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- ウイスキー基礎知識
ウイスキーのアルコール度数は40度前後と高いため、日本では割って飲む人の方が多数派かもしれません。
日本でメジャーな割り方に水割りがありますが、実はこれは日本発祥の独特の飲み方です。割り水の量によって、シングル、ダブルといった呼び方をします。
では、前割りという割り方はどれくらいの人が知っているのでしょうか。
この記事では、前割りとはどのような割り方で、どのようなメリットとデメリットがあるかを解説します。
前割りとは読んで字のごとく前日までに水で割っておく割り方です。
これは元々ウイスキーを飲む際に行われていた割り方ではありません。焼酎の楽しみ方として広く行われていた方法でした。
好みの分量の水で前もって焼酎を割っておき、数日から1週間程度寝かせておくのです。
たった1日寝かせるだけでも構いません。
焼酎と水がなじむことによって、直接舌に感じていたアルコール臭さがなくなります。
口当たりがマイルドになるということで、焼酎の飲み方としては割と浸透している方です。
その割り方がウイスキーでも取り入れられるようになりました。
焼酎で前割りをするのは、飲みやすくするためです。
焼酎もウイスキーと同じ蒸留酒なので、アルコール度が高く、どちらかといえばストレートでは飲みにくいお酒の部類に入ります。
焼酎もウイスキーほど高くはないとはいえ25%程度はあるので、水かお湯で割って飲むのが一般的です。
つまり、前割りをすれば、水割りやお湯割りと同様、アルコール度数を飲みやすいレベルまで下げられるというメリットがあります。
ウイスキーは焼酎よりもアルコール度数が高く、40度以上のものがほとんどです。
前割りでアルコール度数が下がって飲みやすくなるというメリットは、ウイスキーでも当てはまるでしょう。
前もって水となじませておくことによって、口当たりがまろやかになるという点も、焼酎の前割りではメリットとしてよく挙げられます。
これは、水を加えてから時間を置くことで、アルコール分子の周りに水の分子が均一につくからです。
口当たりがまろやかになるということなら、ウイスキーの場合もメリットになりそうに思えます。
しかし、実際は銘柄によってメリット・デメリットのどちらになるか分かれそうです。
味わいがしっかりしているウイスキーなら、水となじんでも本来の持ち味を感じられそうですが、そうでないものなじみすぎて味がぼやけてしまうかもしれません。
それ以上に問題なのが香りです。
芋焼酎など独特の香りがあるものは、前割りすることにより香りが飛び、苦手な人でも飲みやすくなる点がメリットとして挙げられます。
しかし、ウイスキーは香りを楽しむお酒です。
スモーキーが苦手な人が飲みやすくするならメリットになるかもしれませんが、前割りで香りが飛んでしまうことは、ウイスキーにとってのメリットにはならないでしょう。
更に、前割りしたウイスキーは冷蔵庫で保存するという点もあまりウイスキー向きではありません。
冷蔵庫には香りの強いものが多く保存されているので、ウイスキーの香りが他の代わりに負けてしまう可能性があります。
冷蔵庫内の温度もウイスキーの持ち味をあまり引き出せない温度です。ウイスキーの香りや味わいは15度前後が最もよく感じられます。
とはいえ、もはや前割りした時点で香りはあまり気にしていないというのであれば、冷蔵庫から出してすぐに飲める点はメリットになるでしょう。
前割りした酒類を出しているバーや居酒屋があったら、それは酒税法に違反している可能性があります。
酒類の製造免許を持っている蒸留所や工場以外で、酒類に水を加えアルコール度数36度以下にすることは、酒税法第43条で定めるみなし製造に当たるからです。
もちろん、あらかじめ蒸留所などで前割りの状態で出荷している場合は問題ありません。
それらを前割りと称して提供しているのであれば大丈夫です。
実は、飲食店などで飲む水割りも、酒税法上は例外事項に当たります。
直前に水を混ぜて提供することは例外的に認められていますが、前割りは直前の混和に当たらないというのが一般的な見解です。
ちなみに、そのことは同条の10項で示されています。
また、みなし製造は自ら消費する場合はよいとされていますが、「自ら消費」の範囲は同居家族までというのが通常の見解です。
そのため、同居家族以外にふるまうと酒税法違反になります。
ついでに説明すると、この規定が当てはまるのは前割りだけはありません。
果実酒づくりも同じように規制されています。
要は購入してきたお酒に手を加えて、新たなお酒をつくることが禁止されているのです。
よく自宅でつくられる梅酒なども同じ法律で規制されています。
しかし、例外措置として、自ら消費する場合はよいとする規定が存在するため、ほとんどの場合逮捕されずに済んでいるわけです。
せっかく前割りをするうえでの注意として酒税法に触れたので、漬け込みウイスキーについてもここで触れておきましょう。
漬け込みウイスキーとは、果実などをウイスキーに漬け込んでフレーバーを楽しむ飲み方です。
イチゴを漬け込んだ漬け込みウイスキーは特に巷で流行っています。
イメージとしては、梅酒のホワイトリカーをウイスキーに置き換えたようなものです。
好きな果物をカットなど下処理して、砂糖と一緒に数日間漬け込みます。
砂糖を加えるのは浸透圧を上げ、早く味が染み出るようにするためです。
ウイスキーの風味を表現する言葉にはフルーツが多く使われていることもあり、ウイスキーの香りや味とよくマッチします。
定番のイチゴは縦半分に切ってヘタを取ってから漬け込むと、風味が出やすく見た目にもきれいです。
コーヒー豆や紅茶なども漬け込みに向いています。
その場合は、コーヒーシュガーやガムシロップを使って甘味を補ってもよいでしょう。
漬け込んでいる瓶をカウンターや棚に並べてもおしゃれに見えるので、女性を中心に人気のある飲み方です。
とにかく、前割りにしても漬け込みウイスキーにしても、安心してつくるためには、例外として「自ら消費」だと認めてもらう必要があります。
まずはアルコール濃度です。
加水する場合は、36度を割らないように注意しなければなりません。
漬け込みウイスキーをつくる際には、アルコール度数が20%以上であることが最低条件です。
また、漬け込む場合は米や麦、あわなどの穀物を漬け込んではいけません。
果実であってもブドウや山ブドウなど、お酒の原料となるものを避ける必要があります。
前割りを楽しめるウイスキーがあるとしたら、それはストレートやロックではかなり飲みにくい銘柄です。
アルコール度数が60度近くある銘柄や、個性が強すぎてかなり割らなければ飲めない銘柄なら、前割りで水となじませて香りを飛ばしたくらいでちょうどよい加減になる可能性があります。
また、個人の好みでスモーキーやヨード臭が強いものは飲めないというのであれば、前割りすることで香りが弱まるので飲みやすくなるでしょう。
上品で繊細な香りや口当たりのウイスキーは前割りすると持ち味がなくなってしまうので、避けなければなりません。
しかし、クセが強すぎて飲みにくいものは、前割りすることで強すぎる個性が弱まります。初心者でも楽しめるようになるでしょう。
ただし、ウイスキーらしさが残るのは翌日までです。
揮発成分が多いので、ボトルを開けたらすぐに香りが飛んでしまいます。
1週間程度寝かせた方が口上りはまろやかになりますが、よほど密閉した状態で保管しておかなければ、ウイスキーらしさを保てません。
そのような条件から前割りに合うものを挙げるとしたら、アイラモルトになるでしょう。
スコッチウイスキーの中でも特に飲みにくいと言われています。
アイラ島を覆うピート(泥炭)を、麦芽乾燥の燃料として使うためです。
独特のピート香や磯臭さが苦手という人も少なくありません。
ものによっては薬品にたとえられるような強いクセがあるので、加水して寝かせることでかなり飲みやすくなることも考えられます。
味わいもしっかりしたものが多いので、前割りによって味がぼけてしまう心配もないでしょう。
前割りしたウイスキーは、既にそのまま飲める状態です。
前割りしたウイスキーは冷蔵庫保存するので、グラスに注ぐだけで適度に冷えた状態で飲めます。
1回に飲み切れる量をつくっておけば、一定の濃さを保てる上に途中で水割りを作り直す必要がありません。
その点では、飲むことだけに集中できて便利です。日常的な食事中の晩酌用としては、ウイスキーの前割りもありなのでしょう。
前割りしたウイスキーをさらに楽しむなら、炭酸水メーカーでハイボールにするのがおすすめです。
炭酸水にする水の代わりに、前割りしたウイスキーを使用します。炭酸水メーカーはどの家庭にでもあるというものではありませんが、もしあるなら試してみるとよいでしょう。
手軽にウイスキーを楽しむ方法として前割りを選ぶのであれば、もっとウイスキーの味わいを残したまま手軽に楽しむ方法があります。
身近な飲み物で割って飲む方法と、簡単に作れるカクテルです。
新たな飲み方として試してみると良いでしょう。
家にある飲み物でウイスキーを割ってみましょう。
コーラ、ジンジャーエール、オレンジジュースなどは、ウイスキー1に対して3~4の割合で混ぜると美味しく飲めます。
砂糖を入れたコーヒー、紅茶、牛乳、ホットチョコレートなどもおすすめです。
意外な感じがするかもしれませんが、ウイスキーの風味を表す際に使われる表現を思い出せば合うことも理解できるでしょう。
カクテルには、ビルド、ステア、シェークなどの作り方があります。
ビルドはウイスキーをジュースなどで割る方法なので、比較的簡単です。
ステアも氷を入れたミキシンググラスに材料を入れて軽く混ぜ合わせて冷やす作り方なので、比較的簡単につくれるでしょう。
たとえば、バノックバーンは、スコッチウイスキーをトマトジュースで割って作るカクテルです。
量もウイスキーの目安が30ml程度というだけで、トマトジュースは好みの量で構いません。
レモンを絞ったり、スパイスを加えたりして楽しめます。
前割りでウイスキーを飲んでみようと思った人の中には、基本の飲み方ではウイスキーを楽しめなかったという人がいるかもしれません。
しかし、間違った飲み方をして、美味しく感じられなかった可能性もあります。
今一度、正しい飲み方を確認してみましょう。
ストレートは、氷も入れずに飲む飲み方なので、アルコール度数が最初から最後まで40度以上と高いままです。
量は少なめにして、少しずつ飲むようにします。
脚の付いたテイスティンググラスを用意し、常温のウイスキーを少量注ぐのが基本です。
目安の量は15~30mlなので、料理用の計量スプーンなら大さじ1~2杯になります。
香りの成分が揮発性なので、常温でグラスから立ち上る香りをしっかり楽しみましょう。
グラスの中のウイスキーを軽く回して空気に触れさせると香りが立ちやすくなります。
香りを楽しんだら、少しだけ口に含み、舌の上で転がすように味わいましょう。
飲み込むときに鼻から息を吐いて香りを再度確認します。
飲み込んだ後も口の中の残る余韻を楽しむのが基本の楽しみ方です。
水割りやハイボールでは感じにくい余韻も楽しめます。
なお、ストレートで飲む際にはチェイサーを必ず用意するようにしましょう。
チェイサーとは、アルコール度数の高いお酒を飲む際に、交互に飲む飲み物のことです。
水に限りませんが、ウイスキーの香りや味わいを楽しむなら、それらを邪魔しない常温の水がよいでしょう。
トワイスアップとは、常温の水とウイスキーを1:1の割合で割る方法です。
アルコール度数を適度に下げて飲みやすくしたうえで、香りや風味も十分に楽しむことができます。
カルキ臭などが香りを邪魔するので、常温で軟水のミネラルウォーターを使用するのがおすすめです。
同量を合わせるだけなのでとても簡単な割り方で、なおかつウイスキーの持ち味をしっかり味わえます。
ストレートでは飲みにくいという場合にもおすすめです。
ウイスキーを前割りで楽しむなら、味わいがしっかりした個性が強めのものがおすすめです。
前割りによってマイルドになったくらいがちょうどよいという銘柄を選びましょう。
繊細な香りや味わいを楽しむ銘柄は前割り向きではありません。
ある程度香りが飛んでしまうこと、味がぼやけてしまうことを前提に、個性が強めな銘柄を選んで試してみましょう。