【現地レポート】レイクス蒸留所 : 世界遺産の中に建つイングリッシュ・モルトを代表する蒸留所
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エディンバラから南東へ45分、美しい農園地帯の東ロージアンに、グレンキンチー蒸溜所が建っています。この赤レンガの工場は、大英帝国の黄金時代、ヴィクトリア朝時代に建設され、地元の大麦を使用して、ドライで軽やかなローランドモルトを生産しています。
ジョニーウォーカーのキーモルトとしても知られ、持続可能なウイスキー製造と、傑出したビジターセンターで業界をリードするグレンキンチー蒸溜所。今回、Dear WHISKYはグレンキンチー蒸溜所を訪問し、人気の蒸溜所ツアーに参加しました!
グレンキンチー蒸溜所は、スコットランドのローランド地域に位置する蒸溜所です。スコットランドの首都エディンバラに近いことから、「エディンバラモルト」とも呼ばれ、約200年にわたり高品質なウイスキー造りを行ってきました。
グレンキンチー蒸溜所は、世界No.1の販売数量を誇る、スコットランド発祥のブレンデッドウイスキー「ジョニーウォーカー」の原酒を供給しています。スぺイサイドのカデュー蒸溜所、アイラ島のカリラ蒸溜所、ハイランドのクレイヌリッシュ蒸溜所と並び、グレンキンチー蒸溜所はローランドの代表として、「ジョニーウォーカーを支えるスコットランド四大蒸溜所(the Four Corners of Scotland distilleries of Johnnie Walker)」の一角を担っています。
グレンキンチーのウイスキーは、フレグラント、芝生、ナッツ、シリアルなど、ローランドらしい香り高さが特徴的です。蒸溜所のオフィシャルボトルである「グレンキンチー12年」は、ワールド・ウイスキー・アワードにて、ベスト・ローランド・シングルモルト金賞やベスト・シングルモルト・スコッチ銀賞を受賞するなど、世界中で高い評価を受けています。
さて、そんなグレンキンチー蒸溜所は、エディンバラに近いことから、毎年多くの観光客が訪れます。蒸溜所のビジターエクスペリエンスはホスピタリティに溢れており、ウイスキーツーリズムの観点からも、国際的な注目が寄せられています。ウイスキーの初心者からプロまで、楽しみながらウイスキーへの理解を深められるよう、丁寧に設計されたツアーが大変人気です。
現在、グレンキンチー蒸溜所では3つの異なるツアーオプションが提供されており、さらに季節限定の特別イベントも多く開催されています。申し込みは、こちらから行うことができます。
内容 | ユニークな体験を求め、素晴らしいウイスキーと物語を楽しむ方へ。ガイド付きのツアーでは、樽から直接ウイスキーを抽出することもできます。 |
費用 | £45 |
所要時間 | 2時間 |
言語 | 英語 |
内容 | 夕方から夜にかけて行われる限定ツアーです。五感を最大限に利用して楽しめる蒸溜所ツアーと、6つのドラムのテイスティングが提供されます。 |
費用 | £110 |
所要時間 | 3時間 |
言語 | 英語 |
内容 | 究極のウイスキー、素晴らしい物語、そして冒険を求める熱狂的なウイスキーファンへ。通常は立ち入り禁止のエリアも含む、特別ツアーです。 |
費用 | £135 |
所要時間 | 2時間 |
言語 | 英語 |
内容 | 五感で楽しむ蒸溜所ツアーと、テイスティングが楽しめます。 |
費用 | £19 |
所要時間 | 1.5時間 |
言語 | 英語 |
グレンキンチー蒸溜所は、環境に配慮した取り組みにおいて業界をリードしています。廃棄物の最小化からごみ処分まで、蒸留プロセスの持続可能性や水の効率性、高い管理基準が国際的に評価され、グリーン・ツーリズム(環境に優しいツーリズム)金賞を受賞しました。さらに、グレンキンチー蒸溜所は受粉促進や地元野生動物の保護を促進する自然持続可能性戦略にも取り組んでいます。
蒸溜所名 | グレンキンチー蒸溜所 |
エリア | ローランド |
オーナー | ディアジオ社 |
創業(生産開始) | 1837年 |
住所 | Glenkinchie Distillery, Pencaitland, Tranent, East Lothian, EH34 5ET, UK |
公式サイト | https://www.malts.com/en-row/distilleries/glenkinchie |
その他 | 蒸溜所見学についてはこちらから |
グレンキンチー蒸溜所は、エディンバラからわずか45分、美しい農園地帯であり、別名「スコットランドの庭(the Garden of Scotland)」として知られる、東ロージアンに位置します。緑の丘陵地帯を車で進むと、ヴィクトリア朝時代に建てられた大きな赤レンガの建物が現れました。
グレンキンチー蒸溜所の前には、色とりどりの花で埋め尽くされた静かな庭園が広がり、目の前の風景をそっくりそのまま身にまとったような、ジョニーウォーカーの姿が。後ろ書かれているのは、The Lowland Home of Johnnie Walker-文字通り、グレンキンチー蒸溜所は、ジョニーウォーカーにとってローランドの自宅とも言える場所なのです。早速、お邪魔しましょう!
蒸溜所ツアーは、グレンキンチー蒸溜所とジョニーウォーカーの理念や歴史を伝えるミュージアムの見学からスタートします。その後、工場見学とテイスティングに進みます。
今回ツアーを担当して下さったのは、ヘレンさん。パフォーマーのような流暢な語りと、言葉の節々から伝わってくるグレンキンチー蒸溜所のウイスキー造りへの愛情に、皆さん一瞬で引き込まれました!
ミュージアム入り口の「グレンキンチーの鐘」を力強く鳴らし、約10名のグループで出発です!
ミュージアムミュージアムは、1969年に終了したフロアモルティングの跡地を改装しており、グレンキンチーらしい開放的で明るいデザインとなっています。
まずは、歴史を学びます。「学校みたいでつまらなさそう…」と思われがちな歴史も、ヘレンさんの解説にかかれば、まるでドラマを見ているようなワクワクな時間に!興味深いのは、グレンキンチー蒸溜所とジョニーウォーカーの歴史が、時間軸を共にして紹介されていることです。
グレンキンチー蒸溜所の歴史は1825年にまで遡ります。エディンバラに近いことから、商業的な蒸溜所が早くから発展したローランド地方。産業革命の恩恵を受けたことも早く、効率的な農業と農産物の加工業、ウイスキー製造など多様な分野で先駆者となりました。蒸溜所の創設者は地元の農家であるジョージ&ジョン・レート兄弟で、1825年にザ・ミルトン蒸溜所を開設し、後に近郊の小川キンチーバーンにちなんで、グレンキンチー蒸溜所と改名しました。
時を同じくして、ジョン・ウォーカーという一人の男性が家業を引き継ぎ、スコットランドのキルマーノックという街に、食料品店をオープンしました。当時、大英帝国は黄金時代を迎え、お店には世界中から品物が集まり、ジョンの店でも彼自身がブレンドしたスパイスやお茶などを取り扱っていました。そのブレンディング技術を活かして、当時、品質が安定しなかった蒸溜所の原酒を自らブレンドし、美味しく安定した品質のウイスキーブランドとして知られていきました。これが、世界最大のウイスキーブランド「ジョニーウォーカー」の誕生です。この頃から、兄弟の蒸溜所で造られた原酒の90%がジョンの店に出荷されていたそうです。
出典:https://jane-aroundkilmarnock.blogspot.com/2012/09/johnnie-walker-statue.html
その後、ウォーカー家はウイスキーの品質向上を図り、スコットランド中を旅し、さまざまな原酒を探していました。フローラルなスペイサイドやスモーキーなアイラなど、個性的な原酒が揃っていた中で、ウォーカー家が優秀なバランサーとして注目したのがグレンキンチーでした。グレンキンチー蒸溜所は19世紀の後半に閉業しましたが、1890年代に再開。グレンキンチーはジョニーウォーカーの繊細な味わいのバランスを完成させる重要な原酒として、強固な関係性を築き、ジョニーウォーカーのローランドのホームとして、今日まで生産を支えています。
ミュージアムの後は、蒸溜所の見学へ!フレーバー生成のステップを10個に分けて教えていただきました。
ウイスキー造りの最初の5つのステップは、ウイスキーの原料である大麦の加工です。栽培・浸漬・発芽・麦芽・粉砕の流れを、ヘレンさんがサンプルやミニチュアの機械を利用して、丁寧にレクチャーしてくださいました!
まずは最初は、Step 01大麦の栽培です。グレンキンチー蒸溜所が位置する東ロージアンは、ラマミュアーの丘の水の恵みを受けた肥沃な大地で、大麦の生産に理想的な環境です。他の寒冷なスコットランド地域と比べ、ローランド地域はより温暖で乾燥した気候で、高品質な農産物で知られています。
そのため、グレンキンチーのウイスキーには、周辺環境の特徴が色濃く表れ、緑や芳香なフレーバーが豊かに感じられます。
地元の農家で栽培された大麦は、次にStep 02 浸漬のプロセスに入ります。穀物を水に浸すことで、穀物が水分を吸収し膨らみ、発芽する準備が整います。それから、Step 03 発芽の段階に進みます。浸けられた穀物が発芽すると、穀物のでんぷん質が麦芽糖に変化し、アルコール発酵に必要な糖分を生成します。発芽により、糖化のために必要な酵素が作られるのです。
次に、Step 04 モルティングにて発芽した大麦を焙燥させ、酵素を失わないように発芽を止めます。こうして、麦芽が作られます。最後に、Step 05 麦芽を粉砕します。粉砕により、ウイスキー製造の準備が整います。
また、グレンキンチー蒸溜所の仕込み水は、近郊のラマミュアーの丘から流れ出るものを利用しています。豊富な石灰岩の堆積物を含んでいる硬水を使うことで、軽やかでドライなローランドモルトの風味が生み出されるそうです。
出典:https://www.lammermuirlife.co.uk/
特に面白かったのは、ニューメイクのスピリッツを手にかけ、それを擦り合わせることで香りがどんどん変化していくハンド熟成体験!最初は尖っていたアロマが、柔らかくフローラルな香りに変わっていくのが非常に面白かったです。
レクチャーの後は、実際に稼働している工場を見学します!
まずは、巨大なステンレス製のマッシュタン(仕込み槽)の登場です!マッシュタンでは、粉砕された穀物であるグリストを温水に溶かしてもろみ(粥状の液体)を作ります。これにより、麦芽中のでんぷんやたんぱく質を分解し、糖分やアミノ酸を生成します。
グリストは、粉砕の程度に応じて3つに分けられます。粗いものから順に、ハスク(1.4mm~)、グリッツ(0.2mm~1.4mm)、フラワー(0.2mm未満)と呼ばれ、グレンキンチー蒸溜所では、ハスク2:グリッツ7:フラワー1の割合で使用しています。この比率は黄金比と言われ、糖分の収集効率と濾過の容易さを考慮して決定されています。
また、温水の温度は、燃料を効率的に利用するため、60℃、70℃、80℃と段階的に上げられます。このプロセスは「糖化」と言われ、1回につき約4.5時間かかるとのことです。
糖化を経て得られた麦汁は、ウォッシュバック(発酵槽)に移されます。ここで、ウイスキーの酵母が入れられ、発酵が進行し、アルコールが醸成されます。6つのウォッシュバックには、松材が使用されています。そのうち2つはオレゴン松で作られており、残りの4つはカナダのカラマツ材です。これらの発酵槽は、40~50年にわたり大切に使用されてきました。
発酵は約75時間かけて進行し、特筆すべき点は、栄養価の高い残りかすを農家に販売し、動物の飼料や堆肥として再利用していることです。グレンキンチー蒸溜所は「Nothing Ever Wasted(何も無駄にしない)」の理念を大切にし、地域の農家と協力して、次年度の大麦生産に貢献しています。
続いてのステップは、蒸溜です。1960年代から使用されているという二台の銅製の蒸溜器は、業界でも最大の大きさ!水とアルコールの沸点の違いを活用し、アルコールを気化させ、再び冷却して液体状に戻すことで、アルコール度数を高めていきます。また、グレンキンチー蒸溜所は、今では珍しい伝統的なワームタブのコンデンサー(冷却機)を利用しています。通常のワームタブが円形をしているのに対し、グレンキンチー蒸溜所のものは2階建てで、長方形のらせん形をしています。
次に、熟成庫の一部を見学しました。グレンキンチー蒸溜所には、ダンネージ式の熟成倉庫が3つ設けられています。ここでは、同じ原酒を異なる樽で熟成させたものの香りを比較し、木材がウイスキーにもたらす違いについて学びました。実際に、サンプリング抽出の器具も使用させていただきました!
熟成が終了したウイスキーは、ブレンディングされた後にボトリングされます。シングルモルトの場合、グレンキンチー蒸溜所で生産された他の原酒とブレンドされます。ジョニーウォーカーなど、ブレンデッドウイスキーの場合は、他の蒸溜所で製造された原酒と組み合わせられます。
ブレンディングの仕組みについての説明を受けた後、待ちに待ったテイスティングルームへ!洗練された温かみのある部屋に案内され、隣にはバーもありました。ここで、グレンキンチーの5つのシングルモルトウイスキーと、キャメロンブリッジのグレーンウイスキーを試飲します。
歩き疲れた体を休めつつ、初秋の農家の風景を眺めながら味わうウイスキーは格別の美味しさでした!フレーバーパレットと呼ばれるウイスキーの味わいの種類についてヘレンさんの説明を受け、他の参加者と感想を共有することで、自分の味覚を研ぎ澄ますことが出来ました。
ツアー後には、ショップに立ち寄ることもお忘れなく!グレンキンチー蒸溜所のオフィシャルボトルを自分の手でボトリングし、オリジナルメッセージを刻むことができます。
以上、グレンキンチー蒸溜所のツアーレポートでした!世界最大のウイスキーブランド、ジョニーウォーカーの生産を支え、ウイスキーツーリズムと環境へのアプローチにおいて、業界をリードするグレンキンチー蒸溜所。エディンバラから近く、身近なウイスキー蒸溜所として、充実したツアーで多くの観光客を受け入れています。ぜひ、グレンキンチー蒸溜所のツアーにご参加ください!