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【現地レポート】デイビッド・ファーガソンさんによるロッホリー蒸溜所ガイドツアー

2024.06.25 / 最終更新日:2024.06.25

ロッホリー蒸溜所は、世界初の、自社で使う大麦をすべて自家農場から賄う、完全自家農業型蒸溜所を目指しています。

スコットランドのエアシャー地方の美しい自然と豊富な資源に育まれたロッホリーのウイスキーは、この新しい蒸溜所の情熱を反映した究極のクラフトウイスキーです。
今回Dear WHISKYは、生産と原料に関する情報をクリアに開示し、そのユニークな特徴によって人気が急上昇している、ロッホリー蒸溜所に訪れました。

併せてお読みください

ロッホリー蒸溜所について

ロッホリー蒸溜所とは

この蒸溜所は、牛の飼育とその餌となる大麦の栽培を行っていたロッホリー農場の跡地に設立されました。農場のオーナーであるニール・マクゴーさんは、農場の経営が収益性の低い厳しい業態であると考え、大麦の栽培事業を拡大し、他の産業への転換を図ることにしました。

建物を改築し、蒸溜所として再利用することで、ロッホリー蒸溜所は2018年にウイスキーの生産を開始しました。

ロッホリー蒸溜所:オーナーのニールとコマーシャルマネージャーのデイビッド

ロッホリー蒸溜所の特徴

ロッホリー蒸溜所は独立した家族経営の農場兼蒸溜所として、全ての大麦を自社の畑で栽培しています。ロッホリーは、100%自家農業型の蒸溜所を目指し、日々ウイスキー製造を行っています。スプリングバンク蒸溜所やキルホーマン蒸溜所など、似たようなことを行っている蒸溜所はいくつかありますが、ロッホリー蒸溜所が麦芽製造の工程を自社でできた暁には、大麦の種まきから瓶詰めまでを一貫して行う初めてのスコッチウイスキーメーカーとなります。

ロッホリー蒸溜所の最終的な目標は、地元産の原料と熟成環境から、スコットランドのエアシャーを代表する、その地域と人々のためのユニークなウイスキーを造ることです。

ロッホリー蒸溜所概要

蒸溜所 ロッホリー蒸溜所
所有者 ニール・マクゴー
住所 Lochlea Farm, Craigie, Kilmarnock KA1 5NN, United Kingdom
設立年 2018年
公式サイト 公式サイトはこちらから
問い合わせ メール:info@lochleadistillery.com
電話番号:01668 281554
SNS Instagram:@lochleawhisky
Facebook:@lochleawhisky
X:@LochleaWhisky

アクセス

ロッホリー蒸溜所兼農場は南エアシャーに位置し、グラスゴーから車で約40分のところにあります。しかしながらロッホリー蒸溜所は、一般公開していないため、ビジターセンターやショップはありません。

ロッホリー蒸溜所の製品

ロッホリー蒸溜所の製品

「Our Barley(私たちの大麦)」

主力のシングルモルトウイスキーは、ロッホリー農場の自然環境と資源によって育てられた、自社の大麦から作られています。チルフィルターや着色料は一切使用されていません。「Lochlea Cask Strength(ロッホリーカスクストレングス)」という製品もあり、バッチごとにリリースされます。

Lochlea Our Barley(写真引用:https://www.lochleadistillery.com/our-whisky

季節限定リリース

シーズナルリリースには、Sowing(種まき)、 Harvest(収穫)、 Fallow(休耕), Ploughing(耕作)の4種類があります。それぞれは四季の一つを表しており、入念に樽選びがされ造られています。それぞれ作物ごとにこの4種類があり、そのサイクルを繰り返しています。

季節限定リリースボトル (写真引用:https://www.lochleadistillery.com/our-whisky

詳しい製品説明はこちら

デイビット・ファーガソンさんについて

デイビッドさんはロッホリー蒸溜所のコマーシャルマネージャーを務められています。過去にビーム・サントリー社とダグラス・レイン社で経験を積んでおり、ウイスキー業界では10年以上の経験をお持ちです。現在はロッホリーウイスキーの販売とマーケティングを担当されています。

今回は光栄なことに、デイビッドさんが蒸溜所を案内してくださりました。

蒸溜所の内部

農場

デイビットさん:
この畑で大麦を栽培し、収穫しています。面積は222エーカーあり、合計で約600トンの大麦を収穫し、そこから20万リットルのアルコールを生産しています。すべての材料が自社生産のため、畑での収穫量がウイスキーの年間生産量に直接的に影響します。

3つの区画に分かれており、それぞれに200トンの大麦が入っている。

製麦

デイビットさん:
ロッホリー蒸溜所では、スコットランドの伝統的なフロアモルティングを採用しています。毎年春になると床一面に麦芽を敷き詰め、6週間にわたって伝統的な手作業での製麦を行います。

現在、この手作業で製麦された大麦は全生産量の約15%を占めています。今後は人手が許す限り、この工程を拡大していく予定です。

残りの85%の大麦は、ベアーズモルトという地元の製麦業者と提携して製麦を行っています。弊社の製造責任者であるジョン・キャンベルは、ラフロイグ蒸溜所の責任者として働いていたため、フロアモルティングの経験も豊富であり、彼の経験をもとにフロアモルティングを行っています。

大麦倉庫のジョン・キャンベルさん。

粉砕

デイビットさん:
私たちの粉砕機は、一度に1トンの大麦を粉砕でき、それを1日に2回稼働させています。粉砕機内の残量が少なくなり、麦芽を補充する必要がある時は、人の手で麦芽を持ち上げ補充しています。

グリストの比率は、グリッツ30%、ハスク60%、フラワー10%で行っています。これはローラー間の幅を調整することでコントロールしています。

同じバッチから収穫された麦芽であっても、決して同じものはないので、麦芽の運搬があるたびに細かな調整を行わなければなりません。私たちは、安定した味わいを保つため、最大限風味を生み出せる比率になっているか日々確認しています。

マッシング(麦芽の糖化)

デイビットさん:
これは2トンのセミローターマッシュタン(糖化槽)です。このマッシング工程では、穀物の特徴を引き出し、ジューシーなフルーツのような香りと、穀物のビスケットのような香りに包まれた、バランスの取れた原酒を作ることを目指しています。

風味を最大限に引き出すこつは、原料について誰よりもよく理解することです。

納品がある度に、原料の比率を変えてマッシングを行い、同じバッチであっても、同じ収穫はありませんので、最高の風味を効率よく得られる比率を毎回確認しています。今は満杯にして使うことはありませんが、2トンのマッシュタンがあることで、将来的に生産量を拡大することもできます。

2トンのセミローターマッシュタン

発酵

デイビットさん:
ここにはダグラスファーでできた6つのウォッシュバック(発酵槽)があり、それぞれ15,000リットルの容量があります。発酵の長さ、酵母の種類や量など多くの実験を経て、私たちは66時間の短時間発酵を2回、116時間の長時間発酵を3回行うレシピを考案しました。

この長い発酵により、オレンジや梨のようなフルーティーな香りをより際立たせることができます。

酵母の種類は、何度も試した結果、マオリ酵母に決めました。酵母の量は、少なめにしたほうが酵母の働きが活発になり、結果的によりフルーティーさを得られることがわかりました。そのため、1回のウォッシュバックに使う量は1袋と、通常より少なめに設定しています。

ダグラスファーのウォッシュバック(発酵槽)

蒸留

デイビットさん:
私たちはフォーサイス社製の非常に背の高い蒸留器を2基所有しています。これはフルーティーで滑らかな味わいの原酒を造る化学反応の効果を最大限に高めてくれます。この再利用された建物にギリギリ収まる大きさです。

私たちは67%でスピリッツカットを行った後、ヘッドとテールの部分は再蒸留しています。

ジョンが入社した際、朝からゆっくりと加熱し、徐々に蒸気を高めていくというプロセスに少し変更しました。こうすることで、ジューシーな果実の風味を早い段階で消すことなく長く持続させることができます。

ロッホリー蒸溜所では蒸留工程には約3時間の長い時間をかけており、蒸留液と銅と十分に触れさせるためにあえてゆっくり蒸留しています。

銅との接触時間を長くすることで、蒸溜酒の不必要なフレーバーと銅の化学反応が起こりやすく、より滑らかな液体となり、深みのあるオイリー感や個性が生まれます。

カットする位置を注意深く見るディスティラーのジョージさん

樽詰め

デイビットさん:
私たちは毎週、30樽ほど樽詰めを行います。全ての樽がここに運ばれ、手作業で重さを測りながら詰められます。

蒸留したばかりの蒸留酒のアルコール度数は約67~68%です。そこから63.5%までロッホリー産の水を使用し加水しています。

そのままの度数で樽に詰めることもありますが、その場合はリフィル用の樽に詰めることがほとんどです。ワイン樽やファーストフィルのバーボン樽、シェリー樽のような活性の高い樽の場合は、アルコール度数を63.5%まで下げてから樽詰めしています。

手作業で樽詰めする場所

デイビットさん:
塩分やミネラルが多く残るハイランド地方の水とは違い、ここの水は濾過する前でも非常に硬度の低い軟水で、きれいな水です。そのためスコットランドが輸出しているペットボトルの水の多くは、この地域のものなのです。

スコットランドで最もきれいな軟水のひとつ

熟成

デイビットさん:
倉庫は3つあり、そこにある7千個の樽には過程を追跡するためのバーコードが付けられています。現在、ジョンが次のバッチの分の樽をまとめているため、フロアにはたくさんの樽が並んでいます。ジョンがレシピ考案のための樽選びを、今朝までここで行っていた証拠ですね。

多くの樽が並ぶ貯蔵庫

瓶詰め

デイビットさん:
蒸溜所内にある小さな瓶詰め場所では、すべての樽ではなく、シングルカスクなど一部のリリース製品のみを瓶詰めしています

最後に

一拠点で全ての生産作業を行う農場蒸溜所として、ロッホリー蒸溜所は製品の改良と海外マーケティングを巧みにこなし、目標に向かい日々成長しています。そのユニークな理念に加え、ロッホリー蒸溜所は製造工程と地元産の原料にこだわることでオリジナリティを追求し、結果として素晴らしい風味のウイスキーを生み出しています。

世界中どこの蒸溜所とも異なり、ロッホリー蒸溜所は地元のユニークなストーリーと味を真の意味で確立しています。

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