ストラスアイラ蒸溜所 – サンディ・ハイスロップ
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絵葉書のような美しい大自然、自然が生み出した湧き水、時に厳しい大自然とウイスキー造りの理想が詰まった山形県の遊佐町。
そんな遊佐町で山形県初のウイスキー造りをしている遊佐蒸溜所に伺いました!
今回は蒸溜所見学レポートとして、営業担当の釼持さんの案内のもと、普段一般公開されていない蒸溜所の中を特別にご案内していただきましたので、その様子をお届けしていきます!
遊佐蒸溜所のこだわり抜かれたシングルモルトウイスキー造りの秘訣について詳しく伺ってきましたので、ぜひ最後までご覧ください!
「世界が憧れる酒を、ここ山形から。」を掲げ、ウイスキーの熟成の質をストレートに表現することができるシングルモルトウイスキーの蒸溜にこだわり抜いています。
その精神は「TLAS(トラス)」と呼ばれる、遊佐蒸溜所独自のウイスキー造りのコンセプトにも表れています。「T(Tiny):小さい」「L(Lovely):かわいい」「A(Authentic):本物の」「S(Supreme):最高の」ウイスキーを造ることを常に心がけているそうです。
さらに遊佐蒸溜所初の商品である「YUZA First edition 2022」は、世界で権威と影響力のあるスピリッツコンテストの一つである「インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ(ISC)2022」のテイスティングアワードにおいて「GOLD」を受賞するなど、今後ますます注目を集める蒸溜所です!
会社名 | 株式会社金龍 |
蒸溜所名 | 遊佐蒸溜所 |
設立 | 2018年10月 |
所在地 | 山形県飽海郡遊佐町吉出カクジ田20番地 |
電話番号 | 0234-25-5321 |
蒸溜所社長 | 佐々木 雅晴 様 |
名峰鳥海山の麓の町にある遊佐町。
1996年には国土交通省により「水の郷百選」と認定されるほど、良質な水である鳥海山の伏流水が流れています。
遊佐蒸溜所は自然豊かで田んぼに囲まれる町にあります!遊佐蒸溜所の背面に写る鳥海山は圧巻でした!
遊佐蒸溜所は、倉庫はグリーン、蒸溜設備の建物は赤を基調としたデザインが施されています!
これはスコットランドの蒸溜所をオマージュした少し可愛らしく綺麗なデザインを目指したそうです!
ここからは実際に蒸溜所の中に入らせていただきました!
中に入ると、まず目に入るのが巨大な麦芽の保管設備です!
遊佐蒸溜所では、スコットランド産の麦芽を使用しています。
大型トラックで運んできた麦芽をホッパーで上に運び、横についている投入口に入れていきます。
保管設備は全部で3機あり、それぞれに9tずつ合計27tの麦芽が保管できるようになっています!
また、1回の蒸溜においてモルトはおよそ1tほど使用します。
その後麦芽に振動をかけます。これは運ばれてきた麦芽の中に含まれる石やゴミを取り除くための機械です。この白い機械はディストーナーと呼ばれるもので、遊佐蒸溜所ではオーダーメイドのものを使用しています。
ディストーナーで分けられた麦芽は、モルトミルで粉砕されます。
遊佐蒸溜所でのグリスト(粉砕した麦芽)は「ハスク:グリッツ:フラワー = 2:7:1」の黄金比で造っています。
この黄金比を実現するには細かな粉砕具合の調整が必要になってきます。
麦芽のロットによって粒の状態が微妙に変わってしまうので、その時の麦芽の状態に応じて粉砕具合を調整しなければなりませんので、非常に難しい工程です。
遊佐蒸溜所では、ネズミ対策など細かい所にも気を配っています!
蒸溜所の周りは田んぼが多くネズミが潜んでいるそうです。
そのため、麦芽を袋に入れたままにするのではなく、万が一蒸溜所内に侵入されても麦芽が食べられないように大きい頑丈な「サイロ」を使っているそうです。
このような大きいサイロという設備を使用している蒸溜所は日本のクラフト蒸溜所の中でも非常に珍しいそうです!
また、3つあるサイロにどの順序でいつ麦芽を投入したか分かるように「使用順」と書いたシールを貼って管理しています。
粉砕した麦芽(グリスト)と温水を混ぜ合わせていく工程を「糖化」と言います。
細かく砕かれた麦芽が温水とともに糖化槽に送り込まれ、澱粉(でんぷん)が糖分に変わることによって甘い麦汁が生まれることです。
遊佐蒸溜所では、1番麦汁と2番麦汁を仕込みで使用しています。糖化が終わった1番麦汁と2番麦汁は、酵母と混ぜて発酵させます。3番麦汁については、次の仕込みの温水として使用しています。発酵の途中は泡が立ちますが、プロペラを回すことで溢れてこないように泡を切っています。
また、使用した後の麦芽は集められ牛などの家畜の飼料として出荷しているので、環境にもやさしくなっています。
遊佐蒸溜所のこだわりの一つは、ダグラスファー(米松)の発酵槽です。
木材自体はカナダから取り寄せたものですが、製造は日本で行っています。木製の発酵槽では、様々な菌が住み着いているため、約3~4日の発酵過程で良い影響を及ぼすと言われています。
これが遊佐蒸溜所のウイスキーの特徴の一つであるフルーティーな香りを生み出しています!
遊佐蒸溜所ではバルジ型とストレートヘッド型のポットスチルを使用しています。
ストレートヘッド型のポットスチルでは、どっしりとした重厚な味わいのあるスピリッツが誕生します。そして、バルジ型のポットスチルによって、遊佐蒸溜所の特徴を造り出すより繊細でクリーンな原酒が生まれます。
ミドルカットとは、アルコール度数が高すぎて余計な香りが入っている部分やまだ未熟なスピリッツを取り除き、熟成に使いたいスピリッツを見抜く工程で、非常に重要です。
ミドルカットは、短期間で出来るようになるわけではなく、丁寧に真摯にスピリッツと向き合い、テイスティングやノージングを行っていくことで身に着けることが出来る熟練の技です。
遊佐蒸溜所の従業員の方は、熟成庫担当と製造部門に分かれるようですが、蒸溜担当の従業員の方は全員ミドルカットが出来るように日々鍛錬しているそうです!
基本的に毎日蒸溜をしているため、蒸溜液を一時的に保存するタンクは約1週間ほどで溜まっていきます。
そのため、それに合わせて1週間に1回樽詰の作業を行っています。
また、漏れたりしてしまうことが無いように、樽に原酒を詰めてからしばらく置いて確認をします。
熟成庫は合計3つあり、それぞれ第1熟成庫、第2熟成庫、第3熟成庫と呼ばれ、メインで使用しているのが約4,000樽貯蔵することが出来る第3熟成庫です。
第1熟成庫と第2熟成庫は資材や空樽などを保管しているため、第3熟成庫も既に8割ほど埋まっています。
遊佐蒸溜所では、側面が白いものをファーストフィル樽、青いものをセカンドフィル樽として貯蔵しています。
また、樽の種類としてはバーボン樽をメインとしてシェリー樽やミズナラ樽、ワイン樽があります。
豊富な樽の種類があることから、バーボンメインの商品に他の樽の原酒をバッティングすることなどを検討しているようなので、遊佐蒸溜所ならではのウイスキーに今から期待しています!
遊佐蒸溜所には、ワイン樽での熟成も行っており、樽の中でも少し赤みが染みているものがワイン樽です。
こちらのワイン樽は山形県の朝日町ワインさんから実際に使用していた樽をいただいたそうです!
実際に去年の夏頃にワイン樽で熟成させたウイスキーを山形県限定で販売しました。
また一般的には、最後だけワイン樽に入れて熟成させる「ワインカスクフィニッシュ」を用いることが多いです。
しかし遊佐蒸溜所では、樽詰めの最初からワイン樽で熟成させたウイスキーだったので、非常に珍しく美味しいと大好評だったそうです!
遊佐蒸溜所では、瓶詰めや商品のラベル貼りなども蒸溜所の敷地内で行っています!
さらに、この作業はほとんど自動で行うことが出来るような設備が整っています。
以上、遊佐蒸溜所の蒸溜所見学レポートでした。
遊佐町という広大な自然の中で造られるウイスキーは、設備も環境も素晴らしいものでした!
そして、地元の方たちから愛される株式会社金龍のつくるウイスキーが、世界が憧れる山形県初のジャパニーズウイスキーになっていく姿には今後も注目していきたいと思います!
今回案内していただいた営業課の釼持さん、誠にありがとうございました!