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【現地レポート】東北最古の地ウイスキーメーカー 笹の川酒造 安積蒸溜所

2023.07.27 / 最終更新日:2024.10.16
【現地レポート】東北最古の地ウイスキーメーカー 笹の川酒造安積蒸溜所

福島県安積平野の郡山市、安積疏水の流れる笹川に安積蒸溜所はあります。
安積蒸溜所の歴史は1946年(昭和21)にウイスキー免許を取得した山桜酒造にはじまります。また、酒蔵としての歴史は300年を超え、猪苗代湖の南に創業した1710年(宝永7)にさかのぼります。1980年代には「北のチェリー、東の東亜、西のマルス」と呼ばれ、笹の川酒造が送り出したチェリーウイスキーは北の雄として人気を得てきました。

日本のウイスキー業界を黎明期から支え続け、ウイスキー造りと向き合い続けてきた長い歴史を持つ東北最古の地ウイスキーメーカー・笹の川酒造 安積蒸溜所に直接お伺いさせていただきました!

笹の川酒造 安積蒸溜所の施設や普段見学することの出来ない施設などの現地レポートをお伝えします。

代表取締役の山口さんと、ウイスキー造りの根幹を最前線で支え続ける製造担当の黒羽さんへインタビューはこちらから!

合わせてお読みください!

笹の川酒造 安積蒸溜所とは

笹の川酒造 安積蒸溜所について

明和二年(一七六五年)に創業した笹の川酒造は、初代・朝之丞宗友氏より十代を超えて歴史を繋いできました。厳しい季節を乗り越えてこそ、優しく、和やかな酒が生まれるということを大切にして、毎日の当たり前の時間を生きている幸せを感じ取るような酒造りを目指しています。

笹の川酒造は「風」の酒蔵、そして安積蒸溜所は「風」の蒸溜所と呼ばれています。

磐梯おろしという季節「風」や澱みや濁りを吹き払うみちのくの北「風」、やわらかな薫りをのせて吹く春「風」、そして「風」景や働く従業員の方々の「風」通しなど、様々な「風」を大切にしています。

笹の川酒造 安積蒸溜所概要

蒸溜所名 笹の川酒造 安積蒸溜所
本社創業 1765年
所在地 福島県郡山市笹川1 丁目178
電話番号 024-945-0261
蒸溜所見学 原則水曜日14:00〜
要予約(電話、メールで3日前まで)
公式HPやお電話でお問い合わせください。

実際に笹の川酒造 安積蒸溜所に行ってきました!

①笹の川酒造 安積蒸溜所

郡山駅から車で約15分。穏やかな街並みが広がる中に安積蒸溜所はあります。
安積蒸溜所に近づくにつれ、樽に「安積蒸溜所」と記載されているものが案内板として置かれています。酒造ならではの光景で非常に面白いですね!

笹の川酒造株式会社の正面入り口

②お酒の神様を祀る神社

安積蒸溜所の正門を抜けると、正面には鳥居があります。ここで祀られているのは京都の嵐山の松尾神社の御分霊だそうです。

松尾神社は日本三大酒神神社であり日本第一酒造神として名高いため、日本酒酒造の方々はこの松尾神社に参拝に行き、御分霊を頂戴するそうです!

ちなみにここでは、お酒と水の神様を祀っているとのことです。

③安積のロゴが入った蒸溜所施設入口

神社の横を抜けると安積のロゴの入った建物があり、ここがウイスキーの製造工場です。

導入した蒸溜器のサイズは国内最小クラスとのことですが、他の蒸溜所や酒造と比較すると建物自体のサイズも小さめのようです。

蒸溜所に見学に来た方々はロゴのあるこちらで写真を撮っていくそうです!

建物に大きく入っている安積蒸溜所のロゴ

ちなみに、もともと三番蔵として使用していた場所をウイスキー製造の建物に変更したようで、三番蔵という看板もまだ残っていました!

三番蔵であった面影が残る

④粉砕(グリスト)

粉砕とは、製麦(モルティング)の一部で乾燥させた麦芽を粉砕することです。安積蒸溜所では、イギリスのクリスプ社から大麦麦芽を輸入し、粉砕しています。
1体(袋)で25キロありますが、一度で16体の合計400キロの麦を使って1回の仕込みに使用しています。

イギリスのクリスプ社の大麦麦芽

網目の部分がありますが、ここでは手作業で小石や小枝など不純物などがないか確認しています。その後、粉砕の機械の中にある磁石で金属の破片などを取り除いています。そしてこの機械の最後にある2つのローラーの間を通ることでマッシングに使われる麦となります。

手作業で不純物を取り除くための場所

粉砕された大麦麦芽は、ハスク・グリッツ・フラワーの3つのタイプに分かれます。

これらは黄金比率であるハスク:グリッツ:フラワー=2:7:1の割合で粉砕(グリスト)を行っています。

麦のロットや入荷する季節、麦の品種が変わったりする際には、殻の厚さや大きさが若干異なるので、毎朝麦の具合を確認しながら調節し粉砕していきます。他の割合での粉砕も試したものの、麦汁の糖度や透明度が低くなってしまうので、黄金比率の2:7:1で行っているそうです。

実際のハスク・グリッツ・フラワーの様子

⑤糖化(マッシング)

マッシングとは、粉砕されている大麦麦芽を温水と混ぜて加熱することです。マッシュタン(糖化槽)の中で温水と混ぜる事で、穀物等の中に含まれるでんぷんからアルコールの元となる糖が生成されます。
マッシングでは麦芽と温水をきれいに混ぜる事が非常に重要で、次の発酵の工程に移る際にうまく発酵できるかの鍵になります。

マッシングで使用した麦芽の残りは廃棄するのではなく、近くの農家さんで牛の餌などとして使われているそうです。

マッシング後の麦芽

⑥発酵(ファーメンテーション)

発酵とは、糖が酵母の作用でアルコールに変わる化学変化のことです。
安積蒸溜所では木製の発酵樽を使用しています。木製のほかにステンレス製の発酵タンクがありますが、木製の場合は木に元々住み着いている乳酸菌があります。

酵母の発酵と乳酸菌が組み合わさることで、アルコール度数がステンレス製と比べて多く取れると考えられています。

発酵樽の中を見せていただいたのですが、ふたを開けた瞬間アルコールの良い香りが広がってきます!発酵樽が複数あり、それぞれ発酵している期間に差があったため、その色や香りの違いもあり、発酵の重要性をより感じることができました。

発酵中の木製発酵槽の中

⑦蒸留(ディスティレーション)

蒸留とは、発酵させて完成したもろみから水を取り除いてアルコールだけを抽出することです。
安積蒸溜所では三宅製作所の蒸留器を使用しています。国内最小クラスのサイズで、初溜器が2,000リットル、再溜器が1,000リットルです。

蒸溜器は、ストレートヘッド型でネックやアームの部分が太くて短いという特徴を持っています。

この蒸留器によって抽出された蒸留液は、コクのあるどっしりとした濃厚な味わいのものとなります。

国内最小クラスの三宅製作所の蒸溜器

実際にノージングやテイスティングを行って調節していて、初溜の際は蒸留時間を意識しつつ少々不快な香りを無くしていきます。

再溜で抽出される液体はヘッド・ハート・テールと3つに分かれ、その中でも美味しいハートの部分を抽出(ミドルカット)できるように、ノージングなどを行っています。

ちなみに、ヘッドやテールの部分についても再度蒸留にまわすことで無駄をなくし、出来る限り多くの美味しいウイスキーを造れるようにしているそうです!

他の蒸溜所と比較するとアームやネックの部分が短いですが、これこそが安積蒸溜所のポットスチルの特徴とのことです。実際にニューポットが完成した際に、山口さんはもちろん様々な方に試飲していただいたところ非常に良い評価をいただいたそうです!
また、盆地・平野の特徴である寒暖差も相まって非常に良いウイスキーが生まれているようです。

ポットスチルから出る抽出液をノージングやテイスティングするための機械

⑧作業台には日本酒メーカーならではの秘訣が・・・

蒸留器のある場所をはじめ、安積蒸溜所では多くのものが木造のものでした。

木造である理由は、建物の中を回る際に足場となる作業台をステンレスで作ってしまうと動かせませんが、木造であれば移動や取り付けが簡単にでき、ばらして再度必要な形式に組み立て直すこともできるためとのことです。

実際にポットスチルの側にある組み立て装置

⑨貯蔵庫

8割ほどがバーボン樽ですが、残りの2割くらいにシェリー樽やミズナラ樽、桜の樽などもあり非常に樽の種類が豊富です。

多種多様な樽が眠る貯蔵庫

樽の中には日本語ではない名前が書いてあるものが複数ありましたが、これはお客さんの名前だそうです。

笹の川酒造のお酒は国内だけではなく海外からも非常に人気で、中でも上海のお客さんとは10年以上に渡って付き合いがあるそうです。

また、下の写真の樽には「イチローズモルト」と書いてあります。安積蒸溜所には、2003年に東亜酒造が暖簾を下ろした際に羽生蒸溜所にあった原酒樽を笹の川酒造が預かったという歴史があります。2021年にベンチャーウイスキーが樽を引き取りに来た際に、1樽だけ安積蒸溜所で譲り受けたとのことです。その樽が写真のイチローズモルトと記載されている樽です。
現在、この樽の中には安積蒸溜所の原酒が詰められているそうです!

羽生蒸溜所から預かった原酒樽

⑩蒸溜所の案内板にもあるものが使われており・・・

蒸溜所の中を案内する看板にも蒸溜所らしいものがあります。それは、ウイスキーの樽です!そして樽には安積蒸溜所のロゴが入っていました。
ちなみにこの案内板は蒸溜所内だけではなく、蒸溜所までの道中にもありますので実際に見学に行った際にはぜひ見つけてください!

ウイスキーの樽が看板に!

ちなみに安積蒸溜所のロゴの左右の文字は安積(Asaka)の「A」と蒸溜所(Distillery)の「D」で、中心の山は磐梯山が猪苗代湖の水面に映る様子を表現しているそうです。

磐梯山や猪苗代湖が特徴的な安積蒸溜所のロゴ

番外編 〜蒸溜所で働いている方へインタビュー〜

清酒製造と兼任している吉田さん

Dear WHISKY:
清酒造りとウイスキー造りをどのように分けて行っているのですか?

吉田さん:
清酒造りは基本的に冬の間しか行うことが出来ません。10月ごろに開始し3月の半ばに片付けなどをしています。ウイスキーは1年間を通して造ることが出来るため、清酒造りが出来ない時期はこのようにウイスキー製造に携わっています!

Dear WHISKY:
安積蒸溜所ならではのウイスキー造りの工夫はありますか?

吉田さん:
安積蒸溜所では、1人1人が1つの工程を担当するような制度ではなく、全員が全ての工程を担当できるようにローテーションのような形で行っています。

そのため、自分が粉砕をしてから樽詰めまで一気通貫して製造することで、より自分が作っていることを実感できるので非常に楽しいです!

渡辺(ワタナベ)さん

Dear WHISKY:
渡辺さんは今何を担当なさっているのですか?

渡辺さん:
現在はマッシングを主に担当しています。発酵がうまくいくよう、甘い麦汁を造ることを意識して日々の仕事に取り組んでいます。

アルコールを高く抽出できるときが非常に嬉しい瞬間です!

坂倉(サカクラ)さん

Dear WHISKY:
坂倉さんは現在どの工程を担当なさっていますか?

坂倉さん:
現在は主に蒸留を担当しています。より多くの方々に愛されるような商品を目指して、良いスピリットを抽出できるように日々取り組んでいます!

代表取締役山口さんと製造担当黒羽さんへインタビュー編も!

笹の川酒造 安積蒸溜所見学の様子はいかがだったでしょうか?

それぞれの工程では具体的に何を行っているのかはもちろん、安積蒸溜所独自のこだわりや働いている方のお話など様々なことを伺うことができました!

独占インタビューでは、歴史ある笹の川酒造を守る代表取締役の山口さんと、ウイスキー造りの根幹を最前線で支え続ける製造担当の黒羽さんにお話を伺いしました。笹の川酒造のお酒を楽しむだけではなかなか知ることの出来ない「安積」という町や歴史、ウイスキー事業のきっかけとなった裏話まで、熱い想いとともにお伺いしました。

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