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【独占インタビュー】南アルプスの恵みを活かしたウイスキー造りを展開する井川蒸溜所<第1弾>

2023.04.10 / 最終更新日:2024.06.18

静岡の市街地から車でおよそ4時間。標高1,200mという特殊な環境下で、県内屈指の湧水と自社材のミズナラを使った樽を使用したウイスキー造りを展開する井川(いかわ)蒸溜所。

今回はそんな、山と地域と共生する井川蒸溜所所長の瀬戸さん、総務部の道野さんに独占インタビューを行いました!

2弾構成のうち、第1弾の今回は蒸溜所設立の背景や熟成環境へのこだわり、そこで造られるウイスキーについて取り上げます。

南アルプスの山奥で静かに熟成されるこだわりのウイスキーについて、その全容を明らかにしていきます。自然と共に過ごし・造り・進化し続ける井川蒸溜所をぜひご覧ください!

併せてお読みください!

井川蒸溜所について

静岡県最北部、長野県と山梨県に隣接する井川山林の中で、井川山林の管理とウイスキー製造を継承している十山株式会社。

製紙業という異業種からの挑戦ながら、南アルプスの山々の恵みから造られる味わい深いウイスキーは、東京ウイスキー&スピリッツコンペティション2022におけるニューカマー賞の受賞やWorld Whiskies Awards2023において銀賞を受賞するなど、品評会で高い評価を受けています!

社名 十山株式会社
所在地 静岡県静岡市葵区田代字大春木1299-1
開業 2020年11月
代表取締役 田中 秀紀 様

井川蒸溜所の入り口

井川蒸溜所設立の背景

「水」へのこだわり

Dear WHISKY:
まず、
標高1,200mという特殊な環境下に蒸溜所を設立しようと思ったきっかけを教えてください。

瀬戸さん:
実は初めから蒸溜所の場所を決めていたわけではありませんでした。

蒸溜所が建っている場所の近くには「木賊(とくさ)」呼ばれる水源地があるのですが、ここの湧き水は元々わさびの栽培に用いられていたほど水質の非常に高い美味しい軟水で、昔から登山者に愛飲されていました。

ウイスキーを造るにあたって、ぜひこの湧き水を使いたいと思ったことがきっかけです。

道野さん:
私たちは「水」に特にこだわっていまして、この木賊湧水をウイスキーに使用する際に、湧き出た水そのままの味わいを活かすため、塩素を用いず紫外線照射による処理を行なうことにしました。

木賊湧水

「熟成環境」へのこだわり

Dear WHISKY:
「水」以外にも井川蒸溜所さんがこだわっている点は何かございますか?

瀬戸さん:
南アルプスでウイスキー造りをしている以上、やはり「熟成環境」にもこだわっています。

私は実際に山に泊まり込んで製造をしているのですが、ウイスキーメーカーが自社所有の山の中で得られる素材を使ってウイスキー造りをするというのは一つの大きな特徴ですね。

Dear WHISKY:
ウイスキー造りのために実際に山で生活されているんですか!?

瀬戸さん:
そうですね。私は普段、静岡の市街地の方にいるのですが、蒸溜所はそこから車で約4時間かかります。そのため、1回蒸溜所に行くとしばらくは泊まり込みで仕事をしています。
泊まり込みといっても蒸溜所自体に宿泊設備はないので、近くにある登山基地から通っています。そしてある程度の仕込み回数をこなした後、下山して休暇を取るといった流れです。

今の段階ですと、大体1か月のうち3分の2は蒸溜所に行っています。

井川蒸溜所所長の瀬戸さん(写真中央)

南アルプスの木々から造られるウイスキー樽

Dear WHISKY:
「環境」へのこだわりという点では“自社材を用いた樽づくり”も特徴的だと思います。
社有林で採れたミズナラを加工したウイスキー樽を使用することへのこだわりを教えてください。

瀬戸さん:
ミズナラが昨今希少になってきている中で、私たちはありがたいことに社有林にあるミズナラを使うことができる環境にいました。そこでウイスキー造りをやっている身としては、やはりジャパニーズオークとも呼ばれるミズナラ
をぜひ使ってみたいということになりました。

Dear WHISKY:
社有林には貴重なミズナラがまだまだあるんですね。

瀬戸さん:
ミズナラという木は、密度が高い木として知られています。
昔は麓の町へ伐採した木を送るために川に流していました。針葉樹など密度が低い木ですと軽いのですぐに浮かんで流れていくのですが、ミズナラはすぐに沈んでしまい流れていきません。他にも様々な理由があるのですが、社有林には現在も立派なミズナラが伐採されずにそのまま残っている状況なんです。

もちろん標高の高いところにありますので切り出すのもなかなか大変なのですが、樹齢100年を超えるミズナラのような山の恵みを活かして皆さんに何かを提供するというのは、我々が掲げる「SHARING THE ALPS」という活動方針に沿うものだと思います。

自然林から造られるミズナラ樽

ウイスキー樽の将来的な可能性

Dear WHISKY:
ちなみに、ミズナラ以外にウイスキー造りが出来そうな木はあるのでしょうか?

瀬戸さん:
私たちは現在「樽プロジェクト」というものを立ち上げて、自社材でいろいろな樽を造っています。地元の宮大工さんに協力してもらい、まずは加工が容易で彼らが取り扱いに慣れているヒノキを用いて、樽の製造試験に取りかかっている所です。

他の候補としてはクリやサクラ、あとはウダイカンバという木も挙がっています。これらの材を用いて樽の鏡(フタ)にしてみたりといろいろ試行錯誤を重ねています。

例えば、普通のオーク樽でも鏡を変えると味に変化が生じます。このようなマニアックな木を使った樽づくりは我ながら面白い取り組みだなと思っています。

道野さん:
私たちは「地域振興」を1つの目的にしており、自然と人が共生できるような環境を提供していきたいと考えています。そしてその意味では、地元の方と地元のものを使って地域を盛り上げていきたいという想いがあります。
私たちの井川山林は、自然林が全体の96%を占めていて、植林は4%ほどしかありません。また、標高が高いので普段見かけないような木も生えています。そのため、まだまだいろんな可能性があると思います。

井川蒸溜所のウイスキー

ウイスキーの現時点での印象

Dear WHISKY:
蒸留から3年目を迎えた井川蒸溜所のウイスキーの現時点での印象を教えてください。

瀬戸さん:
寝かせる前の原酒に関して言うと、仕込み始めて最初にできたウイスキーに対してあった、私たちが思うお酒のニュアンスが保たれたまま、むしろこの2年間でさらに磨きがかかっていると感じます。
また1年半~2年熟成の樽については、熟成環境が特殊なのでまだまだどんなウイスキーに育つのか分からない部分もありますが、思っていたよりも熟成速度が緩やかなものもあります。

元々私たちは、実際に出来上がるウイスキーを口当たりが良くて甘みが強く、特に華やかな香りを出しつつ雑味の少ないクリーンなウイスキーにしたいと思い、日々製造方法を工夫しています。

実際に1年半ほど経って、元々原酒が持っていた良い特徴にバーボン樽の甘さが加わることで、まだ3年も熟成していないウイスキーにしては最低限納得できるものが出来ているのではないかと思っています。

Dear WHISKY:
よく若いウイスキーにみられる独特の刺激を抑えることに注意しているということでしょうか?

瀬戸さん:
そうですね。
口当たりの良さというのは、香りとのバランスもあるので狙ってできるものではないのですが、えぐみや渋みなどのクセの強さを極力出さないような工夫はしています。

施設内貯蔵庫の様子

熟成環境の「謎」

Dear WHISKY:
先ほど、南アルプスという特殊な環境の中で熟成を重ねると出来上がるウイスキーにも独特の変化が生まれるというお話がありましたが、実際に南アルプスの環境はウイスキーにどのような影響を与えていると思いますか?

瀬戸さん:
他の蒸溜所の熟成場所は山に限らず盆地や海に近いところなど多岐にわたります。その中で熟成環境がウイスキーの味に与える影響を科学的に解明することは結構難しいと思います。

そういった意味で、南アルプスでウイスキーを熟成させたときに味にどのような変化が生まれるのかは、正直私たちにも未知数な部分です。

Dear WHISKY:
なるほど。解明にはもう少し時間がかかるということですね。

瀬戸さん:
井川蒸溜所の気候は、夏は冷涼湿潤、冬は乾燥していてマイナス15度にも達する厳しい寒さに見舞われます。現時点での推測ですがその点に熟成が早く進む要因があるのではないかと考えています。また気圧が低いのでエンジェルズシェアにも影響が出ているかと思いますし、季節ごとのパラメーター変動が大きく、熟成が早く進む要因と遅く進む要因が混ざり合っている特殊な環境であると考えています
そのため正直なところ手探り状態です。もしかしたら熟成が早い分エンジェルズシェアも多いかもしれない、という不安もあります。

ですが南アルプスのおいしい空気の中で寝かせた方がウイスキーの味にプラスの変化をもたらしてくれることは確かだと思います。

Dear WHISKY:
瀬戸さんの想いとして、今後どのようにウイスキーの熟成が進んでいってほしいと考えていますか?

瀬戸さん:
個人的には、何か尖った部分のあるウイスキーよりバランスの取れたウイスキーの方が好きなので、口当たりが柔らかくて甘みが強い今のウイスキーをベースにこれからいろいろ試していきたいですね。

大井川源流

第2弾に続く!

井川蒸溜所へのインタビュー、第1弾では井川蒸溜所の蒸溜所設立の背景やウイスキーについて取り上げてきました。

自社社有林内で、様々なこだわりを持ってウイスキー造りをしているからこそ、出来上がりの味や風合いに独特の変化が生まれることが分かります。

第2弾では、日本のウイスキー業界や井川蒸溜所の今後について取り上げます!

ジャパニーズウイスキー100周年に対する印象や、飲み手そして造り手としてウイスキー造りに携わる井川蒸溜所の想いについてお伺いしていますのでぜひお楽しみに!!

併せてお読みください!

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