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【独占インタビュー】第2弾: 創業130年の老舗蒸留機器メーカー、Forsyths社の現会長リチャード・フォーサイスさんにインタビュー!

2024.07.18 / 最終更新日:2024.07.19

蒸溜所ツアーに参加したことがある方なら、おそらく蒸溜所内のどこかで「Forsyths」という名前を目にされたことがあるでしょう。

蒸留機器メーカーであるForsyths社は、その製造規模と世界的なマーケットシェアにより、業界のリーダーとしての地位を確立しています。

この度私たちは、Forsyths社の3代目社長であり現会長であるリチャード・フォーサイスさんにインタビューさせていただきました。この第2弾では、リチャードさんがForsyths社の雇用とトレーニング戦略、ポットスチルの製造とウイスキー生産におけるそれらの重要性について詳しく説明してくださいました。

併せてお読みください!

フォーサイス社の雇用と人材育成の方針

雇用戦略

Dear WHISKY:
雇用戦略についてお聞かせください。

リチャードさん:
ハローワークからコッパースミス(銅を加工する職人、銅細工師)を雇用することはできません。若者を雇って、1から訓練しなければならないのです。現在では、その若手の5年間の見習い制度に加えて、経験者の育成も行っており、コッパースミスの増員にうまくつながっています。

しかし、あくまで我々の主な戦略は、新卒社員を求めて学校や大学と常にコンタクトを取り続けることです。コッパーワークス(銅鍛冶)に限らず、電気系統、溶接、または製造と幅広い分野の新入社員を求めています。

そのため我々は、常に人材募集を行っています。

雇用戦略について説明してくださるリチャードさん

Dear WHISKY:
従業員は地元の人が中心ですか?

リチャードさん:
Forsyths社は可能な限り地元民を採用する方針があり、我々は工場から半径30キロ以内の人々を雇用するように努力しています。さらに、スポーツ施設やコミュニティ支援を通じて、地域の人々に資金と労働力を還元したいと考えています。

Dear WHISKY:
フォーサイス社には何人の従業員がいますか?

リチャードさん:
現在は全部で520人ほどおり、そのうち70人はコッパーワークスを専門としています。これらの人々は、ここロセスか、15キロ離れたエルギン、または25キロ離れたバッキーで働いています。

これらの工場をすべて、半径30キロ圏内のエリアにまとめることで、地元の人々をサポートすることにつながっています。

Dear WHISKY:
なぜForsyths社は地元民の雇用にそこまで力を入れるのでしょうか?

リチャードさん:
ここの人々は皆とても働き者なんです。それに加えて、最近はいろいろな子共たちが多様な夢を持ち始めています。コンピューターを使っての仕事を目指す子たちが多い中、工場に勤務して1から修行したいと考えている優秀な子供たちもまだたくさんいます。

職人技を学ぶための修行

Dear WHISKY:
工場から修行を積むメリットは何でしょうか?

リチャードさん:
私自身、現場からスタートした者として、工場こそが最高のトレーニングであると断言できます。工場は、毎日同じことをするわけではない、変化に富んだ仕事環境です。

そうすることで、飽きることなく、多くのことを学ぶことができます。

Dear WHISKY:
トレーニングのプロセスはどのようなものですか?

リチャードさん:
入社すると、若手はベテランコッパースミスのもとに弟子入りし、一人前になるまでベテランの元で働きます。ほとんどの人は丸5年かかりますが、時折3年で習得できる優秀な人もいます。

手造りの美しさと技術

Dear WHISKY:
工場内の仕事はどのように分けられていますか?

リチャードさん:
先ほども述べたように、工場は変化に富んだ仕事環境であるため分業というものはあまりなく、皆様々な仕事をまかされます。

作業員は現場でありとあらゆる仕事をします

Dear WHISKY:
従業員の平均勤続年数はどのくらいですか?

リチャードさん:
Forsyths社の従業員の約30~40%は20年以上勤務していると思います。当社には長い間働いてくれている優秀な人材がたくさんおり、中には30年以上勤務している人もいます。我々は双方向に忠誠心と尊敬を持てる関係を、目指しているのです。

我々が彼らの面倒を見ることで、彼らも我々の面倒を見てくれるでしょう。

Dear WHISKY:
コッパースミスの皆さんはおいくつくらいまで働かれるのでしょうか?

リチャードさん:
コッパーワークスは、手作業で銅を何度も何度も打ち続ける、非常に肉体的負担の大きな仕事です。そのため、彼らの多くは40代半ばになるとペースが落ち始めるので、Forsythsでは彼らのために肉体負荷の軽い業務や管理職なども準備しています。

Dear WHISKY:
工場すべてを機械化しない理由は何ですか?

リチャードさん:
現時点が可能な限り機械化した状態なのです。銅の切り出しと一部のハンマー加工が現在機械で行われていますね。

ただし、正確な職人の技を必要とする工程がまだ一定量あります。

リチャードさんと組み立て前のポットスチル

製造プロセス

製造の基本的な流れ

Dear WHISKY:
オーダーからのプロセスを教えてください。

リチャードさん:
まず、注文を受けたら、資材と労働力を手配しなければなりません。ポットスチルの製造には大量の銅が必要で、主にドイツのメーカーから調達しています。銅は初めは板状になっていて、切断、溶接、成形などの様々な工程を経て成形していきます。

Dear WHISKY:
製造工程後の最終段階はどのようなものですか?

リチャードさん:
蒸溜所に設置し、試運転などを行うテストですね。社内から人を送るか、元ディスティラーを雇って、蒸溜機器全体を2~3週間稼働させ、蒸留酒が適切に製造されていることを確認します。

一番最初は水を通し、粉砕、糖化、発酵、蒸留、そしてそれらを接続するパイプ一本一本すべての工程をテストします。

オーダーメイドのポットスチル製造

Dear WHISKY:
ポットスチルづくりで最も難しいことは何ですか?

リチャードさん:
蒸溜所ごとにポットスチルのデザインやサイズが異なるため、単純に型取りするための機械やシステムは使えません。ポットスチル一つひとつが、クライアントの要望に合わせた唯一無二の作品でなければいけないのです。

Dear WHISKY:
蒸溜所からはどのような注文を受けるのですか?

リチャードさん:
古い蒸溜所はどれも非常にこだわりが強いため、オーダーはすべて過去のものとまったく同じでなければいけません。これは、ブランドが守ろうとしている、一貫した伝統の味を保つためです。例えばグレンフィディックは小型のポットスチルを好む傾向があり、反対にグレンリベットは大型のポットスチルを使用します。これらの特徴はそれぞれのウイスキーに合わせた特有のものです。だからこそ、彼らはデザインやサイズなどのこだわりを意地でも守るのです。

Dear WHISKY:
最も思い出深い注文を教えてください。

リチャードさん:
かつて一人の男性が、製造担当やエンジニアリングの人々を取り巻きに連れて、このオフィス、まさにこの部屋に来て、「グレンリベットを造りたい」と注文したことがありました。その人物こそ、カバランの創設者であるT.T.リーでした。私は驚きながらも、「グレンリベットの味わいには、設備以外にも気候や原料などさまざまな要素があるため、それを保証することはできない。」と答えました。彼の最初の注文は、100万リットルの蒸留酒を生産する製造ラインを建設することでした。カバランには現在3つのラインがあり、5つのマッシュタンと20基のポットスチルを使い、年間約900万リットルの蒸留酒を生産しています。

彼らは今では、アジア最大のシングルモルト蒸溜所です。

ポットスチルがウイスキーの味わいに与える影響

Dear WHISKY:
ウイスキーやポットスチルの味わいについて人々にアドバイスされることはありますか?

リチャードさん:
ウイスキー造りには少し神秘的な部分があるので、とても複雑です。ウイスキーの製造には非常に多くの要素が関係するため、先ほどもお話した通り、特定のウイスキーを100%再現できると、保証は絶対にできません。つまり、ポットスチルの形状のみに基づいてウイスキーの味わいをコントロールすることはできないのです。

リチャードさん直々に工場を案内してくれました

Dear WHISKY:
一度使用していたポットスチルのデザインを変えた蒸溜所はありますか?

リチャードさん:
数は少ないですが、より多くのリフラックス(※)を求めて、ネックを高くした蒸溜所はありますよ。

このようなことは、伝統と歴史を守る古い蒸溜所では、決して起こりません。

(※)リフラックス / 還流

ポットスチル内の液体が蒸発と凝縮を繰り返しながら、純度を高めていくプロセス。

ポットスチルの価格

Dear WHISKY:
ポットスチルの価格を決める要素はなにがありますか?

リチャードさん:
デザインによっても大きく異なりますが、主な要素はサイズです。銅は高価な金属であるため、製造に必要な人件費とともに、銅の面積が価格に最も影響します。直火加熱か蒸気による間接加熱かも大きな要素です。直火焚きポットスチルは、火にふれる箇所に必要な銅の厚みが増す上、加熱源も高価なため、ポットスチル自体の値段も上がります。

Dear WHISKY:
ポットスチルの形状もやはり価格に影響しますか?

リチャードさん:
ええ、もちろんです。見比べると一目瞭然でしょう。形状によって単純につくるのがより複雑なものは、製造により多くの工数が必要となり、最終的な価格は高くなってきます。

伝統的なポットスチルの形状

Dear WHISKY:
何百年も経った今でも、ポットスチルの形は変わっていないのでしょうか?

リチャードさん:
ごくわずかにしか変わっていません。新しい蒸溜所の中には、他と違うことをしようと、形状にバリエーションを求めるところもあります。

しかし、大体のポットスチルの形状は、4~5つのパターンにわけることができます。

ポットスチルの形状はさまざまです

Dear WHISKY:
これらの伝統的な形状の中で、リチャードさんのお気に入りはありますか?

リチャードさん:
私はグレンフィディックのウォッシュスティルのような、伝統的なオニオン型が好きです。とても美しいですね。バルジ型も昔ながらの形で、お気に入りの一つです。ポットスチルは世界中にごまんとありますが、まったく同じものはほとんどありません。

そんな中でもとくに美しいと思えるポットスチルは、バランスと比率が最も重要だと思います。

60年のウイスキー業界でのキャリア

記憶に残る瞬間

Dear WHISKY:
キャリアを通じて大事にしてきたことは何ですか?

リチャードさん:
初期の頃から今に至るまで、本当に素晴らしい人材に恵まれ、楽しい日々を過ごしてきました。

どのようなビジネスにおいても最も重要なことは、ユーモアを忘れないことです。

皆、暗く辛い日もありますが、良い日もあることを忘れてはいけません。そのためにも、いつ何時もユーモアを保たなければならないと思います。Forsyth家は素晴らしい会社を築き上げてきましたが、それはすべて働いている皆さんのおかげなのです。

ウイスキー業界の変化と進歩

Dear WHISKY:
60年のキャリアの中で、業界で最も変わったことは何ですか?

リチャードさん:
グリーンエネルギーと環境のサステナビリティーに関する技術的革新には目を見張りますね。近年実現された、製造工程で熱を逃さず再利用する技術は、非常に重要な進歩と言えるでしょう。

Dear WHISKY:
ポットスチルの形状を従来の形状から大きく変えることを考えたことはありますか?

リチャードさん:
まったくないですね。クライアントがなにを望むかは自由ですが、私自身は今あるものに満足しています。何十年か前のポットスチルと最近のポットスチルを比較すると、地面の下の底の形状が変わっています。

これは直火から蒸気加熱へのトレンドの変化によるもので、ポットスチルの設計において我々が得た最大の技術進歩ですが、形状に大きな変更がなされたのはこのときくらいでしょうね。

今後の展望

Dear WHISKY:
Forsyths社の次の目標は何でしょうか?

リチャードさん:
私はこの会社とその立場を誇りに思っており、息子が今後も守り続けてくれることを願うばかりです。きっと大丈夫だと信じています。息子は賢い人物で、特に国際的なマーケットにおいて、この業界をうまく理解しています。 

Dear WHISKY:
あなたにとって次の目標は何ですか?

リチャードさん:
見たことのない場所を見に行きたいのですが、 旅行することが多いのでそんな場所が少なくなってきてしまいました。でも、日本には必ずまた行くつもりです。

リチャードさんと世界中の蒸溜所のウイスキーボトル

Dear WHISKY読者の皆様へのメッセージ

最後に

Forsyths社は、若者に雇用の機会を提供することで、地域社会をサポートする会社であり、リチャードさんは、これがいかに雇用創出に役立つだけでなく、若い従業員の間に強い忠誠心や責任感を育むことになるかを説明してくださりました。世界最高のポットスチルメーカーとしてのForsyths社の現在の地位は、熟練した献身的な従業員と、受け継がれてきた伝統の賜物です。

Forsyths社のストーリーは、会社とその業界の長期的な成功のために、いかに人々と健全な関係を築くことが重要かを強調しています。

さらに、ポットスチル製造の専門家であるリチャードさんに、ポットスチルの分析とそれがウイスキー製造に及ぼす影響について教えていただきました。より深く製造工程について興味を持たれた方は、是非現地レポートもご覧ください!

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