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【現地レポート】秩父の大自然と自社生産のミズナラ樽を活用する秩父蒸溜所

2023.07.31 / 最終更新日:2024.07.20

埼玉県北西部、市域の87%を森林が占める自然豊かな秩父市に、世界から高い評価を受け続けているイチローズモルトを造る秩父蒸溜所があります。
今回は、そんな秩父蒸溜所に直接お伺いし蒸溜所見学をさせていただきました!
蒸溜所見学だけではなく秩父蒸溜所の施設や実際に働いている従業員の方にもお話をお伺いしました!
秩父蒸溜所は蒸溜所内の一般見学を実施していないため、普段は立ち入ることができない場所やイチローズモルトに関する貴重なお話などをお伝えしていきます!

現地取材では、以前からお世話になっている株式会社ベンチャーウイスキーのグローバルブランドアンバサダー吉川由美さんに、蒸溜所をご案内いただきました。
また、吉川さんへの独占インタビュー記事(3部構成)やイチローズモルトについての特集記事などもございますので、ぜひご覧ください!

併せてお読みください!

秩父蒸溜所とは

秩父蒸溜所のご紹介

秩父蒸溜所は、株式会社ベンチャーウイスキーが設立した蒸溜所であり、創業者は肥土伊知郎氏です。肥土伊知郎氏は代々続く酒屋の生まれであり、「ゴールデンホース」などを製造していた羽生蒸溜所も経営していましたが、経営が傾き羽生蒸溜所は取り壊されることになりました。そこで肥土伊知郎氏は廃棄される予定だった羽生蒸溜所の原酒を守るべく笹の川酒造に援助をいただき、そののちに株式会社ベンチャーウイスキーを立ち上げました。
肥土伊知郎氏が蒸溜所を設立した当時、日本国内のウイスキー消費量は低迷していましたが、この新たな挑戦が世界にジャパニーズウイスキーの名を轟かせるきっかけとなりました。

秩父蒸溜所概要

会社名 株式会社ベンチャーウイスキー
蒸溜所名 秩父蒸溜所
創業(生産開始) 2004年(2008年)
所在地 埼玉県秩父市みどりが丘49
電話番号 0494-62-4601
SNS 秩父蒸溜所 Facebook

秩父蒸溜所の看板

実際に秩父蒸溜所に行ってきました!

秩父蒸溜所の場所や施設

秩父駅から車で約20分。山々に囲まれた自然の中に秩父蒸溜所はあります。
埼玉県の中でも地形によって寒暖差が激しい秩父は、ウイスキーの熟成に適している地域です。秩父蒸溜所は第一蒸溜所、第二蒸溜所、樽工場の三つの敷地からなっています。第一蒸溜所は2008年から製造を開始しました。

続いてからは製造過程を巡ります!

①粉砕(グリスト)

大麦を粉砕

蒸溜所に足を踏み入れた瞬間、麦汁のいい香りが漂ってきます!
ウイスキーを蒸留する際には、はじめに主原料である大麦(麦芽)を粉砕し、糖化することで発酵に必要な麦汁を抽出します。ここではその中の粉砕の工程を行います。
秩父蒸溜所では1回の仕込みで400キロの大麦麦芽を使用しています。この第一蒸溜所では主に国産の麦芽を使用し、第二蒸溜所ではイングランドやドイツといった海外の麦芽を使用しています。国産の大麦は主に秩父周辺で作られているものを使用していますが、栃木県産のものなども使用しています。機械や手作業で異物が入っていないか確認した後、麦芽はリフトで持ち上げられ、粉砕機に投入されます。湿度の高い6月頃には、粉砕機の中で粉が粉砕機の壁に付着してしまうことがあるため、写真下部の机にあるハンマーで粉砕機を軽く叩いて麦芽を落としているそうです。

秩父蒸溜所内の粉砕機

粉砕の黄金比

次の糖化工程のために粉砕した大麦をグリストセパレーター(ふるい)にかけ、各麦芽のサイズと割合を調節します。粉砕比率の黄金比と言われるハスク:グリッツ:フラワー=2:7:1の法則があり(粒度が荒いものから低いものの順)、秩父蒸溜所でも同様に「フラワー」と呼ばれる粒度が低い(粒が細かい)大麦の粉は比率としては少なめに設定されています
しかしこの法則に従うのみではなく、糖化工程の状況やその日の気候を鑑みて適宜割合を調節しているそうです。

粒度比率の調整(左からハスク、グリッツ、フラワー)

②糖化(マッシング)

糖化とは

糖化とは、粉砕した麦芽に温水を加えて加熱し、穀類のデンプンからアルコールの素となる糖を生成することです!
まずは、粉砕した麦芽をグリストビンに投入し、お湯を混ぜてお粥状にします。

糖化槽の内部の様子

秩父蒸溜所の糖化工程

糖化は温度を上げながらお湯を投入して麦汁を引き抜くという工程を3回繰り返し行いますが、2番麦汁(2回目のお湯の投入後に引き抜いた麦汁)や3番麦汁を造る際は、水圧で麦の層が壊れることを防ぐためにシャワー状にお湯を加えるそうです。引き抜きが済んだ1番麦汁と2番麦汁は次の発酵工程に移動し、3番麦汁は次の1回目として1~2%の残糖とともに使用されます。

糖化槽(マッシュタン)の外面の様子

③発酵(ファーメンテーション)

発酵とは、糖が酵母の作用でアルコールに変わる化学変化のことをさし、アルコールが初めて生まれる工程です。
秩父蒸溜所では、フルーティーな麦汁にするために約100〜130時間という長めの発酵を行います。
また、発酵槽(ウォッシュバック)についても世界的にも珍しいミズナラでできた発酵槽を使用しています。酵母による発酵だけではなく、ミズナラの木に住み着いている乳酸菌を使って発酵をすすめていくことで、オリジナリティのあるフレーバーが出来上がります。
実際に、発酵1日目の発酵槽の匂いを嗅がせてもらいましたが、アルコール度数はまだ数%であるにもかかわらず、しっかりとアルコールの良い香りがしました。次の日になるとアルコール度数は7%まで上がり、バナナのような甘いフルーツの香りがしてくるそうです。

8個あるミズナラ製の発酵槽

④蒸留(ディスティレーション)

関節加熱方法を用いた蒸留

蒸留とは、水を取り除いてアルコールだけを抽出する工程です。
秩父蒸溜所の第一蒸溜所では2,000リットルと小さめなスコットランドのフォーサイス製のポットスチルを使用しています。また、ポットスチルの内部に熱い蒸気を通して加熱し、沸点に達したアルコールが蒸気となって水の通ったパイプを通ることで液体となる間接加熱方法を用いて蒸留しています。

スコットランドのフォーサイス製のポットスチル

ミドルカット

「ミドルカット」とは、再留の時にフォアショッツ(前留)とフェインツ(後留)を取り除いたハート(中留)を抽出する作業のことを指します。この作業は五感を頼りに行われるため、ミドルカットの担当者は長い経験やトレーニングを重ねることで、特に嗅覚を高めていきます。秩父蒸溜所らしいウイスキーが造り続けられているのは、熟練の技を代々受け継いでいるからこそですね!
またそれ以外にも、泡が高くなりすぎないようにサイトグラス(ポットスチルの上部にある窓)から目視で確認しています。

ポットスチルから流れ出る蒸留液には3種類あります。一般的に最初に流れ出る「ヘッド」、途中で流れ出る「ハート」、最後の方に流れ出る「テール」と区分されています。
実際に蒸留液の香りをノージングさせていただくと、「ハート」以外の「ヘッド」「テール」にはそれぞれ違う香りが感じられ、たった20〜30秒の中でも香りは変わっていました。
選定された蒸留液は、1ヶ月分ほど溜まったのちに樽詰めされます。

蒸留時間によって異なる香りをノージングする様子

⑤熟成

秩父蒸溜所には7つの貯蔵庫があり、それぞれの貯蔵庫で熟成を行っています。ここには秩父蒸溜所で造った原酒以外にも、海外の原酒など幅広く貯蔵されています。原酒を入れる樽はバーボン樽をはじめとして他にもミズナラ樽などを使用しています。旭川から原材料である木材を直接購入して、自社で製造・修理まで行っています。

貯蔵庫内の様子

第二蒸溜所

第二蒸溜所について

第一蒸溜所から車で5分ほど移動すると第二蒸溜所があります!
第二蒸溜所の基本的な造りは第一蒸溜所と変わりませんが、1回で仕込む麦汁が1万リットルと第一蒸溜所の5倍の規模があります。糖化槽の上部にある小窓から糖化の様子を見ることができました!

糖化槽にて麦芽と温水を混ぜる様子

直火蒸留方法を用いた蒸留

また第一蒸溜所とは異なり、第二蒸溜所ではガスバーナーを用いた直火蒸留を行っています。間接加熱蒸留と異なり、ポットスチルの内部が700〜800℃と非常に高温になります。

第二蒸溜所にて直火蒸留を行うポットスチル

樽の製造工場

樽工場では3、4人ほどがミズナラ樽の製造やバーボン樽の修理・加工などを行っています。
まず、チューリップ型に組み上げたミズナラの木の板を「焼き曲げ機」と呼ばれる機械にかけます。次に、中央に薪をくべて火を加えて上の蓋を被せると、樽の大きさがだんだんと縮まっていきます。この工場ではミズナラ樽が年間300樽ほど製造されており、1樽造るのにおよそ1日かかるそうです。
斧やノコギリなどでカットした木は工場の外で乾燥させています。雨にもわざとさらすことで木材の中の不要な部分が流れ出ます。
実際にミズナラの原木から目利きを行ってミズナラ樽を自社生産するというこだわりこそ、秩父蒸溜所の個性あふれるウイスキー造りの秘密の1つになっています!

樽製造工場の様子

蒸溜所で働いている従業員の方にインタビューさせていただきました!

製造部 森さん

Dear WHISKY:
秩父蒸溜所ではどのような担当のお仕事をなさっているのですか?

森さん:
私は製造部に在籍しています。製造部では、大きくマッシュマンとスチルマンに分かれるのですがそのどちらも担当しております。

Dear WHISKY:
糖化から蒸留までの工程の流れを全て行っているのですね!

森さん:
スピリッツを造って樽に入れる前のニューポットを造るところまでに携わっています!

Dear WHISKY:
その中で難しいことや大切にしていることはありますか?

森さん:
やはり酒は生き物と言われるくらい繊細なものですので、衛生面や工程1つ1つの環境などにも気を付けて作業しています!

Dear WHISKY:
数ある工程の中でも楽しい事はありますか?

森さん:
最初の糖化の作業が非常に楽しいですし好きですね!どれだけの糖度が取れるかが自分の腕の見せ所になっていると思うので、すごくやりがいを感じながら出来ます。
糖度が取れれば取れるほど多くのアルコールが取れるので、それも嬉しい要素ですね!

Dear WHISKY:
糖度が上手く取れるようにするコツはありますか?

森さん:
お湯が麦芽の層を通って引き抜いていくのですが、一部のみになってしまい1つの場所からしか引き抜けていないことにより麦芽に触れる面積が減ることで糖をうまく抽出できないことがあります。
だからこそ、麦芽の層をまんべんなく同じ状態にしてお湯を巡らることがコツですね!

Dear WHISKY:
なるほど!麦芽の層の状態も非常に重要なのですね!
ちなみに造り手である森さんが秩父蒸溜所のウイスキーで好きな銘柄はありますか?

森さん:
ダブルディスティラリーズが好きです!理由としては味はもちろんですが、この銘柄の背景が非常に好きです!
ダブル・ディスティラリーズの頭文字をとった「DD」というもので「2つの蒸溜所」という意味をもっています。そして、この2つの蒸溜所というのが、2000年に閉鎖した羽生蒸溜所と2008年に設立した秩父蒸溜所です。それぞれの原酒をブレンドしているという、肥土社長の想いも感じることができ非常に好きですね!

カスクマン 茂木さん

Dear WHISKY:
秩父蒸溜所ではどのような担当のお仕事をなさっているのですか?

茂木さん:
カスクマンといって樽の管理をしております!製造部が造ったニューポット・ニュースピリッツを樽に詰めて貯蔵庫で管理しています。

Dear WHISKY:
樽に詰めるところから管理までを行っているのですね!カスクマンだからこそのこだわりや面白さはありますか?

茂木さん:
樽に詰めてから払い出すまでの作業を行っているので、樽に詰めたときから払い出すときの匂いまでノージングすることができるので、それが非常に楽しみですね!

Dear WHISKY:
秩父蒸溜所には様々な樽があると思いますが、管理の際に気を付けていることはありますか?

茂木さん:
樽詰めの時に元々そこに何が入っていたのかなどはをしっかりと確認することですね!
秩父蒸溜所ではビール樽など様々なものがあるので、樽詰めの際に樽を開けて確認するだけでなく、香りなどもしっかり確認しています!

Dear WHISKY:
カスクマンとして感じる1番のやりがいはなんですか?

茂木さん:
自分が詰めた樽を払い出しをして美味しくなっている瞬間ですね。数か月の話ではなく数年の話で非常に長いですが、そのような年月のかかったものがお客様のもとに届き、喜んで下さるのがなによりも嬉しいですしやりがいですね!

Dear WHISKY:
ちなみに好きな樽の種類とかはありますか?

茂木さん:
自社で作成しているミズナラ樽は非常に好きですね!独特の香りがしますし、どこにもない個性を感じられます!

カスクマン 山中さん

Dear WHISKY:
2023年4月に入社されたとのことですが、なぜ秩父蒸溜所で働きたいと思ったのですか?

山中さん:
様々な会社を探しているときに、秩父蒸溜所が世界的にも有名であることを知り、自分もその一員になりたいと思いました!

Dear WHISKY:
高校卒業後の入社ということでまだお酒に馴染みがないかと思うのですが、なぜお酒の仕事に携わりたいと思ったのでしょうか?

山中さん:
私の両親がウイスキーなどお酒がすごく好きで、いつか自分が携わったお酒を飲ませてあげたいなと思ったのがきっかけですね!

秩父蒸溜所取材の最後に

秩父蒸溜所の現地レポートはいかがだったでしょうか?
普段立ち入ることが出来ない場所の見学や、緻密な工程の上に成り立つ風味の絶妙な違い、自社生産のミズナラ樽を使用したこだわりのウイスキー造りなどを見学しました!
また蒸溜所の方々へのインタビューを通じて、ウイスキー造りに対する情熱や愛も強く感じました。そんな造り手の方々のウイスキーへの想いが世界的に評価されるウイスキーを生み出している秘訣の1つかもしれません。
1人のウイスキー愛好家として忘れられない1日になりました!誠にありがとうございました!

Dear WHISKYでは他にも秩父蒸溜所やイチローズモルトに関する記事を公開中です!
ぜひご覧ください!

併せてお読みください!

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