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- ウイスキー基礎知識
モルトはウイスキーの原材料であり、モルトを使用して作られたウイスキーのことをモルトウイスキーと呼びます。
モルトウイスキーは個性が強いため、単体で飲むよりもグレーンウイスキーと混ぜたブレンデッドウイスキーとして飲まれることが一般的です。
しかし、モルトウイスキーの独特のクセと風味は世界中のウイスキー愛好家から愛されており、単体で飲むのもおすすめのウイスキーになります。
この記事ではウイスキーのモルトについて解説し、モルトを原材料にするモルトウイスキーの種類や、製造方法、おすすめの飲み方まで紹介します。
この記事のポイント
モルトは大麦麦芽のことでありウイスキーの原材料です。大麦は最古の穀物といわれており、古来から人々の生活を支えてきました。
主食のパンや、ウイスキー以外のお酒であればビールの原材料にも使用されます。
大麦には主に二条大麦と六条大麦の2種類がありますが、数字は穂の列の数を示しており、列の数が多いほど実は小さくなるので、二条大麦のほうが実は大きいです。
ウイスキーに主に使用される大麦も実が大きい二条大麦になります。
ウイスキーの製造において大麦はモルティング(製麦)という最初の製造工程で水を含ませて発芽させます。発芽させる理由は、アルコールによる発酵を進みやすくするためです。
モルティングの工程を経た大麦はモルトに変化します。その後、蒸留や熟成などの過程を経てモルトウイスキーが誕生するのです。
モルトを原材料にして製造されたモルトウイスキーには主に2つの専門用語が存在しますので、詳しく解説します。
シングルモルトはモルトウイスキーの中でも一つの蒸留所で作られた原酒のみを使用したウイスキーのことを指します。
蒸留所内で製造が完結しているので、シングルモルトは蒸留所の個性が強くなりやすいウイスキーと言えるでしょう。
また、ウイスキーの熟成はカスク(タル)によっておこなわれますが、1つのカスクからウイスキーを製造する場合はシングルカスクと呼ばれます。
シングルモルトは複数のカスクの原酒を使用して作られたウイスキーも含みます。
シングルモルトとモルトウイスキーのシングルカスクは誤解されやすいので、違いを理解しておきましょう。
ウイスキーのカスクに関する専門用語について詳しく知りたい方は、こちらの記事をチェックしてください。
ピュアモルトは直訳すると純粋なモルトであるため、モルトウイスキーの原酒のみで製造されたウイスキーのみが名乗ることを許されます。
スコットランドのウイスキーにおいてモルトウイスキーを名乗る条件は、モルトを原材料に100%使用していることが条件であるため、すべてのモルトウイスキーがピュアモルトであると考える方もいるかもしれません。
しかし、ウイスキーの定義は国によって異なるので、スコットランド以外で製造されたモルトウイスキーは必ずしもモルトが100%であるとは限りません。
アメリカンウイスキーであれば、原料の51%がモルトであればモルトウイスキーを名乗ることが許されます。
また、ピュアモルトはモルト100%のウイスキーのことを示すので、シングルモルトとは異なり、複数の蒸留所の原酒を混ぜて作られたウイスキーも含みます。
このようにモルトに関する専門用語を理解すれば、シングルモルトやピュアモルトと宣伝しているウイスキーがどのように製造されたモルトウイスキーであるか判断することが可能です。
モルトウイスキーに関連するウイスキーは2種類ありますが、それぞれの違いを確認しておきましょう。
モルトウイスキーが麦芽を原料にするのに対して、グレーンウイスキーはトウモロコシ、ライ麦、小麦などの穀物を原料にします。
グレーンウイスキーはクセが少ないことから、クセの強いモルトウイスキーとは対称的なウイスキーです。
蒸留方法にも違いがあり、モルトウイスキーはポットスチル(単式蒸留器)を使用しますが、グレーンウイスキーは効率的に蒸留ができる連続式蒸留器が使用されます。
グレーンウイスキーは大麦への課税が強かった時代に、税金から逃れるために麦芽以外の穀物を使用して製造された背景があり、効率を重視して製造方法が確立されたウイスキーでもあります。
グレーンウイスキーについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をチェックしてください。
グレーンウイスキーとは? 製造方法や飲み方、おすすめの種類について
ブレンデッドウイスキーはモルトウイスキーとグレーンウイスキーを混ぜ合わせたウイスキーのことです。
モルトウイスキーとグレーンウイスキーは単体で飲まれることが少なく、複数のモルト原酒とグレーン原酒を混ぜ合わせたブレンデッドウイスキーとして販売されます。
ブレンデッドウイスキーはモルトウイスキーの個性とグレーンウイスキーの飲みやすさを上手く合わせて、お互いの長所を引き出しているのが特徴です。
よって、モルトウイスキーよりクセが弱くなり、初心者でも飲みやすい商品に仕上がっています。
代表的なモルトウイスキーの種類を3つ紹介します。
ザ・マッカランはスぺイサイドのマッカラン蒸留所で製造される代表的な高級スコッチウイスキーであり、その華やかな風味から「シングルモルトのロールスロイス」とも呼ばれています。
スぺイサイドで最小のポットスチルを用いた蒸留と伝統的なシェリー樽による熟成がザ・マッカランの気品のある風味となめらかで甘い口当たりを与えてくれます。
品質へのこだわりが強く、1度の蒸留によって抽出した液体の約16%以外はザ・マッカランの熟成に使用されません。高品質の原酒のみを熟成させるというこだわりを感じさせます。
また、人口による着色もおこなっていないので、樽自身が持つ鮮やかな自然の色合いが非常に美しいです。シングルモルトに最高レベルの品質を求めるならザ・マッカランがおすすめになります。
ザ・マッカランについて詳しく知りたい方はこちらのページもチェックしてください。
グレンフィディックはゲール語で「シカの谷」と呼ばれ、その名の通りラベルにシカが印刷されているウイスキーです。
スぺイサイドのダフタウンにあるグレンフィディック蒸留所で生産されていますが、この蒸留所は1887年に設立された老舗になります。
また、これまでブレンデッドウイスキーの原酒を生産していましたが、1963年に初めてシングルモルトウイスキーのグレンフィディックを販売しました。
シングルモルトウイスキーの中でも生産量が多く、ザ・マッカランと比較すると庶民的で購入しやすいのが特徴です。
モルトウイスキーはクセが強いのが特徴ですが、グレンフィディックは軽い飲み口でさわやかな味わいであるため、ウイスキー初心者も飲みやすい商品といえるでしょう。
山崎はサントリーから発売されており、山崎蒸留所で製造される日本のシングルモルトウイスキーです。
シングルモルトはスコットランドで製造される印象を持っている方もいるかもしれませんが、日本のモルトウイスキーはスコットランドの基準をもとに製造されるので、本場に近い状態で生産されます。
山崎は華やかで芳醇な香り特徴で、濃厚な甘さを持っており、ISC(インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ)において、金賞を受賞するほど世界から評価を得ている商品です。
日本人の口にも合いやすいので、シングルモルトを堪能するならジャパニーズウイスキーから購入するのもおすすめです。
モルトウイスキーの製造の特徴はポットスチル(単式蒸留器)によって蒸留がおこなわれることです。大麦からモルトを生成し、モルトウイスキーにするまでの具体的な製造過程は下記の通りになります。
製造工程 | 内容 |
①製麦(モルティング) | 穀物を水で浸し、発芽させ、乾燥することでモルトを生成 |
②糖化 | モルトを粉砕し、麦芽のデンプンを糖分に変えて、麦汁を作成 |
③発酵 | 麦汁を発酵させる |
④蒸留 | ポットスチルで2度蒸留し、ニューポッドを生成 |
⑤熟成 | ニューポッドをカスクにより熟成させる |
大まかな製造工程は上記の通りですが、モルトウイスキーの製造はポットスチルによる2度の蒸留が重要であり、一度目の蒸留を初溜、二度目の蒸留を再溜と呼びます。
蒸留釜の形や大きさによっても抽出できるウイスキーの質は異なるので、モルトウイスキーの製造においても重要な過程といえます。
また、蒸留によって誕生した熟成をしていないウイスキーはニューポッドと呼ばれ、無色透明でアルコール度数が非常に高い状態です。
アルコール度数は蒸留前に加水処理をおこなうことで下げます。ウイスキー特有の綺麗な琥珀色は、カスクによる長期間の熟成により付く仕組みです。
モルトウイスキーの製造方法について解説しましたが、次はこの製造方法を確立したモルトウイスキーの歴史について解説していきます。
モルトウイスキーの歴史において、重要な出来事を年表形式にして下記にまとめました。
年度 | 内容 |
1494年 | スコットランドの王朝でウイスキー最古の記録を発見 |
1644年 | ウイスキーへの課税が開始 |
1707年 | スコットランドがイングランドに併合される |
1708年~1822年 | ウイスキーの密造時代。カスクによる熟成やピートによる乾燥が確立 |
1823年 | 酒税法の改正により、政府公認の蒸留所が設立されるようになる |
1963年 | 世界初のシングルモルト、グレンフィディックが販売される |
ウイスキーの始まりは、スコットランドの王朝で見つかっているウイスキーに関する記録が最古となるため、現時点では1494年に始まったと解釈するのが一般的です。
1644年にはウイスキーへの課税が開始し、1707年にはスコットランドがイングランドに併合された影響で、ウイスキーへの課税はさらに厳しくなり、長い密造の時代が始まります。
密造の時代では、シェリー酒の空いた樽を偶然利用して熟成させたことによって、ウイスキーに甘みが生まれたことをきっかけにシェリー樽による熟成が一般的になりました。
また、モルトを乾燥させる燃料として、スコットランドの環境によって無尽蔵に発生するピート(泥炭)を乾燥に利用しました。
モルトウイスキーを含むスコッチウイスキー特有のスモーキーな香りは、密造時代における燃料費削減の副産物です。
1823年に酒税法が改正され、翌年以降から政府公認のウイスキーの蒸留所が数多く誕生することによって、密造時代は幕を閉じます。
モルトウイスキーは古来から製造されてきましたが、基本的にはブレンデッドウイスキーの原酒として生産されてきたので、1963年に販売が開始されたシングルモルトウイスキーはウイスキーの歴史から考えれば新しいウイスキーです。
以上がウイスキーの歴史であり、モルトウイスキーの製造方法は密造時代に確立され、現在に至るまで続けられてきた歴史のある製造工程になります。
モルトウイスキーのおすすめの飲み方は2種類あります。
それぞれ詳しく解説します。
モルトウイスキーの個性を楽しむなら、水や炭酸水で割らずにストレートで飲むのがおすすめです。
ウイスキーが持つ本来の甘みや、後味を堪能できます。
また、ウイスキーをストレートで飲むならチェイサー(水)は欠かせません。
ミネラルウォーターなどをチェイサーとして用意し、モルトウイスキーと交互に飲むことで舌が麻痺することを防ぎ、最後まで楽しむことができるようになります。
モルトウイスキーの香りを楽しむならトワイスアップがおすすめです。
トワイスアップとはウイスキーと常温の水を同じ量だけ混ぜ合わせて飲む方法になります。
モルトウイスキー本来の味を損ねず、より香りを味わいやすくなる飲み方です。
また、水を加えることによってアルコール度数を下げる効果があるので、アルコールに弱い方にもおすすめの飲み方になります。
モルトを原料にしたモルトウイスキーには、さまざまな個性的な銘柄が多く存在します。
例えば、スコットランドのアイラ島で生産されるピートのスモーキーな香りが特徴のラフロイグは、モルトウイスキーの中でも好き嫌いが分かれやすい銘柄です。
モルトウイスキーはクセの強い種類も多いですが、まずはストレートで飲んでモルトウイスキー特有の個性を味わってみましょう。
ウイスキー初心者の方は、今回紹介したモルトウイスキーなどの飲みやすい銘柄から挑戦してみてください。