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- ウイスキー基礎知識
長期的に品薄状態にあるジャパニーズウイスキーですが、現在の状況では改善までの道のりは見えず、むしろ悪化していると考えられるほど深刻な状況にあります。
日本のウイスキーが評価され、需要が高まっていることは喜ばしいことです。
しかし、品薄状態が続けば値上げや終売も考えられることから、日本のウイスキー好きからすれば、できる限り早く現在の状態を解決して欲しいと願う方が多いと思います。
この記事では、ジャパニーズウイスキーが品薄である理由と、具体的な現状、品薄がいつまで続くのかを紹介します。
この記事のポイント
ジャパニーズウイスキーが品薄である理由を3つ紹介します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ジャパニーズウイスキーは、国内・海外需要の増加によって原酒が不足している状態にあります。
そのため、需要に対して供給が足りないことから、需給のバランスが崩れており、酒店・百貨店では売り切れている銘柄も増えました。
今の蒸溜所の原酒の在庫状況では、ジャパニーズウイスキーを飲みたいと考えているすべての人にウイスキーを提供することができない状況にあります。
そのため、品薄であってもどうしても欲しい人は二次市場でプレミア価格で入手するようになり価格が高騰します。
また、価格が高騰するほど、転売を考えてジャパニーズウイスキーを購入する人も出てくるため、より品薄の状態が悪化していくことになるのです。
ジャパニーズウイスキーは、日本人が想像するよりも海外で人気を集めています。
そのため、海外需要拡大の勢いは止まることがなく、より需給のバランスは崩壊していきます。
特に近年のジャパニーズウイスキーはアジア圏で注目されるようになっており、中国・韓国などでの人気の拡大に勢いがある印象です。
2010年代頃からウイスキー品評会で賞を受賞するようになり、世界で注目されるようになったジャパニーズウイスキーですが、その勢いは衰えることはありません。
日本のウイスキーが海外で評価されることは喜ばしいことですが、需要拡大の勢いが止まらない状況にあれば品薄は加速していくことでしょう。
需要が拡大したのであれば供給量を増やすべきではありますが、ウイスキーはその性質から簡単に供給量を増やせないお酒です。
蒸溜したニューメイクという状態のお酒を、樽の中で長期間熟成させることによってウイスキーは造られます。
スコッチウイスキーの基準であれば最低でも3年以上の熟成が必要であり、スタンダードな熟成年数の12年物も作るためには12年の時間が必要になるということです。
つまり、ウイスキーは需要が増えて生産量を増やしたとしても、すぐに反映されるわけではありません。
供給量をすぐに増やす手段がないことから、ジャパニーズウイスキーの品薄は一朝一夕で解決できる問題ではないのです。
ジャパニーズウイスキー品薄である具体的な現状を3つ解説します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
サントリーから販売されているウイスキーは毎年のように値上げしており、それでも品薄の状態が改善できていません。
2023年から2024年4月1日以降の値上げ状況を以下にまとめました。
商品 | 改定前 | 改定後(値上げ率) |
山崎(ノンエイジ) | 4,500円 | 7,000円(56%) |
山崎12年 | 10,000円 | 15,000円(50%) |
山崎25年 | 160,000円 | 360,000円 (125%) |
白州(ノンエイジ) | 4,500円 | 7,000円(56%) |
白州12年 | 10,000円 | 15,000円(50%) |
白州25年 | 160,000円 | 360,000円 (125%) |
響 JAPANESE HARMONY | 5,500円 | 7,500円(36%) |
響30年 | 160,000円 | 360,000円 (125%) |
知多 | 4,000円 | 6,000円(50%) |
碧Ao | 5,000円 | 6,000円(20%) |
参考:サントリー公式サイト
2023年から2024年の改訂は値上がり率が50%を超す高い値上げが多かったことから、衝撃を受けた方も多かったことでしょう。
ノンエイジを含めて50%を超えるような値上げはおこなわれたことからも、現在のジャパニーズウイスキーの品薄の深刻さがうかがえます。
ニッカウイスキーから販売されているフロム・ザ・バレルは、高いアルコール度数でボトル詰めされていることが特徴の人気のブレンデッドウイスキーです。
山崎や白州などのシングルモルトが値上がりと品薄によって飲みにくい状態が続いたことで、安価で購入可能で味わいの完成度も高いことから愛好家の間で注目されるようになりました。
しかし、日本のウイスキー業界は全体的に原酒が不足している状態にあるため、フロム・ザ・バレルに需要が集中すれば品薄になることは避けられません。
終売の噂が流れるほど、店舗などでも見かけなくなり、2024年4月には値上がりも決まりました。
フロム・ザ・バレルは現在の時点では終売の事実はありませんが、買えない場合に飲みたいおすすめ銘柄はこちらの記事で紹介しています。
驚くべきことに、サントリーの定番商品である角瓶ですら在庫が不足している状況にあります。
実は2022年頃から角瓶の需要がアジアを中心に高まっており、角瓶の品薄が始まっているようです。
韓国を中心にハイボールブームが到来したことから、インバウンドのまとめ買いも増えていることが原因と考えられています。
もちろん、日本の定番ウイスキーであるため、お近くのスーパー・コンビニエンスストアに置かれなくなるほど深刻な状況にはありません。
そのため、今すぐに角瓶を店頭で見かけなくなることはないかもしれませんが、今後もこの状況が続けばさらなる値上げは避けられないでしょう。
角瓶はリーズナブルな価格で普段飲みできることが魅力であったため、普段飲みしている方からすれば一大事ともいえます。
ジャパニーズウイスキーの品薄はいつまで続くのかについて考えられる展開を3つまとめました。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
供給を増やせない状況にあるのであれば、需要の減少以外に品薄をすぐに解決することはないといえます。
海外のハイボールブームなど、一過性である可能性がある需要は落ち着くことで減少することが考えられます。
ただし、ジャパニーズウイスキーブームの到来は2010年代頃です。
10年以上経っても状況が良くなるどころか品薄が悪化するほど、ウイスキーの需要は高まっています。
一時的に新型コロナウイルスの影響でウイスキー全体の消費量が減少に転じたこともありましたが、感染症の影響は一過性のものであり、その後は回復している状況です。
ウイスキー好きとしては複雑なところではありますが、需要が減少する形で品薄が解消される展開は、現在の時点では考えにくいといえます。
また、ウイスキーの需要の減少は次に紹介する展開で問題を解決する際に更なる問題を生むことから、長期的に考えれば自然な解決が難しいと考えられます。
現状で品薄を解消する最も理想的な展開は、日本の蒸溜所の努力によって長期的に原酒の供給不足を解決することです。
ウイスキーの生産には熟成に時間がかかることから、すぐに供給を増やすことはできませんが、10年以上にわたって生産量を増加させれば供給不足の解決も可能ではあります。
ただし、闇雲に増やしてしまうと10年後にウイスキーの需要が低下していることがあれば、供給が需要を上回り損失になります。
1980~1990年代にウイスキーブームが終わり低迷期に陥ったこともあり、蒸溜所も慎重に生産する必要があるため、私たちが想像するよりも長い時間がかかるかもしれません。
角瓶などのブレンデッドウイスキーはもちろん、本来であれば入手しやすいシングルモルトである山崎12年を今よりも気軽に飲める状況になるまで回復することを望みたいところです。
日本のウイスキーが世界的に認められた今では、12年熟成までのウイスキーであれば、今よりも飲みやすい状況に回復する可能性はありますが、18年、25年と熟成年数を経るほど解決にかかる時間は長く、そもそも解決しない可能性が高いです。
供給を増やすとしてもウイスキー市場のシェアの大部分を占めるブレンデッドウイスキーが最優先され、シングルモルトではノンエイジや12年の供給が優先されることから、時間があっても熟成年数の長い銘柄の供給を増やす余裕があるとは考えられません。
そのため、現存する長期熟成のシングルモルトは長期的に考えても貴重なウイスキーのままであり、これからも値上がりし続けていくことでしょう。
ジャパニーズウイスキーの品薄は5年以内の短期であれば継続することが考えられ、10年以上先の長期で考えてようやく蒸溜所の努力が実を結ぶ可能性もあることから、短期的に解決するものではないと考えておきましょう。
ジャパニーズウイスキーの品薄はすぐに解決が難しく、想像以上に海外でウイスキー需要が高まっていることから、数年前と比較しても深刻な状況といえます。
5年以内の短期間であれば、今よりも状況が悪化する可能性もあることから、品薄が自然に解決することを待つよりも今よりも状況が悪くなる前に気になるジャパニーズウイスキーを飲んでおくほうがいいかもしれません。
日本のウイスキーほど深刻ではないものの、海外のウイスキーもウイスキー需要の高まりから原酒が不足しており、値上げも行われています。
ウイスキーの限らず物価高が進んでおり、これからも現在の価格でウイスキーを飲み続けることは難しいかもしれませんが、「多少の値上がりであれば飲み続ける」「ほかに安くて美味しい銘柄を探す」などして、今の状況を乗り越えていきましょう。