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【イベントレポート】ウイスキートーク福岡 2023<第2弾>

2023.09.09 / 最終更新日:2024.02.08

2023年6月11日(日)、博多国際展示場&カンファレンスセンターにて「ウイスキートーク福岡 2023」が開催されました!

今回はイベントレポート第2弾として、イベント内で開かれたセミナー(有料のスペシャルテイスティングセミナー)の中でも『集まれ!ウイスキー好き。つべこべ言うな、まず飲んでみろ!』と題された秩父蒸溜所によるセミナーの様子をお伝えします!

次回の第3弾では、同じくテイスティングセミナーより、鹿児島3Distilleries『燃ゆる鹿児島魂!炎の情熱セミナー』の様子や土屋守さんを筆頭に超豪華ゲストによるトークセッションの様子をお伝えしますので、併せてお楽しみください!

併せてお読みください!

『集まれ!ウイスキー好き。つべこべ言うな、まず飲んでみろ!』

セミナー概要

タイトル 『集まれ!ウイスキー好き。つべこべ言うな、まず飲んでみろ!』
講師 吉川 由美 氏 / ベンチャーウイスキー グローバルブランドアンバサダー

ベンチャーウイスキー・吉川由美 氏によるセミナー

『集まれ!ウイスキー好き。つべこべ言うな、まず飲んでみろ!』では、ベンチャーウイスキー・グローバルブランドアンバサダーである吉川由美氏による秩父蒸溜所の歴史・ウイスキー造りについてのお話をいただきました!
ベンチャーウイスキーの歴史についておさらいし、秩父蒸溜所の製造工程を第1蒸溜所・第2蒸溜所を比較しながら、秩父蒸溜所の造るウイスキーの特徴これからの秩父蒸溜所の目指すウイスキーを学ぶことができました。
また、セミナー内では話題のグレーンウイスキーの新蒸溜所についても触れられ、ベンチャーウイスキーファンにはたまらないセミナーとなりました!

ベンチャーウイスキーのある秩父

ベンチャーウイスキーの魅力は、ウイスキー専業メーカーであることです。すなわち社員全員が1年中365日ウイスキーのことだけを第一に考えています。従業員数は私が入社した2013年は8名でしたが、現在は32名と年々多くの方々が入社しより活気のある会社となっています。
秩父蒸溜所は、東京から北西へ70km程度の位置にあり、電車でも車でも1時間30分程の交通の便も良い場所に位置しています。秩父は山々に囲まれた盆地になっており、寒暖差が大きい(夏だと35~40度、冬はマイナス10度近く)土地であることが特徴です。

ベンチャーウイスキーの歴史

ベンチャーウイスキーの始まりは、1625年に設立された埼玉県秩父市の吉田町の酒蔵であり、創業者の肥土伊知郎さんは21代目にあたります。
1946年に本社工場が羽生市に移され、肥土伊知郎さんの祖父の代にウイスキーの製造免許を取得しています。
そして1983年に本格的なポットスチルが導入され、ウイスキー事業に力を入れていきました。しかし、2000年に日本酒事業への大きな投資の影響により、ウイスキー事業が会社の手から離れてしまうことになります。蒸溜所の稼働は停止されてしまいましたが、当時の熟成庫には400樽ものウイスキーが眠っていました。
肥土伊知郎さんはそれらのウイスキーを世に出すために2004年にベンチャーウイスキーを創業しました。

世の中が好むウイスキーを目指して

しかし、当時のウイスキーの国内消費量は1983年をピークに右肩下がりに減少し続けている状況でした。
また、ウイスキー事業の難点としては、商品になるまで最低3年から50年ほどと時間がかかること在庫を多く抱えないといけないこと、そして熟成庫の維持管理に多くの費用が掛かることなどがあります。

1970年以降の国内酒類消費量の推移

ウイスキーの需要が大幅に低下し続ける中、ウイスキー事業を行うことは非常に困難な挑戦でした。
そのような状況の中、肥土伊知郎さんは2年間で約2000件のBarへ足を運び、ウイスキー需要の現状を把握することで、世間に広く受け入れられるウイスキーとは何かを模索し始めました。
肥土伊知郎さんは現在も変わらず常に様々なBarへ足を運んでいます。ウイスキーの飲み手としての目線を忘れずに、日々ウイスキーと向き合い続けているのです。

肥土伊知郎さんの発見

2008年には、元々保有していた400樽以外の原酒も将来に残していきたいという想いから秩父蒸溜所を立ち上げました。
現在、秩父蒸溜所の熟成庫には22,000~23,000の樽が将来のリリースを待ちながら眠っています。

秩父蒸溜所の設備・工程

秩父蒸溜所の設備

秩父蒸溜所の大切にしている価値観に「Back to Tradition」というものがあります。
昔のウイスキーに憧れて造り手になりたいと思う社員が集まっていますので、昔ながらの伝統的な造りを大切にしています。

現在、設備としては2008年から稼働している第1蒸溜所、2009年から稼働している第2蒸溜所、自社製樽工場(クーパレッジ)、全7棟の熟成庫があります。

粉砕(ミリング)

ここからは秩父蒸溜所の第1蒸溜所と第2蒸溜所を比較しながら秩父蒸溜所のウイスキー造りを説明していきます。

規模の違いとしては、1回の仕込みで第1蒸溜所では400kg、第2蒸溜所では2tの麦芽をミリングすることができます。
第2蒸溜所では、1回の仕込みで第1蒸溜所の5倍の量の大麦麦芽を仕込むことができます。

第1蒸溜所と第2蒸溜所の比較(ミリング)

では、ここでみなさんに問題です!

第1蒸溜所で400kgの大麦麦芽を使用し、粉砕→糖化→発酵→蒸溜行い、1週間後にニュースピリッツを造ります。
どのくらいの量のスピリッツが造れるでしょうか??

受講者の方々からは様々な回答が上がりました

答えは200Lです!
意外と少ないと思った方も多いのではないでしょうか?

糖化(マッシング)

第1蒸溜所のシンクは非常にシンプルなつくりとなっており、中にカッター等が入っていないため、攪拌(かくはん:材料を均一に混ぜる事)やカッティングは全て手作業で行っています。一方、第2蒸溜所はシンク内の機械によって攪拌やカッティングが行われます。

第1蒸溜所と第2蒸溜所の比較(糖化)

第1蒸溜所では一から手作業で行わなければならないため、トレーニングディスティラリーという役割も担っています。秩父蒸溜所に入社したスタッフは、第1蒸溜所でウイスキーの造りを一から学び工程をしっかりと把握できたスタッフが第2蒸溜所へと移るという流れになっています。

1回の糖化では、第1蒸溜所で2,000L、第2蒸溜所では10,000Lの麦汁が取れます。

発酵(ファーメンテーション)

次に糖化させた麦汁を発酵層に移していきます。第1蒸溜所の発酵槽は国内産のミズナラ、第2蒸溜所の発酵槽は同じナラ材ですがフレンチオークを使用しています。通常ですと、マツ材などを使用することも多いですが、ナラ材の発酵槽を使用しているのは肥土伊知郎さんのこだわりの一つです。

第1蒸溜所と第2蒸溜所の比較(発酵)

蒸溜(ディスティレーション)

ポットスチルのサイズとしては、第1蒸溜所は2,000L、第2蒸溜所は10,000L(再溜は7,000L)となっています。サイズの他の大きな違いは、加熱方式です。第1蒸溜所は間接加熱(スチームのコイルが入っていて、それによって加熱する方式)であるのに対して、第2蒸溜所は直火加熱(蒸溜器の下に炉が組んであり、ガスバーナーのような形で直接加熱をする方式)となっています。

第1蒸溜所と第2蒸溜所の比較(蒸溜)

第2蒸溜所は第1蒸溜所と比較して、機械化して現代風になっているのではないかとよく言われますが、世界的に見ても直火蒸溜を採用している蒸溜所は数が少なくなってきています。サイズ感・機能などは更新していますが、第2蒸溜所ではより伝統的で、原点回帰を目指した蒸溜を行っています。

熟成(エイジング)

熟成は第1蒸溜所と第2蒸溜所で分けてはおらず、全部で7つある熟成庫に分散させて熟成させています。現在の樽数は22,000〜23,000ほどです。

テイスティング

用意された5種のカスクサンプル

今回は秩父蒸溜所の5つのカスクサンプルを用意しました!

No. 蒸溜所 樽詰め 熟成 度数 麦芽品種
秩父
第1蒸溜所
2020年
5月
3年 63% サチホゴールデン バーボンバレル
秩父
第2蒸溜所
2020年
5月
3年 63.5% ニューサチホゴールデン バーボンバレル
秩父
第1蒸溜所
2015年
6月
7年 63% オデッセイ バーボンバレル
ブレンデッド 2015年
11月
58% リフィルバーボンバレル
秩父
第1蒸溜所
2011年
2月
12年 60% ティプル バーボンバレル

第1蒸溜所と第2蒸溜所を飲み比べ

秩父第2蒸溜所の商品は現在リリースされていませんが、今回は特別に秩父第2蒸溜所の雰囲気を楽しんでいただきたく、第2蒸溜所のサンプルを用意しました!
①と②を飲み比べてみると第1蒸溜所と第2蒸溜所の違いがはっきりと分かります。
①の方がより味の中に複雑さが感じられます。これは使い込まれた発酵槽による影響です。
また、第2蒸溜所のウイスキーは直火蒸溜所によるトースト感が強く感じられます。これが直火蒸溜の特徴の一つです。

カスクサンプル②(秩父第2蒸溜所の原酒)

秩父蒸溜所の味

③のウイスキーは、一口飲むと「これ秩父のウイスキーだな」と分かるような味わいだと思います。加水をして度数調整をすることで、様々な香りが時間をかけて表れてくるという特徴もあります。

ウイスキーは原料なども商品の仕上がりに大きく影響を与えますが、それよりも蒸溜した際の設備や造り手の個性が大きく表れるものだと考えています。
そこで③のウイスキーが造られた2015年はどんな状況だったのかを振り返りたいと思います。2015年は秩父蒸溜所で本格的に自社での樽作りを開始した年、ブレンダー室の設置をした年です。

また、2015年はフランスの樽工場の視察、樽に使われるフレンチオークの勉強に行った年でもあります。
樽を作るには「原木市場で原木を競り落とす→丸太のまま数カ月乾かす→原木から板材へと製材→板材のまま約3~5年乾燥させる→樽工場で製樽」という工程が必要です。樽を作るためにこれほど長い年月を要することには驚いた方も多いのではないでしょうか。

原木から樽が作られるまでの流れ

ブレンデッドウイスキーのシングルカスク

④のウイスキーはブレンデッドウイスキーのシングルカスクというウイスキーです。
通常のブレンデッドウイスキーは、世界各国のウイスキーを秩父蒸溜所に持ってきたものをブレンダーが絶妙な割合で調整を行いブレンドしリリースします。ここでブレンドした状態のウイスキーを樽に詰め直し、再度熟成させたものがブレンデッドウイスキーのシングルカスクです。

秩父蒸溜所はシングルモルトのイメージを強く持たれていますが、ブレンデッドウイスキーにも力を入れています。多くの方々が飲むブレンデッドウイスキーはウイスキー専業メーカーとして手を抜けない部分です。

秩父蒸溜所・12年熟成のウイスキー

⑤のウイスキーは秩父蒸溜所の12年熟成のウイスキーです。
長い熟成期間を経たことにより、飲んでいるうちに香りが口の中で広がっていくような感覚を感じられると思います。
やはりウイスキーメーカーとして12年という数字は非常に重要に捉えています。将来的には、この⑤のウイスキーのような12年のシングルモルトをスタンダード品としてリリースしていきたいなと思っています!

この5つのウイスキーの飲み比べを通して、秩父蒸溜所のこれまでの歴史・取り組みを振り返ってきました。素材をしっかりと知ること、最新の情報を常にキャッチアップすること、伝統を学ぶこと、技術を学ぶことを常に続けながら、これからもウイスキーを造り続けたいと考えています。

グレーンウイスキー蒸溜所について

ウイスキー製造メーカーとして、モルトウイスキーだけでなくグレーンウイスキーにも挑戦したいという想いがあります。また、戦争などの世界情勢によって原料価格の高騰・輸入ルートの断絶なども想定されます。そのようなリスクなども考慮すると、将来的には自社でグレーンウイスキーの蒸溜所を持つということは非常に重要なことだと捉えています。

しかし、グレーンウイスキー蒸溜所はどこにでも作ることができるわけではありません。
モルトウイスキーよりもはるかに大量生産が想定されるブレンデッドウイスキーの蒸溜所は以下(下記画像参照)のような立地条件を満たしている必要があります。

グレーンウイスキー蒸溜所の立地条件

これらの条件を鑑み、ベンチャーウイスキーでは苫小牧でグレーンウイスキー蒸溜所を建設しています。
現段階では、2025年に製造開始の予定となっています。
より詳細な情報は今後また随時更新していきます!乞うご期待ください!

最後に

今回のセミナーでは秩父蒸溜所の始まりから今後の展望まで、テイスティングを交えながらお伝えしました。

小さい蒸溜所だから歴史が浅いということは、これから先の歴史を飲み手の皆さんと創っていけるということでもあります。是非今後も秩父蒸溜所のウイスキーで乾杯し続けていきたいですね!

第3弾もお見逃しなく!

以上、秩父蒸溜所によるスペシャルテイスティングセミナー『集まれ!ウイスキー好き。つべこべ言うな、まず飲んでみろ!』のレポートでした。
近年のジャパニーズウイスキー人気の一翼を担う秩父蒸溜所のウイスキー造りを細部まで知ることのできるセミナーとなりました。
ウイスキーが造られる工程が鮮明に説明された本セミナーでは、勉強になる内容も多かったのではないでしょうか。

第3弾の鹿児島発のウイスキーを手掛ける方々によるセミナーや豪華ゲストによるトークセッションもぜひお楽しみに!

併せてお読みください!

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