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【独占インタビュー】SAKURAO DISTILLERY 蒸留責任者・山本さんにインタビュー!

2024.04.14 / 最終更新日:2024.04.14

100年以上にわたって受け継いできた蒸留技術をもとに、2017年、ウイスキー造りの新たな可能性に挑戦するために設立された『SAKURAO DISTILLERY』。広島県の海と山の異なる自然の恵みを反映し、SAKURAO DISTILLERY 独自の味わいを深めたウイスキーを造っています。

今回は SAKURAO DISTILLERYの蒸留責任者である山本泰平さんに、ご自身についてはもちろん、SAKURAO DISTILLERYのウイスキー造りの魅力や桜尾蒸留所の展望などについて伺いました!

SAKURAO DISTILLERY について

SAKURAO DISTILLERY とは

SAKURAO DISTILLERY の原点は広島廿日市市桜尾町にある伝統的な焼酎蔵、中国醸造にあります。中国醸造では、1938年から1989年にかけてウイスキーが製造されてきましたが、長らく製造が中止されていました。創業100年の記念事業として再び西洋の伝統的な蒸留酒の製造に踏み込むべく、

2017年にこれまで培った職人技術を活かしたウイスキーを製造する SAKURAO DISTILLERY を設立しました。

2021年3月には社名を『サクラオブルワリーアンドディスティラリー(サクラオB&D)』に変更し、7月に初のシングルモルト『桜尾』と『戸河内』をリリースしました。

シングルモルト『桜尾』とシングルモルト『戸河内』

SAKURAO DISTILLERY 概要

蒸留所名 SAKURAO DISTILLERY
創業年(会社設立年) 1918年
ウイスキー蒸留開始年 2017年(1920年ウイスキー免許取得)
所在地 広島県廿日市市桜尾1-12-1
お問い合わせ先 0829-32-2111
代表取締役社長 白井浩一郎 様
その他 蒸留所HPはこちら
蒸留所見学はこちら

蒸留責任者の山本泰平さんのご紹介

山本 泰平 さん(蒸留責任者)
1998年、中国醸造株式会社に入社。商品開発室に配属になり、その後、開発主任を務める。現在は蒸留責任者を務めている。

山本さんご自身について

学生時代について

Dear WHISKY:
大学ではどのようなことを勉強されたのですか?

山本さん:
学部は工学部で、化学系やバイオ系のことを中心に勉強しました。

Dear WHISKY:
工学部の化学系にご興味があったのですか

山本さん:
当時、私の実家が染色工場を経営しており、その後を継ぐことを考えていたため工学部に進学しました。

お酒を好きになったきっかけ

Dear WHISKY:
お酒に興味を持ったきっかけは何ですか?

山本さん:
私の父親はお酒が大好きで、よくお酒を飲んでいました。その影響もあって自分自身もお酒を飲むようになりました。

Dear WHISKY:
ちなみに、どのようなお酒がお好みなのですか?

山本さん:
ウイスキーはもちろん、ビールや日本酒など幅広く様々なものを飲みます。生前は父親ともよく飲みましたね。

Dear WHISKY:
ウイスキーの中で、お好きな銘柄はございますか?

山本さん:
バーボンウイスキーが好きで、特にフォアローゼスやワイルドターキーをよく飲んでいます。

お酒のお仕事に関わりたいと思ったきっかけ

Dear WHISKY:
実際にお酒のお仕事に携わりたいと思ったきっかけは何ですか?

山本さん:
大学で学んだことを活かせると思い、中国醸造株式会社の日本酒開発室に入社することを決意しました。

Dear WHISKY:
日本酒開発室からスタートされたのですね!入社してから現在のウイスキー蒸留責任者に至るまで、どのようなことをされてきたのですか?

山本さん:
入社当初は日本酒の開発をメインでやっていたため、酵母の違いによる味や香りの変化に着目して、酵母の特徴を探っていました。
また、中国醸造株式会社はビール以外の製造免許を持っているため、日本酒だけでなく、焼酎やリキュールの開発のように、幅広い種類のお酒の開発に関わってきました。

SAKURAO DISTILLERYについて

2017年にウイスキー事業への参入を決めた理由

Dear WHISKY:
2017年にウイスキー事業に参入することになったきっかけは何かあったのですか?

山本さん:
中国醸造株式会社は創業以来、和酒の製造・販売を中心に行ってきました。

2018年に創業100周年の節目を迎えることとなったため、次の100年に向けた会社の方向性を会社全体で決めることになりました。

Dear WHISKY:
そこでウイスキーの製造に着目されたのですね。

山本さん:
時代の流れもあり、これからは洋酒にも力を入れていくことになりました。

洋酒の中でも、特にウイスキーやジンを世界に向けて発信していこうということで、2017年に SAKURAO DISTILLERY を設立してウイスキーの蒸留を開始しました。

SAKURAO DISTILLERY の外観

SAKURAO DISTILLERY を取り巻く自然環境の特徴

Dear WHISKY:
SAKURAO DISTILLERY の自然環境の特徴は何ですか?

山本さん:
SAKURAO DISTILLERY は、北には中国山地、南には瀬戸内海という、山と海の両方の魅力を兼ね備えた広島県にあります。

広島県の海と山が近いという特徴を活かし、 SAKURAO DISTILLERY は海側と山側の2か所に熟成庫を設けています。

Dear WHISKY:
海側の熟成庫はどちらにあるのですか?

山本さん:
海側の熟成庫は、安芸の宮島を望む、SAKURAO DISTILLERY内にある『桜尾貯蔵庫』です。

Dear WHISKY:
山側の熟成庫はどちらにあるのですか?

山本さん:
山側の熟成庫は、安芸太田市の山の中にあり、旧国鉄の廃トンネルを活用した『戸河内貯蔵庫』です。
穏やかな瀬戸内海と緑豊かな中国山地、それぞれの地で熟成させることで、自然の恵みを反映し、独自の味わいを深めたウイスキーを造ることができます。

蒸留所新設に際して苦労したこと

Dear WHISKY:
蒸留所建設の際に苦労されたことはありましたか?

山本さん:
入社して以来、ウイスキー造りをしたことはなかったため、ウイスキー造りや製造設備に関する知識がなく本当にゼロからのスタートでした。
周りに頼れる人もいない中で、自分で調べてやるしかなかったことが本当に苦労したことです。

Dear WHISKY:
ウイスキー事業を始めるにあたり、日本酒や焼酎の製造から培った知識や経験を活かしたり応用したりするなどはございましたか?

山本さん:
日本酒や焼酎の製造形式と発酵形式は、ウイスキーの製造形式と発酵形式と全く異なりますが、酵母を発酵させてお酒を造るという点では同じです。

そのため、日本酒の香りの要素などをウイスキーに応用できないかなと思い、酵母を工夫してみたりしました。

SAKURAO DISTILLERYのウイスキー造りについて

受け継がれた蒸留技術とウイスキー造り

Dear WHISKY:
100年以上の長い歴史を持つ蒸留技術や蒸留設備はウイスキー造りに活かされているのでしょうか?

山本さん:
かなり活きている部分はあります。

例えば、私たちは連続式蒸留焼酎も単式蒸留焼酎も製造しており、それぞれの蒸留方式やその良さなどに関する知識は長年培われてきました。

そういった蒸留技術や知識はウイスキー造りに上手く転用できていると思います。

2か所の貯蔵庫の魅力

Dear WHISKY:
海側の貯蔵庫の自然環境や場所の特徴は何かございますか?

山本さん:
SAKURAO DISTILLERY 内の『桜尾貯蔵庫』は、海のそばにあり潮風が入ってくるため、潮っぽい感じのウイスキーになります。

Dear WHISKY:
山側の貯蔵庫の自然環境や場所の特徴は何かございますか?

山本さん:
安芸太田市の山の中にある『戸河内貯蔵庫』は、森の中にあり空気が澄んでいるため、綺麗でまろやかなウイスキーになります。

そのため、2か所の貯蔵庫を使うことによって、原酒の作り分けができることは、 SAKURAO DISTILLERY の特徴ですね。

桜尾貯蔵庫

Dear WHISKY:
海と山という全く異なる自然環境はウイスキー造りにどのような影響を与えていますか?

山本さん:
私たちは基本的にはバーボン樽を使用していますが、それ以外にもシェリー樽やミズナラ樽、ワイン樽なども使用しています。また、 SAKURAO DISTILLERY の蒸留器はニューポットを造り分けることもできます。

それに加えて、2つの異なる貯蔵庫があることで、様々なタイプの原酒を造ることができ、将来的に商品開発などにおいて活かせると思っています。

戸河内貯蔵庫で廃線トンネルを利用している理由

Dear WHISKY:
なぜ廃線となったトンネルに、戸河内貯蔵庫を建てたのでしょうか?

山本さん:
実は、過去に別のトンネルでウイスキーや焼酎などを貯蔵していた歴史があったため、トンネルの中で蒸留酒を熟成させると良いウイスキーが出来上がるという知見がすでにありました。
2017年に再びウイスキーを製造するにあたって、その知見を活かして、新たにトンネルを借りて、そこを貯蔵庫として利用することになりました。

Dear WHISKY:
過去に使っていたトンネルではなく、新たなトンネルを貯蔵庫として利用することにしたのはなぜですか?

山本さん:
過去に使っていたトンネルは試掘用のトンネルで貫通しておらず長いトンネルではありませんでした。

この度のウイスキー造りでは、貯蔵する樽の数を相当数計画していたため、より長いトンネルが必要となり、新たなトンネルを利用することにしました。

Dear WHISKY:
トンネルの出入り口付近と奥では熟成環境に違いはありますか?

山本さん:
特に夏場は、トンネルの出入り付近の気温が奥の気温より高くなります。奥に行くにつれて気温が下がっていくため、熟成環境はトンネルの手前と奥でかなり違いが出てきます。

山本さんが想い描くこれからのSAKURAO DISTILLERY

ウイスキー造りに適した自然環境とは

Dear WHISKY:
山本さんの考えるウイスキー造りに理想的な自然環境は何ですか?

山本さん:
気温や湿度といった自然環境は変えることができないし、人工的に変えるべきではないと思います。

与えられた環境の中で味わいを追求し、それを世界にアピールして、日本ならではのウイスキーを世界に広めていきたいと思います。

ウイスキー造りにおいて最も大切にしていること

Dear WHISKY:
蒸留責任者である山本さんが、ウイスキー造りにおいて大切にしていることはありますか?

山本さん:
特徴的なエステリー(エステリーとは、熟成による甘く華やかな香りのこと。)やフルーティーな香りを出すためには、酵母が重要であるので大事に使っています。
様々なことにチャレンジもしますが、やはり、ベーシックな酒質を変えないことは大事なことだと思います。

Dear WHISKY:
酵母を大事に使うというのは、具体的にどのような使い方をしているのでしょうか?

山本さん:
基本的にはディスティラリー酵母を使っていますが、同じディスティラリー酵母でも仕入れ先によってそれぞれ特徴があるので、酵母の違いに着目した組み合わせや使い分けは大事にしています。

Dear WHISKY:
酵母の使い分けによって最終的に出てくる原酒の香りはかなり変わってくるのですか?

山本さん:
変わってきますね。蒸留所を設立して以来、何種類も酵母を使ってきましたが、その中からセレクトして数種類のものをブレンドして酵母を使っています。

Dear WHISKY:
独自の香りや味わいに辿り着くまでに、やはり試行錯誤されたのですか?

山本さん:
色々な酵母を使ってみたり、酵母の量を工夫してみたりしました。上手く発酵しなかったり、香りが重たくなったり、十分に酒量を採れなかったりと多くの困難に直面しましたが、試行錯誤して乗り越えました。

Dear WHISKY:
他にウイスキー造りにおいて大切にしていることはありますか?

山本さん:
ミドルカットも大切にしています。ミドルカットの基準度数はありますが、日々慎重に官能検査を行うことで、微妙な調整をしてミドルカットをするように心がけています。

Dear WHISKY:
試行錯誤をする上で、こういった味を目指したいというようなゴールは設定されていたのですか?

山本さん:
SAKURAO DISTILLERY のポットスチルはハイブリッドスチルなので、ライトでエステリーなタイプのウイスキーを製造することに適しています。
重たい酒質のウイスキーも人気ですが、広島の自然や2か所の貯蔵庫の自然環境をウイスキー造りに活かすことを考えると、重たい酒質ではなくライトなウイスキーを造りたいという想いはありました。

Dear WHISKY:
この場所ならではのウイスキー造りをされているのですね!

ウイスキー造りの工夫について語る山本さん

ウイスキー蒸留所併設型テーマパーク 新蒸留所 『SAKURAO YOSHIWA WHISKY PARK』開設への想い

Dear WHISKY:
2025年にテーマパーク竣工のきっかけは何ですか?

山本さん:
きっかけは「水」ですね。SAKURAO DISTILLERY は街中にあるため豊富な水がありません。川の水を引っ張ってきてはいるのですが、配管の老朽化といった問題があるので、いつまでその水を使えるのかという将来に向けての不安があります。

Dear WHISKY:
水がきっかけだったのですね!

山本さん:
そこで、かつて存在した吉和村という村のキャンプ場があった場所に着目しました。そこは水の量も豊富で、夏場も涼しいので、ウイスキーを造る環境としては非常に良い環境です。
だからこそ、そこでウイスキーを造ってみるのも良いのではないかなと思ったのがきっかけです。

Dear WHISKY:
ウイスキー造りをするのであれば、蒸留所のみの建設も考えられると思うのですが、それだけでなくテーマパークを併設しようと思ったのはなぜですか?

山本さん:
アメリカやスコットランドの蒸溜所は、蒸溜所内にバーがあるなど観光地のように楽しめる場所です。日本では、蒸溜所でウイスキーを楽しむ環境はまだあまり整備されていないません。そこで、ウイスキー造りを通じてお客様にもっとウイスキーを楽しんで頂きたいと思い、テーマパークといった構想をもって取り組んでいます。

ジャパニーズウイスキーに対する想い

ジャパニーズウイスキー100周年という節目に対する想い

Dear WHISKY:
今年、ジャパニーズウイスキーは100周年を迎えましたが、それに対しての率直なお気持ちはございますか?

山本さん:
現在、蒸留所を新設する計画が進んでいます。

次の100年に向けて若手の従業員に技術継承をしたり、SAKURAO DISTILLERY のあり方に関する想いをお客様にも伝えていかなければならないと思っています。

ジャパニーズウイスキーが持つ魅力とは

Dear WHISKY:
日本のウイスキー造りに携わる山本さんだからこそ感じる、ジャパニーズウイスキーの魅力は何ですか?

山本さん:
日本特有の四季があるという自然環境は、ウイスキー造りにおける熟成環境に大きな影響を与えていると思います。

それによってできた多様な原酒を組み合わせ、さらに様々な樽も組み合わせるといったブレンド技術には、日本人特有の繊細さがあると思います。こういった多様なウイスキー造りができることがジャパニーズウイスキーの魅力だと思っています。

Dear WHISKYの読者へのメッセージ

Dear WHISKY:
最後に、Dear WHISKYの読者に向けてメッセージをお願いします!

山本さん:
ウイスキー愛飲家の方から、これからウイスキーを始められる方まで、SAKURAO DISTILLERY の造るウイスキーに対する率直なご意見やご感想をフィードバックして頂けると光栄です。SAKURAO DISTILLERY は設立からやっと6年が経過しようとしています。

これからも研鑽して参りますので、今後ともよろしくお願い致します!

山本さんと SAKURAO DISTILLERY の看板

まとめ

以上、SAKURAO DISTILLERY 蒸留責任者・山本泰平さんへのインタビューでした!

今回のインタビューでは、SAKURAO DISTILLERY のウイスキー造りや、 SAKURAO DISTILLERY を取り巻く自然環境の魅力、山本さんが想い描く SAKURAO DISTILLERY の展望などについてお聞きすることができました。

SAKURAO DISTILLERY の見学はもちろん、2025年にはウイスキー蒸留所併設型テーマパークも完成予定なので、是非足を運んでみてはいかがでしょうか?

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