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- ウイスキー基礎知識
ウイスキーを飲む機会は多いのに、まだスモーキーな風味を味わったことがないという人もいるのではないでしょうか。実は、ウイスキーの香りや味の表現に使われる「スモーキー」という言葉は、すべてのウイスキーに当てはまるものではありません。
製法によってスモーキーな香りや味わいが強く出るものとほとんど出ないものがあります。では、ジャパニーズウイスキーの場合はどうなのでしょうか。この記事では、ウイスキーのスモーキーとはそもそも何なのかを解説し、スモーキーさを味わえる国産ウイスキーを3つ紹介します。
この記事のポイント
ウイスキーがスモーキーな風味に仕上がるのは、ピートという泥炭の影響です。モルトウイスキーの原材料である大麦を水に浸して発芽させた後、ピートを燃やして乾燥させるとピート特有の香りが付着します。このピートを燃やしたときの煙の香りがスモーキーの正体なのです。
スモーキーという言葉は、とくにスコッチウイスキーの風味を表現する際によく使われます。それは、スコッチウイスキーの故郷であるスコットランドの土壌がピート層でできているからです。昔から豊富に採取できるピートを麦芽の乾燥に使用してきました。つまり、伝統的な製法でスコッチウイスキーをつくると、必然的にスモーキーフレーバーが生まれるわけです。
ピートは植物などが長年堆積して炭化した泥なので、場所によって含まれる成分が異なります。気候や土の性質などによって育つ植物が異なるからです。そのため、どこで採取されたピートを燃やしたかによって、ウイスキーにつくピート香にも違いが出ます。
たとえば、海辺の土地で採取されたピートは海藻や海辺の生物が堆積して作られたものなので、ヨードや塩分が含まれるはずです。それを麦芽の乾燥に使用すれば、ウイスキーにも潮の香りや塩味が付くことになります。蒸留所で使用するピートは、ほとんどが近くで採取されたものです。そのため、麦芽の乾燥に用いるピートが蒸留所ごとの個性を生み出す要因の1つになっています。
たとえば、アイラ系のウイスキーでは、その独特のスモーキーさを「ヨード臭」と表現することが少なくありません。アイラ島は蒸留所のほとんどが海沿いに建てられています。そのため、蒸留所の周辺で採取されるピートは、海藻など海辺の植物が堆積したものです。
アイラ系ウイスキーの強いヨード臭は、「正露丸のような臭い」と表現されます。しかし、このアイラ島独特のピート臭も、島のどのあたりで採れたかによって微妙に変わってくるものです。ですから、わずかな成分の違いが、蒸留所ごとの個性を生み出しているということができます。
ウイスキーのピートについて詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
ウイスキーのピートとは? ピート香の強いウイスキーの飲み方も解説!
スモーキーフレーバーは、ピートを燃やすことによって付着する者です。そのため、製造過程にピートを燃やす工程があるスコッチウイスキー特有のものといえます。では、スコットランドでつくられたウイスキー以外にスモーキーなものがあるのはなぜなのでしょうか。それは、製造工程がスコッチウイスキーの影響を受けているかどうかの違いです。
たとえば、日本では、ニッカウヰスキーがとくにスモーキーフレーバーの強いメーカーとして知られています。なぜなら、ニッカウヰスキーの創業者である竹鶴政孝氏は、自らスコットランドに渡り、現地の蒸留所でウイスキーづくりの修行をしたからです。
竹鶴氏は、日本でウイスキーづくりをする際、スコッチウイスキーの味にこだわりました。その結果、スコットランドと気候や風土がよく似ている北海道の余市を選び、そこに蒸留所を建てたのです。その際、近くで上質なピートが採れるということも大事なポイントになりました。
日本の場合、ニッカウヰスキー以外も基本的にスコットランドからウイスキーづくりを学んでいます。製造過程にピートをと燃やす工程が組み込まれているため、ジャパニーズウイスキーは全体的にスモーキーな銘柄が多いわけです。
また、アイリッシュウイスキーもどちらかといえばスモーキーな部類に入るでしょう。アイルランドとスコットランドが隣国なので、やはり製造工程が似ています。ピートを燃やす工程があれば、スモーキーな香りが付着しても不思議はありません。
一方で、アメリカンウイスキーとカナディアンウイスキーにはスモーキーな銘柄はほとんどないといってもいいほどです。それは原材料が大麦ではなく、トウモロコシである点が大いに関係しています。モルトづくりの際にピートを燃やして大麦の乾燥をするとつくのがスモーキーフレーバーです。
トウモロコシが原材料なら、麦芽の乾燥という製造過程がないので、スモーキーフレーバーは発生しようがありません。
製造過程の違いはそれぞれのウイスキーの香りや味わいを決定づけるものなので、味の評価にも影響を与えています。スコッチ系のウイスキーは、味や香りの表現に「フルーティー」「スモーキー」という言葉を用い、アメリカンウイスキーは「スイート」「スパイシー」という言葉を用いるのはそのためです。
スモーキーな風味を味わうためには、スコッチウイスキーか、その流れを組むアイリッシュウイスキー、ジャパニーズウイスキーを選びましょう。
スモーキーなウイスキーを味わいたいと思ったら、まずは安いものから試してみましょう。スモーキーさを味わったことのない人が、いきなりスモーキーな高級ウイスキーを飲んでも飲みにくいと感じるだけです。
スモーキーフレーバーは誰もが心地よいと感じるものではありません。人によっては、受け付けない場合もあります。いきなり高級なものを選ぶのではなく、まずは手ごろな値段のものを選んで、自分がスモーキーフレーバーになじむことができるか確認しておいた方がよいでしょう。
また、ウイスキーにはシングルモルト、グレーン、ブレンデッドといった種類がありますが、グレーンウイスキーにはスモーキーさが発生する工程がありません。ですから、シングルモルトかブレンデッドウイスキーを選びましょう。スモーキーさがを強く感じたければシングルモルトの銘柄がおすすめです。
ピート乾燥した原酒だけでできていれば、スモーキーさを存分に堪能できます。ブレンデッドウイスキーは、複数の原酒を混ぜ合わせているので、一部にピート香が強いものがあったとしても、スモーキーさはあまり強く感じられません。他の個性とぶつかり合って、スモーキーさがかき消されてしまうからです。スモーキーさを味わう目的で選ぶなら、シングルモルトがよいでしょう。
更にこだわるなら、好みのスモーキーさを生み出している蒸留所を探します。麦芽乾燥の際に燃やすピートのわずかな成分の違いが、それぞれの蒸留所の持ち味となるからです。スモーキーなウイスキーを味わいながら、自分好みのスモーキーさはどこの蒸留所でつくられているか、確認してみるとよいでしょう。
苦手な香りや風味ならその蒸留所のものはあらかじめ避けることができますし、好みに合っていればその蒸留所の銘柄を中心に選べます。
国産ウイスキーにもスコッチに匹敵するようなスモーキーさを誇る銘柄があります。ニッカウヰスキーやサントリーなど、国産ウイスキーの主要メーカーは、いずれもスコッチウイスキーの製法を採用しているからです。ここでは、スモーキーでなおかつ飲みやすい国産ウイスキーの銘柄をご紹介します。
ニッカウヰスキーの余市蒸留所でつくられています。ニッカウヰスキーの創業者である竹鶴政孝氏は、スコッチのスモーキーフレーバーに魅入られ、スコッチに匹敵する国産ウイスキーづくりに人生をかけた人物です。
余市の地に蒸留所を構えたのも、良質なピートが採れることが理由でした。強く荒々しいピート香りと、甘いフルーティーな香りが同居しているウイスキーです。ストレートで飲んでもハイボールにしてもおいしく飲めます。
ニッカウヰスキーが、創業者・竹鶴政孝氏の名前を付けるほどこだわってつくったウイスキーです。質の高いモルトを選びじっくり時間をかけて熟成させています。
ピート由来の荒々しく力強い香りとオーク樽由来の甘くフルーティーな香り、麦芽の香ばしい香りや旨みのバランスが絶妙です。まろやかで滑らかな口当たりのウイスキーなので、割らずにストレートかロックで、スモーキーフレーバーを楽しみましょう。
ベンチャーウイスキーという埼玉県の小規模蒸留所がつくっているウイスキーです。ピートを燃やし、時間をかけて麦芽を乾燥させているため、強めのピート香が付いています。スモーキーさが際立っているので、個性の強さから好き嫌いがはっきり分かれる銘柄です。
スモーキー強めの本格派スコッチが好きな人に向いています。ストレートやロック、トワイスアップなど、ウイスキー本来の持ち味を楽しむ飲み方がおすすめです。
スモーキーさはウイスキーらしさといえる部分ですが、好き嫌いが二分する個性でもあります。強烈な個性をどう評価するかは飲む人次第です。最初にスモーキーさが強すぎるウイスキーを飲んで、ウイスキーに苦手意識を持ってしまう人もいます。
ウイスキーは好きなのに、何度挑戦してもスモーキーさは好きになれないという人もいるので、自分がスモーキーさを楽しめるかをまず確認してみましょう。
また、スモーキーさが特徴であるアイラ系のウイスキーについて詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。