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【Exclusive Interview】Calum Rae-Holyrood Distillery
- 造り手
- 蒸溜所(海外)
2018年にボーダーズ蒸溜所が設立されたことにより、1837年以来行われていなかったウイスキー造りがスコティッシュボーダーズ(ボーダーズ地方)に復活しました!ボーダーズ地方の製造拠点であるホーウィックに建つボーダーズ蒸溜所は、この地方の伝統に従いつつスコッチウイスキーメーカーとして日々成長を遂げています。
この記事では、ボーダーズ蒸溜所設立の背景や、創設者の一人である、ジョン・フォーダイスさんに案内していただいた蒸溜所ツアーの様子をお届けします。
蒸溜所名 | ボーダーズ蒸溜所 |
創設者 | ジョン・フォーダイス、ティム・カートン、トニー・ロバーツ、ジョージ・テイト |
住所 | The Borders Distillery, Hawick, Scottish Borders, TD9 7AQ, United Kingdom |
創設年 | 2018年 |
公式サイト | 公式HPはこちらから! |
ボーダーズ蒸溜所(正式名称:ザ・スリー・スチルズ・カンパニー)は、スコッチウイスキーに造詣の深い、ジョン・フォーダイスさん、ティム・カートンさん、トニー・ロバーツさん、ジョージ・テイトさんの4人によって設立されました。2015年にスコットランド国境最大の町の1つであるホーウィックで、使われていなかった電気工学工場を購入し、蒸溜所へ建て替えるプロジェクトを始めました。ボーダーズ地域に一度廃れてしまったウイスキー産業を復活させることになぞらえて、使われていない建物を復元して再利用することにこだわりました。
また、新しく建物を建築しないという決断の理由には、環境への配慮もあります。
創設者の一人であるジョンさんは、ウイスキー造りにかかる多大な時間を考えると、長期的な視点で環境の持続可能性を考慮することは、蒸溜所の将来に良い影響があると考えています。この環境に配慮した建築方法により、ボーダーズ蒸溜所は建築や環境など様々な分野で賞を受賞しています。
ボーダーズ蒸溜所
ホーウィックはスコティッシュボーダーズで最も繁栄してきた町の1つであり、スコットランドの名産品の生産やスコットランドの文化と伝統が根付いているにも関わらず、180年以上の間ウイスキー造りが行われていませんでした。
蒸溜所をホーウィックに建設する決め手となったのは、ホーウィックの産業文化と使われていなかった電力工場の存在です。蒸溜所として生まれ変わった今も、電力工場当時の外観はできる限り残されています。
ボーダーズ蒸溜所の概要については、下記の公式ビデオをぜひご覧ください!
(参照:ボーダーズ蒸溜所公式サイト)
エディンバラとニューカッスルのちょうど真ん中に位置するボーダーズ蒸溜所は、フェリーでニューカッスルを訪れるイギリスだけでなくヨーロッパ全体の人々に人気があります。
エディンバラからのアクセスは、蒸溜所から近い主要な駅であるガラシールズでまで電車で約50分、そこから蒸溜所まではバスで約35分です。また、エディンバラ駅から徒歩2分の場所にあるサウスブリッジのバス停からバスで行くこともできます。この場合乗り換えの必要はありませんが、2時間以上バスに乗る必要があります。
ニューカッスルからの公共交通機関の選択肢はあまりありません。しかし、ニューカッスルからは車で1時間半程度なので、ニューカッスルからエディンバラに向かう際に立ち寄るのに最適な町となるでしょう。
ボーダーズ蒸溜所がシングルモルトウイスキー造りを始めたのはわずか5年前のため、完成品はまだ発売されていません。そんなボーダーズ蒸溜所の造りを体験するには、すでに発売されている2種類のブレンデッドスコッチウイスキーを試してみるのがおすすめです。
Lower East Side:アメリカンオーク樽で熟成され、バニラ、アーモンド、ハチミツのアロマがあり、ほんのりとスモークの香りが漂います。
Lower East Side (写真はボーダーズ蒸溜所ホームページより引用)
Clan Fraser Whisky:最高峰のシングルモルトウイスキーとグレインウイスキーのブレンドで、はちみつ、バターの香りが、少しのスパイスに包まれたレーズンとイチジクのフルーティーな香りによりさらに引き立てられています。
Clan Fraser Whisky (写真はボーダーズ蒸溜所ホームページより引用)
ワークショップ・シリーズには、
の3つがあります。ボーダーズ蒸溜所の独創的なシングルモルトウイスキーの開発につながる「踏み石」として、これらを通して様々な試みを行っています。
詳細については、こちらからご覧ください!
蒸溜所の閉館期間中も含めて年中通して営業しているショップエリア
ボーダーズ蒸溜所の創設者の一人で最高責任者であるジョン・フォーダイスさんは、繊維業界とワイン業界での経歴から、なにかを製造することにおいて、豊富な経験を持っています。ワインのブレンドとブドウ畑の管理を担当する元ワイン職人としての一面も持ち、ワインの知識をウイスキー造りに取り入れています。ワークショップシリーズの最新ボトル「The Long and Short of It」には、ジョンさんのウイスキー造りにおいて、ワインのように発酵を大切にする姿勢が表れています。
続いては、ジョンさんに蒸溜所を案内していただいた様子をお届けします!
ジョン・フォーダイスさんとボーダーズ蒸溜所のニューメイク(WS:00 NEW MAKE SPIRIT)
ジョンさん:
これは、ポルトガル人の建築家によって作られた、1/50スケールの蒸溜所の模型です。私たちは1888年からある古い建物を購入し、修復しました。100年前の建物を復元し、すべてがサスティナブルなように設計されています。
1/50の大きさで再現された蒸溜所の模型
ジョンさん:
少量のエネルギーで運用できるように、すべての設備が非常に近くに配置されています。ガラスの天井から十分な光を取り入れることができるので、電気の明かりは必要ありません。さらに、気圧差を利用した電気を使わない換気システムも備えています。
ガラスの天井により、少ない電力で明るい室内を実現
蒸溜所ツアーでは、実際にウイスキーが作られている様子を、豊富な自然光のもと写真を撮りながら見学することができます。また、実際にウイスキー造りを担当している方が案内してくださるので専門的な知識を得られるのも魅力です。
概要 | 1837年以降で初めてスコットランド国境付近に建てられたボーダーズ蒸溜所のウイスキー造りを見学できます。ツアーの後は、蒸溜所のバーでウイスキーの試飲をお楽しみください。 |
所要時間 | 1〜2時間 |
料金 | 20ポンド |
開催日時 | 月曜日~土曜日 午前11時、午後1時、午後3時(11月〜3月は冬季休業中。4月1日より再開) |
予約 | 予約はこちらから!当日空きがあれば予約なしでも参加可能です。 |
ジョンさん:
私たちはボーダーズ地域で栽培された大麦を主な原材料としています。そして、すべての蒸溜所の副産物や使用済みの大麦は地元の農場でも使用されます。つまり、廃棄物はほぼゼロで、すべてが地元の農業コミュニティーで収まります。
私たちのグリストは標準的なもので、ハスクが20%、グリッツが71%、フラワーが9%です。
グリストについて説明するジョンさん
ジョンさん:
ここではステンレス製のマッシュタンを使用しており、容量は5トンです。マッシュタンは主にステンレス製か木製で、そこで粉砕された大麦が熱湯と混ぜられ、ウイスキーやビールの元となる麦汁がつくられます。
ステンレス製は非常に丈夫で掃除が簡単であるため、水の使用量が少なくなり、効率面でも利点が多いです。
ステンレス製のマッシュタン
ジョンさん:
ボーダーズ蒸溜所には、8つのウォッシュバックがあり、通常56~72時間程麦汁を発酵させます。しかし、私たちのワークショップ・シリーズ「The Long and Short of It」では、発酵の長さを実験したかったので発酵時間は最長で150時間でした。私たちは、発酵がウイスキーの風味を決定する重要な段階であると考えています。
ステンレス製のウォッシュバックが8基並んでいます
ジョンさん:
蒸溜所内には、ガラス天井からの美しい日差しの下にフォーサイス製のポットスチル(蒸留器)が4基並んでいます。美しい曲線と内部にボイルボールを設置することで銅との接触を増やし、より滑らかな口当たりを実現しました。
この蒸溜所全体では、年間160万リットルの蒸留酒を生産することができます。
蒸留工程で使われるポットスチル
ジョンさん:
これは、カーターヘッド蒸留器と呼ばれる非常に珍しい、特殊なタイプの蒸留器です。カーターヘッド蒸留器はポットスチルとコラムスチルを合わせたもので、底にポットがあり、中には「サクリフィシャル・コッパー(犠牲銅)」と呼ばれるものが詰められています。アレンビック蒸留器と呼ばれる通常の蒸留器では、バッチ単位で蒸留するので蒸留の開始と終了がありますが、1830年代に新たに発明された連続式蒸留器は、原材料とエネルギーが尽きない限り蒸留は止まることはありません。
カーターヘッド蒸留器
ジョンさん:
蒸留の仕組みは、ニューメイクが沸騰してできた蒸気がコラムを通り、冷たい水で冷やされた管にぶつかり、液体となりまた下に戻ってきます。エタノールが銅に触れると浄化されるのを利用し、私たちはできるだけクリーンな原酒をつくるように心掛けています。
そこから、蒸気をバスケットに捕らえ、ジュニパーとスパイスで凝縮するとジン、活性炭で凝縮するとウォッカをつくることができます。
ジンの原材料
ジョンさん:
現在、熟成に用いる倉庫は蒸溜所から遠くにあります。樽に関しては、ほぼすべてバーボン樽を使用しています。私は周りが夢中になっていることに逆らうことがよくあり、ピートやシェリー樽を決して使用しない理由はその一例です。
ジョンさん:
ボトリングが行われるこの建物は、現在閉鎖中です。屋根を撤去して全面を再開発する予定です。
歴史を感じる建物と工業的な機能美を兼ね備えた蒸溜所
以上、ボーダーズ蒸溜所の現地レポートでした!ボーダーズ蒸溜所はスコットランドの国境にウイスキー造りを復活させたいという情熱に動かされて、倫理的かつ現代的なアプローチで唯一無二の蒸溜所として発展してきました。シングルモルトウイスキーを完成させるには多くの時間と準備が必要ですが、ボーダーズ蒸溜所はワークショップ・シリーズを通じてその創造性と造りの技術でファンを楽しませ続けています。地元へ雇用を生み出していることや持続可能なウイスキー造りを実現するための努力が、ボーダーズ蒸溜所がホーウィックの町に広く愛される理由となっています。
地元の方だけではなく、世界中のファンが、今この瞬間もボーダーズ蒸溜所のシングルモルト発売を心待ちにしていることでしょう。みなさんもぜひ楽しみにお待ちください!