山崎 ノンエイジ/NV(ノンヴィンテージ)とは? 味わいとおすすめの飲み方を紹介
- ウイスキー銘柄
インチガワーは個性あふれるスペイサイドエリアのシングルモルトウイスキーでありながら、あまり知名度は高くありません。
インチガワー蒸留所はスコットランドのマレイ郡、スペイサイドと東ハイランドの境界線のスペイ川の河口から東に8キロほど行ったという小さなバッキーという港町に位置しています。
スピリッツはブレンデッドに使用されることが多いためかもしれませんが、スペイサイドエリアではインチガワーと同じような蒸留所も数多く存在します。
しかし、そのような地味さの中でも味わいが秀逸なのがインチガワーなのです。
その理由の一つには何といってもウイスキー界随一の大資本で運営されるディアジオ社の傘下であること。
ディアジオ社といえばタリスカーやラガヴーリンなどの有名どころの蒸留所をいくつも所有しています。
とはいえ、インチガワーはブレンデッドウイスキーのキーモルトとして扱われることが多く、シングルモルトを手に入れるのは非常にレア。
種類は少ないですが、インチガワーのおすすめ銘柄や飲み方などをご紹介します。
インチガワーの「インチ」とは、ゲール語で「島」や「川のそばの草地」、「ガワー」とは「山羊」を意味します。つまり「インチガワー」とは直訳すると「川のそばにある山羊の放牧地」となります。
インチガワーのシングルモルトは流通量が少なく、大変貴重で手に入れるのは難しいですが、唯一何とか手に入る可能性が若干高い銘柄として「フローラ・アンド・ファウナ」シリーズがあります。
「フローラ・アンド・ファウナ」は「花と動物」という意味で、ボトルにも分かりやすく絵が描かれています。
ディアジオの関連会社であるユナイテッド・ディスティラリーズ社(UD社)はスコッチ界で最大規模と言われていますが「フローラ・アンド・ファウナ」シリーズはユナイテッド・ディスティラリーズ社(UD社)が所有する蒸留所のモルトを瓶詰めしたものです。
インチガワーは「塩気」を感じると表現されることが多いです。
塩気を感じさせるインチガワーのモルトスピリッツは、ブレンデッドウイスキーに欠かせない要素として重宝されてもいます。
これは海沿いの蒸留所である蒸留所だからと通常は考えますね。
しかし、味覚で感じられるほどの潮っぽさはインチガワーには感じられません。
分かりやすく言うと、私たちが塩気を感じることができるほどの塩気は含まれていないということです。
塩気を感じるのはおそらく、強いスパイス香とナッツ香によって感じる刺激から本能的に感じるもので、スパイス香も製造過程で注入しているものではないといわれています。
インチガワー蒸溜所はアレグザンダー・ウィルソンによってAlexander Wilson & Coとして1871年に創設されました。
創業当時の蒸留設備はトヒニール蒸留所のものが移設されたものと言われています。
トヒニールは、アレグザンダー・ウィルソンの先代にあたるジョン・ウィルソンが1825年に建設した蒸溜所でした。
しかし、その後トヒニール蒸溜所の建物はかなり手狭となり、慢性的な水不足に悩まされていました。
さらに1825年に始まった事業も大きな見直しを迫られてい、10数キロも離れたAlexander Wilson & Coに移設されたようです。
創業してからはブレンデッドウイスキーとしての製造が主で暫くは順調に営業されていたものの1936年に倒産してしまいます。
工場とオーナーの自宅はバッキーの町議会が買い取ることになりました。
町議会が蒸留所を保有するという変わった形をとることになったわけです。
これは、スコットランドで初のことでした。
しかし、1938年にアーサー・ベル&サンズ社がインチガワーを£3,000で購入します。
アーサー・ベル&サンズ社に買収されたことは結果的には災い転じて福となります。
買収後にはどんどん売り上げをのばし、1978年に英国においてスコッチブレンデッドウイスキーの売上ナンバーワンを記録したのです。
1966年には、売上が上がったことで、さらに飛躍を遂げるべく、事業拡大のため2つの新しい蒸留器を加えて生産性を倍増します。
その後、1985年に アーサー・ベル&サンズ社がギネス社に買収されます。
この時他にも数社の蒸留所が買収されています。
1986年にギネス社はDCLとアーサー・ベルが合併し、ユナイテッド・ディスティラーズに改組されました。
これが現在のディアジオの前身となったわけです。
インチガワーがシングルモルトとして出荷しているのは、生産能力約300万リットルのうち、たった1%のみです。
公式ボトリングは数が少なく、コレクションに加えるには非常に希少価値が高いボトルです。
そのような貴重な香りと味わいの魅力をご紹介します。
インチガワー14年「花と鳥」シリーズは鼻から抜ける香りは絶えず変化し続ける複雑な芳香を放ちます。
まず、こだわりはオイリーなナッツの香りです。
そこへフローラルな芳香から柑橘系の甘みが加わるといったところ。
味わいは、リンゴの甘さから干し草と花びら、と甘みが次第に増していく様相。
甘みが増すごとに味わいがしっかりとしたものに変化していった結果、潮っぽさも感じられます。
いくつかのスパイシーさが頭角を表し、結晶化した茎生姜が香ります。フィニッシュはスパイスとピリッとした柑アーモンドの後味を残すサッカリンビターフィニッシュが楽しめます。
アルコール度数は43度、容量は700mlとなっています。
2013年に、ボトラーダグラスレイン社の元代表スチュワート・レイン氏が、二人の息子と旧ダグラスレイン社スタッフらとともに新しく起ち上げたハンターレイン社。
ハンターレイン社の看板ブランドである「オールド・モルト・カスク(OMC)」シリーズは、非常に質が高く、人気を博しています。
やはり、こちらもこだわりのスパイシーさは健在です。
シェリー樽で熟成しているので、ベリー系のフルーティさが色濃く楽しめます。
香りはシェリー樽由来のフルーティな甘い香りに潮とオイリーナッツ、ミルクチョコの甘さを感じさせます。
味わいはクリーミーなキャラメルにレーズンやコーヒーが伴います。
フィニッシュはオーク樽熟成の影響を思わせるバニラやココナッツといったクリーミーな余韻が続きます。
アルコール度数は55.6度、容量は700mlとなっています。
インチガワー27年は「レア・モルツ・セレクションディ」シリーズはディアジオ社の中の隠れた秘宝を紹介するためにデザインされたシリーズで、限定品として8544本のみの販売でした。
現在手に入れるのは中々難しいかもしれません。
アメリカンオークホグズヘッド で熟成された貴重な銘柄です。
ホグズヘッドとはいったん解体した樽を組みなおして作られた樽のことです。
アメリカからスコットランドに樽を運ぶ際、いったんバラバラに解体して運びやすくします。
これを組み直す際、樽材を追加して胴回りをやや大きくし、新しい鏡板(ヘッド)を用いて組み直し、密閉効率を高くしているのです。
スコッチウイスキーなどでは、バーボンの熟成に使用された後の空き樽を再利用して熟成することで、独特の風味や香りを生み出しています。
インチガワー27年の香りと味わいにもこの作用が働いています。
バーボン樽は内面を焦がしホワイトオークでつくられることもあり、微かなスモーキーなアロマを感じます。
そのスモーキーさを土台に熟成による華やかなフルーツ、洋ナシや桃、プラムといった香りを感じます。
味わいは爽快かつスムースで、クリーミー。最初は甘いがゆっくりとドライになっていき。
砂糖っぽさからスモーキーさが出てきてハーブ系の渋味でフィニッシュを迎えます。
アルコール度数は55.3度、容量は700mlとなっています。
インチガワー のおすすめの飲み方はストレート、ロック、ハイボールとどのような飲み方をしても美味しいです。
甘み塩味、渋みのバランスがよいので、ハイボールなら食前酒や食中酒で楽しみ、。
ストレートやロックなら食後酒や晩酌にもオススメです。
14年以外のものはストレートが一番美味しいかもしれません。
味や香りの表情がころころと入れ替わる複雑で飽きの来ないウイスキー、それがインチガワーといえます。
オイリーな個性があるので、好き嫌いもあると思いますが、慣れると宅飲みにむいているウイスキーではないでしょうか。