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- ウイスキー基礎知識
ウイスキーの味や香りを表現する際に使われる言葉には独特なものがあります。言葉選びが特殊すぎて、どのような味や香りを表現しているのか、初心者ではイメージしにくいものも少なくありません。
しかし、意味が解り、聞きなれてくると、特殊に思えていた言葉選びが言い得て妙であったことに気付きます。この記事では、ウイスキーの味や香りを表現する言葉にはどのようなものがあり、どのような意味で使われているのかを解説します。
この記事のポイント
ウイスキーのテイスティングでは、単に味覚として感じられる味だけでなく、香りや口当たり、余韻なども含めてフレーバーといいます。日本語で言い換えるなら、風味や香味です。口に含んだときに、おいしいかおいしくないかを判断するのは、舌で感じた味だけではありません。
舌で感じる味はよくても、鼻から抜ける香りが心地よくない場合は、おいしくないと感じてしまいます。ウイスキーを味わう際は、最初に感じる香りから、口に含んだときの味わい、口当たり、余韻までを含めが表現になるのが特徴です。
フレーバーを表現する言葉には、一般の人には理解し得ないような独特なものがあります。ウイスキーに限らず、コーヒーやワインなどのテイスティングにおいても、不思議な表現がされているのを見聞きしたことがあるのではないでしょうか。食べ物について表現しているとは思えないような表現に出くわすことがあります。
それは、ブレンダーや評論家など、テイスティングのプロが表現の仕方を学ぶ際に、フレーバーホイールという図表を勉強するからです。色彩におけるカラーチャートのようなものを思い浮かべるとわかりやすいかもしれません。
ウイスキーで用いるフレーバーホイールは、全体を8つの様相に分けています。真上から反時計回りに、
の順番に並びます。それぞれの様相に対して、更に4~5つの系統が当てはめられ、更にそれらに対する表現が細かく決められているのです。
ウイスキーのテイスティング等で用いられる独特な表現を理解するためには、フレーバーホイールについて知っておく必要があります。8つに分けられた様相それぞれについて、具体的にどのような表現が用いられるか見ていきましょう。
WINEYは、重めのフレーバーからオイル、チョコレート、ナッツ、シェリーに分類されます。オイルの表現に使われるのは亜麻仁油やアーモンドオイルのような食用油だけではありません。ロウソクや日焼けオイルといった言葉もフレーバーを表す言葉として存在します。
チョコレート系のフレーバーの表現は、チョコレートやココアといったイメージしやすいものの他にクリームやバターがあり、それらはオイルとチョコレートの中間に位置することがわかります。
ナッツ系の表現は比較的わかりやすく、クルミ、ヘーゼルナッツ、アーモンド、プラリーヌの4つです。どの種類のナッツに近いかを考えればよいので、初心者でも感じ取りやすいでしょう。WINEYのうち、もっともWOODYに近い位置にあるのがシェリー系です。シェリー系の表現には、シャルドネ、貴腐ワイン、シェリー、マデイラ、ポートといったワインの種類が用いられます。これらは、いずれも熟成に用いた樽に由来するものです。
WOODYは、焙煎系、バニラ系、古木系、新木系の4系統に分けられます。焙煎系は焦げた感じを表す表現です。トースト、コーヒーの出し殻、茴香(フェンネル)、アニシード、甘草などが用いられます。バニラ系フレーバーの表現には、カスタード、プリン、メレンゲといった甘い香りのお菓子の他に、海綿が含まれています。海綿といわれてもどのようなフレーバーなのか想像が付きにくいところですが、バニラ系に含まれていることがわかれば、何となくイメージできるでしょう。
古木系の表現には、かび臭さや地下室といった、木とは関係なく古びたものを表す表現も含まれます。段ボール、鉛筆、インクといった文具系や、コルク、防虫剤に用いる樟脳なども古木系の表現です。それに対して新木系は、お香に使われる白檀や、生姜、胡椒、ナツメグ、オールスパイスといった香辛料が表現に用いられます。樹脂も新木系のフレーバーに対して使われる表現です。
SULPHURYは「硫黄のような」という意味です。この様相は植物系、石炭ガス系、ゴム系、砂地系の4つに分かれます。表現としては、あまり飲食物としてはよいイメージにつながらないようなものばかりです。植物系は、キャベツの青汁やカブといったまだ口に入れてもよさそうな表現がありますが、河口付近の汽水や沼気となると、あまりよい印象にはつながりません。
石炭ガス系には、炭化物や花火の燃えさし、マッチ箱といったイメージしやすいものの他に、コルダイトという表現があります。これは、ニトロセルロースとニトログリセリンから作られた無煙火薬です。火薬であることがわかれば、イメージしやすくなるでしょう。
ゴム系には、消しゴムや新品のタイヤといったイメージしやすいもののほかに、フェノール樹脂、焼け焦げたゴムといった表現もあります。砂地系に分類されるのは、晴れた日の砂浜という表現以外は、なぜか洗濯物、洗濯用のり、リンネルなど衣服をイメージさせる表現です。
FEINTYは、ウイスキーのフレーバーホイールの中でもとくに独特な表現が多い様相です。ハチミツ系、皮革系、タバコ系、汗臭系、プラスチック系の5つの系統に分類されます。ハチミツ系にハチミツや蜜蝋が含まれるのはわかりやすいところですが、ウイスキーのフレーバーとして、ハチミツとハチミツ酒の違いを感じ分けるのは難しいところです。また、研磨剤という表現が蜂蜜系に含まれるのも、日本人には理解しがたいところでしょう。
皮革系には革張りの家具、新品の牛皮製品という表現の他に、粗挽き粉や全粒粉ビスケットが含まれます。粗挽き粉や全粒粉ビスケットがCEREALに含まれず、正反対に位置するFEINTYの表現になっている点は興味深いところです。タバコ系の表現には、タバコやタバコの灰の他に、乾燥茶葉や紅茶という表現が含まれます。タバコと紅茶が同じ分類になっているという点も不思議です。
汗臭系には、チーズやイーストといった独特な香りを持つもののほかに、古い運動靴や靴クリームといった食べ物のフレーバーに使うは思えないものもあります。プラスチック系は、さらに人工的であまり体によさそうな表現ではありません。ビニール合羽やポリバケツ、燃えたプラスチックと表現されます。
麦芽を乾燥させるときに燃やすピート(泥炭)に由来する風味に関する表現です。薬品系、スモーク系、魚介の燻製系、コケ系の4つの系統に分けられます。薬品としては、ヨード、タール、ディーゼル油の他に、病院や衛生用品という表現があるのが特徴的です。また、海藻のような香りという表現もなぜかの薬品系に含まれます。クレオソートという表現は日本人にはあまりなじみがないかもしれません。クレオソートは、コールタールを蒸留してできた液体がクレオソートです。
スモーク系は、お香、泥炭の煙、焚き火、燃えさしといったストレートに煙をイメージする表現の他に、正山小種紅茶といった表現もあります。正山小種紅茶は松葉で燻した中国福建省のフレーバーティーで、炭火で焙煎するウーロン茶に近い香りです。
魚介の燻製系は、貝の干物やスモークした牡蠣、スモークサーモン、アンチョビなどといった表現になります。日本人にもイメージしやすいフレーバーです。コケ系は、本当に苔の香りを指すというよりも、苔が生えているような場所の香りを指します。苔清水や樺の木、芝土、ヤチヤナギの他に、麻縄や漁網もこの系統の表現です。
植物系の香りは芳香系、温室系、草葉系、干草系の4つに分けられます。芳香系は、カーネーション、ココナッツ、ラベンダーといった本物の植物由来の香りだけではありません。香水、洗濯用柔軟剤、理髪店なども芳香系の表現です。温室系には、ゼラニウムの他に青いトマトやパルマバイオレットといった表現があります。パルマバイオレットは香りが強い八重咲きのスミレです。花屋の香りも温室系の表現に含まれます。
草葉系は、葉っぱや若木、もみの木、松の実、えんどう豆のさや、芝刈りなどイメージしやすい表現ばかりです。干草系は干し草そのものだけでなく、ハーブ系の香り全般が含まれます。日本人になじみのないものを挙げるなら、ヒースの花という表現です。北ヨーロッパに自生するツツジ科の花で、エリカという名前で呼ばれることもあります。
果実の香りといっても複雑で、クエン酸系、非加熱の果物系、加熱した果物系、ドライフルーツ系、溶剤系の5つの系統に分けられます。クエン酸系は甘酸っぱいフルーツの香りです。オレンジ、レモン、柑橘類の皮、キウイなどがクエン酸系のフルーツにあたります。
非加熱の果物系はリンゴ、洋ナシ、イチゴ、モモ、アンズなどフレッシュなフルーツです。リンゴは赤リンゴと青リンゴに分けて表現されることも少なくありません。青リンゴの方がよりフレッシュな香りの表現になります。その他、フルーツキャンディーの香りも非加熱の果物系です。
加熱した果物系は、焼きリンゴやマーマレード、ジャムといった実際に火を通した果物の他に、砂糖漬けの果物や大麦糖も含まれます。ドライフルーツ系はレーズンやプルーン、イチジク、アンズなどです。柑橘類の皮の砂糖漬けは、加熱した果物ではなく、ドライフルーツ系の表現になります。溶剤系のフレーバーに関する表現の代表的なものはマニキュアの除光液やテレピン油、ペンキなどです。また、フーセンガムや飴玉もこの系統に含まれます。
穀類系フレーバーの分類は、麦芽汁系、調理野菜系、麦芽エキス系、もみ殻系、イースト系の5系統です。麦芽汁系のフレーバーには、ゆでたトウモロコシやオートミール、麦がゆといった表現が使われます。調理野菜系の表現は、ゆでたじゃがいも、マッシュポテト、スイートコーンなどです。
麦芽エキス系の表現は、ぬかや麦芽乳飲料の他に、牛の固形飼料といった表現が使われます。もみ殻系の表現に使われるのは、もみ殻の他は、乾燥ホップやエールビールなど、ビールをイメージさせるものです。イースト系は、イースト菌そのものの他に、ゆで豚やポークソーセージ、生肉、臓物など、かなり生臭いイメージの表現が使われます。
フレーバーホイールの表現は、ウイスキー初心者にはかなり難しく感じられるはずです。似たようなフレーバーが、異なる様相のところにあるため、よほど慣れなければ、どの表現が正しいのかわからないでしょう。しかも、食品のフレーバーを表す言葉としては、あまりイメージのよくない表現もたくさんあります。その表現を使うことがウイスキーの魅力を伝えることになるのか迷うことでしょう。
ウイスキー初心者の場合、飲んだウイスキーがおいしく感じられたか、あまりおいしくないと感じたかのどちらかを表現できれば十分です。その味わいが何に近いかを思い浮かべてみるとわかりやすいでしょう。
おいしい場合の表現は、どのような食べ物の味に近いかを思い浮かべてみます。香りなら、花のようなよい香りも含まれるでしょう。おいしい場合の表現は、果物系、花系、チョコレート系、砂糖系、ナッツ系、穀物・シリアル系の6つでどれに当てはまるか考えるのがおすすめです。果物系なら、オレンジに近かったか、リンゴ系だったか、それともドライフルーツのような風味だったかを思い浮かべれば、他人に伝わる表現になります。
おいしくない場合は、どんな香りや味がしたせいでおいしくないと感じたのかを表現しましょう。おいしいと感じられない原因となりやすいのは、主に植物系、木材系、スパイス系、薬品系のフレーバーです。どの系統の風味だったかを考えると、自分の苦手な味がよくわかり、他人にも伝わるように表現できます。
ウイスキーのフレーバーを表現するのに、わざわざ専門家が使うような難しい表現を使う必要はありません。自分の感じた香りや味わいは、自分なりの言葉で表す方が、相手に正しく伝わるでしょう。
プロの真似をしても、選ぶ言葉が間違っていたらそれまでです。自分がどう感じたかが相手にきちんと伝われば、それが正しい味の表現だといえます。
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