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【現地レポート】本坊酒造発祥の地・津貫で造るウイスキー マルス津貫蒸溜所

2024.06.03 / 最終更新日:2024.07.08

本坊酒造発祥の地であり、焼酎造りの伝統を継承する南さつま市加世田津貫。盆地特有の寒暖差のある気候・風土を生かした、マルス津貫蒸溜所のウイスキー造りに迫ります。
取材では、蒸溜所所長の折田浩之さんとチーフディスティリングマネージャーの草野辰朗さんにご案内していただきました!

また、次回のインタビュー編では折田さんと草野さんに、マルス津貫蒸溜所の魅力や長所、他の蒸溜所にはない津貫ならではの色、本坊酒造発祥の地でウイスキーを造ることの意味や重要さについてお伺いしました。
こちらも是非併せてご覧ください!

併せてお読みください!

マルス津貫蒸溜所について

マルス津貫蒸溜所 蒸溜所紹介

世界的なウイスキー需要の拡大を受けて多様なモルト原酒の確保と安定した生産体制確立のため、本坊酒造は、2016年に発祥の地である南さつま市の津貫に、マルス津貫蒸溜所を開設しました。日本のウイスキー蒸溜所の中でも特別南に位置しているこの蒸溜所は、ただ温暖なだけでなく盆地という風土も相まって夏は暖かく、冬は雪が降るほど寒い盆地特有の気候風土にあります。そのため、マルス駒ヶ岳蒸溜所の冷涼な気候で熟成されたウイスキーとは、熟成の期間が同じでも熟成感が全く異なる味わいのウイスキーが出来上がります。

蒸溜所名 マルス津貫蒸溜所
竣工 2016年
所長 折田 浩之様
所在地 〒899−3611 鹿児島県南さつま市加世田津貫6594
電話番号 0993-55-2121
公式HP マルス津貫蒸溜所公式HP
マルス津貫蒸溜所外観 左:草野さん 右:折田さん

マルス津貫蒸溜所外観 左:草野さん 右:折田さん

実際にマルス津貫蒸溜所に行ってきました!

蒸溜所入り口

鹿児島空港から車で約90分。鹿児島県の中でも南西の端に位置する津貫は、南国鹿児島らしく12月でも思いのほか暖かく、空気の澄んだ心地よい場所でした。蒸溜所に近づくにつれ段々と見えてくる聳え立つ背の高い建物には、津貫蒸溜所の文字があります。

旧蒸留塔外観

取り巻く自然環境

津貫蒸溜所のある南さつま市、中でも津貫は盆地になっていることから九州南部に位置しているのにも関わらず、冬には大きく冷え込みます。年間を通して盆地特有の気温差のある津貫ならではの熟成環境は、標高が高く冷涼な駒ヶ岳蒸溜所とは大きく異なっており、熟成された原酒は津貫らしさを全面に押し出してくれます。さらに、本坊酒造は屋久島にも樽貯蔵庫を保有しており、ジャパニーズウイスキーのメーカーとしてはとても珍しい、気候風土が異なる3箇所でのウイスキー熟成を実現させています。

蒸溜所各地にある説明パネルはウイスキー初心者でも楽しめる工夫です。

早速一番目を引く巨大な旧蒸留塔へ!

まず折田さん、草野さんが案内してくださったのは旧蒸留塔。1970年代前半まで稼働していたスーパーアロスパス式精製酒精蒸留装置の当時のままの姿がガラス越しに見上げることができます。ウイスキー造りには使用されていなかったこの設備ですが、本坊酒造が焼酎など様々な蒸留酒を造っていた場所です。中にはパネルが並んでおり、1872年、鹿児島、津貫より始まった本坊酒造の歴史や背景が紹介されています。

スーパーアロスパス式精製酒精蒸留装置

本坊酒造・マルスウイスキーの歴史を学ぶパネル

パネルには自然環境に恵まれた津貫、良質な水資源など、酒造りの始まりが解説されています。1909年から始まった酒造りや、本坊家7兄弟が始めた事業拡大の様子や歴史が、写真とともに事細かに学べます。当時の写真を眺めながら時代背景など理解でき、蒸溜所巡りで初めて知る現地ならではの楽しさを味わうことができます。

歴史について詳細に学ぶことができる

鹿児島で使用されていた小型蒸留釜

建物の角にはスーパーアロスパス式精製酒精蒸留装置の他にも、ウイスキーに使用されるポットスチルに近い見た目の小型蒸留釜があります。岡山のワイナリーでブランデー造りに使用されていた小型蒸留釜を鹿児島でウイスキー造りに使用していました。容量は500Lと小さいですが、駒ヶ岳というウイスキー造り理想の地を見つけるまで、山梨と鹿児島でウイスキー製造を行っていました。

以前使用されていた小型蒸留釜

ウイスキー蒸溜棟の中へ

ウイスキー蒸溜棟見学

旧蒸留塔のすぐ隣には、今現在稼働している蒸留施設があります。ここはウイスキー専用の蒸留施設となっており、焼酎の製造などはまた別の施設に分かれているそうです。旧蒸留塔と比べると小さく見えるこの建物も、実際に入ると中は広く、見学に来た方々にもわかりやすいようにパネルや説明が整備されています。

ウイスキー蒸溜棟入り口

地元の応援と歴史

中に入ると一番に目に入るのが、左手の壁に飾られた大きな書道作品です。先日行われた「津貫蒸溜所祭り 2023」において、地元の高校生たちがパフォーマンスの一環で書き上げた作品だそうです。地域に根ざしたお酒造りを長年続けてきた本坊酒造だからこその、地元の方々との交流や関係性の良さを感じられます。

併せてお読みください!

地元の高校生の作品など地域に根ざした蒸溜所

粉砕室

産地・工程の工夫

スコットランド・イングランド産を中心に、ドイツ・ベルギー・オーストラリア・ニュージーランドなど世界中の麦芽を使用する中で、一部地元産のものも使用されているそうです。地元鹿児島県産の麦芽、ローカルバーレイ、からは独特な豊かな風味が感じられるそうで、複雑なエステル香を引き出すのに技術と時間はかかるが完成度の高いウイスキーが出来上がります。この蒸溜所ではピーテッドモルトが、マルス駒ヶ岳蒸溜所と比べると少し多めに利用されており、津貫蒸溜所の目指す力強さの表現に繋がっています。粉砕比率に関しては、重量比だけでなく形や砕け方など細部にまで目を凝らした上で、次の工程でマッシングした麦汁の味や香りを主軸に細かく調節されています。

世界中からの麦芽が集まる粉砕室

マッシング

繊細な技術を要する最難関な工程

草野さん曰く、三宅製作所のマッシュタンが使用されており、綺麗な麦汁を余すことなく回収するのには技術を要します。麦汁を濾過しながら吸い出す工程などにおいても、バルブ開閉の力加減や勢いを感覚で理解しコントロールすることが求められるマッシングは、繊細さが求められる作業の一つに入るそうです。

三宅製作所製のマッシュタン

発酵槽

安定性に優れた発酵工程

夏場の気温上昇などの理由により、津貫蒸溜所ではステンレス製の発酵槽が採用されている上に、それでもまだ暑くなるとコントロールが難しいため、発酵室の中に空調も整備し万全の環境が整えられています。ステンレス製の発酵槽は調整・管理のしやすさがメリットであり、その再現性の高さも採用理由の一つだそうです。92時間の発酵期間を固定したまま、もろみの温度や発酵進度を調節することで、ウイスキー造りのゴールの一つである、いかにもろみに香味成分を含ませられるかを目指します。

合計5つのステンレス製発酵槽

ポットスチルと蒸留工程

ポットスチルへのこだわり

蒸留工程のポイントとして重要なのが蒸溜釜の設計であり、どんなモルト原酒が出来上がるかを大きく作用します。津貫蒸溜所では、深みのある力強い原酒を目指しており、駒ヶ岳の繊細でふくよかな味わいと異にしています。気化したアルコールが内部で対流し、液体・気体を行き来することで純度を高めるくびれ付きや連続式蒸留機とは違い、あえてその対流や引っ掛かりをなくしたオニオン型の蒸溜釜が使われています。さらにワームタブという、伝統的な冷却装置を採用したことにより、風味豊かで重厚なモルト原酒が出来上がります。

オニオン型のポットスチルとその後ろのウォームタブ

蒸留工程の特長

蒸留工程においても細かな技術や工夫があり、麦汁の泡立ち加減などにも細心の注意を払っています。官能評価アルコール度数で判断し、もろみの香りを最大限引き出すためのこだわりが見受けられます。テールへの切り替えタイミングにおいても、どのような原酒が造りたいかによって調整しており、香りや風味の細かな違いを日々研究されています。

横についている小窓から泡立ちの具合を確認できる

石蔵樽貯蔵庫

樽貯蔵庫入り口・内部

1953年から使われてきた石蔵の樽貯蔵庫の中は、外気の影響を瞬時に受けることはなく、日が沈んでいた時間帯に冷えた空気が内部に残っているためとても涼しくなっています。樽自体も所狭しと詰め込まれているわけではなく、比較的余裕を持って配置されていることから貯蔵庫特有のウイスキーが揮発した香り、樽の木の香りやフルーツを思わせる甘い香りなども楽しめます。

石蔵樽貯蔵庫入り口

多様な樽の数々

ここ津貫では、バーボン樽やシェリー樽を始め様々な樽が使用されており、それぞれの樽に書かれた言語の違いや色や材質の違いにも目を惹かれます。梅酒の熟成に使用した樽や鏡部分のみ桜を使用した樽などの珍しいものも扱っています。

樽一つ一つに歴史と個性が

樽の特色

近くで注目して見るとそれぞれの樽の違いがよくわかります。桜の樽には柿渋が塗られていたり、古いバーボン樽にはアメリカで補修されていた際に使用された松脂が塗られていたりと、漏れ留め一つとって注目しても樽の歴史や文化が感じられます。さらにこの貯蔵庫には、 2016年津貫が開設した当時の1・2・3番樽が並んで貯蔵されているので、蒸溜所にお越しの際はぜひ探してみてください!

津貫の1・2・3番樽

樽の管理

津貫蒸溜所ではこれらの樽の状態確認のために1年に一回、 全てのノージング・テイスティングを行っています。約1ヶ月かけてチェックしたのち、番号で管理されているこれらの樽にはそれぞれのコメントと点数がつけられるそうです。それらの中からシングルカスクで販売されるものや、次のブレンド・ヴァッティングに使用するものなどを日頃から把握されています。また本坊酒造としての強みが生かされた、ワインや梅酒が入っていた樽での熟成なども行なっており、総合酒類メーカーならではの知見が活かされています。

石蔵樽貯蔵庫の中には約300本の樽が

1933年に建築された本坊家旧邸「寶常(ほうじょう)」

Barとショップ

1933年に建築されたこの建物は本坊家旧邸「寶常」。現在はショップ兼バーとして営業しています。中には当時を再現した部屋や綺麗に手入れが行き届いた日本庭園など、伝統的な日本家屋とアンティーク家具を備えた贅沢な空間です。各所の柱やへりなどは当時のものが生かされており、古色蒼然とした威厳のある佇まいです。

威厳ある伝統的な木造建築家屋の寶常

バーカウンター

この奥ゆかしさや重厚さに合わせた家具の多くがヨーロッパのアンティーク家具だそうです。中でもバーカウンターは迫力があり、バックバーに並ぶ美しくライトアップされたボトルの数々を映画のワンシーンのような気分で楽しめます。

重厚感あふれるバーカウンター

蒸溜所限定のウイスキー

カフェバーでは様々なウイスキーを楽しむことができます。中には、先日の「津貫蒸溜所祭り 2023」で抽選で販売された限定の「ローカルバーレイ」、鹿児島県産の麦芽のみで造られたシングルモルトウイスキーもあります。さらに、シェリー樽熟成のピーテッドウイスキーも。こちら、ノンチル・ノンフィルターでボトリングされたため、よく見ると液体が濁っています。そのため、実際に試飲(有料)できる場所は駒ヶ岳、津貫、屋久島だけのウイスキーです!

シェリーカスク熟成ピーテッドシングルカスクウイスキー

次回は所長の折田さんとチーフディスティリングマネージャー草野さんへインタビュー!

以上、マルス津貫蒸溜所の現地レポートでした!
歴史と伝統を受け継ぐ、本坊酒造とマルス津貫蒸溜所の成り立ちや現代まで続く酒造りの継承が理解できる素晴らしい蒸溜所でした。ウイスキー初心者から、ウイスキーのみならず様々なお酒好きでも楽しむことができるよう工夫された設備と、地域に根差してきた本坊酒造だからこそ語れる鹿児島のお酒造りを感じることができました。
次回の所長の折田さんとチーフディスティリングマネージャーの草野さんへのインタビュー編ではマルス津貫蒸溜所だからこその特徴と本坊酒造の歴史、津貫という土地の素晴らしさなどを伺いました!
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