界全体の活性化につなげたいと語りました。
Dear WHISKYによる発信
最後に、国産ウイスキー振興活動を行う民間団体として、Dear WHISKYの運営会社である株式会社クレア・ライフ・パートナーズ(本社:東京都新宿区)が、当社のウイスキー事業に関する取り組みと、国産ウイスキーの国際的評価、そして海外における蒸溜所の地方創生事例について発表しました!
Dear WHISKYはこれまで、日本最大級のウイスキー総合情報サイトとして五か国語で世界に向けた情報発信を行ってきました。最大月間80万PVを記録し、造り手・繋ぎ手・飲み手をつなぐメディアとして成長を続けています。
また、Dear WHISKYは、日本各地のクラフト蒸溜所に対して、原酒や樽の海外販売支援、海外イベント出展代行、空き樽の提供、スコットランド研修の企画、自社Barを活用したプロモーション活動など、幅広い実務支援を行ってまいりました。
今回の発表では、Dear WHISKYがスコットランド現地で行った調査の概要についても報告いたしました!
スコットランドはスコッチウイスキーの本場であり、世界中のウイスキーメーカーが集うビジネスの中心地です。Dear WHISKYは2024年と2025年に「Fife Whisky Festival」に出展し、日本のクラフト蒸溜所を紹介しました。
【出展レポート】Fife Whisky Festivalにて日本のクラフトウイスキーをご紹介しました!
【出展レポート】2年連続出展!Fife Whisky Festivalにて日本のクラフトウイスキーをご紹介しました!
報告では、会場で寄せられた「栗や桜といった日本特有の樽材による個性が魅力的」「温暖な気候による熟成の早さが感じられる」といった声や、多くの高評価をいただいたことをお伝えしました!
さらに、スコットランドの蒸溜所関係者へのヒアリング結果として、日本国産ウイスキーへの評価や、日本の原酒について確認された「輸入して自社製品にブレンドしたい」といった具体的な関心もお話ししました。
会場の様子
加えて、Dear WHISKYはスコットランドのクラフト蒸溜所が地域振興に果たしている役割にも注目し、多くの現地取材を行ってきました。本報告では、ボーダーズ蒸溜所、エイトドアーズ蒸溜所、アイル・オブ・ラッセイ蒸溜所の取り組みをご紹介しました。
「クラフト蒸溜所が大手と公平に競争し成長するためには、制度面の整備が不可欠」と強調し、法整備の重要性を改めて示しました。
発言する西村康稔議員
以上、「国産ウイスキー振興議員連盟」総会のイベントレポートでした!
本総会は、日本のウイスキー産業の発展を担う国や政府の代表が一堂に会し、現状を分析するとともに、今後の戦略について共に議論する大変貴重な場となりました!
Dear WHISKYでは、これからもウイスキーの造り手・繋ぎ手・飲み手を結ぶ役割を果たし、日本のクラフトウイスキー蒸留所の活動支援に注力してまいります。
今後の展開にもぜひご注目ください。