【独占インタビュー】Bar K6オーナー西田稔さんにインタビュー!
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今回、Dear WHISKYは、ウイスキー業界で著名な著者、講演者、教育者であるデイブ・ブルーム氏にインタビューをしました。
第1弾では、彼の著書「ウイスキーの道:ジャパニーズウイスキーを巡る旅」で詳細に語られているように、日本の文化がウイスキー作りにどう影響を与えているかについて伺いました。また、彼のジャパニーズウイスキー業界に対する見解もお聞きしました。
第2弾では、新しく施行されるジャパニーズウイスキーの表示に関する基準についてデイブ氏の見解をお伺いしましたので、ぜひ併せてご覧ください!
スコットランドのグラスゴー出身のデイブ・ブルーム氏は、スピリッツ業界で30年以上にわたり執筆、講演、教育活動を行ってきました。彼はウイスキー・マガジンなど様々な出版物に寄稿するだけでなく、多くの本を出版し、いくつかの映画も制作しています。
執筆以外の時間には、イベントでウイスキーのテイスティングを通じて消費者を教育したり、蒸溜所やバーテンダー向けにコンサルティングや社内トレーニングを手がけています。
彼はまた、ウイスキー関係者が知識や意見を共有しながらネットワークを拡大するために集うWorld Whisky Forumにも携わっています。次回のフォーラムは2024年に日本の長野県で開催される予定です。
Dear WHISKY:
日本のウイスキー業界に携わるようになったきっかけは何ですか?
デイブさん:
ウイスキー・マガジンの寄稿編集者として働いていた頃、2000年にWhisky Live Tokyoで講演する機会に恵まれました。この時期はちょうど、日本のシングルモルトウイスキーが国際的な舞台で注目を集め始めた頃でした。幸運なことに、私はその場にいて、日本でウイスキーについて学ぶ絶好の機会を得ました。
これがきっかけで私は日本が好きになり、その後の20年間は日本とウイスキーに関わる仕事をしてきました。
Dear WHISKY:
なにがきっかけで日本のウイスキーについての本を書くことになったのですか?
デイブさん:
私が日本の業界に深く関わるにつれ、日本の美学(料理、デザイン、建築、詩などにおける芸術感)と、ウイスキー製造者たちが語るウイスキー作りの方法との関係が見え始めました。
ウイスキーの風味は気候だけでなく、文化やその国の人々の味覚にも影響を受けます。
私はこの理論を蒸溜所の方々に話を聞いて検証するつもりでした。
Dear WHISKY:
実際に、蒸溜所の方々に話を聞いてみていかがしましたか?
デイブさん:
蒸溜所の方々と話すとき、ウイスキー作りと日本の文化の間につながりがあるかのように言わないように気をつけました。
しかし、私がそれを促さなくても、彼らはウイスキーを表現するのに、日本文化を説明する時に使う言葉と同じワードを使っていました。
これは意図的なものではないと思います。ウイスキー作りやアートなどの創造性が求められる場所で働いていると、生まれ育った文化は作品に何らかの影響を与えるのでしょう。
Dear WHISKY:
なにが日本のウイスキーを”ジャパニーズウイスキー”たるものにしていると思いますか?
デイブさん:
味わいに関して言えば、日本のシングルモルトウイスキーは強烈で鮮明な風味が特徴的です。その鮮明な風味が舌に残ります。また、日本文化特有の謙虚さも感じられます。日本のウイスキーはやや控えめですが、複雑さに欠けることはありません。スコッチのシングルモルトを例えると、川のようで、岩を越えて流れつつすべての風味が混ざり合う複雑さがあります。
一方で、日本のウイスキーは静かな池の中に1つ存在するようなシンプルさがあり、無駄を排除し、成分が輝くようにするための性質がウイスキーに浸透しています。
Dear WHISKY:
ジャパニーズウイスキーはスコッチウイスキーにどう影響されたのでしょうか?
デイブさん:
世界中のどんなウイスキー(バーボン以外)も、スコッチの基礎に基づいています。私が気になるのは、その基礎部分が、それぞれ異なる状況の国々にどう適応されているかです。ブレンデッドからシングルモルトへと進化する蒸溜所や製造方法など、似ている部分もあります。
しかし、日本のウイスキーはスコッチを真似しているのではなく、独自の存在となっています。
Dear WHISKY:
スコットランドと日本のウイスキーの製造方法の違いは何でしょうか?
デイブさん:
スコットランドでは、現在変わりつつあるものの、スコッチの蒸溜所は一貫性を求め、毎日同じ高品質のスピリットを生み出すことに注力しています。
一方で、日本の蒸溜所は毎日より良いウイスキーを追求し、日々改良を行っています。
ウイスキーには完全な完成形などなく、常に進化し続けなければならないのです。日本のアプローチは非常に革新的です。例えば、サントリーでの変革を見ると、消費者の味覚が変化し、シングルモルトがより重要性を増す中で、彼らは蒸留方法を完全に変えました。スコットランドでは誰も新しい蒸留釜を導入することや、急に蒸気を取り去り直火に戻すことはありません。
この日本のアプローチは、スコットランドの蒸留に比べると非常に異なりますが、伝統を受け継ぎつつ常に進化を試みるというこの考え方は、私にとって非常に印象深く、影響を受けました。
もう一つの基本的な違いは、一般的にスコットランドの蒸溜所は1つのスタイルと1つの特徴しか持っていない点です。何種類も作られている蒸留所でも、それらは別々に保たれます。一方、日本ではウイスキー製造者がブレンダーでもあります。例えば、山崎12年と山崎18年のようなウイスキーの場合、どちらも山崎蒸留所から出ているにも関わらず、成分や風味に違いがあります。
Dear WHISKY:
日本のハイボール文化についてはどうお考えですか?
デイブさん:
素晴らしいです!私のウイスキーの思い出の1つに、銀座のロックフィッシュバーに行き、初めてのロックフィッシュハイボールを楽しんだことがあります。ウイスキーと炭酸水を飲んだことはあったとしても、その中に日本らしい謙虚さを感じたことはありませんでした。
高級バーであっても、冷たいグラスでドラフトとしても、低アルコールでシンプルでかつ非常に美味しいハイボールを飲めることは、とても喜ばしいことだと感じています。
ウイスキーは手をつけてはいけないもので、ストレートで飲むべきだという固定観念があったと思います。ハイボールはそれを打ち破り、ウイスキーは様々な方法で楽しむことができる、シンプルで美味しいものだと証明しました。それが世界中で、ウイスキーにとって非常に大きな助けとなりました。
Dear WHISKY:
日本のウイスキー業界に対しての不安はありましたか?
デイブさん:
そうですね、1つは日本のウイスキー業界が十分に速く動かなかったことです。特に、今世紀初めの長い低迷期から回復してきたときにはそうでした。他の国では蒸溜所がキノコのように多く出現していた中、日本は遅く、少し慎重すぎました。これにより、在庫不足がさらに深刻化しました。世界は日本のウイスキーを求めていましたが、それに対する供給が不足しており、同時に新たな蒸溜所も建設が進みませんでした。
Dear WHISKY:
デイブさんが本を出版されてから5年、最近のジャパニーズウイスキー業界はどう変わりましたか?
デイブさん:
市場が広がる一方で、蒸留所が閉鎖されるという状況に対して、何かしらのためらいや躊躇いを感じていましたが、過去5年間では業界が急速に盛り上がり、新しい蒸溜所が徐々に増えてきました。
低迷期を乗り越え新たな波に乗る日本のウイスキーがどのようにして次の段階に進化していくのか、非常に興味深いです。
もう一つ挙げられる点は、初めて日本を訪れた際、ウイスキー企業同士があまりコミュニケーションをとっていなかったということです。
現在は、蒸溜所同士が協力的になっていますが、各企業は自社のブランドを守りながら、さらに協力を深めることが重要です。これが、業界全体が前進し成長する上で不可欠な方法だと思います。
Dear WHISKY:
日本のウイスキーコミュニティに対して、なにかコメントはありますか?
デイブさん:
日本のウイスキー業界が再び盛り上がっているこの重要な時期に、再び日本を訪れることを楽しみにしています!
以上、デイブ・ブルームさんへのインタビュー第1弾でした!インタビューの第2弾では、新しい日本のウイスキーの表記方法のガイドラインについてデイブさんに伺っていますので、ぜひご覧ください!
また、Dear WHISKYは2024年5月11日(土)、12日(日)の2日間にわたり開催された「Tokyo International BarShow 2024 」で、デイブさんへインタビューを行っています。日本のウイスキー市場へ見識が深いデイブさんへのインタビューもお見逃しなく!
デイブ・ブルーム氏:
HP URL: https://thewhiskymanual.uk/
World Whisky Forum HP: https://worldwhiskyforum.org/
Instagram: @davewasabi