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【独占インタビュー】長期熟成酒の第一人者である上野伸弘さんに海底熟成の魅力についてインタビュー!

2024.05.08 / 最終更新日:2024.05.09

“ウイスキーは瓶熟成をしない”このことはウイスキー愛飲家の間では半ば常識として定着しつつある、ウイスキーの特徴の1つです。この特徴のためにウイスキーは長期間にわたって品質を保ったまま保存することが可能となっています。しかし、この常識を覆すウイスキーを瓶内熟成させる方法があることをご存じでしょうか?

「海底熟成」と呼ばれるこの新たな熟成方法は、文字通りウイスキーを海の中で熟成させる方法のことです。

今回Dear WHISKYは、海底熟成プロジェクトの発起人であり、市ヶ谷にある熟成日本酒Shop&Bar「熟と燗」の社長を務める、上野伸弘さんへの独占インタビューを行いました!

上野さんの考える製品後に嗜好的に起こる好ましい科学的変化と物理的変化を総した行いである「お酒の熟成」についてや、海底熟成プロジェクト発足の経緯や長期熟成酒の楽しみ方などについてお伺いさせていただきましたのでぜひお楽しみください!

併せてお読みください!

熟成日本酒Shop&Bar「熟と燗」について

熟成日本酒Shop&Bar「熟と燗」とは

熟成日本酒Shop&Bar「熟と燗」は、東京都千代田区にある熟成日本酒に特化したショップ&バーです。

「お酒の熟成という素晴らしい世界をより多くの人に味わってもらいたい」という想いの下、熟成酒の専門家である上野伸弘さんがお客様一人一人の好みに合わせた熟成酒や燗を提供します。

好みの銘柄やおすすめの飲み方など、誰もが持つお酒に対する疑問に上野さんが丁寧に説明してくれる、まさに「熟成を楽しむ」「温度帯を大切にする」ことをお客様に体験することができる空間となっています。

熟成日本酒Shop&Bar「熟と燗」

熟成日本酒Shop&Bar「熟と燗」概要

アクセス 市ケ谷駅から徒歩8分
住所 東京都千代田区三番町7-16 三番町ビル 1F、B1F
電話 080-8015-5274
営業時間 14:00~21:00(日曜営業)
定休日 火曜日、水曜日
HP 熟成日本酒Shop&Bar「熟と燗」

社長 上野伸弘さんのご紹介

熟成日本酒Shop&Bar「熟と燗」の社長兼、一般社団法人 刻SAKE(ときさけ)協会の常任理事。
1979年ホテルニューオータニ入社し料飲部飲料課に配属され、ホテル内のバーで勤務を始め、1986年の東京サミットの際には、レーガン大統領を始め、各国首脳のサービスを担当するなど社内外のVIP担当サービスマンとして活躍され、その後フレンチレストラン「トゥールダルジャン東京」にて、バー責任者を務めました。

1989年ニューオータニを退職し日本酒の醸造機器販売の仕事に就き、蔵元との信頼関係を重視した酒販売、商品企画等のコンサルティングを行い、2002年に日本酒のブランディング及び価値向上を目的とした、長期熟成酒日本酒Bar「酒茶論」(現在は閉店)を立ち上げました。

2023年6月からは、東京都千代田区に新たに熟成日本酒Shop&Bar「熟と燗」をオープンし、日本酒業界のさらなる発展・向上に努められています。

熟成日本酒Shop&Bar「熟と燗」の社長である上野伸弘さん

上野さんと「お酒」・「熟成」の出会い

お酒との出会いはバーから

Dear WHISKY:
上野さんは、以前からお酒に関わるお仕事をされていたのですか?

上野さん:
私は元々ホテルニューオータニのバーで働いていました。バーでは、海外のVIP対応の仕事をしており、ちょうど私が在籍していた頃に東京サミットが行なわれたのですがその時は、
レーガン大統領やサッチャー首相、チャールズ現国王やダイアナ元妃などの担当をしました。海外のVIP対応をしていたので、お酒の中でも洋酒をメインに扱っていました。

Dear WHISKY:
ホテルで行なっていたお仕事の頃からお酒に関わっていたのですね。そこからなぜお酒の「熟成」というものに興味を持ったのでしょうか?

上野さん:
私の考えるお酒の熟成とは製品後に嗜好的に起こる好ましい科学的変化と物理的変化を総した行いを指しているのですが、
洋酒を扱っていて、日本酒が熟成されていないことに疑問を持ったからです。

世界中のお酒を見ていても新酒の状態で価値を生み出すお酒が少ないにも関わらず、なぜ日本酒は熟成をさせないお酒なのかと疑問を持っていました。

また、東京サミットが行われた際に、総理官邸でレーガン大統領などが出席する晩餐会の運営をさせていただいたのですが、乾杯の日本酒がチープに見えてしまったという経験をしました。このような経験や疑問から、個人的に日本酒を寝かして保存してみようと思い熟成してみました。

Dear WHISKY:
確かに多くのお酒が熟成をしますが日本酒はしないですね!熟成させた日本酒はいかがでしたか?

上野さん:
ホテルニューオータニ内フレンチレストラン「トゥールダルジャン東京」のBAR責任者を務めていた際に、フランス人のシェフたちに日本酒を飲んでもらったことがありました。その時はあまり良い反応が得られなかったのですが、自分が熟成させた日本酒を提供したところ「とても美味しい」といっていただきました。
これまでチープな印象や良い評価をいただけなかった日本酒が、熟成をすることでより価値のあるお酒になるのではないかと感じました。

このような経験から、お酒には「熟成」が欠かせないのではないかと感じるようになりました。

Dear WHISKY:
「熟成」の重要性に気付いてからはどのようなお仕事をされていたのですか?

上野さん:
その後、お米を洗う機械やボトリングする機械などの酒造の設備をコーディネートする仕事を10年ほどしていたのですが、酒蔵を回る中で多くの酒造が価格競争に巻き込まれて衰退していく光景を目の当たりにしました。

日本は少子化やアルコール離れも進んでいたので、日本酒が生き残るためには新たな販路を見つけるか付加価値をつけるかの選択をしなくてはならないと感じました。

過去の経験から熟成の価値を強く感じていたことや、昔酒蔵では日本酒を熟成していたということもあり、日本酒の熟成をまた復活できないかと考えました。そして酒蔵との交渉を重ねた結果、2002年に品川プリンスホテルの前に長期熟成酒日本酒のバー「酒茶論」を始めることができました。

お酒における「熟成」の重要性を語る上野さん

海底熟成との出会い

Dear WHISKY:
熟成専門のバーを始めてから反響はいかがでしたか?

上野さん:
始めた当初は、見たことも聞いたこともない熟成した日本酒というものに興味を持っていただくことが大変で試行錯誤の日々でした。

お酒を科学的に分析すると、実は振動に弱いと言われているワインは、ある一定の振動を与えると化学変化や物理変化が起きます。

また、超音波や遠赤外線を当てるとまろやかになるという分析もありました。しかし、それが日本酒にも当てはまるか否かや、超音波や遠赤外線を当てて熟成した日本酒が人気を得られるかは分かりませんでした。

Dear WHISKY:
聞きなじみがないこともあり、
一筋縄ではいかなかったのですね。

上野さん:
熟成した日本酒の人気を高めるために、ビジュアルも含めた効果的な熟成について考えるようになりました。

そこで目を付けたのが水中です。

空気中と水中では密度が異なるため、空気中では大したことのない音でも、空気と比べて800倍の密度のある水の中ではお酒に影響を及ぼし熟成が進みます。また、バルト海でシャンパンが引き上げられオークションにかけられたというニュースが話題になったり、綺麗な場所で熟成されたお酒はそのストーリーも含め興味を持ってもらえるのではないかと思いました。

このようなことを踏まえて、海底熟成というきっかけから「日本酒の熟成」という言葉を広めたいと考えました。

Dear WHISKY:
日本酒の海底熟成を始めてからはどうでしたか?

上野さん:
様々な場所で海底熟成にチャレンジしたものの、ビジュアルがあまり良くなかったり流されてしまったりと順調にはいきませんでした。そのような苦労の中、私の知り合いがワインを海に沈めるとのことだったので参加させていただきました。
彼が行なったワインを海底に沈める方法は、海の中にアンカーをいれ鉄骨でフレームを作るというかなり大がかりなものでした。

これまで自分が行ってきた日本酒の海底熟成と非常に親和性もあったため、一緒にこの取り組みに参加したいと声をかけ2012年からこの海底熟成プロジェクトが始まりました。

Dear WHISKY:
海底熟成はどのように進めていったのですか?

上野さん:
まずは、私が日本酒のメーカーさんに声をかけることから始まりました。

その取り組みをNHKに取材をしていただいたり、全国紙でも掲載されたのをきっかけに多くの方に注目いただきました。

その後、バーテンダーさんにも声をかけたことで、日本酒だけではなくウイスキーやシェリー酒などの様々なお酒を海底熟成できるようになりました。

2012年から始まった海底熟成プロジェクト

海底熟成への取り組みにあった知られざる苦労

Dear WHISKY:
海底熟成の試みが発案されてから実現するまでにどのくらいの時間がかかったのでしょうか?

上野さん:
実は、海底熟成について考え始めたのは17〜18年前からでした。しかし、実現するまでに漁業関係者との交渉などもあり、かなり苦労しました。しかし、一度海底熟成がNHKやメジャーな雑誌などにも取り上げていただいたことで、知名度も上がり交渉もうまくいくようになっていきました。

実際に今では、四国や三陸、小笠原諸島などでも海底熟成の取り組みが行われており、全国的に広がっています。

Dear WHISKY:
多くの苦労を乗り越えて今では広く多くの方々に広がったのですね。

上野さん:
海底熟成が全国に広がることはとても嬉しいことですが、ただ単に海底に沈めると味が変化しますというスタンスはあまり推奨できないです。

やはり、科学的にお酒に何が起こっているのかを説明できるようにして、自信をもってお客様に進めるべきと思っています。

飲み比べた時に明らかに違いが分かると思うのですが、その原理の説明も大切にしていきたいです。

漁船の方と協力しながら行う海底熟成

海底熟成とは何か

海底熟成の仕組みを科学的に解明する

Dear WHISKY:
原理を説明するということですが、仕組みなどの研究や分析を行った
のですか?

上野さん:
私自身もただ海底に沈めると味が変わりますというイメージでは伝えたくなかったため、慶應義塾大学の先端生命科学研究所さんに協力していただき、海底熟成を行うことでお酒にどのような変化が起こっているのか調べていただきました。

そこでは、6ヶ月間海底熟成をしたお酒と通常のお酒のサンプルを取って、メタボローム解析というアミノ酸の変化や核磁気共鳴装置(NMR)というアルコールと水の物理的な変化などについて分析を行いました。

Dear WHISKY:
なぜ簡単な分析などではなく、大掛かりな科学的分析を行ったのですか?

上野さん:
化学変化や物理変化の証拠があれば海中熟成の信頼度を高められると感じていました。さらに、このような証拠を持っていた方が沈める側も楽しく説得力のあるものになると考えたからです。

実際に分析は詳細まで行っており、日本酒はお米の違いなどから調査し、日本酒以外にもワインや焼酎、ウイスキーなども分析の対象としてデータを取りました。

Dear WHISKY:
実際に研究の結果で気付いたことはありましたか?

上野さん:
多くの発見があったのですが、特に蒸留酒は有機酸が少ないので物理変化による影響が大きい特徴がありました。これにより、蒸留酒は熟成させることにより「まろやかさ」が強く出るのだと分かりました。

また香気成分にも変化が生まれたことで、ボトルを開けた直後の香りはそこまで強くないのですが、グラスに注いたのちに香りが立ち上るなどの変化がありました。

ボトルの入った鉄製フレームを海底へ運ぶ様子

海底熟成と他の熟成の違いとは

Dear WHISKY:
ウイスキーなどの蒸留酒は熟成においてどのような特徴があるのでしょうか?

上野さん:
ウイスキーのような蒸留酒は、もともと有機酸が少ないので熟成がしずらいという特徴があります。蒸留酒というのは熟成に関連する前駆物質と樽から共有される有機酸と化合されて熟成が進みます。

もしかしたらウイスキーの樽ごと海底に沈めたらもっと面白い結果が見れるかもしれません。

Dear WHISKY:
通常の熟成と海底熟成は振動の与え方など違いがあるのですか?

上野さん:
例えば、ワインセラーが無振動になっているのは、外的要因によって思わぬ方向に熟成が進むのを嫌っているからです。これはどちらかというと保守的な考え方であり、能動的に熟成を進めようと振動を与えることで周波数によってプラスに働くこともあればマイナスに働くこともあります。

私は、美味しくするためだけに海底熟成をやっているわけではなく、異なる環境で熟成することでお酒に違いが出るということを伝えたいと思っています。

Dear WHISKY:
ウイスキーを海底熟成させるとどのような変化があるのですか?

上野さん:
ウイスキーに関しては、海底で熟成させた方が顕著に美味しいと言ってくださる方が多くいます。ウイスキーだとどれだけの期間熟成させると変化が現れるのかということもわかりつつあります。

3か月ほど熟成させるとどなたにでもわかるくらいに違いが顕著に出てくるようになり、6か月ほど熟成させるとどんなウイスキーもまろやかな方向へ熟成が進みます。

ウイスキーの海底熟成における熟成前(左)と熟成後(右)の変化

海に沈めることの意義とは

Dear WHISKY:
沈める海や潮の流れで熟成結果に変化が生まれたりするのですか?

上野さん:
例えば、同じ海域で熟成しても熟成する微妙な場所の違いで変化が生まれます。

黒潮の流れがある側は刺激が多く反対側は刺激が少ないというように、全く同じものを作れないという再現性の無さも非常に面白いと思います。

Dear WHISKY:
ちなみに川や湖ではなくて海に沈めた理由は何故ですか?

上野さん:
湖は基本的にノイズがあまりないため振動が少ないです。川は実は一度やってみたのですが、大雨などが降ると流されてしまうという欠点があり向いていませんでした。

一方で、海の場合は場所や土地を選ぶことでそのような問題も発生しないので、海底熟成にはまさに適切でした。

Dear WHISKY:
海底熟成する場所によっても熟成に変化が生まれるとのことでしたが、それに規則性はあるのでしょうか?

上野さん:
やはりケージの外側のほうが刺激を強く受けやすいという傾向はあります。
例えば、冷蔵庫にある食品がドアからの近さで振動の違いが発生して味に違いが出るように、熟成も少しの刺激・振動の違いで味わいの変化が生じます。

Dear WHISKY:
海底熟成の最適な条件というのはあるのでしょうか?

上野さん:
非常に難しいものですね。やはりお酒の種類によって熟成の違いや振動から与えられる影響は違うので、一概に最適な条件というのはありません。

少々誇張した表現にはなりますが、海底に沈める際のケージ内の置く場所の違いによって、伊豆の海中と沖縄の海中ほどの差が生まれると思っていただくのが良いかと思います。まさに、再現性の無さという面白さですね。

Dear WHISKY:
熟成の中でも海中という予想できないものだからこそですね。

上野さん:
やはり海という自然は、年によって水温も流れも海底の環境も異なります。

そのため、やはり美味しくするという発想ではなく環境が違うとお酒もこれほどまで変化するのだということを心から楽しんでいただきたいですね。

Dear WHISKY:
海底熟成のほかに違う環境で熟成させたりはしているのですか?

上野さん:
最近は、小さな樽にお酒をいれて熟成させる取り組みも行っています。この樽はミズナラ製でラムや日本酒を入れて熟成していました。たとえば、バカルディのホワイトラムを熟成していたこともあり、このホワイトラムはお店でもかなり多くの方々から人気があります。

この樽の中にまず焼酎をいれ、次に日本酒、その次にワインというように色々なお酒を入れて自分なりの熟成のさせ方を楽しんだりもできます。
また、この熟成樽の魅力の1つとして、全て樽になっているのではなく一部ガラスの部分があるので、熟成期間を変えながらお酒の変化を実際に見ることも出来るので様々な楽しみ方があります。

Dear WHISKY:
今後この小さな樽で行ってみたいことはありますか?

上野さん:
熟成年数の若いウイスキーをいくつか入れてブレンドした後に熟成させたりしてみたいですね。

熟成の色の変化を楽しめる小さな熟成樽

海底熟成プロジェクトについて

海底熟成プロジェクトのきっかけ

Dear WHISKY:
海底熟成プロジェクトを始めたきっかけは何ですか?

上野さん:
お酒の熟成全般を皆様に楽しんでいただきたいという前提から色々なイベントを行っていました。その中で日本酒の50年熟成などを振る舞うイベントを行った際に、海底熟成も取り組みとして行っているという話をさせていただいたり、実際に海底熟成のお酒の飲み比べも行いました。

飲み比べの際に、海底熟成をしたウイスキーとワインの評判がとても良かったので、次回海底熟成をする際に皆様のボトルを預けてみませんかとお誘いしたことがきっかけです。

Dear WHISKY:
熟成の違いを楽しむというセミナーから海底熟成が始まったのですね。

上野さん:
そうですね、根底にあるのは熟成を楽しむというところです。

実際に私たちは様々なお酒を熟成させていますし、さらにお酒以外にもビネガーや醤油、味噌などの調味料なども熟成させています。

他にも、書道家の方から墨汁を熟成してみたいというお話もあったりなど本当に様々なものを海底で熟成しています。
この取り組みが大変好評でしたので皆様から沈めたいボトルを預かり、11月に海に沈めて6月に地上へ引き上げるというプロジェクトを始めました。

2022年に行われた「海底で熟成させる日本酒の魅力を探求するトーク&テイスティングセミナー」の様子

時期や場所の秘密とは

Dear WHISKY:
海底熟成を行う際になぜ11月に沈めるのですか?

上野さん:
理由は2つあります。1つ目は、台風を避けたいということです。お預かりしたボトルなどが流されるという事態は避けたいので台風の時期が終わる11月に沈めています。
2つ目は、海水温の関係です。温度が高すぎると日本酒やワインの品質に影響を及ぼす可能性があるので、海水温が15度付近で安定している冬の時期に行っています。

Dear WHISKY:
場所が南伊豆の沖合ですが、こちらの理由は何ですか?

上野さん:
まずは先ほどの台風や海水温が海底熟成に適切だったからです。さらに、南伊豆の沖合がとても綺麗な海だったというのも大きな決め手です。

透明度がとても高いため、ドローンでの撮影も綺麗にできますし、天気が良いとダイバーのエアの様子まで鮮明に見えます。

Dear WHISKY:
他の場所でも海底熟成はしているのですか?

上野さん:
2024年1月には、神奈川県の湘南の沖合でも海底熟成を行いました。
湘南の海を盛り上げるということで声をかけていただき実現しました。

海の条件としては、南伊豆と似ているため海底熟成に向いています。

いずれは、湘南の海で熟成したお酒を湘南の美味しいレストランで扱っていただき、ペアリングイベントなども行いたいと思っています。

海底熟成の場所として魅力的な南伊豆の海

海底熟成プロジェクトの「面白さ」を伝えることが成功への鍵となる

Dear WHISKY:
海底熟成プロジェクトを進めていく中で大切にしていることはありますか?

上野さん:
何よりいかに面白さを伝えられるかが大切だと思います。

自分がお酒を沈めることを面白そうだと思い、それを酒蔵さんに話して面白さや興味を持っていただく、そして漁師さんや消費者の方に伝えどんな味がするのかと興味を持ち面白そうだと思っていただく、このように多くの皆様に面白いと感じていただければ嬉しい限りです。

そして、いかに地域の方々を巻き込めるかということが大切になります。地域の方々にも海底熟成の面白さを伝えることで、プロジェクトに賛同していただければと思っています。

何より根底にあるのは、海底熟成の楽しさを伝えることですね。

Dear WHISKY:
今後挑戦したいと考えていることはありますか?

上野さん:
海底熟成に関しては、沈める時の動画や熟成過程の様子を動画で撮影し、それを皆様に楽しんでいただけるようにしたいと思っています。

また、太平洋でメッセージボトル的な取り組みも行なってみたいと考えています。

チタン製のボトルに自分の情報を刻印して、その中にお酒を入れて太平洋に投げ入れる。そしていつかそのボトルがアメリカの西海岸やオーストラリアの方が拾って連絡が来るなどの取り組みを行なってみたいと思っています。

「自分のお酒を海に沈める」という海底熟成プロジェクトの面白さ

「熟成」という価値

お酒の熟成にかける想い

Dear WHISKY:
上野さんにとって、お酒の熟成とはどのようなものですか?

上野さん:
新酒の状態でお酒を楽しむというのは、新酒のありのままの味を私たちは受け取っています。
一方で熟成酒は熟成という手間をかけることによって新しい味わいを生み出すことができ、一口目で感じるもの、二口目で見えてくるもの、三口目で再発見するものなど、味わいの違いを強く感じることができます。

だからこそ熟成には、お酒の味を探る楽しみを生み出せるものだと感じます。

Dear WHISKY:
お酒の味を自分自身で探るということですね。

上野さん:
熟成というものによって、お酒の懐の深さを感じ向き合い方も変わります。成熟した文化圏では必ずと言っていいほど熟成酒があり、その熟成の味わいを上手に探求し楽しむという文化があります。

だからこそ、日本でもフレッシュでフルーティーな与えられるお酒の楽しみ方だけではなく、自分自身で奥に秘めた深い味わいを探ってほしいと感じます。

熟成には、この奥に秘めた深い味わいを生み出す力があると思います。

海底熟成の前と後で生じるお酒の味の変化を楽しむ

「酒ありき」という考え方

Dear WHISKY:
上野さんが、お酒において大切にしている考えは何ですか?

上野さん:
自分がずっと大切にしているのは、「酒ありき」という考えです。インパクトの強い味を楽しめる新酒と奥深い味わいが楽しめる熟成酒どちらも魅力があると思います。

お酒があるからこそ楽しめる、なので、造り手が表現した「お酒本来の味わい」も楽しんでいただきたいですね。そのうえで自分自身でもお酒の楽しみ方を探求していただきたいです。

Dear WHISKYの読者へメッセージ

Dear WHISKY:
最後にDear WHISKYの読者へメッセージをお願いします!

上野さん:
お酒はストイックにも楽しめますが、私はおおらかにお酒を楽しんでいただきたいと思っています。

「酒ありき」という考えをお話ししましたが、自分の豊かな発想に基づいてお酒を末長く健康的に楽しんで欲しいと思います!

熟成日本酒Shop&Bar「熟と燗」に並ぶ様々な熟成日本酒

海底熟成プロジェクトについての記事はこちらから!

以上、長期熟成酒の第一人者である上野伸弘さんへの独占インタビューをお届けしました!

海底熟成とは、単に海底で熟成させたお酒の味を楽しむ熟成方法ではなく、熟成させるボトルの選定から海底熟成させたボトルと通常のボトルの味わいの違いを自分の舌で感じる全体の流れこそ「海底熟成」であるというお話が印象的でした。

「酒ありき」という言葉に、海底熟成酒を含む様々なお酒の楽しみ方の極意が詰まっているように感じました。
お酒の新たな可能性を追求し続ける上野さんの海底熟成プロジェクトには今後も目が離せません!

併せてお読みください!

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