【独占インタビュー】第1弾:世界一のウイスキーコミュニティ、ザ・スコッチモルトウイスキー・ソサエティに独占インタビュー
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ウルフクレイグ・ディスティラーズ(Wolfcraig Distilers)は、2020年スコットランドで新たに誕生したウイスキーブランドです。
ハイランド地方とローランド地方の境界に位置するスターリングに蒸溜所を建設中で、昨年にはファーストリリースとなるブレンデッドウイスキーを発売しました!
ウルフクレイグのマスターブレンダーを務めるリチャード・パターソン(Richard Paterson)さんは、スコッチウイスキー業界で広く知られている人物です。
半世紀以上に渡ってウイスキー業界で働き、今もなお大きな影響力を持つパターソンさんは、「偉大な鼻(The Nose)」の異名でも知られています。
ウルフクレイグの創業者の一人であるジェイミー・ラン(Jamie Lunn)さんは、元ホワイト&マッカイ社CEOで父親でもある故マイケル・ランさんと共にウルフクレイグ・ディスティラーズを立ち上げました。
現在は亡き父の遺志を継ぎ、ウルフクレイグの創業者兼取締役としてチームを率いています!
パターソンさんとジェイミーさんは今年2月、東京で開かれたウルフクレイグの日本上陸イベント開催のために日本を訪れ、パターソンさんのスピーチと共に3種類の希少なウイスイーを披露しました!
今回Deaw WHISKYでは、イベントの前日にお二人にインタビューを行い、ウルフクレイグ設立の背景やハウススタイル、日本でも新たにリリースされるウイスキーについて詳しくお聞きすることができましたので、是非最後までご覧下さい!
会社名 | ウルフクレイグ・ディスティラーズ |
設立年 | 2020 |
創業者 | マイケル・ラン、ジェイミー・ラン |
所在地 | Craigforth Campus, Stirling, United Kingdom |
公式HP | ウルフクレイグ・ディスティラーズ 公式HP ウルフクレイグ・ジャパン 公式HP |
Dear WHISKY:
現在スターリングに蒸溜所を建設中とのことですが、なぜこの場所に蒸溜所を造ろうと思ったのでしょうか?
パターソンさん:
スターリングはスコットランドの古都として、歴史上重要な役割を果たしてきた場所です。この街は深い歴史があり、荘厳なスターリング城やナショナル・ウォレス・モニュメントなど、多くの歴史的建造物があります。
またブランド名である「ウルフクレイグ」の由来となった「ウルフクレイグ伝説」の舞台にもなっているのです。
Dear WHISKY:
スターリングに蒸溜所を建てるメリットというのはどういったものがありますか?
パターソンさん:
スターリングはハイランド地方とローランド地方の境界に近くに位置し、境界近くを流れるフォース川沿いにあるためハイランド地方への玄関口となっています。蒸溜所完成後には多くのツアー客が楽しめる場所にしたいと思っており、グラスゴーやエディンバラといった大都市からのアクセスが良いことも魅力の一つです。
Dear WHISKY:
先ほど仰っていた「ウルフクレイグ伝説」というのはどういったものなのでしょうか?
パターソンさん:
「ウルフクレイグ伝説」は、スターリングで言い伝えられているスコットランドの民間伝承です。この伝説では、北欧からの侵略してきたヴァイキングたちが、ある夜フォース川のほとりに住むケルト人守備隊の寝込みを襲おうとしました。その夜、ヴァイキングの一人が忍び寄ったところ、狼の子の足を踏んでしまいました。狼の親子を起こしてしまったことで、眠っていたケルト人たちは侵入者の存在に気づくことが出来ました。その後戦いが始まり、ケルト人たちはヴァイキングたちを追い払ったのでした。
それ以来、狼はスターリングの守護神として崇められ、この戦いは「ウルフクレイグ」として知られています。
Dear WHISKY:
現在のラインアップにはどういった商品がありますか?
ジェイミーさん:
現在取り扱っているのは「ウルフクレイグ30年 プレミアムブレンデッドスコッチウイスキー」、「ウルフクレイグ35年 ブレンデッドグレーンスコッチウイスキー」、「ウルフクレイグ14年 デラックスブレンデッドトリプルシェリーカスク」そして「ウルフクレイグ ジン」の4種類です。
Dear WHISKY:
こういった商品を造るにあたってこだわっていることは何ですか?
ジェイミーさん:
ウルフクレイグで造るウイスキーは、ウイスキーを飲み慣れている方でも満足してい頂けるものを造っています。各製品の個性や特徴については後ほどお話しますが、これらのウイスキーに共通していることは、アルコール度数46%で瓶詰めされていることです。
46%というのは好みの量の水を加えることで、飲み方を好きに変えることができ、理想的な形でウイスキーの楽しんでいただける最適なアルコール度数なんです。
Dear WHISKY:
蒸溜所が設立された後のウイスキー造りではどういった香りや味わいを目指すのでしょうか?
パターソンさん:
重厚で個性的なウイスキーを造りたいと考えています。様々な樽で熟成させることで、口当たりは滑らかな柑橘感のあるウイスキーを造ろうとしています。
Dear WHISKY:
現在のラインアップにはどういった商品がありますか?
ジェイミーさん:
現代は人々のお酒の飲み方が変化してきていると感じています。以前よりもお酒に対して量よりも質を重視する傾向にあり、安く大量に飲めることよりも、高品質なものを楽しむことが魅力的に感じる人が増えてきている傾向にあります。この変化に対応して、ウルフクレイグでも高品質なウイスキー造りに注力しています。
高級感あふれる魅力的なウイスキーを、最大限の品質で提供することを重要視しています。
Dear WHISKY:
ユニークなボトルデザインの背景にはどういった考えがあるのでしょうか?
ジェイミーさん:
今、特に若い人たちはお酒に対し量より質を求める傾向にあり、高級感のある製品が魅力的に感じる人が多くいるようです。そういった中では製品のデザインというのは、最も重要な要素の一つになりつつあります。
ウルフクレイグでも今までのスコッチウイスキーにはなかったような斬新なデザインのウイスキーボトルを導入し、見た目の美しさにもこだわり抜きました。
商品名 | Wolfcraig 30 Year Old Premium Blend |
アルコール度数 | 46.3% |
タイプ | ブレンデッド |
熟成年数 | 30年 |
受賞歴 | グローバル・スコッチウイスキー・マスターズ・アワード2023 – 金賞(19〜30年熟成ブレンデッド部門) |
Dear WHISKY:
こちらのウイスキーについて教えていただけますか?
パターソンさん:
これはウルフクレイグとして初めて製造したウイスキーです。30年以上熟成させた原酒をブレンドしたあと、特別に厳選したペドロヒメネスシェリー樽に移し、26ヶ月間後熟させました。
この工程により、ウイスキーに柔らかさと豊かさが生まれ、モルト原酒とグレーン原酒が一体感をなしています。
Dear WHISKY:
香りや味わいはどういった特徴があるのですか?
パターソンさん:
長い熟成年数と26ヶ月のマリッジのおかげで、柔らかさと豊かさが際立った味わいとなっています。マヌカハニーの香りもまたXOコニャックを思わせるような深い味わいをもたらしてくれます。
大胆で贅沢な風味が口の中で続くので、食後酒に最適の一本です。
商品名 | Wolfcraig 35 Year Old Premium Blended Grain Scotch Whisky |
アルコール度数 | 46.8% |
タイプ | ブレンデッドグレーン |
熟成年数 | 35年 |
Dear WHISKY:
こちらのウイスキーどういった特徴があるのでしょうか?
パターソンさん:
この35年熟成ウイスキーはグレーンウイスキーのみをブレンドしたものです。
ここで使用したグレーンウイスキーは、カンバス蒸溜所やカレドニアン蒸溜所、ポートダンダス蒸溜所といった閉鎖された蒸溜所で蒸留されており、非常に貴重な原酒を用いて造ったウイスキーになっているです。
Dear WHISKY:
香りや味わいはどういった特徴があるのですか?
パターソンさん:
グラスを鼻に近づけると、五感を呼び覚ますような心地の良い魅力的な香りがします。深呼吸をすると、甘いメロンやジューシーな葡萄、酸味のあるパイナップルや濃厚なホワイトチョコレートの香りや、滑らかなキャラメルや甘いマヌカハニーのほのかな香りをも感じられます。
Dear WHISKY:
このウイスキーはどういった場面で飲むのがおすすめですか?
パターソンさん:
この滑らかなグレーンウイスキーは、水を加えずとも飲めるほどに軽い口当たりで、こちらは食前酒として飲むのがおすすめです。食後にもっと重たいものを楽しみたい場合は、30年ブレンデッドウイスキーを飲むのもいいかもしれません。
商品名 | Wolfcraig 14 Year Old Deluxe Blend Triple Sherry Cask |
アルコール度数 | 46.1% |
タイプ | ブレンデッド |
熟成年数 | 14年 |
Dear WHISKY:
こちらはどういった個性のウイスキーなのでしょうか?
パターソンさん:
このウイスキーはアモンティリャード樽、ペドロヒメネス樽、モスカテル樽の3種類のシェリー樽で熟成させています。
アモンティリャード樽はウイスキーのクリーミーさを引き出し、これが深い味わいにしており、多くの人を魅了する豪快で重厚感のあるウイスキーに仕上がりました。
Dear WHISKY:
香りや味わいについて教えていただけますか?
パターソンさん:
滑らかな口当たりで、柑橘系などの果実の香りや蜂蜜の香りが感じられる味わいになっています。シェリー樽がレーズンのようなフルーティーな香りを引き出しているものの、主張はしすぎずクリーミーさがあるため、柔らかさも感じられるのです。
商品名 | Wolfcraig Gin |
アルコール度数 | 44.5% |
ボタニカル | ジュニパーベリー、オレンジピール、レモン、カシア、ラズベリー、ワイルドタイム、スターリング産ボタニカル |
受賞歴 | グローバル・ジン・マスターズ・アワード2023 金賞(ウルトラ・プレミアム部門) |
Dear WHISKY:
このジンの特徴を教えていただけますか?
ジェイミーさん:
スターリングで採れたボタニカルを使用し、伝統的な製法で製造したジンです。ボタニカルを漬け込む時にポットスチルに入れ、蒸留時にボタニカルが気化することで果実感が増します。口当たりのが良く、ジュニパーベリーの芳醇な風味を感じられる伝統的な味わいになっています。
Dear WHISKY:
おすすめの飲み方ありますか?
ジェイミーさん:
ジンとは思えないような、まろやかさや滑らかさがあるため、最初はストレートで飲むことをおすすめします。
ジンをストレートで飲むことは珍しいですが、ストレートで飲むと滑らかな舌触りを楽しむことができます。またロックグラスにジンを注ぎ、75ml〜100mlほどのトニックで割る飲み方もおすすめです。
Dear WHISKY:
ウイスキーテイスティングではどういったグラスを使われるのですか?
パターソンさん:
ウイスキーのテイスティングには、コピータと呼ばれるグラスを使っています。ステムが短くボウルは球状となっているためグラスを鼻に近づけやすく、グラスと鼻に間に隙間ができません。
これにより完璧にウイスキーの香りに包まれるため、繊細な味わいを全て感じ取ることが出来るのです。
Dear WHISKY:
ウイスキーのノージングはどのようにして楽しむのですか?
パターソンさん:
グラスを鼻に近づけ「 ‘Hello’, ‘How are you?’, ‘Quite well’, ‘Thank you very much’ 」とウイスキーに語り掛けます。香りを正確に感じるには片方の鼻孔を使うのですが、コンディションによって繊細に香りを感じられる鼻孔が変わるので、まずそれを確かめます。どちらの鼻孔にするか決めたら時間をかけてゆっくりと息を吸います。この時時間をかけて楽しむことを忘れないでください。
Dear WHISKY:
テイスティングする際に一番大切なことは何ですか?
パターソンさん:
繰り返しにはなりますが、ウイスキーを楽しむ秘訣は、時間をかけることです。ショットのように一気飲みをする人がいますが、それはやってはいけません。
ウイスキー造りには時間がかかるのです。ものにもよりますが、何年も、時には何十年とかけて熟成させて造られるのです。
Dear WHISKY:
具体的にはどのようにして飲むのですか?
パターソンさん:
ウイスキーを口に含んだまま、熟成した年数分だけそのまま時間を置いてください。例えば30年熟成のウイスキーであれば、飲み込む前に少なくとも30秒は口の中に留めてください。
Dear WHISKY:
なぜ口の中に留めておくのですか?
パターソンさん:
ウイスキーをテイスティングする際は、その複雑で豊かな味や香りをしっかりと楽しんでほしいのです。そのために、ウイスキーを口に含み、舌の上側や下側に転がし、舌の中央に戻します。
口に長く留めておくほどに、風味が感じられます。
Dear WHISKY:
ウイスキーの後味や余韻はどのようにして楽しむのですか?
パターソンさん:
飲み込んだ後に10秒ほど待ちます。そうすると香りや味わいがふわっと広がってきます。ウイスキーのアルコール度数が強すぎる場合は、少量の水を加えると楽しめます。
Dear WHISKY:
ウルフクレイグの日本上陸にはどのような背景があったのですか?
ジェイミーさん:
日本には豊かなお酒の文化があります。なかでもウイスキーバーが人気であるように、日本の方はウイスキーを飲むことやその品質に敬意を払って楽しんでいるように感じます。
スコットランドも日本もウイスキー造りの深い歴史の共通点があることから、日本の市場にも出たいと考えていました。
パターソンさん:
私は日本が大好きです。ウイスキーの製造から提供の仕方まで、ウイスキーを非常に大切にしており、敬意を払っていることがよく分かります。
ウルフクレイグにとって、日本で評価されることは重要であり、ウイスキーの楽しみ方を伝えていくことでそれを実現したいと思っています。
長い道のりを歩み始めたばかりの新しいブランドであるウルフクレイグ・ディスティラーズは、こだわり抜いたのウイスキーの製造を始めました。伝統的な技法と革新的なハウススタイルを一体化兼ね備え、今後もラインナップを増やしていきます。
今回、パターソンさんとジェイミーさんは、ウルフクレイグの未来やその魅力的な製品、ウイスキーへの愛を語ってくださいました!
またDear WHISKYではウルフクレイグのお二人へのインタビューに加え、スコッチウイスキー業界の重鎮であるパターソンさんへの独占取材や、ウルフクレイグジャパン日本上陸イベントの現地レポートも公開していますので、是非ご覧ください!