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ウイスキーにとっての常温とは何度?適した保存場所や方法とは?

2021.09.22 / 最終更新日:2024.10.29

ウイスキーには賞味期限の記載がありません。アルコール度数が高く腐らないため、基本的に常温保存でよいといわれています。しかし、四季がはっきりしている日本では、夏場と冬場とでは気温に差があるため、何度までが許容範囲なのか気になっている人もいるのではないでしょうか。

普段エアコンで温度管理している部屋でも、外出中などは大きな気温変化があるはずです。この記事では、常温保存という場合の常温とは何度なのかを説明し、ウイスキーに適した保存場所や保存方法について解説します。

この記事のポイント

  • ウイスキーの保存における常温と何度なのかを解説
  • ウイスキーと醸造酒の保存のポイントを紹介

常温保存の常温とは何度のこと?

常温保存という言葉は、よく耳にするわりに、何度で保存すればいいのかを正確に答えられるという人はあまりいないのではないでしょうか。常温という言葉を辞書で調べると、「温めたり冷やしたりしない自然のままの温度」で「化学においては摂氏15度」という説明と、「特定の場所や物の定温」で「1年間の平均の温度」という説明がありました。

食品衛生法の通則によると常温は15~25度、JIS規格では20度プラスマイナス15度、すなわち5~35度だと規定されています。しかし、厚生労働省が「常温保存可能品に関する運用上の注意」の中で説明している常温は、外気温を越えない温度とかなり抽象的です。

ウイスキーを保存するうえでの常温は何度なのかを知るために、数多くのウイスキーの販売元となっているサントリーの見解を調べてみました。Q&Aの回答を見ると、夏の一般的な室内温度は25~30度、それ以外の季節の室温は15~20度と考えると述べています。

食品メーカーは、この温度を基準に常温保存可能食品かどうかを判断しているというのです。ウイスキーにとっての理想の温度は10~15度、湿度は60~70%なので、メーカーの考える常温の範囲に収まっています。

常温保存と記載されている食品は、基本的に容器の中は無菌状態です。瓶詰や缶詰など密封状態で、外気に触れない状態になっています。ですから、未開封あれば、温度さえ想定範囲に保てば品質を保てるわけです。賞味期限は、未開封を前提に記載されるものですから、賞味期限の記載のないものは、密封の状態を維持できればいつまでも品質を保てるということになります

ところが、たとえ開封前であっても、前提条件が揃わなくなれば未開封の品質を保つのは困難です。容器に隙間ができて空気が入り込んだり、想定した温度を大幅に超えてしまったりすると、香りや色、味わいなどが劣化してしまいます。

「常温保存」とは、単に冷蔵庫に保存しなくてもよいということを意味しているわけではありません。未開封の状態を保って、想定した温度の範囲内で保存することを意味しています

ウイスキーも開封後は冷蔵保存が必要?

ウイスキーは蒸留酒でアルコール度数も40度前後と高めなので、基本的に腐ることはありません。しかし、風味や香りが損なわれるという意味での劣化はあります。ウイスキーが苦手なのは、空気に触れること、直射日光、温度や湿度の変化です。

ですから、開封後はウイスキーが苦手とする条件を避けて保存することが必要になります。空気に触れるのを避けるためには、しっかり蓋をして密封に近い状態にしなければなりません。直射日光を避けるためには、窓の近くや日差しが差し込む場所には置かないようにします。温度や湿度の変化が少ない場所を保管場所に選ぶことも大切です

日差しが差し込まない場所で、なおかつ温度や湿度の変化が少ない場所のことを一般的に冷暗所と呼びます。未開封、開封後を問わず、ウイスキーの保存場所として適しているのは冷暗所です。冷暗所という文字を見て、冷たくて暗い場所なら冷蔵庫がベストだろうと思う人もいるようですが、それは間違っています

というのも、冷暗所は決して温度が低い場所ではないからです。冷暗所に保存するように指定されているものの中には、かえって冷蔵庫には保存しない方がよいものもあります。その1つがウイスキーです。

まず、冷蔵庫内の温度はウイスキーの保存場所としては低すぎます。理想の温度が10~15度なのに、冷蔵庫は、冷蔵室で約0~7度、野菜室で約4~9度です。しかも、開封後のウイスキーを入れる可能性があるドアポケット部分は、開け閉めの旅に温度が激しく変動します

また、冷蔵庫には作り置きのおかずや漬物など、匂いの強いものが数多く保存されているため、匂い移りが心配です。ウイスキーは香りを楽しむお酒なので、冷蔵庫内で食材の強い匂いが移ってしまうようでは困ります

冷蔵庫でなければ、冷暗所とはどこなのでしょうか。家の中にそのような場所ないという人もいることでしょう。しかし、冷暗所はウイスキーにとって暗い場所であればよく、周りにいる人間が暗いと感じる場所でなくてもかまいません。ボトルに直射日光が当たらなければよいので、箱に入れるだけでも冷暗所をつくれます。カーテンを付けたり布で覆ったりすれば、棚に並べて保管することも可能です。アルミホイルを巻いても直射日光を避けることができます。

夏場は、できるだけ涼しい場所を探して保管するようにしましょう。日常的にエアコンをつける部屋なら涼しくてよいでしょう。しかし、エアコンをつけているときと付けていない時の温度変化が大きいようなら、他の場所を探す必要があります。激しい温度変化は劣化を進める原因になるからです。多少温度が高めでも、階段下や廊下など温度変化の少ない場所に保管するようにしましょう

常温保存でウイスキーの劣化を防ぐには

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基本的に腐らないウイスキーが劣化するとしたら、酸化とアルコールの蒸発が主な原因になります。開封後は空気に触れ、アルコールや香りなどの揮発成分も蒸発しやすい状態になるので、開封の瞬間から劣化が進むと考えましょう。開封したら、蓋をしっかり閉めても、わずかな隙間から空気が入り込む可能性があります

おいしいうちに飲み切るのが一番ですが、アルコール度数が高いウイスキーを一晩で飲み切るというのはあまり現実的ではありません。また、やっと手に入れた高級ウイスキーは少しずつ味わいたいところでしょう。

そこで利用したいのが、パラフィルムです。空気を遮断する働きをする薄いフィルムで、密着性があります。本来は医療や実験で用いられるフィルムですが、バーなど飲食店ではウイスキーの保存用にもよく使われるアイテムです。とくにコルク栓のウイスキーの場合、コルクが劣化することによって酸化しやすくなります。

コルクと瓶の間に隙間ができてしまうからです。コルク栓をした上からパラフィルムを巻き付けると、それだけで密封状態をつくれます。フィルムさえ用意すれば、特別な道具などもいりません。フィルム自体それほど値段の高いものではないので、簡単に使えるかどうか気軽に試せます。未開封のものも開封後のものも同様の手順で酸化を防げるので安心です

ボトル内のウイスキーを空気に触れさせないという点では、プライベートプリザーブを使ってもよいでしょう。プライベートプリザーブとは、ワインを保存する際に、瓶の中に吹き入れるガスのことです。窒素や炭酸などの不活性ガスを注入して、ボトル内の液面が空気に直接触れないようにします

海外でつくられプライベープリザーブの中には、日本には承認されていないガスを含むものもあるので、注意が必要です。プライベートプリザーブを注入したうえで、パラフィルムで密封すれば、更に効果的でしょう。

ワインセラーで適した保存環境をつくることもおすすめ

四季の温度変化が大きい日本では、室内にウイスキーの保存に適した常温スペースを見つけるのが難しいといえます。そこでお勧めなのがワインセラーの利用です。

ワインセラーは、蒸留酒であるウイスキーよりも保存環境の影響を受けやすい、醸造酒のワインを保管できるように作られています。温度、湿度を一定に保つことができ、直射日光も避けられるので、室内が暑くなりやすい夏場でも安心して保存できます。

ただし、ワインセラーにはさまざまな冷却方式のものがあるので、外気温の影響を受けない方式のものを選ぶことが大切です。ペルチェ式は、本体は格安で手に入るものの、ペルチェ素子を使って外気温との温度差で冷却します。外気温の影響を受けやすいうえに電気代もかかるので、冷蔵庫と同じコンプレッサー式のワインセラーを選ぶことが重要です。

家庭用のワインセラーは横置きのものが多いため、ウイスキーの保存には向かないと考える人もいるかもしれません。横置きで懸念されるのは、劣化したコルク栓から中身が漏れ出すことです。パラフィルムを栓の周りに巻き付けてから保存すれば、特に問題になることはないでしょう

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ウイスキーの保存に適切なワインセラーについて詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。

ウイスキーの保存にはワインセラーがおすすめ! 理由と選び方を紹介

醸造酒を保管する場合は?

ここまでウイスキーの保管方法について見てきましたが、他のお酒はどのように保管したらよいのでしょうか。ワインや日本酒などの醸造酒は、蒸留酒のウイスキーよりも保管条件が厳しそうです。ここからは醸造酒の保管方法について、種類別に見ていきましょう。

ワインの場合

ワインの保管に適した温度は12~16度です。ウイスキー同様温度変化はできるだけ少ない場所に保管するのが望ましいといえます。湿度は70~80%が適当ですが、これは適温時の湿度です。光が当たらず、振動や匂いの影響を受けない場所を選ぶという点はウイスキーと共通しています。

一般的なワインの場合は、瓶を寝かせて保管するのが大事なポイントです。それはコルクを乾燥させないためです。中身のワインが酸化しやすいので、コルクを劣化させないために、内部をワインに触れさせておきます。一方、シャンパンを初めとする発泡性のワインは、瓶を寝かせてはいけません

発泡性のワインとコルクが長時間触れ合うと、コルクが縮んで隙間ができ、炭酸が抜けやすくなってしまいます。温度が10~15度、なおかつ湿度が高めの場所に縦置きしましょう。振動の影響も受けやすいので、保管場所の振動に注意が必要です。

ただし、日常的に飲むワインであればそれほど慎重に保管環境を考えなくても構いません。ケース単位で購入した場合にはケースごと横置きします。光の当たらない場所で、12~25度くらいの常温であれば、振動はそれほど気にしなくても大丈夫でしょう。しかし、日常的に飲むワインなので、数か月以内に飲み切る前提です。長期保管するなら通常の条件で保管しましょう

大切なワインなどを長期保管する場合は、ワインセラーを使用します。ワインセラーがない場合は、瓶を新聞紙で包んでその上から霧吹きし、発泡スチロールケースに入れ、ガムテープなどで密封する方法がおすすめです。

その状態で温度変化の少ない場所に置いておくとある程度は持たせることができます。ワインも冷蔵庫は保管場所として向いていないので入れないようにしましょう。冷やして飲む場合も、数時間前に入れて冷やす程度にします。

開封後のワインは劣化が早いので、再びコルクで栓をするかストッパーを利用しても早めに飲み切るようにします。保管のポイントは立てて瓶を保管することです。中身が減ったワインは横に倒すことで空気に触れる割合が増えてしまいます。白ワインロゼワインスパークリングワインは冷蔵庫に入れて保存しますが、赤ワインは冷蔵庫に入れず、常温保存です。

ビールの場合

ビールは瓶と缶、ろ過や加熱処理の有無によって適した保管環境に違いがあります。ラベルや缶表面の記載を確認しましょう。要冷蔵と書かれているものは冷蔵庫に、それ以外の場合は冷暗所に保管します。国内メーカーのものは賞味期限が9カ月です。

ビールには賞味期限の記載があるのでそれまでに飲み切るようにしましょう。缶ビールは光の影響を受けないと思いがちですが、アルミ缶なので日光が当たると熱伝導率がよいため温度が上がってしまいます。直射日光に当てないように気を付けましょう

日本酒の場合

日本酒は温度変化に弱いので、20度前後で湿度70~80%の冷暗所で保管します。光や振動、匂いなども避けるのが基本です。火を一度も入れていない生酒は、瓶の中でも酵母が生きています。常温で保存すると酵母が活発に活動して劣化してしまうので、保管場所は冷蔵庫です。

未開封でも1~2カ月で飲み切るようにします。生貯蔵酒は火入れを1回していますが、2回火入れする通常のものよりは品質が変化しやすい状態です。冷蔵庫に保存する場合でも2~3カ月で飲み切りましょう。

加熱処理している一般の日本酒は、湿気の少ない冷暗所で保管します。光や高温を避けるようにすれば、1年くらいはおいしく飲めます。保存方法については、ラベルに記載がないか確認してみると良いでしょう。

ウイスキーの保存に適した環境を用意しよう

ウイスキーは、酸化を防げば開封後も常温で保存できるお酒です。おいしく最後まで飲み切れるように、ウイスキーに適した環境で保存するようにしましょう。冷蔵保存はウイスキーには不向きです。

購入時にボトルが入っていた箱は捨てずにとっておくと、直射日光を防ぐのに使えます。温度変化が少ない場所を保存場所として確保してから開封すれば安心です。

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