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今年で創業200周年という節目の年を迎える木内酒造。
地域に根ざしたお酒造りを大切にしており、茨城県産の原材料にこだわりながら、日本酒や焼酎、ビールなど幅広くお酒造りを行っています。
今回Dear WHISKYは、そんな歴史と想いを持つ木内酒造の社長である木内敏之さんに独占インタビューを行いました!お酒造りにおいて木内さんの大切にしていることや、今後のジャパニーズウイスキーについての想いなどまで伺いましたので、ぜひお楽しみください!
創業200周年を誇る歴史ある木内酒造は、1823年に茨城県那珂市にて誕生しました。地域に根ざしたお酒造りを大切にしており、茨城県産の原材料にこだわりながら、多彩な商品を提供しています。清酒の「菊盛」や焼酎の「米焼酎 木内」、そして「常陸野ネストビール」は数々の品評会で高い評価を受けています。そして2016年からはウイスキー造りに挑戦し、2020年より八郷蒸溜所にてウイスキー造りを本格始動させました。
日本でしか造れないウイスキーを造ると言う想いを込めた、「日の丸ウイスキー」 を販売しています。
木内酒造株式会社 代表取締役 木内敏之様
1963年9月14日茨城県那珂市生まれ。1986年上智大学を卒業後に木内酒造へ入社し家業である清酒造りを継承する。1994年の酒税法緩和をうけビール醸造免許を取得し、1996年常陸野ネストビールの醸造を開始。2007年には茨城県那珂市の農家と協力し日本生れのビール麦「金子ゴールデン」の復活栽培をスタートし、この国産大麦の栽培がクラフトウイスキー造りを始めるきっかけにもなっている。2016年からビール醸造所の一角でウイスキーの試験蒸留を開始。2020年には茨城県石岡市の八郷地区に八郷蒸溜所を新設し、ウイスキーの生産体制を確立。2023年に国産の大麦・小麦の製麦棟を竣工し、国産原料を用いたジャパニーズクラフトウイスキー造りへの取り組みと挑戦を続けている。 |
Dear WHISKY:
木内酒造について教えてください!
木内さん:
木内酒造は1823年に創業した、2023年に創業200周年を迎えた歴史のある会社です。地域に密着したお酒造りを目指し、茨城県産の原材料にこだわり、様々な種類の商品を提供しています。
Dear WHISKY:
ウイスキー造りはいつから始めたのですか?
木内さん:
2016年からはウイスキー造りに挑戦し、2020年より八郷蒸溜所にてウイスキー造りを本格始動させました。日本でしか造れないウイスキーを造ると言う想いを込めた、「日の丸ウイスキー」 を販売しています。
Dear WHISKY:
長年お酒造りに携わる木内酒造のこだわりは何ですか?
木内さん:
私たちのこだわりとしては、自社であるべき条件で自社であるべきものを造るというものがあります。その時の流行に流されたり、他社に流されることなく造り続けることを大切にしています。
Dear WHISKY:
自社であるべきものを造るとはどのようなことでしょうか?
木内さん:
私としては、地域に密着したお酒造りを行うということです。
そのため、地元茨城の原材料を使用し、茨城で培われた酒造りのノウハウを大切にしています。
Dear WHISKY:
木内酒造はとんかつ専門店「蔵+かつ 」というお店も手掛けていますが、何か理由があったのですか?
木内さん:
自社の商品のPRが大きな目的ですね。
ビールをPRするために生ハムやベーコンが必要だから自社で豚を育てる、ベーコンや生ハムでは豚が消費しきれないからとんかつ店を運営する、ビールやウイスキーの材料となる麦を育てた畑の休耕地で蕎麦を育てる、というように「自社の商品をどのようにPRするのか」から飲食店の経営を始めました。
ちなみに、皆様からもランチメニューが非常に美味しいと好評なので召し上がってください!
Dear WHISKY:
長年に渡りここ茨城で造りに携わってきた木内酒造にとっての「お酒」とは何ですか?
木内さん:
あくまでビジネスだと考えています。しかしビジネスだからといって、売れそうなものを作るような流行りに乗ったビジネスはしていません。
この場所でしかできないビジネス、茨城でしかできないお酒造りというものを大切にしてお酒造りに取り組んでいます。
Dear WHISKY:
木内酒造の八郷蒸溜所が位置するこの八郷地区はどのような場所ですか?
木内さん:
八郷地区は日本のオーガニック農業の発祥の地とも言われています。そして戦前より植林が行われてこなかった地域です。
そのため手つかずの自然と素晴らしい食に恵まれた地域です。
Dear WHISKY:
お酒造りにおいて、八郷地区の利点はありますか?
木内さん:
水源も豊富にあり、盆地特有の寒暖差のある気候をしていることです。
八郷地区はお酒造りに不可欠な高品質な水と、お酒の熟成に適した気候に恵まれており、まさに理想的なお酒造りのための土地と言えます。
Dear WHISKY:
八郷蒸溜所を公民館の跡地に建設した理由は何故ですか?
木内さん:
公民館の立地と外観が決め手です。筑波山を正面に臨むことのできる立地の良さにまず惹かれました。また、外観については、左右対称のシンメトリック構造になっていて美しいです。この構造がとても美しいと感じました。
この建物を見た瞬間にここにポットスチルを置こうなど次々アイデアが浮かんだため、迷うことなくここの場所に決めました。
Dear WHISKY:
これまで様々な種類のお酒を造ってきた中で、蒸溜所建設の際に活かされた技術はありますか?
木内さん:
ビール工場から多くの技術が活かされました。仕込みの際の技術であったり、ウイスキーの風味に大きく関わる濾過の技術もビール製造で培われた技術を参考にしています。また八郷蒸溜所では、糖化から蒸留まで自動管理しているのですが、この技術もビール工場の技術を活かしています。
Dear WHISKY:
自社で製麦工場を建設したきっかけは何ですか?
木内さん:
八郷蒸溜所では、一部のモルトを茨城県産で賄っています。将来的にはモルトの約半量を茨城県産のもので賄う計画が進行しており、せっかく茨城県産のモルトにこだわるのなら製麦まで行おうと思ったことがきっかけです。
Dear WHISKY:
自社で製麦することには、どのようなメリットがありますか?
木内さん:
麦の品種に合わせた製麦や少ない量でも製麦が可能になったことです。
外注していた時は、一回20tからしか製麦できなかったのですが、自社の製麦工場では500㎏から5tまで調整ができるようになったこともメリットの一つです。
Dear WHISKY:
ウイスキー造りに挑戦する際に苦労したことはありますか?
木内さん:
あまり苦労した思い出はなく、楽しくウイスキーを造っていました。しかし、ウイスキー造りに挑戦した当初は蒸留設備の関係上、24tもの麦汁ができてしまうため、一度に造るウイスキーの量が多いという点で苦労していました。
Dear WHISKY:
何故ウイスキーの原料にお米を使おうと考えたのですか?
木内さん:
日本でしか造れないウイスキー、ジャパニーズウイスキーを造るにあたって、日本の穀物であるお米を使うことは当然だと思います。バーボンウイスキーがトウモロコシを使い、アイリッシュウイスキーが小麦を使うように、ジャパニーズウイスキーにおいてお米とはそのぐらい重要な穀物だと考えています。
Dear WHISKY:
木内酒造が造っている「日の丸ウイスキー」はどのようなウイスキーですか?
木内さん:
日の丸ウイスキーは2020年より製造を始めた八郷蒸溜所で造られているウイスキーです。日本の恵みを活かした、日本ならではのウイスキーを目指し、主原料には国産の大麦、小麦のほか、米など可能な限り日本の穀物を使用しています。
Dear WHISKY:
TWSCやSFWSCで金賞を受賞するほどの評価を受けている「日の丸ウイスキー」についてどう感じていますか?
木内さん:
まだまだ成長期にあると思います。ジャパニーズウイスキーというブランドは、サントリーさんやニッカウヰスキーさんなどの方々によって作られていると感じます。
ジャパニーズウイスキーブームの後からが本当の勝負だと考えています。
Dear WHISKY:
今後世界と勝負していくにあたって、ジャパニーズウイスキーにおいて何が大切だと思いますか?
木内さん:
日本でしか造ることのできないウイスキーを造ることだと思います。日本の食材にこだわる、地域の食材にこだわったお酒造りこそお酒造りの本質だと考えていますし、それはジャパニーズウイスキーにも同様にいえることだと思います。
Dear WHISKY:
日本の食材にこだわるからこそ、木内酒造さんは茨城の原料にこだわったお酒造りを大切にしているのですね!
木内さん:
その通りです。アルコール飲料というのは全て農業生産品からできています。
そのため農業をベースにしないと良いものができません。
だからこそ、私たちは自社で麦栽培も行っていますし、製麦工場を建設して製麦も行っています。
Dear WHISKY:
熟成に桜樽を使用したきっかけは何ですか?
木内さん:
日本でしか造れないウイスキーを造る上で、日本の木材を樽に使用することは今後重要になっていくと考えています。そのため日本の象徴である桜を使おうと決めました。
Dear WHISKY:
桜樽で熟成させたウイスキーの特徴は何ですか?
木内さん:
桜餅のような香りがします。また桜の樽での熟成に合うようにウイスキーの造り方も工夫しています。
ウイスキーを漫然と樽の種類の違いだけで変化をつけるのではなく、様々な試行錯誤をしています。
引用:https://hinomaruwhisky.com/archives/product/sakura_cask_2022
Dear WHISKY:
映画「駒田蒸留所へようこそ」とのコラボボトルにも桜樽が使われていましたがこのウイスキーの特徴を教えてください!
木内さん:
名前は「日の丸ウイスキー トリプルカスク SHERRY & CHERRY & SAKURA」と言います。桜樽とチェリーブランデー樽、シェリー樽の3つの樽の原酒がブレンドされています。またカスクストレングスになっておりウイスキーの複雑な味わいをより感じやすくなっています。
Dear WHISKY:
「日の丸ウイスキー トリプルカスク SHERRY & CHERRY & SAKURA」はどのような味わいですか?
木内さん:
とても華やかな味わいになっています。桜樽もチェリーブランデー樽も、シェリー樽も華やかな味わいが特徴の樽になっています。
日本の春を表現したいと思い華やかさが特徴の3つの樽をブレンドしたウイスキーです。
引用:https://kodawari.cc/news/20230824.html
Dear WHISKY:
木内酒造は2023年に創業200周年を迎えましたが、他にも取り組んでいる事業はありますか?
木内さん:
様々な事業が進行しています。200周年を記念したお酒も発売されますし、ウイスキーも新商品が発売されます。そしてPRも兼ねた観光事業にも取り組んでいきます。
Dear WHISKY:
観光事業とは具体的にどのようなことに取り組むのですか?
木内さん:
自社でバスを購入し、そのバスを使いツアーを行う予定です。東京駅からバスが出発し、石岡と那珂市に来てビール工場、清酒工場、蒸溜所を回るツアーを計画中です。
さらに、バスの中にはバーも併設しています!
来年の4月から運航する予定なので楽しみにお待ちください!
Dear WHISKY:
様々なことに挑戦されている八郷蒸溜所ですが、これからさらに挑戦しようと考えていることはありますか?
木内さん:
八郷蒸溜所に次ぐ、第2の蒸溜所の建設に取り組んでいきたいと考えています。やはり1つの蒸溜所からではそこまで多くの原酒を製造することはできません。
原酒のバラエティを増やすためにももう1つ蒸溜所を建設したいと思っています。
Dear WHISKY:
今後のジャパニーズウイスキーの展望についてどうお考えですか?
木内さん:
私はここからがジャパニーズウイスキーにとっての正念場になると思います。
現在はジャパニーズウイスキーというブランド人気が高まっていることもあり、世界的にもジャパニーズウイスキーの売れ行きが好調ですが、このジャパニーズウイスキーブームが過ぎ去ったときに日本のウイスキーの真価が問われることになると考えます。
Dear WHISKY:
今後もジャパニーズウイスキーが人気を保つために大切だと思うことは何ですか?
木内さん:
原材料にこだわり、日本でしかできないウイスキーにこだわることだと思っています。アメリカのクラフトバーボンの現状や、私たちがクラフトビール事業で最大手になった背景にはその場所でしか造れないものを造るということが深く関わっていると思うため、ジャパニーズウイスキー業界にも同じことが言えると思います。
Dear WHISKY:
最後にDear WHISKYの読者に一言メッセージをお願いします!
木内さん:
ウイスキーの楽しみ方として、様々なバリエーションのウイスキーを飲むということを知って欲しいです。
これまでのウイスキーの概念を変えてくれるウイスキーに出会うということがクラフトウイスキーを飲む楽しみの一つだと思います。
そのため私たちもそのようなウイスキー造りたいと考えています。だからこそ、日本にいらっしゃる皆様にはジャパニーズウイスキーを飲むなら、日本でしか造れないウイスキーを飲んでいただければと思います。
以上、木内社長へのインタビューでした!
お酒造りの本質を追求し、地域とのつながりを大切にする姿勢が、木内酒造さんのお酒が高く評価される由縁であることを実感しました。
また、茨城でしか造れない、八郷蒸溜所にしか造れないウイスキーを造るという強い想いと、造りへのこだわりを感じました。
木内社長、この度はありがとうございました!