【独占インタビュー】湘南初のウイスキー蒸留所!湘南蒸留所 ウイスキー製造責任者 筒井貴史さん
- 造り手
- 蒸溜所(日本)
周囲を3,000m級の山々に囲まれた山岳都市・高山。市街地には、かつて幕府直轄の領地・天領として栄えた時代の名残りを感じる、伝統的な町並みが広がっています。そんな高山市の市街地から車で40分、雄大な山々の奥深くに飛騨高山蒸溜所はあります。
飛騨高山蒸溜所は、閉校になった高根小学校の校舎を活用していることでも知られています。
今回は直接現地に伺い、昨年誕生したばかりの飛騨高山蒸溜所の様子をお伝えします!
また、次回のインタビュー編では、代表の有巣弘城さんに飛騨高山への想い、飛騨高山蒸溜所の目指すウイスキー、ウイスキーづくりにかける想いなどについて伺いました。
こちらも是非ご覧ください!
蒸溜所名 | 飛騨高山蒸溜所 |
創業 | 2023年3月 |
代表 | 有巣弘城 |
所在地 | 岐阜県高山市高根町下之向164-2 |
電話番号 | 0577-32-0016 |
公式HP | 飛騨高山蒸溜所公式ホームページ |
将来の飛騨高山地域や自分達の子や孫のため、未来の地域の価値づくりのため、ウイスキーづくりを飛騨高山にて行いたいという強い想いから、飛騨高山蒸溜所は誕生しました。
蒸溜所として活用されている旧高根小学校は、2007年に閉校になった後も地域のコミュニティー施設として大切にされてきた「地域の宝」でした。地域の思い出である学校に蒸溜所という新たな価値を付け加え、新たな地域の宝として後世にも価値のあるものを残していきたいという強い想いがあるそうです。
現在、三郎丸蒸留所のブレンダー兼マネージャーの稲垣貴彦氏、キリン蒸溜所(富士御殿場蒸溜所)の元チーフブレンダーである鬼頭英明氏などを協力者に迎え、万全の体制でウイスキーづくりに挑戦中です。
蒸溜所の入り口に入ると、木彫りの猫が来訪者を出迎えます。昔のスコットランドでは猫が蒸溜所の害虫駆除の役割を担っていたことから、猫は蒸溜所の守り神とされている存在です。
守り神でありながら、「招き猫」として蒸溜所に幸せを招くことを祈願してこの像を置いているそうです。
ちなみにこの猫の名前は「チェシャ」だそうです。蒸溜所の代表の有巣さんのお名前とかけて、「不思議の国のアリス」に登場するチェシャ猫が名前の由来となっているとのことです。
飛騨高山蒸溜所のロゴは名前の「飛」をモチーフにしたロゴとなっています。
蒸溜所の四方を囲む山々、中央の「飛」の文字が山から流れてくる水、風の流れを表現しているそうです。
こちらのロゴは、東京五輪2022のロゴを手掛けた野老朝雄氏によるデザインとなっています。
かつて教室として使われていた部屋が樽の熟成庫として利用されています。
「職員室」や「校長室」などの表札は現在も残されており、今も先生や生徒が通っているかのような雰囲気を感じさせてくれます。
空き教室に樽がそのまま並べられている光景は驚きでしたが、なるべく手を加えず当時の雰囲気をそのまま残したいという想いがあるそうです。
日中は日差しが多く入る一方、標高が高く夜は冷え込むため寒暖差が大きく、熟成の進み具合にも注目です。
現在熟成に使用している樽は、主にバーボン樽とのことです。
熟成庫には、70年に渡り飛騨高山の地で家具を作り続けている家具メーカー・日進木工によって作られた樽も眠っています。
1300年以上受け継がれてきた「飛騨の匠」と称えられる職人たちの高度な技術と深い木材知識を活用し、独自の工法によって製造されている樽です。
新樽の美しい色味と刻まれた「飛騨バレル」のロゴがとてもスタイリッシュでした。
空き教室の一室には、ウイスキーの製造工程がチョークで描かれています。蒸溜所の工事に携わった職人さんの休憩室となっていた一室で、職人さんたちにもウイスキーの製造工程を知っていただこうという想いで描かれた黒板だそうです。
学校の授業を受けているかのような雰囲気で、ウイスキーの製造工程を学ぶことができました。
16年前に教室として使われていた一室には、最後の生徒たちが残した黒板の寄せ書きが今も残っています。当時の状態のままとなっている黒板からは、生徒たちの賑やかな声が聞こえてくるかのような懐かしさを感じました。
当時の生徒たちの、大好きな学校への感謝の気持ちとお別れの寂しい気持ちが今でも鮮明に伝わってくる、感動的な場所となっています。
代表の有巣さんは、長い年月を経ても過去の想いが現在へと伝わってくる様子や、時間が経過すればするほど価値の高まる点などからこの黒板とウイスキーに繋がりを感じ、この校舎を蒸溜所として活用することを決意されたそうです。
最後の卒業生となった6年生が使っていた教室の黒板には、最後の3月のスケジュールが残っています。
卒業・校舎との別れを惜しむように多くのイベントや式典が詰め込まれていることが分かります。閉校の日に向かって惜しむようにイベントや式典を組み、この校舎とお別れをしようという当時の生徒たちの想いがひしひしと伝わってきました。
ここからはいよいよ実際にウイスキーを製造している場所へと進んでいきます!
かつての体育館は、現在ウイスキーの製造現場へと生まれ変わっています。
ステージ上には飛騨高山蒸溜所を代表する鋳造の蒸留器・ZEMONが鎮座しており、存在感を放っています。ギャラリーの上からは全蒸留設備を一望することができます。
現在は酵母による原酒の仕上がりの違いを実験するため、使用する麦芽はクリスプ社のノンピーテッド麦芽に統一しています。
グリストの比率は一般的なハスク:グリッツ:フラワー=2:7:1とのことです。
マッシングには、ドイツのメーカーであるチーマン社製のマッシュタンを使用しています。
蒸溜所開設前に研修を行った新潟亀田蒸溜所で、効率的に清澄麦汁が取得できるこちらのマッシュタンを使用しており、飛騨高山蒸溜所への導入を決めたとのことです。
ヨーロピアンオーク(広葉樹)とカラマツ(針葉樹)の2種類の発酵槽を使用しています。
現在、発酵槽の材質による発酵の仕上がりの違いを実験している段階で、発酵時間も変えながら最適な時間を探っているそうです。
ZEMONは400年の歴史を持つ高岡銅器の梵鐘の製造技術から生まれた蒸留器で、銅と錫の合金で作られており、まろやかで高品質な蒸留酒の製造が可能になっています。
また、鋳造品であることから非常に肉厚で保温性にも優れており、エネルギー効率とライフサイクルコストに優れたSDGsに貢献する次世代の蒸留器です。
Dear WHISKY:
飛騨高山蒸溜所の目指すウイスキーについて教えてください。
古田さん:
廃校になってしまった小学校を再活用している蒸溜所ですので、込められた想いを多くの方々に届けるという観点でも、幅広い方々に愛される馴染みやすいウイスキーを目指していきたいです。
また、その上で、ライトではなくしっかりと飲みごたえのあるウイスキーをつくっていきたいと思っています。
江上さん:
水や自然が豊かであり、空気が綺麗というような高根のイメージを体現するようなものを造りたいと考えています。
澄んでいて香り高く、高根を連想させるようなウイスキーが理想です。
Dear WHISKY:
ウイスキーづくりにかける想いについてお聞かせください。
古田さん:
まだウイスキーはつくり始めたばかりですが、他の蒸溜所の方々の意見などを参考に、細かい部分まで徹底しながら自分達のつくり方を築き上げていきたいと考えています。
江上さん:
現在は、まだウイスキーづくりを始めて間もないので、正解不正解が分からない中で模索している段階です。
「出来上がったウイスキーがどれだけ美味しいと思ってもらえるか」に焦点を当てて、手を抜かずにつくっていきたいと考えています。
Dear WHISKY:
飛騨高山蒸溜所の今後の展望・意気込みについてお聞かせください。
古田さん:
今後はウイスキーフェス等のイベントなどにも参加させていただく予定です。実際の飲み手の方々の意見などを聞きながら、皆さんの期待に応えられるようなウイスキーをつくっていきたいです!
江上さん:
今後実際に販売していくにあたって、最初は目新しさで注目を集めることはあると思います。
その上で、飛騨高山蒸溜所のウイスキーを飲んでいただいた方々に「もう一度飲みたい、飲み続けたい」と思ってもらえるようなウイスキーをつくっていくために、日々ウイスキーづくりの質を高めていければと思っています!
以上、飛騨高山蒸溜所の現地レポートでした!生徒が通っていた当時の雰囲気がそのまま残る校舎の中で、ウイスキーづくりが行われている非常にノスタルジックな蒸溜所でした。
2025年1月現在、蒸溜所見学ツアーが不定期開催されています。ぜひ皆様も飛騨高山蒸溜所へ足を運ばれてみてはいかがでしょうか?
次回の代表・有巣弘城さんへのインタビュー編では、飛騨高山への想い、飛騨高山蒸溜所の目指すウイスキー、ウイスキー造りにかける想いなどについて伺いました。貴重なお話ばかりでしたので、こちらも併せてご覧ください!