【現地レポート】博物館併設!ノーサンブリアの文化を伝えるアドゲフリン蒸溜所
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「日本のお酒を樽で美味しくする会社」を目指している有明産業株式会社。
Dear WHISKYは日本国内で唯一の洋樽専業会社である有明産業株式会社に取材に行ってきました!今回は工場長を務める奥平将一朗さんへのインタビューの模様をお伝えします。
最年少で工場長に就任した奥平さんに、樽造りの裏側や、洋樽専業メーカーとしての想いをお伺いしたのでぜひお楽しみください。
また樽を造っている都農工場に実際に訪れ、製造工程の見学もさせていただきました。ぜひ有明産業の現地レポートもお読みください!
奥平将一朗さん(都農工場工場長)
有明産業に入社後、初めは樽の製造課で働く。その後樽の再生課でも経験を積み、最年少の若さで都農工場の工場長に就任する。 |
企業名 | 有明産業株式会社 |
設立 | 1973年1月16日 |
代表取締役 | 小田原伸行 |
本所所在地 | 〒612-8355 京都市伏見区東菱屋町428-2 |
連絡先 | 075-602-2233 |
都農工場所在地 | 〒889-1201 宮崎県児湯郡都農町大字川北1948-2 |
公式HP | 公式HPはこちら |
Dear WHISKY:
洋樽を造り始めた理由を教えてください。
奥平さん:
創業当時は一升瓶などを入れる木箱を製造する事業をしていました。しかしプラスチック箱が普及したことにより事業の継続が困難になってきました。
そんな中、とある焼酎メーカー様より保有している樽のメンテナンスを依頼されたことをきっかけに、洋樽を造り始めました。
樽製造のノウハウは、大手の樽職人さんから教えていただきました。
Dear WHISKY:
樽造りを始めた当初、どのような苦労がありましたか?
奥平さん:
職人も設備も整っておらず、毎日試行錯誤しながら樽を製造していました。樽を製造する際は、熟成方法の違いによって、きめ細かく作業工程を変化させないといけないのですが、当時はそのような概念はなく、ただ樽をつくるだけのメーカーでした。
Dear WHISKY:
その状態からどのように全国的に認められる洋樽メーカーになったのですか?
奥平さん:
樽づくりの基礎が固まるまで5~10年ほどかかったと聞いています。
それ以降は樽造りを繰り返す中で、細部の技術の習得を重ねてきたそうです。データやマニュアルではなく、実務を繰り返し、失敗を重ねながら微調整をして、自分たちの理想の樽を造れるようになりました。
Dear WHISKY:
有明産業のモットーである”地域との「縁」を大切にする”に込められた想いを教えてください。
奥平さん:
樽工場を継続するためには、地域の皆様の応援が無くてはならないと思っています。
貢献できていることは決して多くはありませんが、この地域に有明産業があってよかったと言っていただけるように、地域の皆様と交流を図り、皆様から各地へ発信していただける企業となれるように頑張りたいと思っています。
Dear WHISKY:
有明産業に入社する前はどのようなお仕事をされていましたか?
奥平さん:
飲料関係の会社で営業職を少し務めた後、段ボールの製造会社で働くなど、様々な業界で働いていました。
Dear WHISKY:
どのようなきっかけで有明産業入社したのですか?
奥平さん:
今の副工場長が私と同級生で、その人から二人で一緒に働かないかと誘われたことがきっかけで有明産業に入社しました。
Dear WHISKY:
以前から樽造りに興味があったのですか?
奥平さん:
当時は樽造りに関する知識は全くと言っていいほどありませんでした。
ただもともとお酒は好きだったので、話を聞いていく内に面白そうだと思うようになりました。
Dear WHISKY:
なるほど!因みに奥平さんの好きなお酒はなんですか?
奥平さん:
最近はウイスキーをよく飲みます。ストレートでも、ロックでもハイボールでも様々な飲み方で楽しんでいます。
ウイスキーは飲む環境によっても味が変わってくるので面白いなと感じています。
Dear WHISKY:
奥平さんは普段どのようなお仕事をされているんですか?
奥平さん:
工場長になった今は管理業務、樽の生産管理を主に行っています。また、お客様対応や設備関係の対応などを行っています。
Dear WHISKY:
以前は樽の製造にも関わっていたのですか?
奥平さん:
入社してすぐは新樽を造るチームで2~3年ほど働き、その後に樽の修理をメインに行うチームに移動しました。
Dear WHISKY:
樽の製造技術を習得するのには何年ほどかかりますか?
奥平さん:
3年から5年ほどかかりますね。
一つの工程でも深ぼっていくと様々な技術があり、それらを習得するにはかなり時間がかかります。
Dear WHISKY:
最年少で工場長に任命されたときはどのような心境でしたか?
奥平さん:
最初にこのお話をいただいたときは、プレッシャーをとても感じました。
その後、先輩方やベテランの職人さんに相談したら、「おまえが工場長になるのなら全力で協力する」と背中を押していただいて工場長に就任することを決意しました。
Dear WHISKY:
工場には幅広い年代の方がいると思うのですが、工場長としてどのような関係性を築かれていますか?
奥平さん:
ベテランの職人さんたちが両親と同世代で、自分たち若手のことを息子のようにかわいがってくれて、様々なことを優しく教えていただきました。そして自分たちの後輩にはベテラン職人の方が自分たちにしてくれたように接することで円滑なコミュニケーションが取れています。
この年齢を超えた縦のつながりの強さが有明産業の強みだと思います。
Dear WHISKY:
奥平さんが工場長として大切にしていることはなにかありますか?
奥平さん:
人材育成を大切にしています。
工場の仲間にはただ樽を造る職人としてだけではなく、その人自身として成長してもらい、有明産業で働いてよかったと思ってもらいたいです。
Dear WHISKY:
奥平さんは樽にお酒を入れて熟成させることの魅力は何だと思いますか?
奥平さん:
樽の木材や造り方の些細な違いでお酒の味に大きな変化が生まれることが一番の魅力だと思います。
また、お客様から有明産業の樽を使って熟成させたお酒の感想をお聞きしたとき、自分たちがお酒に付加価値を付けていることを実感して誇りに思います。
Dear WHISKY:
奥平さんが個人的に面白いと思っている種類の樽などはありますか?
奥平さん:
個人的に面白いと思っているのはクリ樽です。
熟成が若いときは木のえぐみやウッディ感を強く感じるのですが、長期熟成する事によってまろやかな味になり、マロンのような香りになるのでおすすめです。
Dear WHISKY:
そうなんですね!どのような経緯でクリの木材を使って樽を造ろうとなったのですか?
奥平さん:
樽材を選ぶ前提として、まず木の性質が樽に向いているのか、お酒の熟成に向いているのかを考えます。クリはその条件をクリアしました。
そして、日本の樽を使って日本のお酒を美味しくするという有明産業のミッションから、日本のお酒に付加価値を付けるためには日本の木材を使いたいと思いクリを選びました。
Dear WHISKY:
今後、使ってみたい木材などはありますか?
奥平さん:
今はまず有明産業がメインにしているミズナラ、サクラ、クリの3種類の樽を安定して供給できるようにしていくことが最重要課題だと考えています。また有明産業では自社の樽でウイスキーを追加熟成し、樽による熟成の違いが感じられる商品の販売も行っております。こちらも一度試してみてください!
Dear WHISKY:
製造過程で特に難しかった工程はありますか?
奥平さん:
中古樽の修理が特に難しかったです。樽を造った会社によって、樽に癖があるのでこれらに気を付ける必要がありました。自社で造った樽なのか、他社で造られた樽なのか、また、どういう癖を持った樽なのかと、様々なことに気を付ける必要がありました。
Dear WHISKY:
では、樽製造において楽しい工程はどこですか?
奥平さん:
樽の鏡の部分を丸く切り抜く作業は、個人的にとても楽しかったです。
Dear WHISKY:
奥平さんが考える樽づくりにおける重要な工程はどこですか?
奥平さん:
まず樽の材料である木を選別する技術や、木の切る向き、削る向きが重要になってきます。これらの技術を先輩から後輩に教え継いで質の良い樽を造り続けています。
Dear WHISKY:
樽を造る人によって樽に癖や特徴が生まれるのはなぜでしょうか?
奥平さん:
人というよりは木材によって癖が生まれます。
木も生き物なので、一本一本の違いや材質の違いが樽の癖として表れることがあります。
Dear WHISKY:
有明産業で働くことの魅力や、やりがいを教えて下さい。
奥平さん:
洋樽造りを専業でやっている会社はとても少ないですが、専門知識、技術を学ぶこともできますし、どこにでもある職種ではないことが魅力だと思います。また自分たちが造った樽がお酒に付加価値を与えているという誇りをもって樽を造っています。
Dear WHISKY:
樽のメンテナンスでは実際どのような事を行っているのでしょうか?
奥平さん:
メンテナンスでは主に樽の修理や内部の焼き直しを行っています。
Dear WHISKY:
実際樽のメンテナンスをすることで、どのような効果が生まれるのでしょうか?
奥平さん:
樽を長く使えるようになることです。
樽によってお酒の熟成に使用する年数が違うので誤差はあるのですが、有明産業で造った樽は、だいたい3回ぐらいまでなら熟成が進みにくくなった場合に樽のメンテナンスを行い、樽の熟成能力を再生させることができます。
Dear WHISKY:
樽のメンテナンスを行なうと、ウイスキーの熟成に関してどんな効果がありますか?
奥平さん:
やはりメンテナンスすることにより木の成分が抽出しやすくなるため、ウイスキーに及ぼす影響は変わってきます。
樽の鏡の部分を変えるだけでも樽熟成においてかなりの影響を与えるので、メンテナンスをすることで大きな違いが生まれてきます。
Dear WHISKY:
現在メンテナンスも併せて何樽の製造を行っているのですか?
奥平さん:
1年に新樽を3,000樽ほどリフィル樽とメンテナンスを含めて年間5,000樽ほど樽を扱っています。23名の正社員とアルバイトの方などの力を借りて、多くの依頼に対応しています。
Dear WHISKY:
技術の継承を重要視している有明産業において、事業の継承、技術の継承などの後継者育成において大切にしている事について教えて下さい。
奥平さん:
樽の技術よりもそれを支える、人間性、倫理感を大切にしていきたいと考えています。
まずは何のための樽事業なのかを考え、お客様の本質的な問題解決をしていけるように、一人一人が常に考えることを重視しています。
また、皆が樽造りに誇りを感じ、楽しんで仕事をしてもらえるような環境を整えていきたいです。
Dear WHISKY:
世界的にウイスキーが人気になり、洋樽需要も高まっている中、今後の洋樽産業の展望についてどう考えていますか?
奥平さん:
世界的な蒸溜所の増加で洋樽の需要がますます高まっていますが、世界的に日本市場はまだまだ小さいため、良い材料、良い樽が入りにくい状況が続いていくと思います。
国内では樽の状態をしっかりと見極め、適切なメンテナンスをすることが重要になると思います。
Dear WHISKY:
今、海外でミズナラや桜などの日本の木材を使った樽の人気が高まっていますが、そのことについてはどう感じていますか。
奥平さん:
私たちは日本のお酒を美味しくしていくというミッションを掲げています。
ミズナラ樽やサクラ樽といった日本の樽が海外で評価されることを足掛かりとして、日本のアルコール業界のさらなる発展に貢献できるのではないかと考え、とても嬉しいです
Dear WHISKY:
今後の有明産業の展望についても教えてください。
奥平さん:
ただ樽を提供するだけではなく、お客様ごとに必要な樽を1つ1つ丁寧に製造し、メンテナンスすることが大切だと思います。
国内の樽製造を守り続けるだけではなく、お客様の商品開発に貢献できるように必要な技術を磨いていきたいです!
Dear WHISKY:
最後にDear WHISKYの読者へメッセージをお願いします!
奥平さん:
私たちは日本の人口や飲酒人口が減少し日本の市場が縮小する中、樽での熟成を通じて日本のお酒の価値を高め、日本のお酒業界が盛り上がるきっかけになればと考えています。
日本に熟成の文化が根付き、世界に向けて日本のお酒の新たな価値が提供できるように、日々樽製造の技術を磨き、次世代を担う樽職人を育成していきます!
さらに樽以外でも、日本のお酒づくりの必要なサポートをしていける企業を目指して今後も頑張っていきます。
以上、有明産業株式会社奥平さんのインタビューでした。お酒に付加価値を与えることができる樽造りの奥深さと、日本で唯一の洋樽専業メーカーである有明産業としての誇りが感じられるインタビューでした!
有明産業ではTaruskyというオンラインストアもあります。そこでは有明産業が造った樽で熟成された焼酎や、家庭でお酒を熟成させるグッズなどが販売しています。そちらもぜひご覧下さい!