【独占インタビュー】ロバート・バーネカー、ソナト・バーネカー夫妻<第2弾> – KOVAL
- 造り手
- 蒸溜所(海外)
品質の高さを象徴するMade in Japanの「正直で緻密な技術のウイスキー」を造る吉田電材蒸留所。
産業機器や医療機器の製造で培ってきた吉田電材工業のモノづくりの強みと、原料である穀物を100%国産にするこだわりから生まれる唯一無二のウイスキーは、蒸留開始当初から大きな注目を集めています。
今回はそんな吉田電材蒸留所に実際に伺い、代表取締役社長の松本さんとセールスマーケティング部チーフの榎本さんに、樽や発酵槽など蒸溜所をご案内いただきました!
またDear WHISKYでは、今回蒸留所をご案内していただきました、代表取締役の松本さんとセールスマーケティング部チーフの榎本さんに独占インタビューを行い、全2回にわたりウイスキー造りへの想いや日本のウイスキーへの想いについて伺っています!
是非併せてご覧ください!
吉田電材蒸留所は2022年3月26日に日本初のクラフトグレーンウイスキー専業の蒸溜所として設立し、同月30日にウイスキー製造免許を取得しました。
昭和15年から80年以上に渡って「日本のモノづくり」に貢献してきた吉田電材工業の技術力と情熱を活かして、「正直で緻密な技術のウイスキー」というコンセプトのもと、「ジャパニーズウイスキーをもっとジャパニーズウイスキーにする」というMISSIONを掲げ、日々ウイスキー造りをしています。
蒸留所名 | 吉田電材蒸留所 |
会社名 | 吉田電材工業株式会社 |
所在地 | 新潟県村上市宿田344-1 |
代表取締役社長 兼 所長 | 松本 匡史 様 |
電話番号 | 0254-75-5081 |
HP | 吉田電材蒸留所公式ホームページ |
蒸留所に入って最初に目にするのは、吉田電材蒸留所の特徴であるコーンをはじめとした原料と、樽詰め前の樽です。
吉田電材蒸留所では、現在、アメリカンタイプの酒質を目指して「北海道産のデントコーン(70%)、ライ麦麦芽(15%)、大麦麦芽(15%)」の3つの原料をブレンドしています。
また、穀物のブレンドに関しては他にも小麦など様々な原料を試している段階で、試験的に導入して味や香りをチェックをしながら試行錯誤を重ねています!
吉田電材蒸留所は複数の穀物を混ぜるグレーンウイスキーを造っているため、大麦麦芽を使用するモルトウイスキーとは、仕込条件が異なります。複数の穀物を使用したり新しい原料を試したりする際には、「そのレシピで仕込むことができるか」という問題が生じてしまいます。
穀物のブレンドが行えるよう、計量機能を搭載したタンクを3つ設置しています。
また、原料の粉砕にはハンマーミルを使用します。高速回転のハンマーの力で原料を周りの壁にぶつけて粉砕するという構造のハンマーミルでは、ローラーミルに比べて硬い穀物でも粉砕することが可能です。
粉砕された原料は、仕込工程に進みます。この仕込みとは、麦芽のもつ糖化酵素を利用し、原料となる穀物に含まれるでんぷんを糖分に変える工程です。粉砕した穀物を、温水にした仕込み水と混ぜて粥状(マッシュ)にし、適切な温度で処理することで発酵に必要な糖分をつくり出します。
吉田電材蒸留所では、温度調節を繰り返しながら行い、朝から一日がかりでこの工程を行っています。
複数の穀物を使用したり新しい原料を試みたりする過程で生じる様々な課題を解決するため、仕込方法を1年程かけて学び、穀物ごとに仕込釜に投入するタイミングを変えるなど独自の設定を行えるようになったとのことです。
さらにこの工程では、全ての操作をパソコンでモニタリングしながら行っています。
「〇分後に□度」というように時間や温度を細かく正確に設定することができ、機械による緻密な管理のもとで糖化を進めています。現在は3名の製造担当者で行っていますが、今後人員を追加することで増産できる体制にしていく予定です。
仕込みの工程を経てできたマッシュは、発酵槽で発酵させます。
縦長な形状が特徴的なこのステンレス製の発酵槽は、海外から輸入したものです。
アルコールを生成する際に一緒に発生する炭酸ガスにより、マッシュが撹拌されやすい形状の発酵槽であるため、発酵の効率が良くなっています。また冷却ジャケットを装備しておりマッシュの温度管理ができるのが特徴的です。
吉田電材蒸留所では仕込工程において粉砕した穀物のろ過を挟みませんが、その理由は穀物由来の味わいや香りをより引き出しやすくするためです。
また、発酵時間が約50時間と比較的短いことが特徴です。
吉田電材蒸留所ではKothe社のハイブリッドスチル(単式蒸留器と連続式蒸留器の複合型)を使用しています。
ポットスチルには7段のカラム(塔)スチルが接続されています。1段で1回精留ができるので、最大で7回精留を行うことができます。使用する段数は造りたい原酒に合わせて調節されていて、取り付けられたレバーで段数が変えられます。
蒸留で発生した蒸気は、上部にある管を通って冷却されて液体となり、ウイスキーの原酒となります。
吉田電材蒸留所のハイブリッド蒸留器は、温度などを電子制御しています。これにより、バルブ開度の微調整ができ、細かい温度調節が可能というメリットがあります。
また、電子機器を用いた温度調節のもう1つの利点として、様々な箇所でモニタリングをしているため原酒の再現性の高さが挙げられます。
現在担当者による官能評価でカットタイミングを見極めています。しかし将来的には、タイミングや温度を決めて自動化することで、誰が造っても同じクオリティーになることを目標にしています。
現在吉田電材蒸留所では、蒸溜所に入ってすぐの場所を仮の熟成場所としています。
熟成に使用する樽は、アメリカ・ミズーリ州アメリカンホワイトオークの新樽がメインです。他にも、シェリー樽、ワイン樽も使っています。
今回の現地取材では、吉田電材蒸留所の蒸留担当責任者である北村さんにインタビューさせていただきました!
Dear WHISKY:
吉田電材蒸留所の強みはどのような部分にありますか?
北村さん:
吉田電材蒸留所の強みは、様々な穀物を使うことができることだと考えています。
これは大きく分けると「どんな原料を使うか」という部分と、「どういう組み合わせのレシピで造るか」という2種類に分けられるのですが、私たちはその中でも2つ目の「どう組み合わせるか」という部分に力を入れていきたいと思っています。
Dear WHISKY:
様々な原料を使用している吉田電材蒸留所の、熟成前原酒の特徴について教えてください!
北村さん:
口の中での味の変化が大きいと思います。
初めは穀物らしさ、そして苦味、その後に甘さが順々に出てくるところが特徴的だと思います。
Dear WHISKY:
北村さんご自身にとっての理想のウイスキーとは何ですか?
北村さん:
「特定のこういう味を造りたい」という理想は持たないようにしています。私たちは多様な穀物や樽、そのレシピによって今までにないようなウイスキーを造り提案していきたいと考えています。
最終的には、ウイスキーを飲まれる方の選択肢が少しでも増えれば嬉しいです。
Dear WHISKY:
ウイスキーに造り手として携わっている北村さんにとって、「ウイスキー造り」とはどのような存在でしょうか?
北村さん:
私はもともと微生物が好きで、大学でも生物・バイオサイエンスの専攻でした。昔から人間の生活に密接に関わっている微生物による発酵食品には非常に強い関心があります。ウイスキー以外のお酒でも、酵母などの微生物が働きやすい環境を人間が整えないといけません。
目には見えないけれどそこにいて、やったこと、やらなかったことに酵母が答えてくれる。それが私にはとても興味深く面白いと感じます。
そのような意味で、私にとってウイスキーは微生物への強い興味の延長線上にあるものです。
若い頃は、基本的に「発酵」という過程は私が寝ている間に微生物が全てやってくれると思っていましたが、実際はそんな簡単なものではありませんでした。だからこそ、興味の延長線上であり、そしてずっと楽しいものがウイスキー造りです。
Dear WHISKY:
好きなことがお仕事になっているのですね!最後になりますが、吉田電材蒸留所ならではの「グレーンウイスキー」の良さとは何でしょうか?
北村さん:
多様性がグレーンウイスキーの良さだと思います。造り手として「将来こうしていきたい」という未来に対する造りが出来ることや、様々な種類のウイスキーを飲み手の方々へ提案していけることが良さです!
Dear WHISKY:
貴重なお話をありがとうございました!
以上、吉田電材蒸留所の現地レポートでした!
Made in Japanの世界に誇るウイスキー造りを目指して、日々原酒と向き合っている蒸溜所の内側について深く知ることができた大変貴重な時間でした。
実際に、蒸溜所内の設備から原料に至るまで一つ一つにこだわりが感じられ、今後リリースされるグレーンウイスキーがますます楽しみになりました!
今回は本当にありがとうございました。