キャンベルタウンの3つの蒸留所を紹介! 町の歴史についても解説
- ウイスキー蒸留所
キャンベルタウンとはスコットランドの西側にある都市のことであり、ウイスキーの生産地としても有名です。
かつては現在のスペイサイドと並ぶほどウイスキー作りが栄えた地域であり、世界のウイスキー首都とも呼ばれました。
しかし、主な輸出先であったアメリカの禁酒法などの影響により、かつては30以上の蒸留所があったウイスキー都市はわずか3つの蒸留所がある地域となりました。
この記事ではキャンベルタウンに現存する3つの蒸留所を紹介し、町の歴史についても詳しく解説します。
この記事のポイント
キャンベルタウンは、スコットランドの西側にあるキンタイア半島の先端付近に位置する都市であり、地理的にはハイランド地方とアイラ島の間に位置するウイスキーの生産地の一つです。
スコッチウイスキーの生産地は地理的に6つに分類され、キャンベルタウン以外にスペイサイド、ハイランド、ローランド、アイラ、アイランズがあります。
それぞれの生産地で製造されたウイスキーは、酷似した自然環境で製造されたことから共通点のある味わいに仕上がることが多いです。
キャンベルタウンのウイスキーの特徴は、海に近いことから潮のフレーバーが強く、甘い風味を持つことで知られています。
アイラ島のウイスキーとスペイサイドやハイランドのウイスキーの中間にあたる味わいと表現されることもあり、地理的に挟まれていることからも納得できるでしょう。
スコッチウイスキーの種類について地域別に知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
スコッチウイスキーの種類とは?6つの地域別におすすめもご紹介
画像引用:http://springbank.scot/
それでは、キャンベルタウンの歴史を3つの章に分けて解説します。
順を追って詳しく見ていきましょう。
全盛期のキャンベルタウンには、30以上の蒸留所が存在しており、世界でも有数のウイスキー首都と呼ばれていました。
キャンベルタウンでウイスキー造りが栄えた理由は、原料となる大麦、燃料となる石炭が入手しやすかったことと、良質な水源が豊富であったことが挙げられます。
また、スコットランドのグラスゴーからイングランドへの輸送地としての役割や、アメリカ大陸に向かう船の寄港地でもあったため物流においても優位でした。
環境がウイスキー造りに適していただけでなく、製造したウイスキーを市場に流すことも容易であったためキャンベルタウンは栄えたといわれています。
特にキャンベルタウンのウイスキーは、アメリカの輸出用として人気の高い商品でした。
それでは、なぜここまでウイスキーの生産に適した生産地であったキャンベルタウンは衰退してしまったのでしょうか?
さまざまな要因が挙げられますが、主な輸出先であったアメリカの禁酒法の影響が大きいです。
アメリカで禁酒法が施行されたのは1920年~1933年、アメリカにウイスキーを含むお酒を密輸して大きな利益を出すには絶好のチャンスになります。
当時はライバルとなるスペイサイドウイスキーが流行しており、飲みやすさを重視したブレンデッドウイスキーが生まれたこともあり、国内での需要は低下傾向にありました。
キャンベルタウンの蒸留所の多くは利益を求めるためだけに粗悪なウイスキーを作り、アメリカに輸出することで儲けを出そうとしたのです。
キャンベルタウンの蒸留所は粗悪なウイスキーを生産したことにより悪いイメージが付いてしまい、衰退の道を歩み始めます。
また、輸送手段も時代と共に海路から空路に変わったことでキャンベルタウンにおける物流の強みは消失しました。
そもそも20世紀初頭は第一次世界大戦、第二次世界大戦が開戦し、増税や恐慌により多くの蒸留所が閉鎖に追い込まれた時代であるため、キャンベルタウンの多くの蒸留所は悪名と共に閉鎖することしかできなかったのです。
30以上あった蒸留所の多くは閉鎖されることになり、あのニッカウヰスキーの竹鶴政孝氏がウイスキー造りを学んだヘーゼルバーン蒸留所はキャンベルタウンでも最大規模の蒸留所であったにも関わらず閉鎖しています。
しかし、すべての蒸留所が閉鎖したわけではありません。2つの蒸留所が生き残ります。
それがスプリングバンク蒸留所とグレンスコシア蒸留所です。
上記の蒸留所は時代に流されることなくウイスキーの品質を守り続け、20世紀を乗り切り、21世紀を迎えることができました。
グレンガイル蒸留所は、1872年に設立されましたが1925年に閉鎖され、スプリングバンクの力で2004年に復活した蒸留所であるため、正確には生き残った蒸留所ではありません。
よって、現在のキャンベルタウンには3つの蒸留所が現存していることになります。
それでは、現存しているキャンベルタウンの3つの蒸留所と代表的なボトルについて解説します。
画像引用:http://springbank.scot/
スプリングバンク蒸留所は大麦の製造からボトリングまでのすべての工程を敷地内で行う蒸留所であり、ここで製造されたウイスキーはキャンベルタウンで生産されたもののみを使用しています。
年間75万リットルという生産量は、他の蒸留所と比較しても少ないですが、伝統を守りこだわりぬいた製法を守り続けることによって生き残り、数少ない販売されたボトルはすぐに売り切れてしまうほどです。
スプリングバンクの代表的なウイスキーは「スプリングバンク 10年」であり、シングルモルトの香水と呼ばれフローラルな香りにキャンベルタウンらしい潮気のある味わいが強い銘柄となっています。
キャンベルタウンのウイスキーを最初に飲むなら人気・知名度ともに高いスプリングバンクがおすすめです。
スプリングバンク蒸留所について詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
スプリングバンク蒸留所 - Springbank DISTILLERY
画像引用:https://www.glenscotia.com/
グレンスコシア蒸留所は、正確には1928年、1994年に閉鎖されていますが、その後すぐに操業を再開することができたため現在もキャンベルタウンで生き残ることができています。
元々はスコシア蒸留所という名前で設立されましたが、ブロッホ・ブラザーズに買収された際にグレンスコシアと改称されています。
創業から年数が長いグレンスコシアからはさまざまなシングルモルトが販売されてきましたが、旧ボトルも含めて「グレンスコシア ダブルカスク」が代表的な銘柄です。
バーボン樽で熟成され、PX(ペドロ・ヒメネス)シェリー樽で追熟されたこちらのウイスキーは、フルーティーでスパイシーな味わいが楽しめます。
ウイスキーに関するさまざまな賞を受賞しており、世界的に評価されているスコッチウイスキーの1つです。
グレンスコシア蒸留所について詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
グレンスコシア蒸留所 - Glen Scotia DISTILLERY
グレンスコシアとは?種類や味わい、おすすめの飲み方
画像引用:https://www.whisky.com/
グレンガイル蒸留所は、キャンベルタウンの多くの蒸留所と同じように閉鎖しており、蒸留所はライフル射撃場と飼料店に再利用されていました。
しかし、2000年にこちらの建物をJ&A Mitchellが買収したことをきっかけに、その4年後に蒸留所は再開されます。
商標の影響でグレンガイルで生産される新たなウイスキーは、キルケランという名称で販売されました。
多くのウイスキー愛好家が甘味・酸味・辛味において最高レベルにバランスが整った味わいのウイスキーであると評価しており、飲み方を選ばないことからウイスキー初心者にも勧められる銘柄と言われています。
グレンガイル蒸留所について詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
グレンガイル蒸留所 - Glengyle DISTILLERY
かつてはさまざまな蒸留所が栄えたキャンベルタウンは、ウイスキーファンであれば一度は行ってみたい場所の一つといえるでしょう。
現存している蒸留所では蒸留所ツアーが開かれているので、観光する際はツアーに参加するのもよいかもしれません。
スコッチウイスキーの中で、まだキャンベルタウンのウイスキーを飲んだことがない方はこの機会に気になるウイスキーを飲んでみましょう。