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【現地レポート】アナンデール蒸溜所

2024.06.25 / 最終更新日:2024.06.25
【現地レポート】アナンデール蒸溜所

アナンデール蒸溜所は、2014年に100年前ぶりの復活を果たしたスコットランドのローランド地域に位置する蒸溜所です。

地元住民に温かく見守られてた、貴重な歴史的遺産としても知られています。今回は、実際にアナンデール蒸溜所を訪れ、その個性溢れる美しい蒸溜所の内部を見学させていただきました!ぜひ、その魅力をお楽しみください!

同じくローランドに位置する蒸溜所の現地レポートはこちら!

アナンデール蒸溜所について

アナンデール蒸溜所とは

1836年に設立され、2014年に再建されたアナンデール蒸溜所は、ローランドに位置し、ウイスキー界のレジェンドであるジム・スワン博士の監督のもとで高品質で小規模なウイスキーを生み出しています。

地域経済への貢献が評価され、イギリス王室のアン女王が直接訪問したことでも話題になっています。

さらに、権威あるジム・マーレイ氏のウイスキー・バイブルでは、2020年、2021年連続で高得点を受賞し、高品質なウイスキー造りが高く評価されています。

アナンデール蒸溜所概要

会社名 Annandale Distillery Company Ltd.
蒸溜所名 アナンデール蒸溜所
設立 2014年
所在地 Annandale Distillery, Northfield, Annan, DG12 5LL, UK
電話番号 +44(0)1461 207817
公式HP アナンデール蒸溜所 HP
SNS アナンデール蒸溜所 Instagram
アナンデール蒸溜所 X
アナンデール蒸溜所 facebook

歴史

1830年 創立

アナンデール蒸溜所は、1830年に元ハイランド地方税務官のジョージ・ドナルド氏によって創立されました。この地域は水源が豊富で、湿度と穏やかな気候がウイスキー造りに最適であることが決定的でした。

ピートウイスキーと言えば、アイラウイスキーの代名詞。対するローランドは、通常、ライトでフルーティな味わいで知られています。しかしながら、アナンデール蒸溜所のわずか3マイル先ではピートを採取することが可能でした。

現在でも、アナンデール蒸溜所では当時の伝統を受け継ぎ、ピートとノンピートの2種類のウイスキーを生み出しています。

アナンデール蒸溜所

アナンデール蒸溜所

1893年 ジョニーウォーカーが買収

約50年後の1883年、アナンデール蒸溜所の所有者はジョン・スカイ・ガードナー氏へと移りました。リバプールのワイン・スピリッツ商人であったガードナー氏は、蒸溜所の近代化に着手。その結果、品質の一貫性が保たれ、良質なピーテッドウイスキーの生産が拡大されました。

そして、1893年には、ブレンデッドウイスキーの先駆者であり、現在では世界で最も売れているスコッチウイスキーブランド「ジョニーウォーカー」が、アナンデール蒸溜所を買収しました。

ブレンデッドウイスキーのバランサーとして、アナンデール蒸溜所のピートウイスキーが重宝されたのです。

かつての蒸溜所の姿

かつての蒸溜所の姿

1918年 蒸溜所閉鎖

第一次世界大戦後の1918年、ジョニーウォーカーはアナンデール蒸溜所の閉鎖に踏み切りました。

その要因は、当時の社会情勢から生産を維持することが困難であり、世界的な禁酒運動の影響でウイスキーの需要が急落したことでした。ジョニーウォーカーは、アナンデール蒸溜所の設備と建物を撤去しましたが、残置物は引き取り手が見つからず、最終的に蒸溜所のすぐ後ろ、ロビンソン家の農場へと渡りました。

2007年 100年ぶりの復活へ向けて動き出す

この忘れ去られた蒸溜所を復活させた立役者は、デイビッド・トムソン教授と彼のパートナーであるテレサ・チャーチさんです。

地元住民であるデイビッド氏は、ある日、閉鎖された蒸溜所を取り上げたドキュメンタリー本「Scotch Mist」で、かつてこの地域にあったアナンデール蒸溜所の存在を知りました。

旧アナンデール蒸溜所の職員

旧アナンデール蒸溜所の職員

もはや覚えている人もおらず、地域住民ですらその存在を知らなかった幻の蒸溜所でした。彼はすぐにその地を訪れ、土地の購入とアナンデール蒸溜所の再生を決意しました。

そして、1,750万ポンドを投資し、大規模なアナンデール蒸溜所再生プロジェクトを開始しました。

現アナンデール蒸溜所の職員

現アナンデール蒸溜所の職員

2008年 ウイスキー業界のレジェンド ジム・スワン博士の参画

蒸溜所の設計にあたり、デイビッド氏が真っ先に電話をしたのは、ウイスキー界のレジェンドであるジム・スワン博士でした。

デイビッド氏の情熱と計画に共感したジム・スワン博士は、2008年にプロジェクトに参画し、アナンデールウイスキーの基礎を築きました。

ジム・スワン博士(左)とデイビッド・トムソン教授(右)

ジム・スワン博士(左)とデイビッド・トムソン教授(右)

2009年 グラスゴー大学の発掘調査

当初は2009年にオープン予定でしたが、荒廃した建物の修繕は想定以上に困難でした。それでも、二人は強い信念を持ち、プロジェクトを継続しました。

荒廃した建物の修復に取り組む中で、ほとんど記録が残っていないかつてのアナンデール蒸溜所の姿を明らかにするために、グラスゴー大学の考古学研究所が発掘調査に参加しました。

ジョニーウォーカー所有時代の蒸溜所跡地

ジョニーウォーカー所有時代の蒸溜所跡地

2014年 再スタート

2014年11月9日、この美しい蒸溜所が、多くの人々の期待を背負って新たな歴史を歩みだしました。

そして、2015年にはビジターセンターがオープンし、イギリス王族のアン王女が蒸溜所を訪れ、復活を祝福しました。

蒸溜所ツアー開始地点 左側のタペストリーは、アン王女の訪問時の写真

蒸溜所ツアー開始地点 左側のタペストリーは、アン王女の訪問時の写真

実際にアナンデール蒸溜所に行ってきました!

施設

ピーテッドとノンピートの両方の原酒を生産するアナンデール蒸溜所。

1か月ごとに、ピーテッド大麦、ノンピート大麦と、仕込む種類が変わります。

1か月が終わる度に全ての設備を、しっかりと清掃し、次の原酒の味わいに残らないようにします。かつては2週間ごとに切り替えていましたが、現在は1か月ごとのペースで行っているそうです。

10年前に蒸溜所がオープンしてから、一貫した哲学・手法で造り続けてきました。

12人の造り手が、日曜日から金曜日にかけて、計10回の仕込み~蒸溜までの生産プロセスを動かしています。年間生産量は約40万リットルです。

大麦麦芽

大麦麦芽

また、従業員の多くは地域住民で、一部工学のバックグランドを持ちますが、ほとんどは未経験からのスタートだそうです。数か月の訓練を経て、一人でこれらの工程をこなせるようになります。

アナンデール蒸溜所

アナンデール蒸溜所

①粉砕(ミリング)

まずは、粉砕部屋を案内していただきました。毎週30トンの大麦が蒸留所に届き、コンベアベルトやエレベーターを通って粉砕部屋へ運ばれます。粉砕比率は、ハスク18%、グリスト70%、フラワー12%です。

蒸溜所内部に入ると驚かされるのは、その配置です。

数百年前にそのまま戻ったような歴史ある美しいレンガ調の建物に、全ての設備が所狭しと、パズルのように正確に設置されています。

蒸留所内に運びこんで、内部で組み立てられたそうです。

粉砕部屋

粉砕部屋

②糖化(マッシング)

仕込み水は、熟成庫のすぐ裏に井戸水が引ける水源があり、いつでも清涼で新鮮な軟水を利用できます。

この軟水によって、スコットランド北の冷たい硬水と比べ、ライトでフルーティーな味わいがもたらされます。

敷地内に流れる小川

敷地内に流れる小川

糖化工程では、第一麦汁は9,000リットルで64度、第二麦汁は4,000リットルで84度、第三麦汁は9,000リットルで94度で行われます。大麦から抽出した糖量が少ない第三麦汁は、次回の仕込みのために再利用されます。

糖化槽

糖化槽

③発酵(ファーメンテーション)

糖化を終えたウォートは、オレゴン松製の高さ14メートルの発酵槽に移されます。来訪者が歩く床面は高く引き上げられているため、下を見るまでは気が付かず、その大きさに驚く方も多いそうです。

これらの発酵槽の内部では天然の菌が木の表面に住み着き、原酒に個性的で複雑な味わいを与えます。

原酒自体に美味しい味わいを持たせることは、デイビッドさん、テレサさん、そしてジム・スワン博士が共に追い求めたこだわりです。

酵母には、MGプラスが使用され、約66時間の発酵で8%のアルコール度数が得られます。ジム・スワン博士の情熱とこだわりが、アナンデール蒸溜所の各工程に息づいています。

博士の貢献がなければ、今日の蒸溜所は存在しなかったというスタッフの言葉が印象的でした。

発酵槽

発酵槽

④蒸留(ディスティレーション)

アナンデール蒸溜所では、3つの蒸溜器が使用されています。

1つは初溜器であり、残りの2つは再溜器です。発酵を終えたもろみは、初溜器で94度に熱されます。その際、水とアルコールの沸点の違いによって、アルコール分を多く含んだものが先に蒸発し、冷やされて液体に戻ります。この工程で得られるアルコール度数23度ほどの液体がローワインと呼ばれるものです。

初留を終えたスピリットは、4,000リットルずつに分けられ、それぞれの再溜器に同時に入れられます。この特殊な手法は、蒸溜器に使用されている銅とスピリットの接触を最大限にすることを目的としています。

蒸留の過程で液体が銅に触れる時間が長いほど、柑橘やフルーティーな味わいとなめらかな口当たりが生まれるのです。

初留器

初留器

蒸留器のラインアームは約15度の角度で曲がっており、蒸留器の上部に当たった液体が冷却装置(コンデンサー)を通じて水滴として降りていくように設計されています。こちらも、銅との接触を最大限にするために計算された角度だそうです。

カットは、ノンピートの原酒は67度、ピート原酒は64度で行われます。

これは、大麦のライトでスモーキー、土っぽいアーシーな特徴を引き出すために計算されたものです。

再留器

再留器

⑤熟成(マチュレーション)・試飲

最後に、アナンデール蒸溜所を代表する2つの銘柄、マン・オ・ソードとマン・オ・ワーズを試飲させていただきました!

これらの名前は、スコットランドの2人の著名人にちなんで名づけられました。ピーテッドのマン・オ・ソードは、スコットランド王であるロバート・ブルースを意味します。ロバート・ブルース王は、スコットランド王となる前、アナンデール地域を治めていました。そして、ノンピートであるマン・オ・ワーズの由来となったロバート・バーンズは、スコットランドの詩人です。彼は、かつてアナンデール蒸溜所の位置する地域で税務官として働いていました。

マン・オ・ソード(左)マン・オ・ワーズ(右)

マン・オ・ソード(左)マン・オ・ワーズ(右)

様々なウイスキーの香りが入り混じる、昔ながらの熟成庫の中で味わう原酒は格別の美味しさでした。

アメリカ ケンタッキー州の複数の蒸溜所から仕入れたというバーボン樽、スペインのシェリー樽、さらにワイン樽、ラム樽、ポート樽など、多種多様な樽を仕入れています。

熟成庫

熟成庫

多言語対応ツアー

英国各地のみならず、世界中からゲストを迎えているアナンデール蒸溜所のツアーコースには、あちこちにQRコードが設置されています。

英語を母語としない参加客は、日本語を含めツアーの各説明を翻訳で楽しむことができます。

とりわけ、オランダ・ドイツ・アメリカ、その他ヨーロッパやアジアからの訪問客が多いそうです。

蒸留されたスピリット

蒸留されたスピリット

最後に

以上、アナンデール蒸溜所の様子をお伝えしました!ローランドの美しい農園風景に囲まれ、爽やかな風の流れる土地で、高品質なシングルカスクウイスキーが製造されているアナンデール蒸溜所。100年ぶりの復活を果たした、同蒸溜所の今後のリリースにご注目ください!

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