ウイスキー投資の適切な保存方法は? 不安な人に最適な投資法も紹介
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シェリーカスク(シェリー樽)はウイスキーを熟成させる樽の種類の1つであり、初めてウイスキーの熟成に使用された樽であることから今でもシェリーカスク熟成にこだわる愛好家と蒸留所オーナーは多く存在します。
現代ではバーボンカスクによる熟成がウイスキーの熟成樽の主流となったため、シェリーカスクは高級カスクとして位置づけられるようになり、こちらの樽で熟成された銘柄も希少性が高いとみなされることがあります。
そして、なによりもシェリーカスクが今でも愛される理由は、シェリー樽熟成でしか造れない果実由来の甘いフレーバーをウイスキーに付与してくれるからです。
この記事では、シェリーカスクの特徴と種類を解説し、その歴史やおすすめ銘柄を紹介した上で、シェリーカスク自体を購入する方法まで解説します。
この記事のポイント
シェリーカスク(シェリー樽)は、スペインのアンダルシア州を中心に生産される酒精強化ワイン「シェリー酒」の熟成に使用された樽のことです。
シェリーは英語名であり、スペインではビノ・デ・ヘレスと呼ばれます。
こちらの樽で熟成させたウイスキーは、使用したシェリーカスクの種類や熟成期間によって具体的な風味は変わってきますが、共通して果実由来の甘い香りと風味を持つことで知られています。
シェリーカスクのサイズはバット(500リットル)であり、ウイスキー樽のなかでも輸送用に用いられるカスクを除くと大型の樽に位置します。
また、バットよりも樽の背が低く、胴回りが太いパンチョン(300リットル~500リットル)のシェリーカスクも存在します。
シェリーカスクは熟成させるウイスキーを甘くて飲みやすい味わいに変化させる大型の樽ということです。
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現在では、ウイスキーの熟成において主流となっているバーボンカスク(バーボン樽)は、シェリーカスクと同様にウイスキーに甘い風味をもたらすことで知られていますが、違いは大きく分けて2つあります。
シェリーカスクとバーボンカスクの違い
バーボンカスクとシェリーカスクの最も大きな違いはウイスキーに付与する甘味の種類です。
シェリーカスクでは果実由来の香りや風味を付与しますが、バーボンカスクは同じ甘味であってもバニラやキャラメルのような甘さを付与します。
同じ甘味であってもその風味の種類は異なるため、シェリーカスクで熟成させたウイスキーとバーボンカスクで熟成させたウイスキーの風味の違いは分かりやすいです。
また、シェリーカスクとバーボンカスクではサイズが大きく異なります。
シェリーカスクはバット(500ml)の大型樽であるのに対して、バーボンカスクはホグスへッド(250ml)であるため、シェリーカスクと比較すると小型です。
また、ホグスヘッドは、ウイスキーを詰めたときの樽の重さが豚の頭と同じ重さになることから、その名の通りの意味で名づけられました。
シェリーカスクとバーボンカスクでは、シェリーカスクのほうが多くのウイスキーを熟成(貯蔵)できます。
シェリーカスクの簡単な歴史を3つの章に分けて振り返っていきます。
それぞれ詳しく解説します。
シェリーカスクは、現在では一般的なウイスキーの製造過程とされる熟成を初めて行った樽であり、ウイスキーの熟成はシェリーカスクから始まったといえます。
しかし、シェリーカスクによるウイスキーの熟成は時代が産んだ奇跡のような出来事から始まりました。
1700年代~1800年代にかけてスコットランドでは酒税が大きく値上がりし、ウイスキーは広く密造されてきた歴史があります。
ウイスキーの密造時代において、当時のスコットランドの人々は、製造したウイスキーを隠すために大量に余っていて使い道がなかったシェリーカスクにウイスキーを貯蔵することで隠しました。
税金の取り立て人にシェリーカスクを見られても、これはウイスキーではなくシェリー酒であると言い訳をするためです。
こうしてシェリーカスクにウイスキーを隠し続けていくうちにウイスキーの熟成は進んでいきます。
貯蔵したウイスキーをシェリーカスクから取り出すと、中の液体は無色透明から琥珀色に変化し、香りや風味も甘味のあるものになり、私たちがよく知っているウイスキーになりました。
一般的に行われるようになったウイスキーの熟成はシェリーカスクと密造時代が産んだ奇跡の産物です。
シェリーカスクによるウイスキーの熟成が広まると、使い道がなく安かった樽に大きな需要が生まれることになります。
スコットランドではシェリーカスクの空き樽を積極的に購入するようになりますが、需要過多になったことでシェリー樽の空き樽が無くなってしまったのです。
シェリー酒の製造元は、シェリーカスクを販売するためにシェリー酒を熟成させた空き樽を製造するようになりましたが供給は追いつきません。
密造時代ではまったく価値がなかった安いシェリーカスクは、他にもウイスキーの熟成に適していて安価で購入できる樽が出てきたことで高級カスクになっていきました。
シェリーカスクの希少性が高くなったことでウイスキーの生産量を増やすためには、代替となるカスクが求められるようになります。
それがアメリカで製造されるバーボンウイスキーを熟成させた空き樽のバーボンカスクです。
バーボンウイスキーはその製造ルールにおいて一度使用した樽を再び使用できないため、空き樽が余りやすく、安定的に供給しやすい樽として注目されました。
現在のスコッチウイスキーにおいても、バーボンカスクによる熟成が一般的になります。
シェリーカスクによって熟成されたウイスキーは高い人気がありますが、数が少ないことから蒸留所で広く使用される樽ではなくなっており、シェリー樽熟成にこだわりを持つ一部の蒸留所で使用されています。
シェリーカスクの種類はさまざまありますが、今回はそのなかでも代表的な5種類をピックアップして紹介します。
それぞれ詳しく解説します。
オロロソは香りが高いという意味を持つ酸化熟成のシェリー酒です。
シェリーカスクのなかでも代表的な種類の1つであり、最低5年以上の熟成期間を経て香りが強く辛口のオロロソシェリー酒が完成します。
カシスやプルーンなどの熟した果実の風味を付与し、濃厚な香りと風味をウイスキーに与えてくれます。
PXカスクはシェリー酒ペドロ・ヒメネス(Pedro Ximénez)の略称であり、糖分が凝縮された非常に甘いシェリー酒です。
レーズン、イチジク、ドライフルーツなどの果実や、ダークチョコレートやシロップなどウイスキーのフレーバーにも多く登場する味わいがペドロ・ヒメネスにもあります。
PXカスクで熟成させたウイスキーは、ペドロ・ヒメネスが甘口であることから甘くて飲みやすいウイスキーに仕上がりやすいです。
フィノはオロロソと同様に辛口のシェリー酒ですが、オロロソとは異なり酵母で熟成させています。
アメリカンオーク樽で熟成させたフィノは、りんごやレモンの風味に加えて、酵母で熟成させたことからパン生地のようなニュアンスがあります。
ウイスキーを熟成させると樽由来の木の香りとスパイシーな香味が目立ちますが、前述したフィノ特有の果実のフレーバーも感じられることでしょう。
アモンティリャードはオロロソとフィノの中間の味わいと表現されることがあるウイスキーのように琥珀色をしたシェリー酒です。
フローラルな香りと植物のアロマが特徴的で、フィノとオロロソの中間の味わいと表現されます。
アモンティリャードカスクで熟成させたウイスキーはナッツの風味が強くなり、ハーブなどのフローラルなフレーバーも持つようになります。
モスカテルはマスカットの品種を指し、モスカテルシェリー酒はマスカットで作ったシェリー酒のことです。
非常に甘口でハチミツレモンティーをさらに甘くしたような味わいから人気のシェリー酒になります。
モスカテルカスクによるウイスキーの熟成は、完熟したカシスの甘味とマスカットのフレッシュな香りが付与されます。
シェリーカスクで熟成したおすすめ銘柄を5つ紹介します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
マッカランはシングルモルトのロールスロイスと呼ばれるほどの高級かつ人気の銘柄であり、その人気の秘密はシェリーカスクによる熟成を含めた伝統ある製造方法を守っていることが挙げられます。
その一つとしてマッカランでは、厳選されたシェリーカスクで熟成された原酒のみを使用しています。
シェリーカスクのみを使用しているのはマッカランの数あるこだわりのなかでも非常に重視していることであり、シェリーカスクの原木選びから樽づくりまでを自社で行っているほどです。
味わいはシェリーカスク特有の香りとドライフルーツの味わいがあり、シェリーカスク以外にも数多く存在するマッカランのこだわりによって、ただ甘いだけではない複雑で完成度の高い風味に仕上がっています。
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ハイランドパークはマッカランと同じエドリントン・グループが所有することから、こちらのウイスキーもシェリーカスクによる熟成にこだわっています。
蒸留所には4万樽以上の熟成樽がありますが、その9割がシェリーカスクです。
ファーストフィルのシェリー樽で熟成を行うことを重視しており、スコッチモルトのなかでも高い人気を博しています。
マッカランとの大きな違いは、オークランド産のピート(泥炭)を使用することにより、シェリーカスクによる甘味だけでなく、伝統的なスコッチのスモーキーフレーバーが味わえることです。
画像引用:https://whisk-e.co.jp/products/ioad-malt-shcs/
アランは、ハイランドパークと同様にアイランズに分類されるウイスキーであり、シェリーカスクを含むワインカスクによる熟成に強みを持っています。
ソーテルヌカスクや、ポートカスクなどのワインカスクにより熟成したウイスキーを販売してきましたが、新ボトルになってシェリーカスクのアランがリリースされました。
レーズンとチョコレートの甘い香りに、完熟したイチジクの味わいがするアランらしい味わいとシェリーカスクのフレーバーが同居した銘柄です。
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画像引用:https://www.suntory.co.jp/news/article/12560.html
山崎は日本特有のオークで作られたミズナラ樽を中心に熟成されていますが、こちらの山崎はシェリーカスクで熟成した原酒を使用しています。
2016年に発売された山崎 シェリーカスクは限定約1,500本のみの販売となっており、非常に希少性の高いボトルです。
こちらの山崎はスパニッシュオークで作られたシェリーカスクを使用していることからタンニンが溶出しやすく、赤みの強い色付きになりレーズンとドライトマトの濃厚で甘酸っぱい風味が堪能できます。
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画像引用:https://www.glenmoray.com/classic-sherry-cask-finish
グレンマレイはフランスのラ・マルティニケーズ社が所有することから、シェリーカスクを含むワインカスクによるカスクフィニッシュシリーズを発売しています。
カスクフィニッシュとは、樽で熟成させたウイスキーを移し替えて再度熟成させることです。
こちらのシェリーカスクフィニッシュであれば、アメリカンオーク樽で熟成させたグレンマレイをオロロソシェリーカスクで再熟させています。
シェリーカスク特有のフルーツの味わいにアメリカンオーク特有のバニラの風味が合わさり、複雑でスパイシーな味わいが楽しめます。
グレンマレイ蒸留所 - Glen Moray DISTILLERY
シェリーカスクで熟成させた銘柄は、山崎 シェリーカスクなどの限定品を除けば酒店やオンラインショッピングで購入できます。
しかし、ウイスキーの熟成途中にあるシェリーカスクを購入できることはご存じでしょうか?
シェリーカスクを販売する国内唯一のプラットフォームには「カスク・インベストメント」があり、シェリーカスクのマッカランを樽ごと購入することができます。
マッカラン以外にもさまざまなシェリーカスク熟成のウイスキーを販売しており、80ヶ所以上の蒸留所から好きなウイスキーカスクを選ぶことが可能です。
購入したシェリーカスクは「ボトリングサービス」でボトル詰めができるため、自分だけのオリジナルウイスキーを作ることが可能です。
ボトリングだけでなく販売(酒類に関する免許取得が必要)など、さまざまな用途でカスクを購入可能であり、好きなタイミングで売却もできます。
カスクの購入はボトルの購入とは異なり、年々熟成が進んでいきウイスキーが成長していく楽しみがあるため、ウイスキー好きなら一度は夢見るカスクの購入を検討してみましょう。
気になる価格ですが、高いカスクであれば数千万円を超えることもありますが、安いカスクであれば50万円以下で購入できる銘柄もあるので、自身の予算に合わせてカスクを選ぶことをおすすめします。
ウイスキーカスクのオーナーに興味がある方はこちらの記事もご参照ください。
シェリーカスクの特徴と歴史、種類やおすすめ銘柄について解説しました。
樽の特徴を知ることはウイスキーの香りや味わいを深く知るための一歩であるため、まずは代表的なシェリーカスク熟成がウイスキーに与える影響を理解しましょう。
シェリーカスクを含むウイスキー樽全般の種類を知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。