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【イベントレポート】WHISKY Luxe Tokyo 2023 第3弾<セミナー編②>

2023.09.28 / 最終更新日:2024.02.08
Whisky Luxe Tokyo 2023 part 3

2023年4月12日に、東京国際フォーラムで「WHISKY Luxe Tokyo 2023」が開催されました!

イベントレポート第2弾では、出展された蒸溜所の方々によるセミナーから得られた魅力的な蒸溜所情報をお伝えしています!
今回は第3弾<セミナー編②>ということで、第2弾<セミナー編①>では伝えきれなかった蒸溜所に関する貴重な情報をお伝えします!
本記事でも各蒸溜所の想いや今回のイベント用に特別に持って来ていただいたウイスキーボトルの魅力など、普段なかなか聞くことができない情報をお届けします!

また、イベント全体の概要やサントリー元チーフブレンダーの輿水精一さんと基調講演者の嶋谷幸雄さんのお話は第1弾でご紹介しています!こちらでもジャパニーズウイスキー100周年に相応しい素敵なお話を聞くことができましたので、ぜひご覧ください!

併せてお読みください!

 

山崎蒸溜所/白州蒸溜所(サントリー株式会社)

登壇者

野口 雄志 氏 サントリー株式会社にてブレンダー室の室長を務める。
2000年にサントリー株式会社に入社し、生産第一部(現ブレンダー室)に配属される。
Heriot Watt大学(2017年博士号取得)、Morrison Bowmore Distellers社、Beam Suntory UKなどでの経験を活かし、2022年からブレンダー室の室長を務める。

山崎という土地柄

まず蒸溜所建設に際し、この山崎という土地が選ばれた理由は2つあります。

1つ目は美味しい水があることです。山崎の水は日本名水100選にも選ばれていて、千利休がその水でお茶をたてたということでも知られています。
2つ目は蒸溜所がある一帯が湿潤な気候であることです。近くを淀川が流れているため、時として霧が立ち込める非常に湿潤な気候はウイスキーの製造環境に適しています。

創業者:鳥井信治郎さんの信念

創業者の鳥井信治郎は1899年に寿屋(現在のサントリー)を創業しました。そして1923年に山崎蒸溜所を建設しウイスキー造りに着手します。
日本人の味覚に合うウイスキーを造りたいという彼の想いとは裏腹に、当時日本人に馴染みがなかったウイスキーの製造には周囲から猛反対を受けました。

そんな中、1929年に満を持して国産第1号のサントリーウイスキー”白札”を販売しました。しかしこのウイスキーの味わいにはスコッチ由来の本格的なスモーキーさがあり、当時の人々には焦げ臭い、煙臭いと評判は良くありませんでした。

そこで鳥井は試行錯誤を繰り返して日本人に合うようなウイスキーを必死に考え、試作品が出来上がると度々取引先の打ち合わせや宴会等に持ち込むことで味の評価を聞いて回ったと聞いています。

そしてこうした努力の末に「角瓶」(1937年)が誕生します。角瓶は中身だけではなくボトルのデザインにも非常にこだわりました。薩摩切子の香水瓶をヒントにして亀甲模様の瓶をデザインしたという背景があり、これは今も引き継がれているデザインです。

様々な設備投資

角瓶の販売から「オールド」のヒットもあり1983年までウイスキーの売り上げは急激に伸びていきましたが、その後は約四半世紀に渡って売上の低落が続きました。その中でも山崎はちょうど売上の低迷時期である1984年に当時ピュアモルトウイスキー・山崎を発売をしていました。

このように市場が大きく変動する状況だったため私たちは様々な設備投資を行いました。例えば1972年の知多蒸溜所の開設、1973年には白州蒸溜所、1989年には山崎蒸溜所の大改修、そして2010年には白州蒸溜所敷地内にグレーンウイスキー生産設備を新設しました。また1991年には品質向上のための研究開発も並行して進めました。その結果、激動の時代の中にあっても発酵や蒸溜、原料の酵母や樽などウイスキーに関連する多岐にわたる技術の向上を実現することができました。
このような活動の甲斐もあり2008年のハイボールブームを迎えて以降、ありがたいことにウイスキー市場の回復傾向は続いてます。

山崎について

山崎シングルモルト・ウイスキーは2代目社長の佐治敬三の日本的な上品なテイストに仕上げたいという強い思いがこもったウイスキーです。実はラベルに書いてある山崎という文字は佐治の直筆であり、この山崎の“崎”の部分には「寿」という意味を忍ばせています。

この山崎の原酒は、徹底した造り込みと多彩な造り分けを大切にして製造されています。仕込みに関しては、「麦汁」の清澄度にこだわることでフルーティーなお酒造りを徹底しています。発酵に関しても、フルーティーでリッチなお酒を造るためビール酵母を使用しています。また蒸溜では、加熱方法へのこだわりから直火型を導入しており、貯蔵では樽材や原酒の管理を徹底して行っています。

新しい取り組み

伝統的な造りだけではなく新しい取り組みにも力を入れており、昨年山崎蒸溜所内に伝統的な製麦場であるフロアモルティングも導入しました。また、継続的な品質向上を目的とした研究施設であるパイロット・ディステラリーでも、近年は従来の直火蒸溜に加えて電気加熱といった新規技術の評価にも力を入れ始めています。

 

新潟亀田蒸溜所(合同会社新潟小規模蒸溜所)

登壇者

堂田 浩之 氏 合同会社新潟小規模蒸溜所にて取締役を務める。
地元、北海道の大学在学中に、ニッカウヰスキー余市蒸溜所を訪問し、ウイスキーの魅力に惹かれてゆく。ウイスキーに関わる仕事をしたいと思ったが、バブル崩壊後だったうえにウイスキー冬の時代に直面し、その道を断念する。東京の商社に就職後、外資系製薬会社に在籍。約20年間のサラリーマン生活を経て、株式会社大谷に入社。同社の新規事業として、ウイスキー製造事業を立ち上げ、現在に至る。

ニューポットの造り込みとこだわり

新潟亀田蒸溜所の考えるニューポットの造り込みとこだわりについてお話しします。私たちはこれまでたくさんの試行錯誤を繰り返し、この2年間でニューポットを造り込んできました。そして新潟亀田蒸溜所のコンセプトとして、淡麗で香り高い飲みごたえのあるウイスキー造りを掲げています。

その理由としては醸造酒文化がある新潟において、いかに地域の方々に新潟亀田蒸溜所のウイスキーを認めてもらえるかということを第一に考えたためです。そのため豊かな酒質に余韻を持たせることを、この2年間じっくり時間をかけながら研究を重ねてきました。

原料について

原料には英国産大麦のほか、新潟県産のローカルバーレイである「ゆきはな六条」を使用しています。新潟では二条大麦の生産実績がないため、もともと実績がある六条大麦を用いたウイスキー造りができないかと考えたためです。

そのため農研機構に相談を持ちかけてファイバースノウという既存の六条大麦を品種改良し、2019年にウイスキー用大麦として出した品種がこの「ゆきはな六条」です。

酒質としては麦の香りによってリッチな味わいになり、比較的あっさりとしたものになることが特徴です。また、βグルカンが非常に多いため製造上特殊な工夫をしなければ、ろ過過程に大きな影響を及ぼしてしまいます。そのため新潟亀田蒸溜所ではその工夫にも研究を重ねて製造を行っています。

最後に

今後は、熟成庫で使用する電力については太陽光パネルを設置することで、電力を無駄にすることなくサステナブルな管理を進めていきたいと考えております。

広辞苑によると「クラフト」とは手仕事による工芸とありますが、転じてよく職人がこだわり手間暇かけて製造した1品という意味で使われます。これに則って我々は今後も手間を惜しまずより良い製品造りを目指していきます!

 

SAKURAO DISTILLERY(株式会社サクラオブルワリーアンドディスティラリー)

登壇者

山本 泰平 氏 株式会社サクラオブルワリーアンドディスティラリーにて製造本部 部長 蒸留責任者を務める。
平成10年広島大学大学院工学研究科工業化学専攻修了。同年、中国醸造株式会社(旧社名)入社し、製造部商品開発課に配属される。2006年 商品開発室開発主任に就任し、桜尾蒸留所では建屋設計の段階から携わり、製造設備の選定を行う。また、ジン「桜尾」の開発を手掛ける。 2018年8月製造本部 副部長 蒸留責任者、2021年10月製造本部 部長 蒸留責任者に就任。

歴史について

当社は1918年に中国酒類醸造合資会社として、中国地方の清酒製造会社15社が共同出資した合子会社として発足しました。元々は清酒の展開用アルコールの製造を行うための会社でしたが、その後1920年にはウイスキーの製造免許を取得してウイスキーの製造を開始しました。

2017年にSAKURAO DISTILLERYを竣工して、本格的に洋酒を世界に発信することを目的にモルトウイスキーやジンの製造、そして2019年からはグレーンウイスキーの製造を開始しています。

SAKURAO DISTILLERYの立地

この廿日市市は瀬戸内海に面した港町であり、世界遺産の宮島がある町でもあります。
山と海が非常に近い土地で冬には山から冷たい風が吹き込みしばしば雪が積もることもある一方、夏は非常に暑く雨が少ない瀬戸内海気候に属しています。
このため年間の寒暖差が非常に大きい点が特徴です。

二つの貯蔵庫

SAKURAO DISTILLERYでは二つの貯蔵庫でウイスキーの熟成を行っています。
SAKURAO DISTILLERYの貯蔵庫は海のそばにあり、夏は非常に暑く塩風も当たるのでここで熟成されたウイスキーはほのかに潮の香りがする特徴があります。
また、エンジェルシェアの割合は4%から8%と非常に高くなっています。

また、SAKURAO DISTILLERYは広島県安芸太田町戸河内(とごうち)にも貯蔵庫を所有しています。
この貯蔵庫は年間を通じて比較的寒暖差が小さくエンジェルシェアの割合も2%から3%ということもあり、このような緑豊かな森と清流に囲まれた貯蔵庫で熟成されたウイスキーはスムースな味わいになります。

私たちのウイスキーの特徴は、この桜尾と戸河内2つの貯蔵庫の違いによる原酒の香味の違いから生まれる香りや味わいの違いだと考えています。

 

三郎丸蒸留所(若鶴酒造株式会社)

登壇者

稲垣 貴彦 氏 若鶴酒造株式会社三郎丸蒸留所にて取締役を務める。
2015年富山県に戻り、実家の若鶴酒造を手伝う。2017年老朽化したウイスキー蒸留所をクラウドファンディングで見学できる蒸留所として改修。2019年 ポットスチル「ZEMON」を開発。

三郎丸蒸留所について

三郎丸蒸留所は富山県砺波市という場所にあります。当蒸留所は、広大な田園が広がる中にあるので非常に水が豊かな場所です。
また富山県という場所は3000m級の山々と海の両方を見渡せるという高低差の大きいエリアとなっています。
この高低差が大きいと水が軟水になります。なぜなら水が緩やかに流れていくとミネラルを含んだまま硬水になるのですが、このエリアでは水が高低差の大きさからあっという間に流れてしまうので非常に硬度が柔かい花崗岩に磨かれた伏流水となります。弊社ではその水を仕込水として使用しています。

歴史について

今年で創業から70周年を迎えました。
1947年に若鶴醗酵研究所を設立しましたが、そのあと酒類の研究を開始して、1952年に雑酒の製造免許がウイスキーの製造免許に振り替わったという経緯があります。そして2016年に蒸留所の改修を行いましたが、このとき蒸留所施設内は老朽化が進み、雨漏りや床抜け、窓が割れてしまうなど危険な状況になっていました。

この状況だと作業員が危ないと感じたので、2017年にクラウドファンディングという形で蒸留所を改修して見学できる蒸留所にしました。そこから現在に至るまで、毎年古い設備を随時入れ替えています。

コンセプトについて

弊社は昔から継続してピーテッドのウイスキーを製造していました。
私たちとしては、この伝統を引き継いでより発展させていきたいという想いがあるので、まずは「THE Ultimate Peat(ピートを極める)」ことをコンセプトに掲げています。

また弊社のシングルモルトはタロットカードをモチーフにしています。なぜかというと、タロットカードには若き魂が旅をして成長するという意味があるからです。弊社は毎年新しい設備を導入しています。そのため、蒸留所毎年の進化を感じられるようにこのような意味が込められたタロットカードをモチーフとしています。私たちは若い魂が旅をすることで様々な人のご縁の中で成長していき、そこからウイスキーが生まれるということを心に留めて日々ウイスキー造りをしています。

 

マルス信州蒸溜所/マルス津貫蒸溜所(本坊酒造株式会社)

登壇者

久内 一 氏 本坊酒造株式会社にてチーフブレンダーを務める。
山梨大学工学部発酵生産学科卒業、本坊酒造(株)入社。入社後は主にワイン事業に携わり2004年にはマルス山梨ワイナリー工場長に就任。
2009年より甲信製造部長としてマルス信州蒸溜所の蒸溜再開、ウイスキー事業に従事。2013年取締役就任を経て、2021年ウイスキー部門戦略推進チームリーダー兼チーフブレンダーに就任。

蒸溜所の歩み

弊社は鹿児島で1949年にウイスキーの免許を取得して1959年まで10年間に渡って鹿児島県でウイスキー製造を行っていました。
1960年に設立した山梨工場では、本格的なポットスチルを備えてウイスキーの蒸溜を開始しました。
しかしながら、山梨工場をワイン分野に特化させようということで1969年に山梨工場でのウイスキー蒸溜を停止しています。

その後、1985年に長野県に開設した信州蒸溜所をウイスキー造りの拠点として蒸溜を行っていましたが、1992年の酒税法改正に伴うウイスキー市場の低迷を受けて1993年から2010年までの約19年間蒸溜を休止しています。
その後、2000年代のハイボールブームを受けて市場が回復してきたため、2011年に蒸溜を再開して現在に至っております。

また信州に加えて、2016年には2つ目の蒸溜所である津貫蒸溜所を鹿児島の南薩摩市に建設しています。
そして同じく2016年に世界自然遺産の屋久島にエイジングサイトを建設しました。

このような紆余曲折を経て、現在はこの信州と津貫の2つの蒸溜所、それに屋久島も加えた3つのエイジングサイトでのウイスキー造りを展開しています。

蒸溜所の特色とウイスキー

マルスウイスキーでは主に信州蒸溜所と津貫蒸溜所の2つの蒸溜所でウイスキー造りを行っています。
信州蒸溜所が標高800mの冷涼で霧深い非常にクリアな環境でウイスキー造りを行っているのに対して、津貫蒸溜所は標高が60mの温暖でありながら非常に寒暖差が大きく南国のような環境でウイスキー造りを行っています。

信州蒸溜所で造られるウイスキーは、こういった信州の自然環境を受けた杏やバナナ、アップルティのような甘くフルーティーな香りが特徴的です。
一方で津貫蒸溜所の自然環境から造られるウイスキーは、非常にディープでエネルギッシュな味わいになります。

信州蒸溜所と津貫蒸溜所で蒸溜したニューポットを、信州、津貫に屋久島を加えた3箇所で熟成させます。そうすることで、それぞれの環境の特徴と個性が表れた全く別物のウイスキーになります。

ウイスキーへのこだわり

私たちは鹿児島での蒸溜、それから信州での蒸溜、19年間の蒸溜の休止などの紆余曲折の中を歩んできました。

しかしこういった苦労した時代があったからこそ、私たちが異なる拠点で蒸溜や熟成をするということやその意味合い、更にはその場の自然環境の違いがウイスキーの風味に非常に異なる特徴をもたらしているということを身をもって知ることができました。
この知見は我々が苦しみながらも得ることができた、とても大切な財産であると考えています。

私たちは鹿児島、山梨、信州それぞれの地でウイスキーを蒸溜したことで得られたこれらの財産を糧に、それぞれの風土の味を大切にしたウイスキーを造ること、そして四季折々の変化に富んだ日本の風土の味をウイスキーで表現することに挑んでおります。

 

ニセコ蒸溜所(株式会社ニセコ蒸溜所)

登壇者

製造所長
角本琢磨氏
西村英士氏
株式会社ニセコ蒸溜所。

ニセコ蒸溜所について

北海道の南西部に位置するニセコ町は気候、農作物、水の質が非常に良く、ニセコアンヌプリという山の麓で採れる伏流水は硬度33度と非常に柔らかい水になってます。
この気候と豊富な農作物と柔らかい軟水を使うことで上品で繊細でバランスの取れたジャパニーズウイスキーを製造しています。

またニセコ蒸溜所は蒸溜所と店舗が併設した特殊な環境になっています。
店舗エリアでは海外の方に日本の良さを知ってもらいたいという思いも込めて伝統工芸品を取り揃えています。

ニセコ蒸溜所では1日2回年中無休で見学ツアーを予約制で行っており、ウイスキーはもちろん北海道の大自然も堪能することができます。

ウイスキーの品質

ニセコ蒸溜所は、上品で繊細なバランスの取れたジャパニーズウイスキーを目標にして製造しております。

繊細:繊細な発酵の阻害や雑味や不純物を含まないクリーンな麦汁の取得を目指しています。

上品:クリーンな麦汁を適正な酵母で発酵させることで華やかさを生み出し、木製の発酵層を使用することでクリーンで豊かな味に仕上げております。

バランス:このウォッシュを弊社の形状の蒸溜器で蒸溜し、厳選した貯蔵樽で熟成させることで原酒由来の香味と樽熟成由来の香味が最適なバランスを仕上げます。

また使用する樽は、アメリカンホワイトオークの新樽とバーボン樽、シェリー樽、ワイン樽、麦焼酎の貯蔵に使用した中古樽など多彩な樽で熟成を行っております。

こだわり

現在ウイスキーの製造を4名の製造員で行っていますが、実は全員が未経験者です。
しかし、全員が元々清酒やビール、焼酎、そして乳製品の製造経験があるバラエティに富んだ人員で製造しています。
彼らの多彩な知識と経験を融合しながら、目標とするウイスキーの製造に邁進しています。

現在ニセコ蒸溜所で唯一販売している商品は3種類のジンになります。

①Ohoro GIN(スタンダード)

②Ohoro GIN(ラベンダー)

③Ohoro GIN(ハッカ)

このオホロという言葉は、アイヌ語で“続く”という意味でこのニセコ蒸溜所で製造販売しているジンのブランド名です。
これには、ニセコ蒸溜所もオホロとともに長く愛される蒸溜所でありたいという気持ちが込められています。
こちらのスタンダードジンについては、ワールドジンアワードの2023年に出品してありがたいことにクラシック部門で国別最高金賞を受賞させていただきました!

 

長濱蒸溜所(長浜浪漫ビール株式会社)

登壇者

屋久 佑輔 氏 長浜浪漫ビール株式会社長濱蒸溜所にてウイスキーチーフブレンダーを務める。

ウイスキー造りの設備

長濱蒸溜所では、ポルトガルのホヤ社製のアランビック型蒸溜器を使って仕込んでいます。
ポットスチルは3機あり、2つの初溜釜、1つの再溜釜で蒸溜を行っています。

425kgの麦芽を粉砕して1900Lの麦汁を造った後、発酵タンクに入れてからポットスチルに落とすまでポットスチルの容量が1つあたり1000Lしか入らないため、約950Lずつに分けてもろみを落とし1回目の蒸溜を行っています。そしてつくられるのがちょうどバーボンバレル1樽分となります。熟成庫には2018年まで実際に使われていたトンネルを主に使用しています。

また廃校になった小学校でも熟成を行っており、教室の中や廊下などにウイスキーの樽を貯蔵しています。
職員室はバーボンの部屋、保健室はシェリーの部屋などと教室によって役割を変えています。

長濱蒸溜所のウイスキー

2022年の10月にシングルモルト長濱THE FIRST BATCHという商品をリリースすることができました。
こちらのウイスキーは主にバーボン樽がメインとなっていて、シェリー樽やアイラクォーター樽、ミズナラ樽の4種の樽を使ってブレンドをしています。

長濱蒸溜所の特徴

元々米蔵だった建物を改装して造ったレストランも長濱蒸溜所の特徴の1つです。
126席あるビアホールレストランでクラフトウイスキーや造りたてのビール、お酒に合う美味しいお食事などを楽しんでいただくことができます。

また私たちは、蒸溜所見学や蒸溜体験ツアーなど体験型の事業にも力を入れています。
蒸溜体験ツアーでは1泊2日で麦芽の粉砕やもろみ造り、ミドルカットを一緒に行ったり、樽詰めなどを通して、ウイスキー造りの様々な工程を実際に目で見て触れて体験することができます。

ウイスキー造りへのこだわり

私たちは一醸一樽をモットーにしています。
一醸一樽という言葉には、1つの仕込みから1つの樽に至るまで全力でウイスキーを造っていくという想いが込められています。
長濱蒸溜所のブレンダーとしてこれからも品質の高いウイスキーをリリースしていきたいと強く思っています。

 

遊佐蒸溜所(株式会社金龍)

登壇者

佐々木 雅晴 氏 株式会社金龍にて代表取締役社長を務める。

弊社は2018年の11月に稼働を開始し、今年でちょうど5年目を迎えます。
オーセンティックで、シュプリームな商品を造るということをポリシーとしてウイスキーの製造を行っています。そのため
伝統的な作り方を踏襲した製造方法を目指しており、奇をてらうのではなく基本に忠実なウイスキー造りを行っています。

遊佐蒸溜所の立地

遊佐蒸溜所のある遊佐町は山形県の北方秋田県に隣接する名峰鳥海山の麓の町であり、町のいたるところで見られる美しい湧水群は国土交通省の水の郷百選にも選ばれています。
豊富な地下水を活かして遊佐蒸溜所では150mほどの井戸を掘りここから地下水を得ています。

遊佐蒸溜所のコンセプト “TLAS(トラス)”

遊佐蒸溜所では、“TLAS”をコンセプトとしてウイスキー造りを行っています。

“Tiny”(ちいさな):遊佐蒸溜所は、クラフトらしい小さな蒸溜所で、細部までこだわりを持って造っているからこその少ない生産量を表します。

“Lovely”(かわいい/素晴らしい): 建物が白と赤の可愛いらしいデザインというだけでなく、蒸溜所のある豊かな自然環境を表しています。

“Authentic”(本物の):あくまで基本に忠実なウイスキー造りをするという宣言です。コストや手間暇を度外視して、伝統的なジャパニーズウイスキーを造ることにこだわりを持っています。

“Supreme”(最高の):遊佐蒸溜所では最高のジャパニーズウイスキーを製造販売することを目指しています。ジャパニーズウイスキーの先駆者たちが積み上げてきたものに対して敬意を払うとともに、世界に1つだけのジャパニーズウイスキーを造っていくという想いを込めています。

 

余市蒸溜所/宮城峡蒸溜所(ニッカウヰスキー株式会社/アサヒビール株式会社)

登壇者

尾崎 裕美 氏 ニッカウヰスキー株式会社にてチーフブレンダーを務める。
1988年ニッカウヰスキー株式会社入社。研究所に配属され酒類製造の技術開発に携わる。 その後、アサヒビール酒類研究所にてRTD、焼酎等の新商品開発、ニッカ栃木工場および 仙台工場の品質管理部長、ニッカ本社原料部長を歴任し、2019年ブレンダー室長、2021年 チーフブレンダーに任命される。

余市蒸溜所・宮城峡蒸溜所の立地

ウイスキー造りを行う蒸溜所を建てるにあたり、ニッカウヰスキーの創業者である竹鶴政孝は、“スコットランドの気候に近い冷涼で湿潤、そしておいしい水が豊富で澄んだ空気のある環境”という条件を満たすウイスキー造りに最適な地として、北海道の余市と仙台の宮城峡を選びました。

ニッカウヰスキー第1の蒸溜所である余市蒸溜所のある余市は北の日本海側にあり、周りを余市岳などの山々と余市川に囲まれているため海風、山風、川風と自然豊かな環境の中でウイスキーを熟成しています。一方で宮城峡蒸溜所は仙台と山形の県境にあり、広瀬川と新川という2つの清流に囲まれた緑豊かな環境の中で蒸溜を行っています。
これらの環境の違いが余市蒸溜所と宮城峡蒸溜所のウイスキーの違いを生み出す要因の1つとなっています。

ウイスキー造りへのこだわり

余市蒸溜所のポットスチルのラインアームは下向きのストレートヘッド型で、香味成分などがストレートに上がるため重厚でコクのあるニューポットになります。
さらに石炭直火蒸溜を行うことで職人が絶妙なタイミングで石炭をくべることにより、独特なコクのある味わいになるように原酒造りを行っております。

第2の蒸溜所である宮城峡蒸溜所ではバルジ型のポットスチルを使用しており、そのラインアームは上向きになっています。
こちらのポットスチルで蒸溜した原酒はフレッシュで華やかな特徴を持っています。

ニッカウヰスキーでは、その蒸溜を行う方法や環境だけでなく、モルトのタイプや発酵条件を製造工程で造り分けることで異なる原酒を造り出し、様々なタイプの原酒をブレンドすることによって深い味わいと豊かさをウイスキーに付加しています。

竹鶴ピュアモルト

竹鶴ピュアモルトは宮城峡と余市の原酒をブレンドしたニッカウヰスキーのフラッグシップのモルトウイスキーです。
2023年度のWorld Whisky Awardにおいては「ワールド・ベスト・ブレンデッドモルトウイスキー」を受賞することができました。
ノンエイジであるこの竹鶴ピュアモルトが受賞することができたことは本当に嬉しい限りです!

最後に

ニッカウヰスキーは、今後ともジャパニーズウイスキー造りにおける先輩方のブレンドの技術、そしてその志を受け継いでいきたいと考えています。
これからも伝統的なウイスキー造りを重んじながら、その時代の求める新しいウイスキー造りに引き続き挑戦していきたいと考えています。

またニッカウヰスキーは来年90周年を迎えます。皆様にご期待いただけるような美味しい商品を発売していきたいと思っていますので楽しみにお待ちください!

 

最後に

第3弾<セミナー編②>の蒸溜所情報はいかがだったでしょうか?
今回のイベントには日本全国から多くの蒸溜所が出展し、世界中から集まったウイスキーファンたちが一堂に会してジャパニーズウイスキーの歴史と魅力について深く学ぶことができました。この体験を通じてジャパニーズウイスキーの魅力に改めて気づくことができました。今後も日本のウイスキー産業がさらに発展していくことを願っています!

このような素晴らしいイベントに立ち会えたことに対して、WHISKY Magazineさんに改めて感謝申し上げます。

また、イベントレポート第1弾・第2弾では、それぞれイベント全体の概要やサントリー元チーフブレンダーの輿水精一さんと基調講演者の嶋谷幸雄さんのお話、蒸溜所の方々によるセミナーから得られた魅力的な蒸溜所情報をお伝えしています!
是非合わせてご覧ください!

併せてお読みください!

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