【独占インタビュー】ロバート・バーネカー、ソナト・バーネカー夫妻<第2弾> – KOVAL
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KOVALは禁酒法時代以降、シカゴ初の蒸溜所として2008年に設立されました。
創設者はロバート・バーネカーさん、ソナト・バーネカーさん夫妻です。以前、ロバートさんはオーストリア大使館の副報道官を務め、ソナトさんは大学教授を務めていました。彼らの経験とリーダーシップにより、KOVALは現在、世界中の多くの人々に楽しまれている商品を生み出す、米国屈指の独立系クラフト蒸溜所に成長しています。
第1弾では、原材料から瓶詰めまで一貫して行う製造方法である「a grain-to-bottle approach」について詳しく解説します。第2弾の記事では、ロバートさんとソナトさんのこれまでのキャリアが現在のKOVALでの役割にどのように引き継がれているかなどを紹介します。KOVALの魅力と歴史の中で培ってきた革新的なアプローチを、ぜひ2つの記事からお楽しみください!
2008年に設立されたKOVALは、1800年代半ば以来、シカゴに初めて設立されたクラフト蒸溜所です。
KOVALは、「最高級のスピリッツは、最高の原材料から造られる」という信念に基づき、独自のウイスキー製造方法「a grain-to-bottle approach」、すなわち原材料の加工から瓶詰めまでを自社で一貫して行うアプローチを行い、ウイスキーづくりのプロセス全体を管理しています。
特に原材料にこだわっていて、信頼できる契約農家によって収穫され、アメリカ合衆国農水省によるオーガニック認定と最も厳しい食品規定の1つである「コーシャ」の認定を受けたもののみを使用しています!
その安定した品質と、クリエイティブな取り組み、洗練されたデザインにより、KOVALは現在55以上の輸出市場で販売され、受賞した賞の数は100以上です!
会社名 | KOVAL |
設立年 | 2008年 |
設立者 | ロバート・バーネカー、ソナト・バーネカー |
所在地 | 4241 North Ravenswood Ave Chicago, IL 60613, USA |
公式HP | KOVAL 公式HP |
ロバート・バーネカーさんとソナト・バーネカーさんは、KOVALを設立する前にユニークなキャリアを歩んできました。
KOVALの最高経営責任者兼マスターディスティラーであるロバートさんは、オーストリア出身で3世代目のディスティラーです。彼の前職は、ワシントンDCのオーストリア大使館の副報道官でした。ロバートさんの妻でありKOVALの社長であるソナトさんはシカゴで生まれ、英国で修士号と博士号を取得し、米国とドイツの大学で教授を務めました。
2008年にお二人は、これまでの前途有望なキャリアから舵を切り、新たな道を歩み始めました。それは、ロバートさんの先祖から続くクラフトマンシップを追求し、ソナトさんの愛する街に戻り、そして何より、夫婦で一緒に働くための決断でした。
これまでにロバートさんは、祖父母が経営する蒸溜所とワイナリーで育った経験を活かし、3,500人以上の人々に蒸留技術を教えるワークショップを主催し、世界中で190以上のクラフト蒸溜所の設立に貢献しました。
一方、ソナトさんは慈善活動や公共活動に参加しながら、KOVALの製品開発、流通、マーケティングを率いています。お二人の前職での様々な経験とウイスキーづくりへの情熱が、クラフト蒸溜所であるKOVALを国際的な存在へと押し上げました。
Dear WHISKY:
KOVALの設立を考え始めたのはいつ頃ですか?
ロバートさん:
私たちはワシントンDCに住んでいた2008年に蒸溜所の設立を考え始めました。
Dear WHISKY:
お二人は大使館副報道官と大学教授という全く異なるキャリアを積まれてきましたが、それを変えようと思ったのはなぜですか?
ロバートさん:
当時わたしたちは、ソナトの出身地である素晴らしい街であるシカゴで一緒に暮らしたいと思っていました。しかし、同じ仕事を当時のシカゴでは見つけられませんでした。
そこで、私たちはシカゴでどのような仕事ができるか考え、様々な選択肢を検討しました。
Dear WHISKY:
どのような経緯で蒸溜所を始めることになったのですか?
ロバートさん:
様々なアイデアを検討しましたが、その中でも蒸溜所を始めるという選択肢にとても惹かれました。
これは、私がディスティラーの家系に生まれ、蒸留に関する知識が少しあったためです。
Dear WHISKY:
「a grain-to-bottle approach」という独特のウイスキー製造方法を用いており、原材料の選択を非常に重視されていますが、具体的にどのような原材料を使用していますか?
ソナトさん:
契約農家の方が育ててくれた原材料を使用しています。これにより、すべてのウイスキーの原材料についてどこの畑で栽培されたかまで遡ることができます。また、アメリカ合衆国農水省によるオーガニック認定を受けた穀物を使用することにもこだわっています。
Dear WHISKY:
なぜオーガニック原料を使用するのですか?
ソナトさん:
第一の理由は、より多くの人が近頃、食べ物の安全性に関心を持つようになったからです。もう一つの理由は、当社の製品は原材料を忠実に反映する商品であってほしいと考えているため、原材料は高品質で、農薬や遺伝子組み換えを行わずに栽培されたものでなければならないと考えるからですね。
Dear WHISKY:
良い原材料を使用することは、製品の味にも影響すると思いますか?
ソナトさん:
間違いなくそう思います。
私たちは味覚だけで味わっているわけではありません。心と胃で味わっているのです。
Dear WHISKY:
心と胃で味わうとはどういう意味ですか?
ソナトさん:
新しい科学的研究によると、心理的要因が味覚に影響を与えるそうです。朝、コーヒーを飲む前からそのコーヒーの味を感じられるように、味蕾ではなく、心が味を感じ、胃がそれをこれから味わうことに興奮することがあると思います。
私は地球に優しく育てられたオーガニック原料からできたウイスキーをテイスティングする方が、心も胃もワクワクします。他の多くの人も同じように感じてくれていると思いますね。
Dear WHISKY:
どのような穀物を使用しましたか?
ロバートさん:
ミレット(きび)100%のウイスキー、トウモロコシ51%とキビ49%のバーボンウイスキー、オーツウイスキーなどがあります。私たちは様々な原材料を試してきました。
Dear WHISKY:
ミレットウイスキーはKOVALならではですね。なぜきびを使用しようと思ったのですか?
ロバートさん:
きびは輪作作物であるだけでなく、再生作物でもあるため、非常に興味深い穀物です。再生作物は、土地から栄養素を吸収するだけの他の多くの穀物とは対照的に、栄養素を土壌に戻してくれるのです。
Dear WHISKY:
発酵プロセスではどのような技術を使用していますか?
ソナトさん:
もともと日本酒の酵素発酵のために麹を研究していた高峰譲吉氏によってシカゴにもたらされた技術を使用しています。
Dear WHISKY:
高峰譲吉氏はどのような発見をしたのですか?
ソナトさん:
彼は発酵プロセスがどのように行われ、アルコールが生成されるために何が起こっているのかを発見しました。その後、彼は酵素発酵の技術を19世紀後半のシカゴ万国博覧会で紹介しました。
Dear WHISKY:
KOVALはなぜその技術に興味を持ったのですか?
ソナトさん:
シングルグレーンウイスキーを作る場合、麦芽を使用するアメリカ旧来の発酵方法よりも酵素発酵は優れています。
Dear WHISKY:
シングルグレーンにおいて、酵素発酵が優れているのはなぜですか?
ソナトさん:
これは、ライウイスキーに大麦麦芽を加えると、完成品に大麦麦芽の要素が含まれてしまうためです。そのため、最終製品はもはや100%ライウイスキーではなくなります。
KOVALはライ麦100%のウイスキーを目指すウイスキーメーカーのため、酵素発酵は私たちにとって最善の発酵方法なのです。
Dear WHISKY:
蒸溜機について教えていただけますか?
ロバートさん:
KOVALはKothe製の蒸溜機を導入した米国初の蒸溜所です。私はドイツ語を話すので、他の蒸溜所がKothe製の蒸溜機に興味を持っている時は、蒸留機の購入と設置を手伝っています。
Dear WHISKY:
蒸留工程において、最も大切にしていることは何ですか?
ロバートさん:
ブランデーを蒸留していた祖父を持つ私の経歴から、私は蒸留酒の最高な風味を得る、ハートカットの重要性を学びました。蒸留物にテールを加えた場合、味にはあまり影響はありませんが、非常に上質な洋梨やアプリコットの風味が影を潜めてしまいます。
したがって、明確にハートカットを行い、蒸留液の中心部のみを抽出することが非常に重要です。
Dear WHISKY:
樽を熟成する倉庫内の温度は、年中一定に保っていますか?
ロバートさん:
冬は少し涼しいのですが、温度変化を最小限に抑えるように努めています。倉庫は通常、15℃から20℃の範囲に保たれていますね。
Dear WHISKY:
コア製品の熟成期間はどれくらいですか?
ロバ―トさん:
通常は4年から5年です。
Dear WHISKY:
KOVALでは主にシングルバレル・ウイスキーを製造していますが、熟成期間を経たウイスキーが他の樽と差がでてしまった場合はどうしますか?
ソナトさん:
樽をリリースする前に、一貫性があることを確認するためにテイスティングしています。
そのテイスティングの過程で、わずかな違いを見つけた場合、それは特別プログラムに回されます。
Dear WHISKY:
特別プログラムとは何ですか?
ソナトさん:
特別リリースに使われるかもしれない樽のことです。例えば、特別なバレルリリースやホテルなどから看板商品作成の依頼を受けた時につくる特別リリースに使用します。
Dear WHISKY:
KOVALはシングルバレル・ウイスキーで有名ですが、安定した味わいのウイスキーを製造することはやはり難しいですか?
ロバートさん:
ウイスキーづくりに使われる穀物や木材は、毎年少しずつ異なるので難しいです。
しかし、クラフト蒸溜所の重要なポイントは一貫性であると考えており、できる限りすべてのウイスキーづくりのステップで、一貫性と再現性を保つよう努めています。
Dear WHISKY:
味を安定させるために何をしていますか?
ロバートさん:
優れた原材料を使うことや、発酵工程で使用する酵素と発酵中の温度を制御するセンサーにより、毎回同じ発酵プロセスができるようにすることで、一貫性を保てるようにしています。
Dear WHISKY:
他の製造工程ではどのように安定した品質を保っていますか?
ロバートさん:
当社では全自動蒸留システムを導入しています。蒸溜機に私たちが細心の注意を払うのはもちろんですが、多くのセンサーや流量計によって蒸留の状態を見ることができ、これが安定した蒸留につながっています。また、私たちのクーパレッジも、一貫した樽を作ることがいかに重要であるかを熟知しており、樽製造においても細心の注意を払ってくれています。
ソナトさん:
もうひとつ、KOVALが世界の他の蒸溜所と違う点があります。
それは、発酵槽とマッシュタンにしっかりと蓋をしていることです。
マッシュタンの蓋が開いている場合、酵母として働いてしまう異物が入ってしまう可能性があります。蓋をすることで、異物が混入するリスクがなく、ウイスキーの品質管理を徹底することができています。
Dear WHISKY:
KOVALのウイスキーづくりにおいて、一番大切にしていることは何ですか?
ロバートさん:
誰もが楽しめる、爽やかで親しみやすいスピリッツをつくることです。重くなく、オイリーでもなく、飲みやすい高品質のスピリッツを目指しています。
Dear WHISKY:
そのようなスピリッツをつくるために、独自のウイスキー製造方法を考案されたのですか?
ロバートさん:
はい。穀物のすっきりとした風味を引き出す酵素による糖化、雑味や油分を出さないように管理された発酵、そして最良の部分だけを取り出すハートカットなどを行っています。
これらにより、KOVALのスピリッツは爽やかで、親しみやすく、飲みやすくなります。
Dear WHISKY:
このようなユニークな製造方法に至るにどれくらい時間がかかりましたか?
ロバートさん:
私たちは最初からこの方法を使用していました。深く議論したり、試行錯誤したりすることはありませんでした。
Dear WHISKY:
熟成にはどんな樽を使用していますか?
ロバートさん:
ミネソタ産の24ヶ月熟成のミディアム・チャーの30ガロン樽を使用しています。ヘッドを密封するためには蜜蝋を使用しています。
Dear WHISKY:
スペシャル・リリース用の樽はどうでしょうか?
ロバートさん:
ジャックフルーツ、メープルシロップ、樺の樽、そしてブラジル産の木材であるアンブラーナの樽があります。
Dear WHISKY:
スペシャル・リリースはどのように作るのですか?
ロバートさん:
スペシャル・リリースの際には、4から5年熟成させたスタンダードなライウイスキーを、元々はメープルシロップが入っていた樽に詰めます。ウイスキーはメープルシロップの風味と甘さを一部受け継ぎ、とてもユニークな味わいに仕上がります。
Dear WHISKY:
蒸留液を最初に入れる樽ではなく、カスクフィニッシュで様々な樽を試しているということでしょうか?
ロバートさん:
そうですね。スペシャル・リリースの場合は、色々なカスクフィニッシュで実験しています。
これは、現在メインのベースとして使っているウイスキーに私たちは自信を持っていて、異なる樽のサイズや異なる木材から他のベースとなるウイスキーをつくることに興味がないからです。
Dear WHISKY:
年間何樽生産していますか?
ロバートさん:
年によって異なっていて、今年は工事の関係で少しペースが落ちていますが、目標は2,500から3,000樽ですね。
第1弾では、KOVALのウイスキーづくりが、こだわり抜いた原材料から始まり、酵素発酵、厳密なハートカットなど、「a grain-to-bottle approach」によって、細心の注意を払って管理されていることをご紹介しました!
このアプローチにより、KOVALはシングルバレルにも関わらず、一貫性を持って、誰もが楽しめる爽やかで親しみやすいウイスキーをつくり続けています。
第2弾では、ロバートさん、ソナトさん夫妻のキャリアと、米国のウイスキー市場に対する深い見識をご紹介します。下記からぜひご覧ください!