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- ウイスキー基礎知識
ウイスキーはアルコール度数が高いこともあり、開封したその日のうちに全部飲み切ってしまうという人は少ないのではないでしょうか。開封すれば時間の経過とともに品質は劣化していきます。また、未開封でも保管状況が悪ければ、持ち味である香りや味わいが損なわれてしまうでしょう。
せっかく手に入れた貴重な1本が、保管の失敗によりおいしく飲めなくなってしまうようでは悔やんでも悔やみきれません。この記事では、ウイスキーのおいしさを保ちながら保管する方法を紹介します。
この記事のポイント
ウイスキーの品質を劣化させずに保管するためには、注意しなければならないことが4つあります。1つめは保管に適した温度と湿度を維持することです。はっきりした四季のある日本では、ウイスキーの保存に適した環境を用意することは決して簡単なことではありません。ウイスキーにとっての適当な温度は10~15℃、湿度60~70%だからです。
冷暗所に保管というと、冷蔵庫に入れておけばよいと思うかもしれません。しかし、冷蔵庫の温度は約4℃、野菜室でも10℃前後です。ウイスキーを保管するには温度が低すぎます。しかも、冷蔵庫に入れておくと乾燥もしやすい点も要注意です。
更に、ときどき発生する微振動が香り分子に影響を与える可能性もあります。ドアポケットに保管するのは論外です。開け閉めのたびに振動が起こるうえに、温度変化も大きいためウイスキーの劣化を早めます。とくにヴィンテージもののウイスキーは、冷蔵庫保管を避けるべきでしょう。屋内で最も温度が低く安定している場所が保管に適しています。
2つめは、光に触れないようにすることです。ウイスキーのボトルはワインボトルなどと異なり、中身の色がわかるように透明なものが多く、容易に光を通してしまいます。とくに太陽光に含まれる紫外線に触れると、ウイスキーの状態は著しく劣化してしまうので注意が必要です。
直射日光に触れやすい窓の近くに置くことは避けなければなりません。直射日光に当たらない室内でも、照明が明るい場所に保管するのもやめておきましょう。照明が当たりやすい場所に保管する場合は、何らかの形で光を遮断する工夫が必要です。
3つめは、空気に触れさせないようにすることです。飲む際にわざと空気に触れさせて、刻一刻と変化するさまを楽しむという飲み方があるほど、香りや味わいが変化してしまいます。ウイスキーの場合、未開封であれば空気に触れる心配がないため、基本的に賞味期限はないといってよいでしょう。
樽に貯蔵しているのとは異なり、瓶詰めした後は、熟成が進むこともありません。しかし、開封後は、中身の量が減った分だけ瓶の中に空気が入る隙間ができ、空気に触れやすくなります。酸化すると本来の香りや味が変化してしまうので、空気に触れさせることはできる限り避けなければなりません。
そして4つめは、香りの強いものの近くに置かないことです。近くに香りの強いものがある場所で長期保存した場合、その香りがウイスキーに移ってしまいます。ウイスキーは熟成の際に樽から移った微妙な香りさえも楽しむお酒です。他の強い香りが移ってしまったのでは、せっかくの持ち味が損なわれてしまいます。冷暗所として納戸やクローゼットを選ぶ場合も注意が必要です。近くに香りの強い石鹸やポプリ、香水、防虫剤がないか確認しましょう。
一口にワインセラーといっても冷却方式が大きく3つに分けられます。
機能に違いがあるので、購入する際には適したものを選ぶようにしましょう。それぞれの方式の特徴は以下の通りです。
ペルチェ素子を使用したワインセラーは、振動が少なく価格も安めです。しかし、冷却効果はあまり高くありません。外気温との差を何度に保つかという温度制御をするため、年間の気温変化が大きい日本での長期保管には向いていないのです。
とくに夏場の密閉された室内では、外気温が上昇するとともに庫内の温度も上がってしまいます。冷却効果が低いにも関わらず使用する電力量は多いので、コスト面でもデメリットが大きいでしょう。せっかくワインセラーに保管しても、激しく温度が変化するようでは本末転倒です。あまりおすすめできません。
熱吸収型は、アンモニアの気化熱を利用した冷却方法です。振動が少ない点はメリットですが、冷却能力は後で紹介するコンプレッサー型に劣ります。夏場に室温が上昇すると、それに伴って庫内の温度が上がってしまうことがあるので、注意が必要です。また、機能が限られている者や温度調節ができないものもあるので、購入の際には確認しましょう。
コンプレッサー型は、冷蔵庫と同じ方式で庫内を冷やすタイプです。冷却能力が高いので、酷暑の夏場でも庫内の温度を一定に保てます。デメリットを挙げるとしたら、本体の重量が重いということと、価格が他の形式のワインセラーよりも高いという点です。
季節によって外の気温が変化しても、ウイスキーの保管に適した温度や湿度を保てるという点では、コンプレッサー型がよいといえます。外気温の変化に左右されやすいペルチェ式や熱吸収型のワインセラーを選ぶ場合は、年間を通して温度変化の少ない場所を選んで設置するようにしましょう。
温度や湿度はウイスキーの保管に適した場所が見つかったという場合、光を遮断することができれば保管しやすくなります。たとえば、購入したときの箱に入れて保管するというのもひとつの方法です。高級ウイスキーが通常厚手の紙箱や木箱などに入れられた状態で売られているのは、光や匂いなどを遮断するためでもあります。
ですから、メーカーが最初に入れて提供した箱が、ウイスキーの保管に適していることは間違いありません。サイズも瓶とピッタリ合うので、周りのものと当たったり倒れたりしたときに衝撃を和らげる役割もします。箱をすぐに処分してしまう人もいますが、保管するときのことも考えて、しばらくは手元に取っておくようにするとよいでしょう。
もちろん、箱を処分してしまった場合は、サイズが合う別の箱を用意して保管しても構いません。その際は、できるだけ厚手の紙でできた箱を用意するのがおすすめです。
しかし、いくら箱に入れても、まったく光の影響を受けないというわけではありません。紙が薄かったり隙間が合ったりすれば、光の影響を受けてしまいます。わずかな光も通さないようにしたいというのであれば、瓶の周りにアルミホイルやカットしたアルミシートを巻き付けてもよいでしょう。
アルミホイルやアルミシートが光を反射させるため、中身が光の影響を受けなくて済みます。箱に入れて保管する際も、箱の内側にアルミホイルを貼り付けておくと、光をより一層遮断できて安心です。アルミホイルやシートは巻き付けた時に、隙間ができないようにしっかり巻き付けます。
隙間から光が入ってしまったのでは、せっかく巻き付けた意味がありません。見た目はあまりよくありませんが、中身をよい状態に保つための工夫です。隙間ができないように多めに巻いておきましょう。
開封後のウイスキーは、瓶の中に空間ができ、空気に触れやすくなっています。空気に触れる面積が増えると、ウイスキー本来の香りが抜けやすく、味わいや余韻が損なわれるので、空気に触れる面を小さくする保管方法を選びたいところです。たとえば、サイズの小さな瓶に移し替えて保管すると、空気の入る隙間を減らすことになるため、空気との接触を防げます。
もし、手元にプライベート・プリザーブがあるなら、それを利用してもよいでしょう。プライベート・プリザーブとは、ワインを保存するときに用いるガスのことです。瓶の中にガスを吹き込み、栓をすることで、酸素と液面が触れるのを防ぎます。瓶の中の隙間のサイズに合わせてガスを吹き込めばよいので、瓶の形状や残りの量などを気にせず使えて便利です。使い方も難しくないので、手元にないという人でも、ウイスキー保存用に購入しておくとよいでしょう。
ボトルとキャップの間の隙間が気になる場合は、パラフィルムを利用するという方法もあります。パラフィルムは、バーやスナックなどお酒を扱う店舗で利用されている保存資材です。ボトル栓の周りにフィルムを置き、引き伸ばしながら巻き付けるだけで、しっかり密閉させられます。
高級なヴィンテージワインやウイスキーの保存にもよく使われるもので、パラフィルムを巻き付けて保管していることがきちんと品質管理をしている店の指標になるほどです。パラフィルムがなぜウイスキーの保管に向いているのか、理由は4つ挙げられます。
1つめは気密性に優れたフィルムでありながら、伸縮性に富んでいるという点です。いくら空気を遮断できても、伸びが悪ければうまく栓の周りに巻き付けられません。隙間ができてしまったのでは、フィルム自体の気密性を活かすことができないので、伸縮性があるという点はとても重要なのです。瓶や栓の形状に捉われずに使用できるので、コルクのような劣化しやすい栓の上から巻き付けるのにも適しています。
2つめはフィルム自体が無臭で防水性があるという点です。ワインセラーなどに横に向けて保管する際には、防水性のあるフィルムを巻くことで液漏れを防げます。しかし、いくら防水性が高くても、フィルム自体に匂いがあったのでは、ウイスキーにその匂いが移ってしまうため使えません。ウイスキーは香りも楽しむお酒なので、フィルムが無臭であるという点はとても大事なポイントであるといえます。
3つめは無色半透明という点です。フィルムを巻き付けたまま中の状態を確認できるので、万が一難解トラブルが起こってもすぐにわかります。
そして4つめは、毒性がないという点です。飲み物の栓を覆うように巻き付けるのですから、人体に害のあるものではこまります。また、保管中に周りの食品や薬品に反応して毒性のあるガスなどを発生させる心配もありません。瓶に巻き付けて使用しますが、接着性はないのでフィルムの性質が途中で変化することもなく安心です。
パラフィルムは、ホームセンターや業務用資材を扱うECサイトなどで購入できます。酒類を扱う店舗で多く使われていますが、元々は実験・研究開発用品として扱われていたものです。飲食店の資材を扱うコーナーで見つからない場合は、産業用の研究開発要員や実験用品のコーナーを探してみると良いでしょう。
ウイスキーに賞味期限はないものの、温度変化や光、空気などの影響を受ければ劣化します。せっかくヴィンテージ物や希少価値の高い銘柄を手に入れても、開栓後何もせずに置いておいたのでは、一口目と同じ味や香りをもう一度味わうことはできないのです。少しでも劣化を防いで、長く本来のおいしさを楽しめるようにしましょう。
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