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- ウイスキー基礎知識
ウイスキーには賞味期限がないのですが、それはどのような状態で保管しておいても味や香りは変化しないという意味ではありません。実際は賞味期限がないのではなく、法律で賞味期限の記載が義務付けられていないだけです。
間違った保管方法を取ってしまうと、ウイスキーの持ち味である味や香りが落ちて、おいしくなくなってしまいます。ワインなどは酸化によって飲めないほどにまで味が落ちますが、ウイスキーの場合は関係ないのでしょうか。この記事では、ウイスキーの酸化について解説します。
この記事のポイント
ウイスキーは蒸留酒です。ワインや日本酒のような醸造酒とは違い、何度も加熱して蒸留を繰り返し、アルコール度を高めています。ウイスキー以外の蒸留酒は、焼酎、泡盛、テキーラ、ウォッカ、ブランデー、ラム、ジンなど、いずれもアルコール度が高いことで知られているお酒ばかりです。いずれも、ワインや日本酒などの醸造酒と比べると、開栓後の変化が少なく、長期間日持ちします。
しかし、蒸溜酒は、開栓しても開栓前と味や香りが変わらないというわけではありません。開栓すると、瓶の中に空気が入るため、劣化は始まります。醸造酒と比べると酸化による変化がゆっくりで目立たないだけです。アルコール度数の高い蒸留酒でも残念ながら酸化します。
ただし、ウイスキーに明らかな変化が現れるのは、開栓後3~6カ月後です。色が変わり、味も香りも本来のものと変わってしまうのですが、比較するものがないとなかなか変化に気付きません。
保管の方法や保管する環境によって、変化が早まることもあれば遅くなることもあります。しかし、酸化を抑えなければ、いつまでも出荷時のおいしさを保つことは難しいのです。
酸化の影響を受けずに飲めるのは3~6カ月程度なので、開栓後はできるだけ早く飲み切るというのが基本といえます。しかし、お気に入りの1本やなかなか手に入らない逸品を、湯水のごとくガブ飲みしてしまうのはもったいないとしか言えません。そこは酸化を極力抑えて、長期間楽しめるような工夫をしましょう。
ウイスキーの保管方法は、開栓の前も後も基本的には同じです。正しく保管すれば、ウイスキーが急速に酸化することはありません。
ゆっくりと酸化が進めば、角が取れて丸みを帯びた味や香りに変化していくので、長期間おいしさを楽しむことができます。ワインセラーなどを使って保管する方法もありますが、特別な道具や器具、場所などを用意しなくても保管することは可能です。
ウイスキーの風味の劣化が、酸化によって起こるのであれば、当然酸化を抑える工夫が必要です。酸化は有機成分が酸素と触れ合うことによって起こります。酸素は空気中に含まれているので、瓶に入ったウイスキーと空気が触れ合う面積や時間をいかに少なくするかという点が重要です。
酸化速度は、空気と触れ合う時間や面積に比例します。では、具体的にどのようにすればよいのでしょうか。実際に取れる方法を紹介します。
栓をしっかり閉めるのはウイスキーにかぎらず、どのような瓶でも当然の保管方法です。しかし、これが案外難しいといえます。コルク栓は柔らかい状態なら十分な弾力があり、密封性に優れています。
しかし、乾燥したり古くなってもろくなったりすると、瓶との間に隙間ができやすく、中身が空気に触れやすくなってしまうので注意が必要です。もちろん、スクリューキャップの場合も、ゆがみがあるとうまく閉じられません。破損やゆがみがないかチェックしましょう。
簡単に手に入る道具を使って、ウイスキーの参加を防ぐこともできます。BARなどの飲食店でも行っている方法なので、真似してみると良いでしょう。
パラフィルムは薄くて粘着性のある空気を通さない素材のフィルムです。コルクなどの栓の上から瓶に巻き付けて使います。BARや飲食店でも使われている保管方法です。瓶に栓をした状態で上からグルグルと巻きつけるだけなのでとても簡単なのに、保存状態は確実によくなります。開栓前の状態でも行える方法です。
ワインの酸化防止に使う窒素や炭酸ガスが入ったスプレーです。一般的には開栓後のワインを保存するために使用します。ウイスキーにも問題なく使用できるので、瓶の中に3~4回吹き込んでから蓋をするだけです。
瓶の中の酸素濃度が各段に減るので、酸化のスピードが遅くなります。真空ポンプを使って瓶の中の空気を抜く方法は力が必要ですが、プライベートリザーブは力がいりません。簡単に使えるのでおすすめです。
ウイスキーを保管する際には、酸化以外にも注意しなければならないことがいくつかあります。まずは保管場所です。温度変化や紫外線によっても劣化します。温度が急激に変化しないところでも極端に温度が低いところや高いところは避けましょう。直射日光が差し込む場所に置いておくのもよくありません。
基本的に冷暗所に保管するのがよいのですが、近くに匂いが強いものがないかチェックするのも忘れないようにしましょう。香水やせっけん、防虫剤などが近くにあると匂いの影響を受けてしまいます。冷蔵庫は温度がウイスキーの保管に向いていないだけでなく、匂い移りしやすいものが入っている点でも不向きです。
冷暗所と言われても、なかなか家の中によい場所が見つからないというケースも多いでしょう。そのようなときには、買ったときについてきた箱に入れて保管するだけでも構いません。温度変化が少なく直射日光のあたらない場所さえ選べば、それだけで冷暗所をつくれます。最初に入っていたボトルを捨ててしまったのであれば、瓶がぴったり入るくらいの箱を別に用意しましょう。
ワインセラーは酸化しやすいワインを保存するためのアイテムですが、中に入れるものがワインでなければならないというものではありません。当然のことながら、ウイスキーの保管場所としても向いています。温度と湿度を一定に保てるうえに、紫外線も避けられ、匂い移りの心配もありません。ウイスキーにとってもこの上ない保管場所です。
家庭用のワインセラーは瓶を寝かせて保管するものが多いため、ウイスキーは入れられないと思っている人がいるかもしれません。ウイスキーは寝かせて保管してはだめだという意見がネット上でよく見られるからです。しかし、それはコルク栓などの隙間から中身がこぼれてしまうことを前提としています。
中身がこぼれるのを防ぐことさえできれば問題はありません。寝かせても品質が変わるようなことはないので、パラフィルムを栓の上から巻いておけば解決します。
お気に入りのウイスキーの味を長く保ちたいなら、保管に適した環境を用意することが一番です。その点ではワインセラーが優れているので、普段からウイスキーを飲む機会が多いのであれば、購入を検討してみましょう。長い目で見れば、ワインセラーに投資する金額よりも、高級なウイスキーを劣化させずに済む方が安くつくかもしれません。
ワインセラーによるウイスキーの保存について詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
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ウイスキーは賞味期限がありませんが、開栓すれば少しずつ味が変化していきます。ワインや日本酒のような醸造酒よりは酸化の影響を受けにくいものの、数カ月かけてゆっくりと酸化が進み確実に劣化はしていくものです。
酸化することを理解しておけば、空気に触れる部分を減らす工夫もできます。酸化のスピードを緩やかにして、最後までおいしく楽しめるようにしましょう。