【独占インタビュー】MAOI株式会社代表取締役社長の村田さんに独占インタビュー!
- 造り手
- 蒸溜所(日本)
黄桜丹波蒸溜所は、歴史ある城下町と豊かな自然に囲まれた兵庫県丹波篠山市にあります。
”食と彩りの国”として有名な丹波篠山市で、長年の清酒製造で培った技術を生かしたウイスキー造りをされている丹波蒸溜所に、直接伺い見学をさせていただきました!
今回は、清酒造りのノウハウを生かして、華やかで芯のある、誰からも美味しいと思ってもらえるウイスキーを目指されている黄桜 丹波蒸溜所の内部の様子をお伝えします。
この記事でしか見れない写真も掲載しているので、ぜひ一緒に見学する気持ちでご覧ください!
また、営業統括部の友國様と醸造部の野口様に、ウイスキーにかける熱い想いや製造のこだわりについて独占インタビューをさせていただいています!こちらの記事もぜひご覧ください。
黄桜は、1925年に松本治六郎によって創業された「松本治六郎商店」を礎として始まった会社で、2025年で創業100年を迎える会社です。
日本酒業界内での後発メーカーという立場を活かし、「独創的な発想」と「斬新な行動」をモットーに掲げ、日本酒業界では先駆けて行ったテレビCMの放送や、京都初の地ビールレストラン「カッパカントリー」や日本酒造りと地ビール造りが同時に工場見学できる「伏水蔵」を作るなどの、概念にとらわれない商品開発などを行ってきました。2018年からウイスキー事業に参入し、華やかで芯があるウイスキーを目指して、数々の銘品を世に送り出しています。
東京ウイスキー&スピリッツコンペティション2023では「黄桜 丹波シングルモルト Bottled in 2022 2nd」が洋酒部門で金賞を受賞しました。
蒸溜所名 | 黄桜株式会社 丹波蒸溜所 |
創業開始年 | 1925年 |
本所所在地 |
兵庫県丹波篠山市今田町本荘1−19
|
蒸溜所公式HP | https://kizakura.co.jp/tamba/ |
大阪駅から電車で約50分、更に相野駅から車で約20分ほど走った先に、黄桜丹波蒸溜所はあります。11月後半に取材させていただいた際、敷地は鮮やかな紅葉に囲まれていました。
標高の高い場所に位置する丹波蒸溜所は、1年の寒暖差が30℃を超える、ウイスキーの貯蔵にとても適した環境です。
壁面には”桜”を模った黄桜のエンブレムが描かれていました!
敷地内の小道を進むと、右手に蒸留施設が見えてきます。
蒸留施設の前には、冷却水として使う井戸水を貯めるための大きなタンクがあります。このタンクは元々清酒を貯蔵していたタンクだったそうです。敷地内には多くの湧き水も見られ、水に恵まれた土地だということがわかります。
ここからは蒸溜所の内部の様子をお届けします!
丹波蒸溜所では、黄桜株式会社が1995年より開始した地ビール造りで培われた知見を生かして、麦汁が造られています。
モルトは英国産のものが使用されており、粉砕比率は一般的な比率よりも少し粗めです。
モルトを細かくしすぎてしまうと余計な成分まで抽出されてしまうという、ビール製造で培った知見を生かし、丹波蒸溜所では粗めに挽いたモルトを使用しています。
乳酸発酵が進むことによって香りにも違いが出て来るそうです。
丹波蒸溜所の発酵槽はウイスキー造りでは珍しいホーローが内側に使われています。
ホーローとは金属の表面にガラスをコーティングを施した素材であり、微生物の働きをコントロールしやすく、保管や衛生面の管理が容易であるため、主に日本酒造りにおいて使われています。
最近では木製の発酵槽を導入したというお話もお聞きしました。今後丹波蒸溜所の原酒がどのように変わっていくか楽しみですね!
下記写真の左側にはもろみの攪拌に使用する櫂棒(かいぼう)が映っています。櫂棒とは棒の先に板がついている道具のことで、元々は日本酒の製造過程で米や米麹、水などの原料を混ぜるために使用されています。通常、ウイスキーは発酵のタイミングで攪拌の作業は入らず、対流による自然な攪拌しか行ないません。
しかし丹波蒸溜所では底に沈殿した酵母を取り、もろみ全体の濃度のムラを無くして均一にするため、人の手で攪拌作業を行っています。
発酵槽の奥には酵母の培養タンクがあります。
丹波蒸溜所ではウイスキー造りに使用する酵母だけではなく、他のお酒で使われる酵母もこの場所で培養されています。
そのため、一般的なディスティラリー酵母や自社培養のウイスキー用の酵母だけでなく清酒酵母やビール酵母などもウイスキー造りに使われています。
自社で酵母を培養することで、熟成の前段階で様々な酵母を使い、様々な味わいのウイスキー造りに挑戦できるという点も、清酒造りをされてきた丹波蒸溜所の大きな強みとなっています。
丹波蒸溜所では2004年から焼酎の製造、2018年からウイスキーの製造が開始されました。ウイスキー事業に参入した2018年から2021年までは、焼酎造りでも使用されたステンレス製の蒸留器で蒸留が行われていました。
現在このポットスチルは、ジンや焼酎の蒸留をしたり、ウイスキーの原酒を作り分けるために年数回使用されています。
丹波蒸溜所では2021年に銅製のポットスチルを導入し、蒸留の際、1つの発酵槽で出来たもろみを2回に分け1度目の蒸留(初留)をし、初留2回分をまとめて2度目の蒸留(再留)をしています。蒸留器のサイズはそれぞれ2,500L、2,000Lとなっています。どちらも並行して蒸留を行う日が多いそうです。
そのため、写真右の初留で使用されるポットスチルの方が使用回数が多く、色合いの差が出てきています。
丹波蒸溜所で使用されているポットスチルのラインアームは初留釜ではやや下向き、再留釜では水平になっています。
ミドルカットは、官能や度数、ポットスチルから留出してくる液体の量を見ながら決めています。前回蒸留したものをサンプルとして保管しておくことで、均一なウイスキーを造れるようにされているそうです。
この機器を使い、アルコール度数を測定しています。
蒸留施設から小道を挟んで向かい側に、丹波蒸溜所の貯蔵庫があります。周囲には湧き水や栗の実、色づいた木々があり、自然豊かな環境となっていました。
貯蔵庫内に入ると多くの樽が熟成されています。貯蔵庫内の樽は8割がバーボン樽となっています。
一番古いものはステンレスの蒸留器を使用し、生産量が限られていた初期のものだそうです。
貯蔵庫内の気温は夏の日中には35℃近くになり、冬には氷点下を下回ることもあり、寒暖差が激しい環境となっています。
そのため、ウイスキーの熟成が進みやすく、特有の味わいを出すことが出来ます。
貯蔵庫を出て坂を下るともうひとつ貯蔵庫があります。現在はダンネージで熟成されていますが、設置計画中のラックが完成すれば約3,800本の樽を収容できるそうです。中にはシェリー樽の中でも珍しいモスカテルやマデイラ、マンサニージャなどの樽も収容されています。
こちらは日本特有の木であるクリ、サクラ、ミズナラ、ヒノキ、スギで作られた樽です!
中には、鏡だけでなく側板まで全てこれらの木材で作られた樽もありました。
この施設内には先ほどの蒸留施設からパイプで原酒を運び、コンテナで受け、その下に樽を置いて樽詰めする設備もあります。
同じ丹波地方で造られている「丹波ワイン」の赤ワイン樽で後熟した、シングルモルト丹波の第4弾、「黄桜 丹波シングルモルト Bottled in 2023 2nd」を試飲させていただきました。この商品は濃密な味わいの「ブラッククイーン」と、軽快な香味の「マスカットベーリーA」の2種類のワイン樽の原酒をブレンドしたウイスキーです。
この2つの樽のブレンドにより、味わいが複雑で、フルボディな果実味の中にタンニンのキレが冴えるウイスキーとなっていました。
以上、黄桜丹波蒸溜所の内部をお届けしました!今回は醸造部部長の野口様、ブレンダーの河内様に蒸溜所内部を案内していただきました。
丹波の豊かな自然を感じながら長年清酒産業に携わってこられた黄桜株式会社ならではの知見を生かされたウイスキー造りの様々な工夫や、芯がある、誰からも美味しいと思ってもらえるウイスキー造りを目指されているこの蒸溜所の魅力を感じるお話をたくさんお聞きすることができました!ありがとうございました。