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【独占インタビュー】第1弾 : 保税倉庫 Lowland Bondのオペレーション・マネージャー、ジェイムズ・ゾラブさん

2024.07.28 / 最終更新日:2024.09.14

Lowland Bond(ローランド・ボンド)は、Edinburgh Whiskyが運営するHMRC(イギリス歳入関税庁)が承認した独立系保税倉庫です。

樽はここで熟成、リラック(移し替え)、リゲージ(再測定)され、スコッチウイスキーとなります。本記事ではLowland Bondのオペレーション・マネージャーであるジェイムズ・ゾラブさんが、Lowland Bondの歴史について詳しく紹介し、今日の自分自身を形作った過去の記憶や現在に至るまでのキャリアについて語ります。

ジェイムズ・ゾラブさんへのインタビューは2つの記事に分かれています。第1弾では、Lowland Bondとジェイムズさんの仕事内容をご紹介します。また第2弾では、樽管理システムとウイスキー製造工程における倉庫の役割に注目してお伝えします。

併せてお読みください!

Edinburgh Whiskyの基本情報

会社名 Edinburgh Whisky
設立年 2013
所有者 ロバート・グレーム・アーノット
ケビン・マイケル・ドイル
住所 4 Hope Street, Edinburgh, Scotland, EH2 4DB
公式HP Edinburgh Whisky
Lowland Bond

英国における物品税倉庫の役割

Dear WHISKY:
スコットランドにおける保税倉庫の役割は何ですか?

ジェイムズさん:
当社はHMRC(Her Majesty’s Revenue and Custome:イギリス歳入関税庁)の認可を受け、課税対象商品を保管する責任を負います。政府はLowland Bondオーナーの身元調査を実施し、私たちが保税倉庫業を行うことを承認しました。

そのため、私たちは蒸留酒が課税対象になるまで確実に管理し、税金を手配して政府に納めます。

Dear WHISKY:
スコットランドには倉庫がいくつありますか?

ジェイムズさん:
最近ではウイスキー企業が生産量を拡大しているため、新たな倉庫も増えており、正確な数はわかりません。

とはいえ、大小合わせて数百個はあると思います。

小さいものでは約500樽を保管できますが、大きいものでは100万以上の樽を保管できるものもあります。

Lowland Bondについて

Edinburgh Whiskyにおける保税倉庫 Lowland Bondの価値

Dear WHISKY:
Lowland BondとEdinburgh Whiskyの関係を教えて下さい。

ジェイムズさん:
Edinburgh Whiskyは、エディンバラに本拠を置き、ウイスキーのブレンドとボトリングを専門とする家族経営の会社です。

Lowland Bondは、Edinburgh Whiskyによって建設および所有されています。

Dear WHISKY:
Edinburgh Whiskyはなぜ倉庫を建設することにしたのですか?

ジェイムズさん:
いくつかのメリットがあります。まず、樽の保管料を払う必要がありません。これにより、ウイスキーの発売に必要なコストが減少し、お客様がより手に取りやすい価格を実現できるようになります。また、熟成プロセス全体を直接コントロールできるため、品質の透明性と正確性が保たれます。

Dear WHISKY:
自社倉庫を持つメリットは他に何かありますか?

ジェイムズさん:
各プロセスに必要な時間をより詳細にコントロールできるようになります。Edinburgh WhiskyはLowland Bondができる前、スコットランド各地の倉庫を使用し樽を保管していました。この場合、樽のサンプリングやリゲージに依頼してから1~2か月を要しました。

現在は自社倉庫を持つので、サンプルをできるだけ早く入手できるようになりました。

熟成のために樽を保管するLowland Bond

Lowland Bondの建設に至るまで

Dear WHISKY:
Lowland Bondはどこにありますか?

ジェイムズさん:
エディンバラから高速道路を数時間走ると着くグレンロセスにあり、グラスゴー、スペイサイド、エディンバラ空港へのアクセスが良好です。飛行機でエディンバラに到着するお客さまも、そこから直接車で来ることができます。このアクセスの良い場所は私たちにとって最適な場所でした。

Dear WHISKY:
Lowland Bondはいつ設立されましたか?

ジェイムズさん:
2022年2月にこの場所を購入し、計画を進め、2023年4月にいよいよ運営を開始しました。

Dear WHISKY:
Edinburgh Whiskyではないお客さまにもサービスを提供していますか?

ジェイムズさん:
はい。倉庫のスペースを貸し出し、外部の人々や企業に対しても同様のサービスを提供しています。我々はとくに中小企業が自社のウイスキーにすぐにアクセスできる倉庫を作ろうとしています。

個性様々なチームメンバー

Dear WHISKY:
一緒に働くチームメンバーについて教えてください!

ジェイムズさん
チームには様々な経験を持つ5人のメンバーがいて、私自身が採用しました。この地域の地元の男性2人と、ウイスキー愛好家であり元郵便配達員のメンバー、かつてDiageo社で働いていた才能あるフォークリフトの運転手、ニュージーランド出身のボトリング専門家、そして樽販売の経験から木材に関する優れた知識を持つメンバーです。

Dear WHISKY:
なぜLowland Bondはこれほど才能のある人々を惹きつけるのだと思いますか?

ジェイムズさん:
それは我々が小さな会社であり、誰かの仕事をこなすだけではなく、それ以上のことを探求できるからだと思います。

倉庫の仕事をあらゆる面から学ぶことができ、楽しく働くための要望には積極的に応えてくれる、働きやすい会社だと思います。

ジェイムズ・ゾラブさんについて

Lowland Bondでの仕事を紹介

Dear WHISKY:
簡単に自己紹介をお願いします!

ジェイムズさん:
私はLowland Bondでサイト・オペレーション・マネージャーを務めており、採用、チーム管理、スケジュール管理、来客時の対応など、Lowland Bond運営のあらゆる側面に関わる仕事をしています。また、ビジネスの長期的な側面についても計画しています。

Dear WHISKY:
いつ、そしてなぜLowland Bondで働き始めたのですか?

ジェイムズさん:
2023年1月から、現在の仕事をするためにLowland Bondで働き始めました。私は以前Edinburgh Whiskyのディレクターと一緒に仕事をしたことがあり、その際にLowland Bondの仕事内容について知りました。それをきっかけに、ぜひここで働きたいと思いました。

Lowland Bondのサイト・オペレーション・マネージャーであるジェイムズ・ゾラブさん

ウイスキーとの出会い

ウイスキー愛好家の家庭に生まれる

Dear WHISKY:
ウイスキーに興味を持ったきっかけは何ですか?

ジェイムズさん:
私の父は大のウイスキーファンで、私が8歳のときにタリスカー蒸溜所に連れて行ってくれました。

ウイスキーを見たり嗅いだりする経験は常に私の人生の一部でしたが、まさか自分がその仕事に就けるとは思っていませんでした。

Dear WHISKY:
ウイスキー業界に入ったきっかけは何ですか?

ジェイムズさん:
大学では化学工学の修士課程で学びました。これにより、モルトサイエンスの観点からウイスキーにまつわる知識を深め、理解することができました。修士課程で出会った友人の多くは石油、ガス、製薬業界に進みましたが、私はそれらの分野にあまり興味がありませんでした。そこで、私は小さなウイスキーショップで働き始めることにしました。

スコットランドとドバイで働いた経験

スコッチ・モルト・ウイスキー・ソサエティでの経験

Dear WHISKY:
他のウイスキー関連の職場でも働いていたのですか?

ジェイムズさん:
私はウイスキーショップで働いた後、スコッチ・モルト・ウイスキー・ソサエティで働きました。

Dear WHISKY:
スコッチ・モルト・ウィスキー・ソサエティではどのような仕事をしていましたか?

ジェイムズさん:
最初はシングルモルトがたくさん並ぶバーで働きました。アンバサダーの仕事の一環として、お客様とウイスキーについて話したり、テイスティングをしたりしました。多くのチームメンバーが素晴らしい経験を共有していたので、働くのに最適な場所でした。

Dear WHISKY:
そこでどれくらい働きましたか?

ジェイムズさん:
そこで4年半働き、ウイスキーの知識は飛躍的に高まりました。次の仕事は、ウイスキーを選ぶために行われるテイスティングパネルに向けてサンプルを選ぶパネル運営の仕事でした。Brown Formanのレイチェル・バリーさんとスコッチウイスキーライターのチャールズ・マクレーンさんとともにパネルチェアを務められたことは素晴らしい経験でした。サンプルをノージングして選ぶプロセスに参加できたことは、私にとって非常に興味深かったです。

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大きな環境の変化

Dear WHISKY:
テイスティングパネルでのお仕事からドバイでアンバサダーになられた理由は何ですか?

ジェイムズさん:
ドバイでのアンバサダーの仕事について、ある人からメールをもらいました。これまであまり考えたことはありませんでしたが、「ダルモア」と「ジュラ」というブランドと働く素晴らしい機会だと考え、挑戦してみようと思い応募しました。

Dear WHISKY:
応募の結果はどうなりましたか?

ジェイムズさん:
面接に合格した後はすべてがスムーズに進みました。2か月も経たないうちに、私はAfrican Easternというウイスキー販売会社で3年間働くためドバイに行くことになりました。私は最初に「ダルモア」と「ジュラ」、滞在期間の終わりには「グレンフィディック」と「バルヴェニー」と働きました。

Dear WHISKY:
海外生活は初めての経験でしたか?

ジェイムズさん:
私の大学はイギリスにありましたが、それ以外はスコットランドに住んでいました。そのため、異なる気候の土地で生活することはとても興味深かったです。私はドバイで初めて出勤する日にスコットランド製のウールのスーツを着て行きましたが、すぐに汗だくになってしまいました。

スコットランドでのカスクブローカーの仕事

Dear WHISKY:
スコットランドに戻ったきっかけは何ですか?

ジェイムズさん:
ドバイでの仕事は楽しかったのですが、テイスティングパネルに参加してサンプルを選んだときの思い出から戻ってきたいと考えるようになりました。

スコッチウイスキーのつくりに携わることができる唯一の場所はスコットランドです。

加えて、スコットランドにいる家族の近くに住みたいと思っていました。

Dear WHISKY:
スコットランドではどのようにしてキャリアを続けましたか?

ジェイムズさん:
私はCask 88で働き、カスクのブローカー業務全般を管理していました。お客さまの樽に直接アクセスすることができないため、リゲージをリクエストするためだけに多くの人にメールを送信しなければならないのは非常にストレスでした。

この経験から、樽の様子を確認するためにかかる手間に気がつき、のちにLowland Bondを始める理由となりました。

Dear WHISKY:
なぜcask 88で働き始めたのですか?

ジェイムズさん:
私がcask 88のオーナーに初めて会ったのは、日本で開催された京都ウイスキーフェスティバルでした。そこで少し会話をして連絡先を交換しました。偶然にもスコッチ・ウイスキー・ソサエティの元同僚がcask 88で働いたので、のちに彼を経由して一緒に働かないかと聞かれました。私はそのオファーを受けて、営業およびオペレーションアシスタントとして働き始め、すぐにオペレーション全体の管理を引き継ぐことになりました。

ウイスキーへの情熱と仕事への誇り

モチベーションとしての学習

Dear WHISKY:
仕事に対するあなたの情熱は何ですか?

ジェイムズさん:
仕事を通じて学ぶことです。この仕事を始めたことで多くのことを勉強する必要があり大変でしたが、私自身の成長も非常に大きかったと感じています。

Dear WHISKY:
Lowland Bondで学んだことは何ですか?

ジェイムズさん:
ここでのキャリアを通じて多くのことを学びました。

しかし、特に成長を感じられるのはノージングです。私にとって鼻は筋肉のようなもので、使えば使うほど様々な香りを嗅ぎ分けることができるようになると思います。

より多くのサンプルをノージングすることで、樽がウイスキーにどのような影響を与えるかがわかるようになります。また、木材に不快に感じる香りがある時は、異なる香りをもつ樽へ移し替えることで対処できます。

ウイスキーのノージングとより良い香りの追求は、常に私の仕事の中で興味深い部分です。

Dear WHISKY:
自分の仕事について最も誇りに思うことは何ですか?

ジェイムズさん:
私は樽選びに関われることをとても誇りに思っています。誰かがウイスキーのボトルを楽しんだとき、私もその製造工程に関わっていたかもしれません。その楽しさは私にとって興味深いものです。

成長を実感することがLowland Bondで働くモチベーションに

ウイスキーとの思い出

Dear WHISKY:
お気に入りのウイスキーは何ですか?

ジェイムズさん:
選ぶのは難しいので、次に飲むのが一番好きなウイスキーだとよく言っていました。Edinburgh Whiskyのウイスキーの中ではIslay 9年というウイスキーが好きです。私たちのウイスキーの多くは軽くてとても飲みやすいです。

Dear WHISKY:
他の蒸溜所のウイスキーはどうでしょうか?

ジェイムズさん:
私はピートの効いたウイスキーが好きなので、Jura Prophecyが好きです。ドバイで「ジュラ」と働いた時間をとても満喫しましたが、他の蒸溜所も私にとって特別な意味を持っています。

Dear WHISKY:
他に思い入れのある蒸溜所はありますか? なぜそれらはジェイムズさんにとって特別なのでしょうか?

ジェイムズさん:
一つはスプリングバンク蒸溜所です。私の父は1990年代に数人の友人と一緒に樽を購入しました。彼らは12年の樽を買い、その樽からボトリングをしました。もう一つの思い入れのある蒸溜所は、子供の頃に父と行ったタリスカー蒸溜所です。

また、ブルックラディ蒸溜所も私にとって特別な蒸溜所です。私たち兄弟は父から2011年のブルックラディ蒸溜所の樽を受け継いでおり、いつかそれをボトリングしたいと考えています。

Dear WHISKY:
ブルックラディ蒸溜所に行ったことがありますか?

ジェイムズさん:
2010年に蒸留方法を学ぶために数週間滞在しました。そこではマッシングと熟成の工程に参加させてもらいましたが、彼らの仕事風景を見学し、ウイスキーがどのように造られるのかを学ぶのはとても素晴らしい経験でした。

今後の展望

Dear WHISKY:
あなたのキャリアにおける次の目標は何ですか?

ジェイムズさん:
興味深い質問ですね。私はまだまだこの仕事を勉強中であると感じていて、Lowland Bondで成長したいと思っています。私はこのビジネスでできる限り学び、働き続けたいと思っています。

Dear WHISKY:
将来について最も楽しみにしていることは何ですか?

ジェイムズさん:
近い将来、友人と共同で初めてインディペンデント・ボトルをリリースします。規模は比較的小さいですが、倉庫で様々な経験をするために、副業として小さなウイスキーブランドを持っているのです。

最後に

本記事ではLowland Bondの仕事とジェイムズさん自身をご紹介し、彼のウイスキーへの情熱がどのように始まったのか、そして彼の描く将来像についてお伝えしました。ジェイムズさんは様々なウイスキーに関連する仕事に携わってきたキャリアを通じて、倉庫のサービス向上へ情熱を捧げています。

学びと成長に対する彼の熱心さから、Lowland Bondはオーナーが大切な樽を安心して保管できる場所へと進化し続けるでしょう。

第2弾では、樽管理のための最先端のシステムに焦点を当てます。樽がどのように保管、管理されているかについて詳しく知りたい方は、ぜひ第2弾をご覧ください!

併せてお読みください!

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