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- ウイスキー基礎知識
ウイスキーに興味のある人なら、「原酒」や「モルト」「グレーン」などという言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。
これらは、ウイスキーの味や香りを決定づける大切なものです。
ウイスキーの奥深さを知るためには、基本的なことをきちんと知っておいた方がよいでしょう。
そこで、この記事では、ウイスキーに関心のある方に向けて、原酒の魅力について解説します。
この記事のポイント
ウイスキーに限らず、世間に出回っているお酒には、原酒と呼ばれるものとそうでないものがあります。仕込んだ樽の中からそのまま取り出したものを、原酒と呼ぶのが一般的で、ウイスキーの場合も同様です。
ただし、日本の酒税法で「原酒」という言葉が使われていたのは、1989年に改正される前までで、それ以降は法律用語としては使われなくなりました。とはいえ、原酒という言葉は、それ以降もお酒の話をする際にはよく出てきます。どのようなものを原酒と呼ぶのかは知っておいた方がよいでしょう。
ウイスキーは、蒸留器で蒸留した後、木の樽の中でじっくり熟成させて作るお酒です。樽から取り出した原酒をそのまま商品にすることもありますが、ブレンディングやヴァッティングといった調合の過程を経て、商品となることの方が多いといえます。
ウイスキーは樽の中で熟成されるうちに琥珀色に変化し、独特な香りが生まれるので、仕上がりは樽ごとに異なるといっても過言ではありません。どの原酒を選ぶかによって、ウイスキーの個性が大きく変わってしまうので、それぞれの原酒の特長を、しっかり見極めることが重要です。
ウイスキーには、モルトウイスキーとグレーンウイスキーがあり、それぞれに原酒があります。モルトウイスキーの「モルト」とは、麦芽のことです。
名前の通り、麦芽が主原料のウイスキーで、発酵させたモルトをポットスチル(単式蒸留器)で2回蒸留してから樽で熟成させます。風味が強く、個性的な味わいになるため、ラウドスピリッツとも呼ばれる原酒です。
一方、グレーンウイスキーの「グレーン」とは、穀類を意味します。麦芽以外に、トウモロコシや小麦、ライ麦などの穀類も発酵させ、原料とする点が特徴です。
また、蒸留に使うのはポットスチルではなく連続式蒸留器です。その後、木製の樽で熟成させて仕上げる点は同じですが、出来上がる原酒は全く個性の異なるものになります。柔らかい風味で、香りも強すぎないため、サイレントスピリッツとも呼ばれる原酒です。
ウイスキーのモルトについて詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
ウイスキーのモルトとは?モルトウイスキーの種類と飲み方を紹介!
ウイスキーの原酒について深く知りたければ、シングルモルトやピュアモルト、ブレンデッドなどについても知っておきましょう。シングルモルトは、1つの蒸留所で製造されたモルトウイスキーだけを瓶に詰めたものです。
実は、ウイスキーの場合、味わいに深みを出したり、飲みやすくしたりするために、複数の蒸留所で作られた複数の原酒をブレンドして商品化することが少なくありません。シングルモルトウイスキーは、それぞれの蒸留所が持っている個性が全面に強く押し出されことが多いウイスキーです。
それに対して、ピュアモルトウイスキーは、異なる複数のシングルモルトの原酒を混ぜ合わせて作るウイスキーです。100%モルトだけを原料としている原酒同士を混ぜ合わせるため、ブレンド後も原料は100%モルトであるという意味で、ピュアモルトと呼ばれています。
それに対して、ブレンデッドウイスキーと呼ぶ場合は、モルトウイスキーとグレーンウイスキーの原酒を混ぜ合わせます。複数の蒸留所の異なる原料のウイスキー同士を混ぜ合わせるため、値段を抑えながら飲みやすいウイスキーに仕上げることが可能です。
かつては、熟成年数が商品名になっている国産ウイスキーの銘柄が数多くありました。しかし、いつの間にか、12年や17年などといった熟成年数が付いた銘柄を見かけなくなったと感じている人もいるのではないでしょうか。実は国産ウイスキーは、原酒不足の状態が続いています。
かつては、ウイスキーは贈答品の洋酒として花形商品でした。しかし、1973年のオイルショックを気に、世界的に需要が衰え、大量の余剰在庫を抱えることになってしまいます。長く需要の低迷が続いたことにより、ウイスキーはどんどん生産量を減らしていたのです。
ところが、転機が訪れました。ウイスキーを炭酸水で割るハイボールという飲み方が広い世代に受け、ウイスキーの需要が増え始めたのです。さらに2014年には、NHKの連続テレビ小説「マッサン」が放送され、ウイスキーを飲んでみたいという人が増えました。ウイスキーブームが到来したのです。
当然、ブームに乗って生産量を増やしたいところですが、ウイスキーの場合、急に需要が増えたからといってすぐに供給量を増やすということができません。なぜなら、蒸留後に熟成することによって独特の色と深みが生まれるお酒だからです。
更に、原酒不足に拍車をかける事態が起こりました。国産ウイスキーが、海外の品評会などでも高く評価されるようになったのです。日本国内だけでなく海外からの需要も増えたため、人気の原酒はますます手に入りにくくなっています。
原酒不足によってNAS銘柄のウイスキーが増えています。NASとはNon Age Statementの略で、熟成期間を表示しないウイスキーのことです。
ウイスキーは熟成期間が長いほど珍重される傾向がありますが、熟成期間が短いものが決してまずいというわけではありません。熟成期間の短いものを好む人もいます。ブレンドすることによって、まろやかにすることも可能です。
NASは、熟成期間に捉われずにブレンダーがよいと思う原酒を自由に掛け合わせて作ることができます。そのため、比較的安くおいしいウイスキーを味わうことが可能です。NASは、アイリッシュウイスキーやアメリカンウイスキーではよく見られるスタイルですが、国産ウイスキーではようやく増えてきたところだといえます。
かつては熟成年数を記載して人気を博していた銘柄のほとんどが、NASに転換して販売を続けているといってもよいほどです。サントリーの場合は山崎、白州、響、ニッカの場合は余市や竹鶴などがNASとして販売されています。
原酒が不足している状態で、熟成期間を問わずNASとして出荷されるということは、ますます熟成期間の長い原酒は手に入りにくくなっているということに他なりません。つまり、熟成期間にかかわらず、原酒の価値が高まっているということです。なかなか手に入らない長期熟成の原酒はプレミア価格で取引されることになるでしょう。
とくに人気銘柄の原酒は、取り合いになること必至です。当然のことながら、投資の対象としても有効だといえます。SNSが発達した時代においては、新しい銘柄であっても、世の中においしいことが知れ渡れば、人気に火が付くこともあり得るでしょう。
他の人が知る前によい原酒の存在に気付くことができれば、それは大きなアドバンテージとなるのです。
ウイスキーは、複数の原酒を混ぜ合わせることによって飲みやすくすることが多く、原酒のままでは飲みにくいと感じる人もいるかもしれません。
しかし、原酒には、樽ごとの個性が表れます。醸造所が追い求めている理想の姿も、原酒を味わうことで知ることができるでしょう。自分好みの銘柄を見つけるためにも、一度原酒のウイスキーを味わってみるのがおすすめです。