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- ウイスキー基礎知識
独特の香りと味わいが特徴のアイラウイスキーは、スコットランドのアイラ島で200年以上も前から製造され続けているモルトウイスキーです。
アイラウイスキーの香りを生み出しているのは、島で古くから燃料として使われていたピート(泥炭)ですが、薬品のような強烈な香りは好き嫌いが分かれます。
なぜピートを使ってウイスキーを作ることになったのか、どのようにしてアイラウイスキーの特徴であるスモーキーフレーバーが生まれるのかについて、各蒸留所の代表銘柄などと併せて解説します。
アイラウイスキーは、スコッチウイスキーの6大産地の一つであるアイラ島で作られています。
アイラウイスキーの原料や、原料の一つである独特の香りの元になっているピートについて解説します。
ウイスキーの原料は、大麦、小麦、ライムギ、トウモロコシなどの穀物、水、酵母です。
しかし、モルトウイスキーの場合は、穀物の中の大麦のみを原料にしています。
スコットランドのヘブリディーズ諸島の南端に位置するアイラ島は、メキシコ湾流の影響により、穏やかな気候が特徴です。このため、ウイスキーの原料である大麦の生育に適しており、良質な水にも恵まれていました。
さらに、アイラウイスキーにはなくてはならないピートが湿地から豊富に採取できたことも、200年以上も前からモルトウイスキーを作り続けることができた要因です。
アイラウイスキーの、ヨードチンキのような独特の強い香りを特徴づけているのがピートです。
日本語では「泥炭」といわれています。
ピートは、スコットランド北部などの原野に生息するヒースをはじめ、灌木や野草が堆積、腐敗して3000年もの年月をかけて炭化したものです。
アイラ島や周辺の島々は広大なピート層で覆われているため、ピートは古くから燃料として用いられていました。
ちなみに、日本でも北海道ではピート(泥炭)が採取できます。
ピートも土地によって違いがあり、アイラ島のピートは強烈な磯の香りが特徴です。
ピートはスコッチウイスキー製造の工程で、大麦麦芽を乾燥させる際の燃料として使われます。
大麦は発酵しやすくするために、水に浸して発芽させ、麦芽にする必要があります。麦芽の状態になったら、それ以上成長させないため、また腐敗防止のためにも水分を飛ばす必要があります。
ピートを熱して麦芽を乾燥させる工程で、ピートを燻した煙が麦芽にうつることにより、独特のスモーキーな香りが生み出されるのです。
乾燥にピートを使うのがスコッチウイスキーの特徴の一つでもありますが、(ちなみに、アイリッシュウイスキーでは乾燥にピートは使いません。)スコットランドでは木炭が取れなかったため、豊富なピートを熱源にせざるを得なかったという背景があります。
今ではピート以外にも熱源はあるものの、個性的な香りを生み出すのは、ピートならではであり、伝統製法を守るためにもピートが使い続けられているのです。
アイラ島は日本の淡路島よりやや大きいくらいの大きさで、人口も3500人ほどです。
その島に9つものウイスキー蒸留所があります(2022年頃に10番目の蒸留所としてポートエレン蒸留所が稼働予定)。
アイラウイスキーは世界各国に向けて輸出され、島の基幹産業にもなっています。
さらに、蒸留所も見学ツアーなどの観光資源になりつつあります。それぞれの蒸留所の特徴と銘柄を紹介します。
2018年、アイラ島北東部の沿岸に9番目の蒸留所として創設されました。
ジュラ島やアイラ海峡が見晴らせる眺望を生かして蒸留所ガイド用のスペースのほか、ショップやカフェが併設されているのも特徴です。
新しい蒸留所でありながら、伝統的な設備や生産工程を採用。2018年に最初の樽詰めを行ったため、商品化には至っていませんが、今後が楽しみな蒸留所です。
2005年にアイラ島で124年ぶりに創設された蒸留所です。
原料である大麦作りからボトリングまでを一貫して行っている島内唯一の蒸留所です。
キルホールマンで生産されたウイスキーは、正真正銘のアイラシングルモルトと言えます。
ポットスチルは2基のみで、島内では最も生産量が少ないものの、バーボン樽主体の「キルホーマン・マキヤーベイ」、シェリー樽主体の「キルホーマン・サナイグ」といった名品を生み出しています。
前者は強烈なピートスモークにトロピカルフルーツ、バニラの甘い香りが混じり合い、味わいにはフレッシュな柑橘系の余韻を感じます。
後者はオレンジの香りとキャラメルやトフィーのようなとろりと甘い味わいが特徴です。
1883年創業(創設は1881年)、人里離れたマーガデイル川の河口に位置する蒸留所です。
ここで作られているウイスキーは、アイラウイスキーとしては珍しく、ほぼピートを使用せずに作られています。
独特のピート香がなく、ライトで飲みやすいのが特徴です。代表的な銘柄として「ブナハーブン12年」「ブナハーブン25年」があります。
1881年創業当時の設備を現在に至るまで使い続けているため、まるで博物館のような佇まいが特徴の蒸留所です。
ピートレベルが異なるモルトウイスキー作りを行っており、ノンピートの「ブルックラディ」、ピート強めの「ポートシャーロット」、そして世界一ピーティーといわれている「オクトモア」の3種類が代表的な銘柄になります。
1846年創業、アイラ島最大の生産量を誇る蒸留所。
ジョニー・ウォーカーのブレンデッド原酒作りがメインになっていましたが、2001年からは柑橘系のフルーティな香りとスモーキーさのバランスが絶妙のシングルモルト「カリラ12年」の販売を開始しました。
1816年創業ですが、それ以前は密造酒を作っていた歴史を持つ蒸留所です。
ピートの影響を強く受けた仕込み水により、アイラモルトの中でも味わいの濃厚さは際立っています。
スモーキーさとドライさを兼ね備えた「ラガヴーリン16年」、ほのかな甘みを感じる「ラガヴーリン8年」が代表的な銘柄です。
1815年創業、「アイラの中のアイラ」と称される「アードベッグ」のラインナップを生み出している蒸留所です。ピートの使用量が多く、ピートの香味がしっかり感じられる仕上がりが特徴です。
1815年創業、強烈なピートとヨードの香りと塩っぽい味が特徴の「ラフロイグ」、「ラフロイグ10年」を製造している蒸留所です。
「ラフロイグ」は、ウイスキーとして初の英国王室御用達の認可を受けたことでも知られ、チャールズ皇太子もご愛飲されています。
1797年創業、島内最古の蒸留所であり、「アイラの女王」と称される「ボウモア12年」が代表銘柄です。
伝統製法を守り続け、ピートとフルーティな香りが混じり合う個性的なウイスキーを生み出しています。
約600平方キロメートルの中に9つものウイスキー蒸留所が点在する、世界でも類を見ないウイスキーの島、アイラ島。蒸留所では観光客のために見学ツアーを行っています。
さまざまな旅行会社からアイラ島やスコットランド付近の観光と併せて蒸留所巡りができるツアーが用意されているので、ツアーに参加するのも良いでしょう。
蒸留所では製造過程を順を追って見学できたり、試飲ができたりするので、ウイスキー愛好家であれば一度は訪れたい場所と言えるでしょう。
クセの強いピートの香りが特徴のアイラウイスキー。
アイラウイスキーがどこで、どのように作られているかを知ると、その個性的な味わいがより愛おしく感じられるかもしれません。
同じアイラウイスキーでも、蒸留所によって香りや味わいが異なります。
初心者であればあまりクセの強くないタイプから試してみて、慣れてきたら蒸留所ごとの味わいの違いをじっくり楽しんでみるのも良いでしょう。
また、アイラウイスキーを安く購入する方法や、高級銘柄について知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。