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- ウイスキー基礎知識
ウイスキー発祥の地といわれるスコットランドで製造されるスコッチウイスキーは、世界五大ウイスキーの1つとして数えられる伝統的なお酒になります。
同じスコッチウイスキーでも種類、生産地、熟成樽や熟成年数で味わいは大きく変化し、さまざまな種類が存在します。
グレンリベット、マッカラン、グレンフィディックといったウイスキーについてよく知らない人も知っている知名度の高い銘柄もスコッチウイスキーの種類の一部です。
この記事ではスコッチウイスキーの特徴と選び方のポイントを解説し、代表的な銘柄とおすすめの飲み方も紹介します。
この記事のポイント
スコッチウイスキーとはイギリスの最北端に位置するスコットランドで製造されるウイスキーです。
アイルランドを起源とする説もありますが、スコットランドはウイスキー発祥の地としても知られています。
1494年のスコットランド王室において、ウイスキーが製造された記録が見つかったからです。ウイスキーに関する現状では最古の記録になります。
また、現在のウイスキーは樽による熟成がおこなわれますが、樽熟成が始まったのも1800年頃のスコットランドです。
当時のスコットランドのウイスキー業者はイギリス政府の酒税から逃れるためにウイスキーを密造しており、密造酒の保管場所にシェリー酒を熟成させた樽を再利用したことが樽熟成の始まりといわれています。
スコットランドはウイスキー発祥の地であり、スコッチウイスキーは現在のウイスキーの方向性を決定づけた伝統的なお酒なのです。
スコッチウイスキーの特徴は大きく分けて3つあります。
それぞれ詳しく解説します。
スコッチウイスキーの定義はスコットランドの法律で定められており、この定義を満たさないウイスキーはスコッチウイスキーを名乗ることは許されません。
具体的な法律による取り決めは下記の通りです。
スコッチウイスキーの定義
複数の条件を定めることでスコッチウイスキー全体のブランドイメージを落とさないようにしています。
1920年代頃のアメリカの禁酒法時代にスコットランドのキャンベルタウンは粗悪なウイスキーを輸出したことで、悪名を付けられ衰退をした結果、30以上あった蒸留所は現在においては3つしか残っていません。
キャンベルタウンは粗悪なウイスキーをスコッチウイスキーとして輸出しなかったので、スコッチ全体のブランドイメージを落とすことは免れました。
品質を守りブランド全体のイメージを落とすことを避けるためにも、このような厳格な取り決めが必要になるのです。
他のウイスキーにはないスコッチウイスキーの最大の特徴はピート香と呼ばれるスモーキーな香りにあります。
ピートとは野草や水性植物が炭化した泥炭のことであり、ウイスキーの製造において燃料として使用されます。
製造過程において使用されたピート特有のスモーキーな香りがウイスキーに移ることで、独特の香りがウイスキーに付与されるのです。
ただし、スコッチウイスキーの中にはピート香がしないウイスキーもあるので、すべてのスコッチに当てはまるわけではないことを理解しておきましょう。
また、アイラ島などの一部の地域ではピート香が強いことを特徴としたウイスキーを生産しています。
ピートとピートによってスモーキーな香りが付与される理由について詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
ウイスキーのピートとは? ピート香の強いウイスキーの飲み方も解説!
定義にもある通り、スコッチウイスキーのアルコール度数は40度以上あります。
ウイスキーは蒸留酒であるため度数が高く、アルコール度数の高さは保存のしやすさにもつながっています。
また、スコッチウイスキーの中でもカスクストレングスと呼ばれるウイスキーはアルコール度数が非常に高いことが特徴であり、中には60度を超えるウイスキーも。
カスクストレングスはアルコール度数を下げるために冷却濾過をせずにそのままボトル詰めするウイスキーであり、冷却濾過によって風味や香りが落ちることを防いでいます。
風味の変化を防ぐためにはアルコール度数は高いほどよいとされているのです。
スコッチウイスキーには数多くの種類がありますが、選ぶなら次に紹介するポイントを重視して選びましょう。
それぞれ詳しく解説します。
スコッチウイスキーには原材料やブレンドをおこなうかによって以下の3つの種類に分けられます。
種類 | 特徴 |
モルトウイスキー | 大麦麦芽を原料としている。個性が強く人気のスコッチが多い。 |
グレーンウイスキー | トウモロコシなどの穀類を原料とする。クセが少なく飲みやすい。 |
ブレンデッドウイスキー | モルト原酒とグレーン原酒を混ぜて、それぞれの弱点を補ったもの。 |
モルトウイスキーとグレーンウイスキーは原料が異なることが最大の違いです。
モルトウイスキーは単体で販売されることも多いですが、特徴が少なく飲みごたえがないグレーンウイスキーは単体で販売されることが少なく、基本的にはブレンデッドウイスキーの原酒として製造されます。
モルトウイスキーのクセの強さをクセがなく飲みやすいグレーンウイスキーとブレンドすることによって、2つのウイスキーの弱点を補ったバランスがよく完成度の高いウイスキーに仕上げているのがブレンデッドウイスキーです。
スコッチウイスキーはシングルモルトウイスキーが人気ではありますが、ウイスキー市場の多くを占めているのはブレンデッドウイスキーです。
価格なども含めて気軽に飲みやすいのはブレンデッドウイスキーになりますが、スコッチウイスキーのシングルモルトには強い個性があり、多くの愛好家を魅了してきた魅力的な銘柄が数多く存在します。
スコットランドのウイスキーの生産地は大きく分けて6つに分類されます。
上記の地図はスコットランド全体を表しており、6つの産地の場所を示しています。
産地ごとの特徴について下記の表にまとめました。
種類 | 特徴 |
アイラ | アイラ島はピートが豊富にあるため、スモーキーな香りが強い。 |
アイランズ | スコットランド本土とアイラ島以外の島、共通した特徴が少ない。 |
キャンベルタウン | 海岸沿いの街、潮気と甘みが混じる独特な味わいがある。 |
スペイサイド | ハイランド地域の一部、果実の甘い風味であるため飲みやすい。 |
ハイランド | 北部の大部分を占める。産地が広いためハイランドの東西南北で特徴が異なる。 |
ローランド | 本土の南部となる地域、主にグレーンウイスキーが製造されている。 |
スコットランドでも最もウイスキーの製造が盛んな地域はスペイサイドであり、スコッチウイスキー全体の生産量の60%を占めています。
一番広い地域であるハイランドは25%を占めているため、スコッチウイスキーのほとんどが本土の北部で製造されているのです。
しかし、アイラウイスキーの強いピート香と潮気のある風味は世界中に熱狂的なファンがおり、スペイサイドのウイスキーでは体験できない味わいが楽しめます。
初心者の方は飲みやすいスペイサイドから飲み始めることをおすすめしますが、産地ごとに特徴があるので慣れてきたらスコッチウイスキーを飲み比べてみるのもよいでしょう。
ウイスキーは熟成に利用する樽や熟成年数によって風味が異なります。
スコッチウイスキーの熟成に使用される代表的な樽の種類について下記にまとめました。
種類 | 特徴 |
シェリー樽 | シェリー酒の樽を再利用。果実のような甘い味わいを付与する。 |
バーボン樽 | バーボンウイスキー用の樽を再利用。バニラの甘い風味を付与。 |
ワイン樽 | シェリー酒以外のワインの樽を再利用。ウッドフィニッシュに利用される。 |
代表的な樽にはミズナラ樽もありますが、ジャパニーズウイスキー以外にはほとんど使われることがないため、スコッチウイスキーの熟成にはあまり関係がありません。
シェリー樽はスペインの伝統的なワインであるシェリー酒を熟成させた樽を再利用しており、樽による熟成が始まった当初は主流であった樽でしたが現在では希少価値の高い樽となっています。
現在では、バーボンウイスキーの熟成に使用したバーボン樽が入手しやすいことからスコッチウイスキーにおいてもバーボン樽による熟成が多くおこなわれています。
ワイン樽はシェリー酒以外のワインを熟成させた樽のことを指しますが、一度熟成させた原酒を別の樽に移し替えて再度熟成させるウッドフィニッシュに使用されることが一般的です。
またウイスキーの風味と香りは樽の種類だけでなく、熟成年数によっても左右され、年数が高いほど味わいがまろやかになり深みのある味わいに変化します。
ウイスキー樽の特徴と熟成年数による変化を理解すれば、初めて飲む銘柄でも味わいについてある程度の予測が可能です。
ウイスキー樽の種類について詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
スコッチウイスキーの特徴と選び方について理解したところで、代表的な銘柄を紹介します。
ザ・グレンリベットはスペイサイド地域で製造されるシングルモルトウイスキーであり、愛好家から初心者まで幅広い層に人気があるスコッチウイスキーの代表的な銘柄です。
グレンリベットはゲール語で「静かな谷」という意味であり、スペイサイド地方のリベット川の峡谷にあることを意味します。
リベット川の峡谷にある地下水はミネラルを豊富に含んでおり、気温と湿度が安定しているためウイスキーの製造に適しています。
フルーティーでフローラルなアロマの香りになめらかで初心者も飲みやすい口当たりは、ウイスキーに対して苦手意識を持っている人でも受け入れやすい味わいです。
ザ・グレンリベットについて詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
シングルモルトウイスキーのザ・グレンリベットとは?種類も紹介!
マッカランはスペイサイドのシングルモルトウイスキーの中でも高級ウイスキーであり、製造におけるこだわりの高さは多くのウイスキー愛好家から支持を集めています。
スペイサイドで最も小さな蒸留釜(ポッドスチル)を使用することで、膨大なコストがかかる代わりにアルコール密度の高い上質な原酒を製造します。
コストがかかっても製造方法にこだわる姿勢がマッカランの品質を高め、幅広い愛好家ら支持を受ける理由となっているのです。
こだわりぬいたシェリー樽熟成によって華やかな香りとドライフルーツのような甘みが付与され、口の中で重厚さを感じることができるリッチなウイスキーになります。
マッカランについて詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
ザ・マッカランは種類豊富なウイスキー!味とおすすめの飲み方は?
スコッチウイスキーの中でも多くの人気銘柄が存在する激戦区スペイサイドで最後に紹介するシングルモルトがグレンフィディックです。
ゲール語で「シカの谷」という意味であり、シカのイラストが箱やラベルに描かれているのが目印になります。
世界で初めて誕生したシングルモルトウイスキーであり、生産量も非常に多く人気のウイスキーです。
フルーツの爽やかな香りと上品な甘みが特徴であり、シングルモルトの中でも手を出しやすい価格となっています。
グレンフィディックについて詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
グレンフィディックウイスキーの種類やおすすめの飲み方についてご紹介
ラフロイグはスコットランドのシングルモルトの中でも個性が強いアイラ島のウイスキーを代表する銘柄です。
その力強い味わいから「アイラの王」と呼ばれており、好き嫌いが非常に別れやすいウイスキーとなっています。
アイラ島のアイラウイスキー特有の強いピート香は慣れていない方には受け入れにくい可能性もありますが、慣れてくると受け入れやすく世界中に熱狂的なファンが存在します。
一口飲むだけで強いスモーキーな香りが鼻腔を突き抜け、オイリーで濃厚な味わいが広がりますが、ドライで潮気のある後味が特徴のウイスキーです。
ラフロイグについて詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
アイラウイスキーのラフロイグとは? 種類や風味の特徴を解説!
グレンモーレンジィはハイランドで製造されるシングルモルトであり、「完璧すぎるウイスキー」と呼ばれている完成度の高い銘柄です。
ゲール語で「大いなる静寂の谷」を意味し、スコットランド北部の山脈に点在する峡谷から取れる澄んだ水がグレンモーレンジィの完成度を高めています。
また、ある程度の熟成期間を経た後にワイン樽によるウッドフィニッシュをおこなうことも特徴です。
柑橘系の香りの中にわずかなバニラの香りを感じられ、オレンジシャーベットやクリームブリュレを思わせるスイーツみたいな甘みも持っているので女性人気も高い銘柄です。
グレンモーレンジィについて詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
グレンモーレンジィは稀有なウイスキー!種類や味おすすめの飲み方は?
タリスカーはアイランズ地域のスカイ島で製造されるシングルモルトであり、アイランズ地域でも最大の蒸留所であるタリスカー蒸留所で製造されているウイスキーです。
スカイ島はスコットランドのインナー・ヘブリディーズ諸島の中でも最北端に位置する島であり、空のskyではなく翼のskyeでつづられるこの島は翼の島とも呼ばれています。
1960年には蒸留所が火災の被害に遭い、大きな危機に直面しますが、1962年に再建され復活しました。
黒コショウの効いた風味と塩辛い味に、青りんごの甘みと酸味を感じられるスパイシーさが強い銘柄です。
タリスカーについて詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
スコッチウイスキー『タリスカー』の種類とおすすめの飲み方をご紹介
スプリングバンクはキャンベルタウンで製造されるシングルモルトであり、「モルトの香水」と呼ばれるほど芳香な香りが特徴のウイスキーです。
キャンベルタウンには現在3つの蒸留所しか存在せず、伝統的な製法を守ってきたスプリングバンクは多くの蒸留所がなくなる中でも生き残ることができました。
ウイスキー初心者に勧められる銘柄ではありませんが、ウイスキー愛好家の中では支持の厚い通好みの銘柄になります。
レモン、オレンジ、ピーチなどの複数の果物が混じり合う複雑な風味が特徴ですが、キャンベルタウン特有の潮気のある後味が残るのが特徴です。
バランタインはスコットランドを代表するブレンデッドウイスキーです。
1827年にジョージ・バランタインによって造られ、ぺルノ・リカール社傘下のジョージ・バランタイン&サンの主力商品になります。
強いクセがなく飲みやすいようにブレンドされていますが、甘味、酸味、スパイスのバランスがよくスコッチウイスキーの特徴を感じられます。
シングルモルトよりも安い価格で購入しやすいので、初心者がスコッチウイスキーを体験するのにおすすめの銘柄です。
バランタインについて詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
バランタインは種類豊富なウイスキー!味の特徴やおすすめの飲み方は?
ロッホローモンドはスコットランドの南ハイランドで製造されるグレーンウイスキーです。
グレーンウイスキーは単体で販売されることは珍しいですが、ロッホローモンド蒸留所はモルトウイスキーの製造設備も整えているので、1つの蒸留所でブレンデッドウイスキーを製造することが可能となっています。
香りや風味はモルトウイスキーに負けず劣らずピート香が強くフルーティーで個性的でありながらも、口当たりがよく飲みやすいグレーンウイスキーの特徴は健在です。
数少ないグレーンウイスキーの中で完成度の高い銘柄を上げるならロッホローモンドが挙げられます。
最後にスコッチウイスキーの代表的な飲み方を紹介します。
それぞれ詳しく解説します。
ストレートはウイスキーになにも足さず、なにも割らずにそのまま飲む飲み方になります。
ウイスキー本来の香りや風味を味わいやすい飲み方であり、初めて飲む銘柄であれば最初に実践したいところです。
しかし、ウイスキーをストレートで飲み続けると舌が麻痺してくるので、舌を麻痺させないためにウイスキーの後に飲むチェイサーが必要になります。
チェイサーは基本的には水のことになりますが、ウイスキーの後を追うように飲むことから名づけられており、口直しをすることで舌を麻痺させずに長くウイスキーを味わうことが可能です。
トワイスアップはウイスキーを常温の水と1:1で混ぜ合わせて飲む方法です。
ウイスキーの香りを損ねずにアルコール度数を下げられるので、アルコールに強くない人でもウイスキーを楽しむことができます。
トワイスアップで飲むなら混ぜ合わせる水が非常に重要であり、混ぜる水によってはウイスキーの味に影響してしまうことも。
良質な蒸溜水や軟水を用意し、こだわるならこれから飲むウイスキーの仕込み水を用意して混ぜ合わせるのも最適な選択肢の一つです。
ハイボールはウイスキー初心者にもおすすめできる飲み方であり、アルコール度数が大きく下がるためアルコールに弱い人も飲みやすいです。
炭酸水で混ぜる場合は香りや風味は少なからず薄れてしまいますが、氷が溶けないようにあらかじめグラスを冷やしておくことがウイスキーの風味を損なわないポイントになります。
また、ハイボールで飲むことが推奨されているウイスキーもあり、タリスカーは「タリスカー スパイシー ハイボール」と呼ばれるハイボールで割った後に黒コショウをかける飲み方が有名です。
ウイスキーの飲み方について詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
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スコッチウイスキーにはさまざまな種類があり、今回紹介しきれなかったウイスキーの中にも魅力的な銘柄は存在しています。
選び方のポイントも参考に自分に合ったスコッチウイスキーを見つけましょう。
種類が非常に豊富にあるため、仮に1つの銘柄が口に合わなかったとしてもいくつかの銘柄を飲み比べていくうちに口に合うウイスキーが見つかるはずです。