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【現地レポート】瀬戸内海の穏やかな気候のもとでお酒造りを行う江井ヶ嶋蒸留所に潜入!

2023.11.22 / 最終更新日:2024.02.01

兵庫県明石市に位置し、広大な瀬戸内海に面した江井ヶ嶋蒸留所。美しい海に囲まれ、地域に根差したウイスキー造りを行っています。

今回はそんな江井ヶ嶋蒸留所に直接お伺いし、取材させていただきましたので、その様子をお送りします!
今回の現地レポートでは、江井ヶ嶋蒸留所の製造施設や普段は一般見学することの出来ない施設などをお届けします!
蒸留所見学の際には、江井ヶ嶋蒸留所所長の中村様、ブレンダーの大川様にご案内していただきました。
ぜひ一緒に蒸留所見学をする気持ちでご覧ください!

また、江井ヶ嶋蒸留所のウイスキー製造についてや今後の江井ヶ嶋蒸留所への想いなども所長の中村様とブレンダーの大川様に独占インタビューをさせていただいています!
こちらもぜひご覧ください!

併せてお読みください!

江井ヶ嶋蒸留所とは

所長の中村様(右)とブレンダーの大川様(左)

所長の中村様(右)とブレンダーの大川様(左)

江井ヶ嶋酒造株式会社について

江井ヶ嶋酒造株式会社は、設立より100年以上にわたり多くの方々に愛されてきた総合酒類メーカーです。初代社長のト部兵吉は、明治21年(1888年)に江井島地区の酒造業者に呼びかけ、 江井ヶ嶋酒造株式会社を設立しました。
大正8年には蒸留工場を竣工し、白玉焼酎やホワイトオークウイスキーを発売。昭和になってからも、山梨ワイナリーを竣工し、大分醸造所を開設して伝統ある大分本格麦焼酎「福寿天泉」を世に送り出しました。
焼酎やみりんのほか、ワイン、ウイスキー、ブランデーなどの洋酒でも多くの名品を生み出し、江戸時代から培われてきた酒造りの技術をもって優れた商品を製造しています。

江井ヶ嶋蒸留所とは

江井ヶ嶋蒸留所は瀬戸内海に面していて、施F設内からも海を望むことができます。
昭和59年には江井ヶ嶋蒸留所が竣工され、ウイスキー製造が始まりました。
長年「ホワイトオーク」ブランドの地ウイスキーで親しまれてきました。2007年に同社初のシングルモルト「あかし」をリリースし、あかしシリーズは根強い人気を誇っています。さらに、2023年には「シングルモルト 江井ヶ嶋 SEXTET」が東京ウイスキー&スピリッツコンペティション(TWSC)で金賞を受賞しました。

施設内から見える瀬戸内海

施設内から見える瀬戸内海

江井ヶ嶋酒造株式会社江井ヶ嶋蒸留所概要

工場名 江井ヶ嶋蒸留所
創業 会社創業  :1888年
製造開始  :1961年
製造免許取得:1919年
蒸留所竣工 :1984年
本社所在地 〒674-0065 兵庫県明石市大久保町西島919番地
蒸留所HP https://www.ei-sake.jp/index.html

 

実際に江井ヶ嶋蒸留所に行ってきました!

美しい白い建物の江井ヶ嶋蒸留所

兵庫県明石市の西江井ヶ島駅から徒歩10分ほどの場所にある、江井ヶ嶋蒸留所。
蒸留所へ向かう電車の車窓からは、明石海峡大橋を望むことができました。
江井ヶ嶋蒸留所の目印はこの綺麗な白い建物です!

江井ヶ嶋蒸留所外観

江井ヶ嶋蒸留所外観

蒸留所入口

蒸留所の入口には、江井ヶ嶋蒸留所が建てられた時に使用されていた2代目の蒸留器が!
容量は初留器が5,000L、再留器が3,000Lで、シルバーウイスキーさんが使用していたものだそうです。

2代目の初溜器

2代目の初留器

2代目の再溜器

2代目の再留器

製造施設内を見学!

施設中に入ると、まず展示された大麦が目に入ります。
通常ウイスキー造りに使用される大麦麦芽は二条大麦ですが、江井ヶ嶋蒸留所では麦茶などに使われている六条大麦も使用しています。
六条大麦は、二条大麦に比べて粒が小さいのが特徴で、江井ヶ嶋蒸留所がこだわりをもっている部分の一つです。

展示された六条大麦

展示された六条大麦

歴史ある江井ヶ嶋蒸留所の初代ポットスチル

製造施設内へ向かう階段の途中では、外に置かれた初代ポットスチルを見ることができました!
江井ヶ嶋蒸留所はウイスキーの製造免許の取得が1919年、実際の製造開始は1961年であり、その当時に使用されていたのがこのポットスチルです。
先程の2代目のポットスチルは、この初代ポットスチルの形状を踏襲したもので、機能は特に変わりなく、大きさだけが異なっています。
左手に見える階段を上ると、早速製造施設内に入っていきます!

初代ポットスチル

初代ポットスチル

①粉砕

まず見せていただいたのは、粉砕機です。
粉砕とは、モルト(大麦)を細かく砕いてグリストと呼ばれる粉末状のモルトにする工程のことです。
以前はもっと大きな粉砕機があったそうですが、経年劣化によって約8年ほど前に買い替えたものだそうです。

グリストと呼ばれる粉末状のモルトを造る粉砕機

グリストと呼ばれる粉末状のモルトを造る粉砕機

②糖化

糖化は、グリストと加熱した仕込み水を混合し、麦芽内に含まれる酵素によって澱粉を糖分へと変化させる工程です。約64度で30分ほど寝かせます。

澱粉を糖分に変化させる糖化槽

澱粉を糖分に変化させる糖化槽

③濾過工程

糖化が終わった後、濾過をして麦汁(ウォート)という液体を造ります。
多くの蒸溜所では一つの設備で糖化と濾過を行うのですが、江井ヶ嶋蒸留所では、それぞれ別の設備を使用して、糖化と濾過の工程を分けて行っています。

麦汁(ウォート)を作る濾過槽

麦汁(ウォート)を作る濾過槽

濾過槽の窓からは

濾過槽の窓からは、麦汁の水位を確認することができます。

糖化槽の窓

濾過槽の窓

④発酵

酒母タンクを使用したこだわりの発酵方法

発酵とは、仕込みで造った麦汁をアルコール分7~9%ほどの発酵液にする工程のことです。
ここでできる発酵液のことを、もろみといいます。

江井ヶ嶋蒸留所の特徴は、酒母タンクで酵母を増やしてから仕込みに使用するという、日本酒や焼酎の製造と同様の作業が行われることです。
通常は発酵槽に麦汁を入れて酵母を発酵させるのですが、江井ヶ嶋蒸留所ではこの酒母タンクで先に酵母を増やしてから、発酵槽で麦汁と合わせるのだそうです。
この工程を行うことで、週に30袋必要な酵母を、たったの2袋にまで抑えることができ、使用する酵母の費用を各段に節約することができます!

酵母を増やすための酒母タンク

酵母を増やすための酒母タンク

発酵の工程

1~3日目までをステンレス製の発酵槽で、4日目を木製の発酵槽で発酵させます。
ステンレス製の発酵槽には乳酸菌が棲みつかないため、発酵の最終日だけ木製の発酵槽を使用することで、乳酸が多いもろみを造ることができます。
木桶の発酵槽は温度調整ができないのが難点ですが、ステンレスの発酵槽であれば温度が30度くらいになると自動的に冷水がでてきて温度を下げてくれる機能が備わっており、発酵中は温度調節が可能です。
タンクの容量は10,000Lですが、現在では約4,700Lの麦汁をいれて発酵させています。
ちなみに地ウイスキーブームの1980年代では一年に最大で390t仕込んでおり、1日に2回仕込をして、2t分もの麦汁を入れていました。

ステンレスの発酵槽

ステンレスの発酵槽

⑤蒸留

江井ヶ嶋蒸留所で使用されるポットスチル

蒸留は、水とアルコールの沸点の差を利用して、アルコール成分を分離させる工程です。先ほどの発酵で出来上がったもろみを蒸留して、アルコール分の高いスピリッツを抽出します。
こちらが現在江井ヶ嶋蒸留所で使われている、間接加熱蒸留式のポットスチルです。

蒸溜を行う初溜器(左)と再溜器(右)

蒸留を行う初留器(左)と再留器(右)

ポットスチルに付けられた窓

先程の2代目のポットスチルと形状はそっくりですが、2代目と現代では窓が大きく異なっています。マンホールの部分のガラス窓、泡を確認するための縦長の窓が新しく付けられました。
先程発酵した4,700Lのもろみから、アルコール度数21~22%の蒸留液が、約1,700L出来上がります。

マンホール型のガラス窓

マンホール型のガラス窓

⑥ニューポットの貯蔵タンク

こちらのタンクで出来上がったニューポット(蒸留を終えたばかりのウイスキーの原液)を貯蔵します。
一つのタンクで約15t分(約9,000L)を貯蔵することができます。ここに一度溜められてから、樽詰めの工程に入ります。

ニューポットを貯蔵するタンク

ニューポットを貯蔵するタンク

⑥樽詰め

先程の貯蔵タンク内のニューポットを樽詰めします。
取材時には、ちょうど従業員の方が樽詰め作業をされている最中でした!
樽に関しては、シェリー樽が多くの割合を占めますが、バーボン樽、ポートワイン樽や日本酒樽など、合計で約20種類ほどの樽がありました。

従業員によって樽詰めされる様子

従業員によって樽詰めされる様子

⑦熟成工程

出来上がったニューポットを樽詰めした後、樽の中で長期間じっくりと寝かせる工程を熟成といいます。樽に詰めて長期間熟成させることで、無色透明のニューポットに樽由来の成分が溶け出し、ウイスキー特有の美しい琥珀色へと変化していきます。
江井ヶ嶋蒸留所では7つの蔵が敷地内に点在しています。
以前は7つの蔵すべてで日本酒の製造が行われていたのですが、現在では三蔵がウイスキー貯蔵のために使用されています。

かつて芋が貯蔵されていた貯蔵庫

最初に見せていただいたのは、もとは日本酒の貯蔵庫だったというこちらの貯蔵庫です。
現在は、シェリー酒メインで貯蔵しています。
かつて芋を原料とした蒸留酒を製造していた際には、芋の貯蔵庫として利用されていたこともありました。
かつては日本酒が貯蔵されていた貯蔵庫

かつては日本酒が貯蔵されていた貯蔵庫江井ヶ嶋蒸留所では「オールドシェリーバット」と呼んでいる樽があります。これはあまりに古いため、今まで何回ウイスキーが詰められてきたかの履歴がわからないほどだそうです。おそらく、1970年代から1980年代に輸入した樽だと考えられます。
約四半世紀前の樽ですが、今のシェリー樽とは異なる独特の風味が効いていて、まだまだウイスキーに良い風味を生み出す、貴重な樽です!

江井ヶ嶋蒸留所のオールドシェリーバット

江井ヶ嶋蒸留所のオールドシェリーバット

七番蔵

こちらが、江井ヶ嶋蒸留所がもつ7つの蔵のうちの一つ、七番蔵です。かなり古い造りの建物ですが、中はとても広々としており、バーボン樽をはじめ様々な種類の樽が貯蔵されています。
蔵の半分には日本酒の貯蔵に使われるタンクがあり、江井ヶ嶋酒造の長い歴史を感じさせます。

七番蔵入口

七番蔵入口

七番蔵の中で見せていただいたのは、栗の木で作られた樽です。
こちらは2022年の12月に詰められたもので、樽の下部から少し液漏れしてしまっているのがわかります。ニューポットを詰める前に、必ず水を入れて数日間置くことで中身が漏れないかテストをするそうなのですが、どうしても一部の樽からは原酒が漏れてきてしまうそうです。
厳しいチェックを施していても、やはり膨大な数の樽を管理することの大変さが感じられます。

栗の木で作られた樽

栗の木で作られた樽

試飲ブースの様子も案内していただきました!

蒸留所の施設内を見学させていただいた後は、試飲ブース内を案内していただきました。
ウイスキーのみならず、日本酒やオンライン・蒸留所限定販売のウイスキーボトルを始め、東京ウイスキー&スピリッツコンペティション(TWSC)2023 金賞のシングルモルト 江井ヶ嶋 SEXTETまで、豊富な種類のお酒を試飲・購入することができます。
本記事では、以下の4つのウイスキーボトルを紹介します!

左からシングルモルト 江井ヶ嶋 栗カスク、ホワイトオーク シングルモルトあかし、シングルモルト 江井ヶ嶋 SEXTET、シングルモルトあかし PXシェリーカスク5年 HEAVILY PEATED

左からシングルモルト 江井ヶ嶋 栗カスク、ホワイトオーク シングルモルトあかし、シングルモルト 江井ヶ嶋 SEXTET、シングルモルトあかし PXシェリーカスク5年 HEAVILY PEATED

シングルモルトあかし PXシェリーカスク5年 HEAVILY PEATED

フェノール値50ppmの麦芽を100%を使用し、蒸留したモルトウイスキーをPX(ペドロヒメネス)シェリーカスクで5年間貯蔵したウイスキー。
少し酸味があり、ダークチョコレートのようなコクと深みが感じられる味わいです。口にした後も、スモーキーな余韻が長く続くのが特徴です。

シングルモルトあかし PXシェリーカスク5年 HEAVILY PEATED

シングルモルトあかし PXシェリーカスク5年 HEAVILY PEATED

シングルモルト 江井ヶ嶋 栗カスク

こちらはオンラインショップと本社販売限定のウイスキーボトルです。国産の栗材を使用した新樽で3年間貯蔵しました。
ウイスキー樽の木材としては珍しい、栗の木を使用した樽で熟成されたウイスキーです。甘い栗の木の香りに加え、味わいは濃厚でしっかりとしたコクがあります。
製造に際して栗そのものは一切使用していませんが、後味まで栗のほのかな甘みと渋みを感じられる、全く新しいウイスキーです。

シングルモルト 江井ヶ嶋 栗カスク

シングルモルト 江井ヶ嶋 栗カスク

ホワイトオーク シングルモルトあかし

東京ウイスキー&スピリッツコンペティション(TWSC)2023で銀賞を受賞した、ホワイトオーク シングルモルトあかし。
シェリー樽、バーボン樽で貯蔵したモルトをブレンドしました。
それぞれの樽の個性が感じられ、複雑で豊かな香味が特徴的です。
シングルモルト 江井ヶ嶋 SEXTETとはまた異なる魅力を感じられるウイスキーです。

ホワイトオーク シングルモルトあかし

ホワイトオーク シングルモルトあかし

シングルモルト 江井ヶ嶋 SEXTET

東京ウイスキー&スピリッツコンペティション(TWSC)2023で金賞を受賞した、シングルモルト 江井ヶ嶋 SEXTET。
日本酒カスク、芋焼酎シェリーカスク、ポートワインカスク、スパニッシュブランデーカスク、オールドシェリーバット、ビアカスクの6種類の樽を使用して造られた、江井ヶ嶋蒸留所だからこそできるブレンドです。
香りはフルーティでとても華やかで、滑らかな味わいが特徴です。スモーキーさと共に甘い余韻が長く続きます。

シングルモルト 江井ヶ嶋 SEXTETとブレンダーの大川様

シングルモルト 江井ヶ嶋 SEXTETとブレンダーの大川様

神鷹 水元仕込・日本魂 AGED BY THE SEASIDE

神鷹(左)、日本魂(右)

神鷹 水もと仕込み(左)、日本魂 AGED BY THE SEASIDE(右)

江井ヶ嶋蒸留所が水もと仕込みという方法を用いて造られた日本酒が、神鷹 水もと仕込みです。
そして神鷹をホワイトオーク樽に入れて熟成させた商品が、日本魂 AGED BY THE SEASIDEです。
現在では、日本魂を熟成させるために使用した樽でニューメイクも貯蔵しているそうです!

以上、現地レポートでした!

以上、江井ヶ嶋蒸留所の蒸留所見学レポートでした!
江井ヶ嶋蒸留所では、穏やかな気候のもとで瀬戸内海の恵みをふんだんに受けたウイスキー造りが行われていました。蒸留所は瀬戸内海に面しており、施設内から綺麗な海を望むことができました!
風光明媚な瀬戸内で、革新的なウイスキー造りに挑戦し続ける江井ヶ嶋蒸留所から、今後どんなウイスキーが生まれるのか、ウイスキー好きの一人としてとても楽しみになりました!
皆さんもぜひ江井ヶ嶋蒸留所に足をお運びください!

併せてお読みください!

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