【独占インタビュー】第2弾:世界一のウイスキーコミュニティ、ザ・スコッチモルトウイスキー・ソサエティ
- 造り手
- ボトラーズ
1983年の設立以来、ザ・スコッチモルトウイスキー・ソサエティ(SMWS)はメンバーとファンを世界中に増やしてきました。その画期的で個性的でありながら、合理的なウイスキーの楽しみ方は、ウイスキー業界に新たな常識を生み出してきました。
SMWSはウイスキーの情報をラベルに記載せず感覚的に表現することで、ウイスキーをより親しみやすく、同時により奥深さを感じさせます。
今回は、SMWSの拠点であるヴォルツで行ったインタビューを二弾構成でご紹介します。
2021年から2023年後半まで、アーティザナル・スピリッツ・カンパニー(SMWSの親会社)で顧客体験マーケティング責任者を務めていた、レベッカ・ハミルトンさんにお話を伺うことができました。
第1弾では、レベッカさんご自身の紹介を中心に、SMWSとその歴史、ウイスキー造りについてご紹介します。(このインタビューは2023年9月30日に行われました)
会社名 | ザ・スコッチモルトウイスキー・ソサエティ |
設立年 | 1983年 |
所有者 | アーティザナル・スピリッツ・カンパニー |
住所 | 87 Giles Street, Edinburgh EH6 6BZ |
公式サイト | The Scotch Malt Whisky Society |
Dear WHISKY:
自己紹介をお願いします。
レベッカさん:
アーティザナル・スピリッツ・カンパニーの顧客体験マーケティング責任者のレベッカ・ハミルトンと申します。SMWSは、アーティザナル・スピリッツ・カンパニー・ファミリーの一員であり、私たちのブランドの中で最も有名で愛されています。私はこの仕事に就いて2年余りになり、以前はエンターテインメント、ホスピタリティ、旅行などの分野で働いていました。ブランドマーケティングとエクスペリエンスデザインに25年間携わってきましたが、今までの経験が全て活かせるこの仕事を任され、とても光栄に思っております。このように望んだ仕事ができて本当に嬉しいですし、とても楽しいです。
Dear WHISKY:
どのような経緯でSMWSにて働くようになりましたか?
レベッカさん:
お声がけいただき、SMWSの方と面談する形でヘッドハンティングをされました。すると、私が貢献できることと、彼らが求めているものや、やろうとしていることが見事に合致していたので、とても運命的に感じました。
SMWSの標章
Dear WHISKY:
SMWSとは具体的に何でしょうか?
レベッカさん:
SMWSは全世界に約4万人の会員を持つ、ウイスキーの会員制クラブです。さまざまな蒸溜所からウイスキーの樽を購入し、ボトリングして会員に提供しています。私たちはSMWSをいろいろな意味でボーダレスな組織だと考えています。ボーダーレスとは、ウイスキーを飲みながら語り合うことで人と人を繋ぐことを意味します。
SMWSは、友情や仲間意識、意見の交換を通じて、国境やその他多くの境界線を取り払うことができ、私たちはそれをとても誇りに思っています。
Dear WHISKY:
SMWSの特徴はどのような点でしょうか?
レベッカさん:
SMWSの特徴の一つに、非常に素晴らしい高品質のウイスキーが揃っていることが挙げられます。また、私たちSMWSは交流会やフェスティバル、提携するバーでのテイスティングなど、様々な体験も提供しています。
デジタルとフィジカルを組み合わせたアプローチで世界的に活動しており、まさに360度の体験を提供しています。
Dear WHISKY:
SMWSはいつ、誰によって設立されたのでしょうか?
レベッカさん:
SMWSは40年前にピップ・ヒルズという男性によって設立されました。
自らがウイスキー愛好家であったピップは、いかにウイスキーが魔法のように魅力的なものであるかを人々に伝えることで、カスクストレングスウイスキーに対する情熱を一緒に分かち合いたかったのです。
ピップのこうした思いは、SMWSとその建物で今も受け継がれています。その部屋は「ヴォルツ」と呼ばれ、訪れるすべての会員にSMWSの心の家として使命を伝え、また思い出させてくれる場所です。
Dear WHISKY:
SMWSがここまで蒸溜所との関係を築くことに成功した秘訣はありますか?
レベッカさん:
私たちSMWSのスピリッツチームは、蒸溜所や造り手の所に直接行って話をしたり、さまざまな熟成方法を試したりを通して、素晴らしいウイスキーを造ることに力を注いでいます。そのチームのディレクターを務めているのは、カイ・イヴァロという人物で、SMWSで19年間も働いています。
Dear WHISKY:
どのようにウイスキー選びを行っていますか?
レベッカさん:
私たちは他社や他のブランドとは比べ物にならないレベルの品質管理を行っています。一定以上の品質と味わいのものだけを購入し、どのように熟成させるべきか方法を吟味しています。
Dear WHISKY:
熟成方法のこだわりはなんですか?
レベッカさん:
ウイスキーに木と樽の風味を厚みを持って加えるために、樽を1回か2回、場合によってはそれ以上変えて味を調整することがあります。ボトルを見ると、ファーストフィル、セカンドフィル、あるいは複数の樽材が使用されているのがお分かりいただけると思います。その一つひとつが風味を生み出し、これまでに味わったことのないような、そして二度と味わうことのできないような、非常に個性的なウイスキーを造り出すのです。
つまり、味覚体験としては一生に一度きりの瞬間です。それこそが、ウイスキーと木、そして熟成方法を組み合わせる際に私たちが目指していることです。
Dear WHISKY:
ボトリングはどのように行っていますか?
レベッカさん:
ある程度熟成したら、ウイスキーを選び、精査して、最高の状態で飲んでもらえるタイミングであるかを判断します。その後、正式な味の最終チェックである、テイスティングパネルに提出できる状態であるか確認するために、そのウイスキーを取り出し一連のテイスティングテストにかけます。テイスティングパネルでは、基本的にウイスキーが一定以上のレベルに達していることを見定め、そうでなければ樽に戻します。テイスティングパネルは品質管理の最終段階であり、専門家たちが一同に会し一つのウイスキーを味わい、皆が同意するテイスティングノートに行き着くまで議論を行います。
Dear WHISKY:
テイスティングパネルはどのように運営されているのでしょうか?
レベッカさん:
様々な味覚を持った人を揃えるため、パネリストは交代制にしています。パネリストは合計25人ほどで、その時のウイスキーの量に応じて数人(多くの場合3〜4人)が選ばれ、一つのウイスキーについて議論します。
パネリストは国際色豊かで、ヴォルツを訪れる海外メンバーが参加することも多くあります。
私たちは時々、ワクワクするようなパネリングイベントを開催しています。今年の初めに開催したイベントでは、世界中のメンバーに連絡を取り、ヴォルツに集まってもらい、パネルディスカッションを通して、それぞれの地域のボトルを選びました。
第一弾では、レベッカさんが、SMWSのウイスキー製造方法と歴史に注目しながら、自身とSMWSの概要を紹介してくださいました。
彼らの確かな技術と、ウイスキーだけでなく、人々の体験に対する果てしない情熱が組み合わさり、彼らのウイスキーは驚くべきクオリティとなっています。SMWSのウイスキーは、その「魔法のウイスキー」によって、国境や隔たりを越えてメンバー同士を強くつないでいます。
第二弾では、レベッカさんの個人的な体験を踏まえながらSMWSの精神と理念に焦点を当てています。2023年11月にスタートしたSMWSの新しいプロジェクトやサービスに関する情報もぜひご覧ください。