カルヴァドスは飲み終わったらどうする? 中のりんごの活用方法を紹介
- ウイスキー基礎知識
ウイスキーは賞味期限がなく、開封した後もおいしく飲めるお酒だと思っていませんか。確かに、ウイスキーは開封後しばらく置いておいても腐りませんが、劣化しないというわけではありません。
では、冷蔵庫で保存すれば、劣化を防げるのでしょうか。残念ながら、冷蔵庫はウイスキーの保存場所としては不向きです。この記事では、ウイスキーを冷蔵庫に保存しない方がよい理由と、開封後もおいしく飲むための保存方法について解説します。
この記事のポイント
冷蔵庫は、食品の保存場所として万能だと思っている人が少なくないようです。しかし、冷蔵庫に入れて保存しない方がよいものもたくさんあります。そのひとつがウイスキーです。冷蔵庫がウイスキーの保存に向かない理由は4つあります。
冷蔵庫に保存することの最大のリスクは、香りが失われることです。ウイスキーは独特の香りを楽しむお酒なので、香りがしなくなるのは大きなデメリットだといえます。もちろん、香りが完全に抜けてしまうということではありません。ウイスキーをグラスに注いだ時に、芳醇な香りが立ち上りにくくなってしまいます。
ウイスキーの香りは揮発性の成分です。温度が低くなると揮発しにくくなってしまい、そのせいで苦みや渋みがより強く感じられるようになります。ウイスキーはまず香りを感じ、口当たり、味わい、余韻と順番に楽しんでいく飲み方をするお酒です。冷蔵庫で保存すると、香りが失われ、苦みや渋みを感じやすくなるので、本来の持ち味を楽しむことができなくなってしまいます。
ウイスキーを瓶ごと保存するとしたら、他の食材の邪魔にならないように、扉部分のポケットを利用することになるでしょう。ウイスキーに限らず、振動はお酒の香りや味わいを変化させます。海底熟成の実験では、アルコール度数が高いものほど振動による変化が大きく、複雑な味わいのものほど本来の味わいが失われることがわかりました。
ウイスキーは、アルコール度数が40度前後と高く、複雑な味わいを楽しむお酒です。冷蔵庫の中身を取り出すために、何度も開け閉めする扉部分に保存すると、大きく振動の影響を受けることになります。
冷蔵庫内は庫内に入れた食材が腐らないように、湿度が低く抑えられた状態です。一度開封したウイスキーはキャップやコルクと瓶との間にわずかな隙間ができています。
とくにコルク栓は乾燥すると縮むため、瓶との間の隙間が広がりやすく、密閉状態を保てません。隙間が広がると、空気が入り込み酸化しやすくなるうえに、中から揮発性のアルコールや水分が抜けやすくなります。
冷蔵庫には、キムチやラッキョウ、ぬか漬けなどの漬物類、調理したおかずの残りなど、匂いの強い食材が保存されていることがよくあります。コルク栓や蓋が乾燥して瓶との間に隙間ができている状態では、そこから他の食材の匂い成分が入り込んでしまうかもしれません。
ウイスキーは、麦芽を乾燥させるときのピートや熟成樽の材質の影響を受けるほど、周りの香りを吸収しやすいお酒です。冷蔵庫内の匂いが移ってしまったのでは、本来の香りを楽しめません。
ウイスキーを劣化させる原因を避けることが正しい保存方法だといえます。ウイスキーの劣化の原因は、温度変化、湿度、紫外線、強い匂い、振動です。ですから、冷暗所に保存するのが基本となります。しかし、日本では、一年を通して温度も湿度も一定の場所を探すのは簡単なことではありません。なるべく温度変化が小さく、ウイスキーに適した温度で管理できるところが理想です。
湿度は高すぎても低すぎてもよくありません。エアコンで温度を一定に保てる部屋であっても、冬場の暖房で乾燥しすぎると、コルク栓が縮まりアルコールや香りが抜けてしまう原因になります。密封状態を保つ方法としては、コルク栓や蓋の上からパラフィルムを巻き付ける方法がおすすめです。
バーなどの飲食店でも、開封後のウイスキーを保管する際に用いられています。しっかりとした密封状態を保てれば、湿度や匂いの影響を受けにくくなるので、保存場所を選びやすくなるでしょう。
紫外線は、購入時にボトルが入っていた箱を利用すると避けられます。箱がない場合は、布などで覆ってもよいでしょう。直射日光が当たる場所は、紫外線だけでなく温度変化も大きいので避けることが大事です。
ウイスキーの保存に適した条件を備えているものがあります。ワインセラーです。見た目は冷蔵庫に似ていますが、庫内の温度や湿度が異なります。ワインセラーという名前ですが、ワイン以外のものを保管しても当然問題ありません。蒸留酒のウイスキーよりも醸造酒であるワインの方が、劣化を防ぐのが難しいといえます。そのワインをよい状態で保存できるワインセラーは、ウイスキーの保存に向く冷暗所としての条件も満たしているというわけです。
ただし、冷却方式によっては、庫内の温度が外気温の影響を受けやすくなります。ペルチェ方式のワインセラーは、手ごろな値段で購入できますが、外気温を基準に庫内の温度を下げるため、年間を通して一定の温度を保つことができません。
また、電気代もコンプレッサー方式の5~8倍程度かかってしまいます。これは冷却する力にそれだけの差があるためです。コンプレッサー方式のワインセラーは、本体を購入する際には高いと感じますが、ランニングコストを考えると割安になります。ウイスキーを保存するためにワインセラーを選ぶならコンプレッサー方式のものを選ぶのがおすすめです。
家庭用のワインセラーは瓶を横に倒して保存するタイプが多いことから、ウイスキーの保存には向かないのではないかと思う人もいるかもしれません。ウイスキーを横に寝かせて保存してはいけないというのは、コルク栓が劣化しているときなど、隙間から中身が漏れ出てしまう可能性があるからです。
ですから、それを防ぐことができれば、横に寝かせて保存しても構いません。未開封か開封後かにかかわらず、栓の上から瓶の口の部分をパラフィルムで覆っておけば横に寝かせてワインセラーで保存できます。
ウイスキーの保存に適切なワインセラーについて詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
ウイスキーの保存にはワインセラーがおすすめ! 理由と選び方を紹介
冷蔵庫はウイスキーの保存場所としては向かないと説明しましたが、冷蔵庫で保存してもよい場合がないわけではありません。たとえば、ハイボールやカクテルとして楽しむ場合です。ウイスキーとしての香りや味わいを楽しむのではなければ、出来上がったハイボールやカクテルがおいしいと感じられる保存方法を選ぶことは間違っていません。
常温のウイスキーを使うよりも、冷蔵庫で冷やしたウイスキーを使った方がおいしくつくれるのであれば、ウイスキーを冷蔵庫で保存してもよいでしょう。また、香りや味わいをそれほど気にしない安価な大衆用ウイスキーなら、冷蔵庫で保存しても問題ありません。
数日で飲み切る場合も冷蔵庫に入れて構いませんが、やはりグラスに注いだ時の香り立ちはよくなくなります。ウイスキーは腐るものではないので、もともと冷蔵保存の必要がありません。しっかりと蓋を閉め、できればパラフィルムを巻くなどして、常温で保存した方が本来のおいしさを楽しめます。あえて冷蔵庫に入れなければならないケース以外は、常温保存を心がけるべきでしょう。
食品の保存場所として冷蔵庫が最も適していると思いがちですが、常温保存できるものにとって、冷蔵庫に入れることがベストな状態とは限りません。
冷蔵庫に入れたことによって劣化が進んでしまうこともあり得ます。ウイスキーは、味や香りを劣化させる条件さえ取り除ければ、冷蔵庫を避けて保存した方がよい状態を長く保てるということを理解しましょう。