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【独占インタビュー】ニッカウヰスキーのチーフブレンダー尾崎裕美さんにインタビュー!<第2弾>

2023.07.21 / 最終更新日:2023.11.25
【独占インタビュー】ニッカウヰスキーのチーフブレンダー尾崎裕美さんにインタビュー!<第2弾>

「日本で本物のウイスキーをつくりたい」という創業者・竹鶴政孝氏の情熱からはじまったニッカウヰスキーは2024年で創業90周年を迎えます!

今回はニッカウヰスキー最大の総合パッケージング工場である柏工場内にあるブレンダー室にお伺いしました!
インタビュー編第2弾となる今回は第1弾に引き続き、ニッカウヰスキーの味を支え続けるチーフブレンダーの尾崎裕美さんに独占インタビューを行いました!

ニッカウヰスキーの過去・現在・未来に携わる尾崎さんが目指すニッカウヰスキーのウイスキーとは何か、日本のウイスキーへの想いなどをお伺いしました。そして、尾崎さんの知られざるプライベートまで語っていただいたので、ぜひお楽しみください!

合わせてお読みください!

ニッカウヰスキーの「ウイスキー」

尾崎さんの目指す「ニッカのウイスキー」

Dear WHISKY:
チーフブレンダーとして、尾崎さんが目指していることは何ですか?

尾崎さん:
ウイスキーのブレンダーには役割があります。メインなところで言えば、既存の商品であるブラックニッカやスーパーニッカなどの味を変わらず造り続けることです。だからこそチーフブレンダーとして目指しているものは何かというと、先輩たちが造った樽ごとに異なる様々な原酒を使って、つまり「過去」から受け継がれている財産を使ってニッカのウイスキーを飲んでくださっているお客様に変わらない味を届けるということです。

Dear WHISKY:
先輩から繋いだそれぞれの素材は違えど、最終的には常に同じ品質のウイスキーを造り続けるというところを目指し続けているのですね!

尾崎さん:
他には、今ある原酒を使ってこれまでになかった新しい商品を造り、お客様にニッカウヰスキーの魅力や、新たな発見をしていただけるものを届けることを目指しています。

Dear WHISKY:
歴史を繋ぐだけではなく、現在のこの瞬間も常にお客様に喜んでもらえるものを探究し続けているのですね!

尾崎さん:
そうですね!あとは、これからのニッカウヰスキーについても考えています。今使っている原酒は先ほどお話したように先輩たちが繋いでくださった原酒です。なので私も同じように、面白く新しい原酒を造って今のうちに仕込んでおきたいと思います。こんなタイプの原酒ができたら面白いとか、こんな樽に詰めたら面白い原酒が生まれるのではないかとかを考えながら、「未来」のニッカウヰスキーが色々な商品をだしていけるように様々な原酒を造っています。

Dear WHISKY:
未来へ向けた原酒造りはどのように行っているのですか?

尾崎さん:
例えば、本社の原料調達の部署にこんなタイプの樽が欲しいと伝え入手してもらうこともありますし、逆にこんな原料があるんだけどと提案を受けることもあります。また、技術開発や素材開発を行う技術開発センターという部署があるので、将来に向けた新しい原酒を造るための発酵や蒸溜をラボ(実験室)レベルで色々試しています。まずは、試験レベルで試して評価します。それが面白そうだったらスケールアップをしていき、パイロットプラントや現場で造ってさらによければ、その先1年、2年と評価していき正式に継続して造るようになります。

Dear WHISKY:
ブレンダーの仕事とは、「過去」「現在」「未来」を繋いでいるのですね!

尾崎さん:
「過去」から受け継ぐ財産を使用して素晴らしい商品を保ち続ける品質維持、「現在」のお客様に新たな感動や発見をしていただき喜んでいただける新商品を造ることと、そして「未来」のための種まきをすること、これが私のチーフブレンダーとしての役目であり目指すべき姿です。

ウイスキーの製造においてのコミュニケーションの重要性

Dear WHISKY:
先ほどの新商品の開発や原酒の開発に当たって様々な方とコミュニケーションを取っているとのお話がありましたが、具体的にどのようなコミュニケーションを取り合っているのですか?

尾崎さん:
例えば新商品を出す場合、マーケティング部とはコンセプトに沿ったウイスキーを実際に造ってみて、香りや味わいを確認し、試行錯誤を一緒に何度も行います。
また先ほどお話しましたように、原料部や技術開発センターと原酒の製造数量や新たな原酒造りについて相談したり、できた原酒の品質について工場とディスカッションしたりしています。

Dear WHISKY:
日々多くの方との関わりがあるからこそ、ニッカウヰスキーのウイスキーが生まれ続けているのですね!

テイスティングの様子

日本のウイスキー

日本のウイスキーの特徴とは

Dear WHISKY:
尾崎さんが思う日本のウイスキーの特徴はどのようなものですか?

尾崎さん:
日本のウイスキーはスコッチのウイスキー造りを学んで発展してきましたので、根本的にはスコッチウイスキーに近い分類になると思います。ただしスコッチウイスキーと異なるのは、スコットランドでは蒸溜所同士で原酒を交換してブレンドを行っていますが、日本にはメーカー同士でそのような原酒交換をするといった習慣がないことですね。

Dear WHISKY:
確かに自社内のブレンドはもちろんありますが、他社とのブレンドは聞かないですね。

尾崎さん:
だからこそ、一つの蒸溜所の中でも様々なタイプの原酒を造り分ける必要があり、各社切磋琢磨することで日本のウイスキー造りの技術力は上がってきたのだと思います。
また、繊細なブレンド技術とバランスの良さ、これこそ日本人ならではの特徴だと思います。実際のテイスティングやブレンドにもこの繊細さは出ていると感じます。

「日本の」ウイスキーと「ジャパニーズ」ウイスキー

Dear WHISKY:
日本のウイスキーとジャパニーズウイスキーの表現は何か想いがあるのでしょうか?

尾崎さん:
2023年は「ジャパニーズ」ウイスキー100年と言われる方が多いですが、ジャパニーズウイスキーと表現すると一昨年決まった定義からすると、国産原酒100%のウイスキーということになりますので、私は日本のウイスキー100年と言うようにしています。
多彩なウイスキー商品を開発するには様々な酒質の原酒が必要になりますが、日本では原酒交換の習慣がなかったことから、各社自社で様々な原酒を造り分ける技術を構築し、時に海外に蒸溜所を持ったり、海外の原酒を購入してきました。
こうした原酒をブレンドすることで、日本のお客様の口に合うようなウイスキーをリーズナブルにご提供してきたことが、これまでの日本のウイスキー100年を支えてきた一つの要因だと思っています。

もちろんジャパニーズウイスキーの価値も高めていきながら、今まで先人が築き上げてきた努力と試行錯誤の歴史が詰まった、これまでの日本のウイスキーも自信を持ってお客様に提供していきたいと思います。だからこそ、100年という表現をする場合は、私は必ず「日本の」ウイスキーと表現しています。

 

尾崎さんのウイスキーへの想い

日本のウイスキー100周年への想い

Dear WHISKY:
日本全体が日本のウイスキー100周年として盛り上がっていますが、尾崎さんご自身はこの100年目をどのように感じていますでしょうか?

尾崎さん:
日本のウイスキー100年は具体的には、サントリーさんの山崎蒸溜所でウイスキーの製造を開始して100年ということになります。100年前に鳥井信治郎さんとニッカウヰスキーの創業者でもある竹鶴政孝がきっかけで山崎蒸溜所が、ひいては日本のウイスキーが始まりました。
だからこそ、ニッカウヰスキーの創設者であり初代マスターブレンダーである竹鶴政孝の後にいると考えると、すごいところに私はいるんだなとしみじみ感じています。
それを考えると、歴史に恥じないようにウイスキーと向き合い続けて、そして伝えていきたいと思います。

Dear WHISKY:
先代たちの歴史を繋ぐ尾崎さんだからこその想いですね!

尾崎さん:
今のウイスキーブームはやはり2008年ごろからのサントリーさんの取り組みによるハイボールブームがきっかけだったと思います。その後、世界的なウイスキーの鑑評会での受賞で日本のウイスキーの評価が高まってきました。お互い切磋琢磨して高め合ってきたことによるものと思います。サントリーさんのウイスキー製造100周年に心より敬意を表しつつ、私たちも日々邁進していきたいです。

ニッカウヰスキーに秘める想い

Dear WHISKY:
尾崎さんは来年のニッカウヰスキー創業90周年に対して
どのような想いをもっていますか?

尾崎さん:
私は会社に入ってから35年ほど経ち、90周年ということでニッカウヰスキーの歴史の中での3分の1程度の時間を過ごしてきました。そんな中で、最後にすごい役割を任せていただいたと思います。
だからこそまずは、来年の90周年に向けて皆様に新しい発見をお届けしたいですし、先輩方が築いたニッカウヰスキーの味を保ち続けたいです。

Dear WHISKY:
ニッカウヰスキーの味を保ち、そして新しい発見を届け続ける尾崎さんならではの想いですね!

尾崎さん:
チーフブレンダーとブレンダー室長を分担したからこそ、私はチーフブレンダーとして皆様に対してニッカウヰスキーの良さを知ってもらう活動がメインになると思っているので頑張りたいと思います。
そしてその先の100周年に繋がるように、この90周年を過ごしたいですね。

尾崎さんにとってウイスキーとは

Dear WHISKY:
尾崎さんにとって「ウイスキー」とは何ですか?

尾崎さん:
ニッカウヰスキーのブレンダーとしての私は、竹鶴政孝がいっていたような「本物の美味しいウイスキー」を皆様にお届けしたいという想いの通り、本当に美味しいウイスキーを多くの皆様に飲んでいただきたいですね。
尾崎裕美個人としては、1日の終わりにウイスキーの香りを感じて、そしていい香りのウイスキーを口に含むことで安らぎを与えてくれるものですね。

Dear WHISKY:
ブレンダーとしての尾崎さんと個人としての尾崎さん、どちらにとってもウイスキーが非常に大切なものだと強く感じました!
ありがとうございます!

テイスティングで使用する番号付きのグラス

以上、ニッカウヰスキーチーフブレンダーの尾崎さんでした。
学生時代の経験からニッカウヰスキーに入社し、チーフブレンダーというニッカウヰスキーの味の最終責任者になるまで、そしてこれからの未来にかける想いまで様々なことをお伺いさせていただきました。
ニッカウヰスキーの「過去・現在・未来」を支えるだけではなく繋いでいく仕事をする中で、「日本のウイスキー」への敬意を示しながら全力で「いま」に向き合うその姿に感銘を受けました。

取材させていただき、誠にありがとうございました!
ここからは番外編として尾崎さんのプライベートに迫りたいと思います!

 

番外編 ~尾崎さんのプライベートに迫る~

尾崎さんのプライベートの様子

Dear WHISKY:
尾崎さんの趣味は何ですか?

尾崎さん:
サッカーを見るのがとても好きです。柏にもう34年くらい住んでいるので、柏レイソルの試合のホームゲームは基本的に現地で観戦してますね。年間20試合くらいは行っていて、年間シートも持っています(笑)
あとは、サンバも好きですね。もう20年くらいアサヒのチームでサンバを踊っています。

Dear WHISKY:
すごいアウトドアなのですね!

尾崎さん:
サッカーも高校生くらいまでやっていたり、お祭りも好きですのでそうかもしれないですね!
あとは趣味ではないですけど、自称「歳を取ったハリーポッター」です(笑)

Dear WHISKY:
確かに似ていますね!結構言われたりするのですか?

尾崎さん:
飲み屋さんとかで隣に座ってた人にハリーポッターに似てますねとか言われますね。
あと海外に出張とかで行った際にも、世界中で通じますのでネタとして使います(笑)

普段は何のお酒を飲んでいるのか

Dear WHISKY:
普段尾崎さんはどのようなお酒をお飲みになるのですか?

尾崎さん:
私はまず最初ビールを飲みます。食事中はどちらかというと、ビールや焼酎を飲むことが多いですね。ウイスキーは食事が終わってから水割りを飲むことが多いですね。外で食事をする際には食中でも飲みますよ!

Dear WHISKY:
ちなみに最近はどのような銘柄のウイスキーをお飲みになっているのですか?

尾崎さん:
家には「スーパーニッカ」があります。それ以外にも「ブラックニッカディープブレンド」「フロム・ザ・バレル」や、スコッチウイスキーなどもあります!本当に色々な銘柄を飲んでます。

ブラックニッカディープブレンド

ブラックニッカディープブレンド

フロム・ザ・バレル

フロム・ザ・バレル

自分の味や感覚をつかむためにしていること

Dear WHISKY:
ウイスキーを飲み始めたばかりの方はどうやって自分の味や感覚を養っていけばよいのでしょうか?

尾崎さん:
ウイスキーを飲みながら色々な人とお話して欲しいですね。私がブレンダーとして自分の言葉や感覚を養った際の言葉は自分の記憶なりのものなので、他の人の言葉とは違うものです。だからこそお互いに話し合っていくことで、ある人にとってのこの単語は自分にとってのこの単語なのかなとか、徐々にその認識を統一していきます。それを繰り返していくうちに自分の感覚が養われていきます。

Dear WHISKY:
言葉にしたうえでその言葉の感覚や認識を話しながら養っていくのですね!

尾崎さん:
入社してすぐくらいの時期に、ある香りをソフトビニールでできた人形っぽい匂いだなって感じて「人形臭」と表現しました。その時には本当に全員に何言っているかわからないって言われてました(笑)。ただ今だと尾崎さんが言う「人形臭」は自分で言うこの香りの感覚かなとわかってくれます。専門用語だけではなくてそんな表現や言葉でも徐々にすり合わせていくことが可能ですし、自分なりの表現を見つけることが大切ですね。

Dear WHISKY:
人形のような匂いが気になりますね!ちなみに私たちのようにブレンダーではない一般の人はどなたとそういったことをしていくのが良いのでしょうか?

尾崎さん:
バーでやって欲しいですね。バーテンダーの方だけではなく隣にいたお客さんとかと、お互いの感覚を合わせるというかお話しするだけでもすごく楽しいと思いますよ。バーの雰囲気がすごく高貴な感じもしますが、ぜひ足を運んで欲しいですね。よくウイスキーを嗜む方はもちろんですが、飲み始めたばかりの方が少しでも興味を持ってバーに来てくれるだけでも、きっとバーテンダーの方は大喜びですよ!
それに感じる味や香りに正解も不正解もないですから、気楽にお酒を味わって欲しいです!

Dear WHISKY:
正解や不正解もないという言葉、飲み始めたばかりの方でもバーに行く一歩を踏め出せる言葉ですね!

ウイスキーを楽しむためには

Dear WHISKY:
尾崎さんがウイスキーを楽しむ方法とは何ですか?

尾崎さん:
本当に様々な飲み方が出来ると思います。僕自身にとっては安らぎを感じるものなので、あまり冷やさず水も冷たすぎないもので、トゥワイスアップぐらいにして口に含まず香りを嗅ぎそのままグラス置いたりします。ゆっくり時間をかけて香りやその場の雰囲気、落ち着いて飲むのが楽しさを感じるのかもしれません。

Dear WHISKY:
飲み始めの方や愛飲家の方がいる中でウイスキーを楽しむ方法とは何ですか?

尾崎さん:
本当に様々な飲み方が出来るため、一概に答えは無いと思います。香りだけで楽しむのもいいと思いますし、ハイボールやロックなど色々な飲み方があります。飲み方だけではなく世界中にはいろんなウイスキーがあるので、そういったものを本当に色々試していただければと思います。
ご自身で買われるのも良いですし、バーに行ってバーテンダーの方や隣の方とかに聞きながらいろんなウイスキーと楽しみ方を知って欲しいですね!

ニッカウヰスキーチーフブレンダー尾崎さん

次回はインタビュー編第3弾!

改めまして、ニッカウヰスキーチーフブレンダー尾崎さんへの独占インタビューでした。
ニッカウヰスキーのチーフブレンダーとしての責任を強く持ち日々業務に当たる姿はもちろん、お祭りやスポーツ観戦が好きな「ハリーポッター」としての姿など、公私ともに魅力的な方でした!
今回でしかお伺いすることができないようなことが多く、メディアとしても1人のウイスキー好きとしても貴重な時間を過ごすことが出来ました!

次回はインタビュー編第3弾として、ニッカウヰスキーを『伝える』ウイスキーアンバサダーの金子太郎さんにお話をお伺いいたしました!
ウイスキーアンバサダーとしてニッカウヰスキーの良さを発信している金子さんがウイスキーに興味を持ったきっかけや、ジャパニーズウイスキーのこれからに対する想いなどをお伺いしましたので、ぜひこちらもご覧ください!

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