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- ウイスキー基礎知識
ウイスキーには長らく日の目を見ない年月がありましたが、ここ数年はようやく浸透したウイスキーの魅力に品切れになる銘柄まで出てきています。
ウイスキー人気の火付け役となったのはNHK連続ドラマ『マッサン』ともいえるでしょう。
このドラマの作中でニッカウヰスキーの創業者の竹鶴政孝が「ジャパニーズウイスキー」造りのお手本としたのがスコットランドのスコッチウイスキーでした。
スコットランドは一年を通じて気候の変化のアップダウンが少ないですが、春~秋は涼しく、冬は寒いので非常にウイスキー造りに適した気候です。
日本より涼しいものの、寒暖差が小さく過ごしやすい気候のためどこか日本と似ているかもしれません。
小さな国でありながら、6つの地域で全く個性の異なるウイスキーを造っており、
全世界のウイスキーの消費量の約6割を占めていることから、ウイスキー大国と呼ばれることもあります。
今回はスコットランドの中でも広大な地域で6地域でも一番多く蒸留所が存在するハイランドのおすすめウイスキーをご紹介します。
この記事のポイント
スコットランドでは大きく分けて以下の6つの地域でスコッチウイスキーを生産しています。
スコッチウイスキーの6地域とは
スコッチウイスキーはシングルモルトといって大麦麦芽を原料とし、単一の蒸留所で生産されています。
対して、ブレンデッドウイスキーはモルトウイスキーと大麦麦芽以外の穀物などを混合したグレーンウイスキーを調合したウイスキーです。
現在、スコットランドには約110箇所程度の蒸留所が存在していますが、シングルモルトには各蒸留所の個性が強く反映されています。
また、誇り高い人種であるスコットランド人はウイスキーにも絶対の自信を持っており、
「スコッチ以外のウイスキーはウイスキーと呼べない」
とまで公言するほどです。
ハイランド地方は上部の地図上の濃い紫のエリアで、スコットランドの北側の大部分を占めます。
地図上の東側の港町ダンディーと西側のグリーノックを結んで境界線(ハイランドライン)とした北側がハイランドになります。
スペイサイド・アイランズを切り離して区分けされたのは近年のことです。
広大な敷地に比例して、スコットランドの蒸留所のうち約4割の蒸留所がハイランドに集まっており、東西南北4つの地域に分類されています。
ハイランド地方で造られるシングルモルトウイスキーをハイランドモルトと言いますが、4つのエリア内でも個性の際立った特徴が見られます。
では、エリア別のウイスキーの特徴を考察しましょう。
ではスコッチウイスキー、ハイランドモルトの魅力とおすすめの蒸留所をお伝えしていきましょう!
北ハイランドのおすすめ蒸留所
おすすめ銘柄
北ハイランドは観光地に恵まれており、美しい湖畔や岩山などが数多く存在します。
蒸留所は海岸沿いに存在している箇所が多いため、香味にも潮の香りを感じるようなユニークさがあります。
北ハイランドで有名なウイスキー蒸留所といえばグレンモーレンジィ蒸留所やオールド・プルトニー蒸留所がありますが、おすすめしたいのが小さいながらも120年以上の歴史をもつ ノックドゥー蒸留所です。
ノックドゥー(KNOCKDHU)はゲール語で「黒い丘」の意味を持ちます。
ハイランド地方で一番小さい蒸留所でポットスチル(蒸留器)も1対だけ所有しています。
(例:グレンモーレンジイは12対)
ただ、小さいながらも味には世界各国から高い評価を得ており、世界のワイン、スピリッツ、ウイスキーなどを対象に審査するインターナショナル・ワイン・アンド・スピリッツ・コンペティションでの受賞の他、過去にいくつもの賞を受賞しています。
ノックドゥーのシングルモルト、「アンノック」は日本語で「小さい丘」という意味を持ちます。
1993年以前は蒸留所の名前でもある「 ノックドゥー」という商品名でしたが、その発音が混同されることが多かったため「アンノック」に改名されました。
古くからの伝統を現在まで継承しており、100年以上伝統的な銅製のポットスチルで蒸留しています。
ウイスキーの発酵液に含まれる硫黄はウイスキーの風味を損なう原因ともいわれる物質ですが、ポットスチルで蒸留するとポットスチルの銅と硫黄が結びつきます。
この工程がウイスキーの風味を損なうことを阻止してくれるのです。
アンノックの特徴は以下の通りです。
アンノックの特徴 | |
香り | 薄い柑橘系の中に麦芽の香りを感じられる |
味わい | 甘味が飲みやすい。後味の酸味もありマーマレードジャムを想定させる |
南ハイランドのおすすめ蒸留所
おすすめ銘柄
南ハイランドはグランピアン山脈の南部にあたり、ローランド地方との境界に近い地域です。
自然豊かな土地として知られています。
今回おすすめしたいのがブラックフォート村に位置するタリバーディン蒸留所です。
蒸留所の名前であるゲール語の「タリバーディン」は「丘の上の荒地」という意味をもちます。
その自然の豊かさから良質な天然水で造られるウイスキーが魅力です。
その歴史は古くタリバーディンの前身となる建物は1488年よりビールの醸造所として始まりました。
その後、ビール業態は移転し、1947年「タリバーディン蒸留所」が建設され、1949年に初めてウイスキーの蒸留が始まります。
しかし、1993年にホワイト・アンド・マッカイに買収されたのが原因で1年後には蒸留所が閉鎖に追い込まれました。
不遇な運命に苛まれたタリバーディンですが、2003年にマイク・ビーミッシュとダグ・ロスが率いる個人投資家のグループが、ホワイト・アンド・マッカイからタリバーディンを110万ポンド買収したことによりウイスキーの生産が再開されます。
その後の2011年からはフランスの「 Picard Vins & Spiritueux」がオーナーとなりました。
波乱万丈な歴史を繰り返したタリバーディンですが、ファミリー企業よりワイン樽を譲りうけたり、前のオーナーが良質な樽を残していたりという強みがあります。
小規模な蒸留所だからこそ、手作業で丁寧な蒸留を続けているタリバーディンですが、一方で設備投資も積極的に行っており、将来が楽しみな蒸留所です。
設備投資の一つとして、2004年の復活に伴い、蒸留所を一般公開したりビジターセンターのオープンもありました。
ビジターセンターでは、産地のお土産品を取り扱う他、飲食店等も併設されており観光スポットとして注目を集めています。
タリバーディンの特徴は以下の通りです。
タリバーディンの特徴 | |
香り | サクランボやレーズン、バニラ |
味わい | 白ワインのようなフルーティでソフトな甘味 |
西ハイランドのおすすめ蒸留所
おすすめ銘柄
西ハイランドで現在稼働している蒸溜所はオーバンとベンネヴィスの2か所しかありません。
その中でもおすすめの蒸留所はベンネヴィス蒸留所です。
イギリスで一番高い山である標高1,343mのベンネヴィス山は毎年多くの登山客でにぎわっていますが、この山のふもとに位置しているのが「ベンネヴィス蒸留所」です。
ベンネヴィスはスコットランドの認可を受けた蒸留所としては一番古い歴史をもちます。
またベンネヴィスは1825年に創始者ジョン・マクドナルドにより創業されます。
ジョンは193㎝の大男であったこともあり、「スコッチの巨人」とも呼ばれていました。
1989年からニッカウヰスキーが所有し製造を行い、販売をアサヒビールが行っています。
ベンネヴィスは以前はブレンデッドウイスキーしか造っていませんでしたが、ニッカウヰスキーが所有権を持ってからはシングルモルトを製造するようになりました。
ニッカウイスキーがベンネヴィスを買収する前は蒸留所は休業していましたが、買収後に再稼働され、現地の人々は大変喜びました。
実は現地の人々の反発おそれてダミー会社を使った買収でしたが、ふたを開けてみると、地元が活性化することをむしろ歓迎されたというわけです。
中心的な指揮をとったのが、ニッカウヰスキーの創始者である竹鶴政孝の甥である竹鶴威氏です。
竹鶴威氏は日本のウイスキーの世界レベルに育てた立役者とも言うべき人物だと言われています。
ベンネヴィス山の清らかな雪解け水とニッカウヰスキーが培ってきた高い技術は確かなものです。
ベンネヴィスの特徴は以下の通りです。
ベンネヴィスの特徴 | |
香り | りんご、洋なし、オレンジマーマレードのような甘酸っぱいフルーティーさ |
味わい | 香り高く、バニラのようなまろやかさ |
東ハイランドのおすすめ蒸留所
おすすめ銘柄
東ハイランドの蒸留所は比較的海沿いの立地が多いのが特徴です。
東ハイランドは、人気のある蒸留所だとシェリー樽熟成と低価格ウイスキー、「ティーチャーズ」のキーモルトとして知られるグレンドロナックや、サントリーがオーナーであるアードモアなどが有名です。
ティーチャーズとは?種類や味わい、おすすめの飲み方
今回おすすめしたい蒸留所であるグレンギリー蒸留所です。
伝統ある歴史がありながら、独自の製法を編み出し、個性を打ち出した類まれな蒸留所です。
1797年(一説には1785年)にトーマスシンプソンにより創業されました。
アバディーンの北西にあるオールド・メルドラム村に位置しており、ハイランドでは最古の蒸留所の一つとされています。
「グレンギリー」という名前は「ギリーの谷」という意味になります。
ギリーの谷の周辺にはグレンギリー以外にもいくつかの蒸留所が存在していましたが、グレンギリーだけが生き残りました。
地域周辺が大麦の産地だったこともあり、ウイスキー作りも行われ始めたのではないかと言われています。
他の蒸留所と同様に買収が繰り返され、波乱の歴史をたどりましたが、現在はサントリーが所有権を持っています。
シングルモルトを造っていますが、長い間どちらかというとブレンデッドウイスキーの製造に重点をおいていたためにシングルモルトは浸透していませんでした。
グレンギリー特有のシングルモルトの個性を出すことができずに苦難の日々が続きましたが、1982年にポットスチルの加熱に北海油田から産出する天然ガスを使用しました。
これは、スコットランドでは初の試みであり、大きく生産を伸ばしました。
この製法により、スモーク臭のしない華やかな香りを持ったウイスキーを造ることに成功したのです。
グレンギリーの特徴は以下の通りです。
グレンギリーの特徴 | |
香り | ほのかなシェリーの香り |
味わい | アロマのようにフローラルながら酸味やスパイシーさもバランスよく感じられる味わい |
今回ご紹介したハイランドモルトの蒸留所は古い歴史とともに波乱万丈な道のりを歩んできました。
小規模な蒸留所もありますが、いづれも安定した基盤を持っています。
伝統的な製法にこだわりながらも将来へ向けた設備投資を日々行い妥協を許さない姿勢を持つ蒸留所を選びました。
今後が非常に楽しみですね!