【海外マーケット】WWA2024受賞ボトルを一挙ご紹介!
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近年国際的にジャパニーズウイスキーがブームとなっており、日本のウイスキー業界は空前の盛り上がりを見せています。これは日本のウイスキーの販売量が2008年から2倍以上に増加していることにも如実に表れています。
また、盛り上がりを見せているのは日本のウイスキー業界だけではありません。世界的に見ても新興国を中心にウイスキーの需要が増加しており市場は盛況である一方、大手メーカーによる激しい競争も巻き起こっています。
今回はイギリスに本社を置く世界最大級の酒造会社ディアジオ社の売上推移を分析していきます。
マーケット最大手のディアジオ社の業績はそのままウイスキー市場の動きに連動するといっても過言ではありません。
この記事ではディアジオ社の地域別の売上推移を通じて、海外のウイスキー市場について見ていきたいと思います。
ディアジオ社はイギリスに本社を置く世界最大級の酒造会社で、世界180カ国以上で製品を販売しており、200以上のブランドを保有しています。
保有しているブランドには、ウイスキーではタリスカー、ベンリネス、ジョニー・ウォーカーなど、その他酒類ではギネスビールやスミノフウォッカなど、国際的に有名なものが多くあります。
ディアジオ社が製造する代表的なスコッチウイスキーであるジョニー・ウォーカー。世界200カ国以上で年間1.2億本以上出荷されています。
下の図はディアジオ社の営業利益と純利益の推移です。営業利益は会社が本業によって得た利益のことを指すため、本業がどれだけ順調かということを図る指標になります。純利益は営業利益にその他の特別損益などを加えた値です。数値の単位は£ million(百万ポンド)です。
※DIAGEO 20-F fillingをもとに作成
これを見ると、年度別に変動はあるものの、大きなトレンドとしては上昇方向にあることがわかります。
2020年はコロナの影響によって営業利益は大幅に減少しましたが、その後回復に転じています。感染症による業績の低迷は一時的なものでした。
純利益は2012年度が2,000百万ポンドであったのに対し、2022年では3,249百万ポンドまで増加しています。長期的に見ると業績が成長していると言えます。
2014〜2022年のディアジオ社の地域別売上、設備投資額の推移から地域別にウイスキー市場を考察していきます。
なお、ディアジオ社はウイスキー以外にもビールなどの醸造酒なども手がけていますが、売上の内訳はアフリカを除いて大半がウイスキー含むスピリッツ系なので売上推移はウイスキーについての変動を高い水準で表しています。
※DIAGEO 20-F fillingをもとに作成
上のグラフはディアジオ社の地域別の売上高推移と地域別設備投資額です。
これらのデータを元に各地域のウイスキーマーケットについて考えていきます。
アジア・オセアニア市場は2014年に比べて3倍にも迫る成長を叩き出しています。
設備投資面で見ても、アジア・オセアニア市場は長い間最も投資された地域でした。
人口の増加、経済の発展がこれからも見込まれるアジア・オセアニア市場はディアジオ社のメイン市場の一つとなると考えられます。
中国においてもディアジオ社はウイスキーの売上を増加させようと試みています。
ディアジオ社は同社の中国において初となるウイスキー蒸溜所を建造するとも報じており、これは2023年に完成予定だといいます。
白酒などの独自の蒸溜酒が強い中国においてこれからウイスキーがどれだけ浸透するか、動向が気になるところです。
インドにおいてはディアジオ社は現地にUSL(United Spirits Limited)という子会社を所有しています。
世界最大級の人口を保持するインド市場ですが、インド政府が輸入ウイスキーに対して最大150%の関税をかける関係上、ディアジオ社のメイン商品のジョニー・ウォーカなどは進出し難い環境にあります。
そのためディアジオ社はUSLの製造するインディアンウイスキーをメインに販売しています。
このように、外部からアプローチが難しい市場は、現地企業をグループ会社の一員とすることで参入するという方法が取られています。
ウイスキーは中間所得層や富裕層によって多く購入される傾向があります。
つまり所得が多く、余分に使用できるお金を多くもつ消費者がよりウイスキーを購入するのです。
そのためこれから経済が発展し、人々の所得が増加すると予想されるアジア・オセアニア地域においては、ウイスキー市場は大いに成長する余地があると言えます。
北米市場も高成長を叩き出している市場の一つです。
売上高を見てみると、2014年から2022年で実に1.7倍も成長しています。
設備投資額に至っては3倍ほど成長しています。
北米市場は近年スピリッツの高価格製品の需要が増加している地域です。
特にウイスキーは人気が高まっており、プレミアム化と多種多様なフレーバー付けによる多極化が進行しています。
また、酒類全体の中でもウイスキーの比重は高まりつつあります。
2011年から2021年の間で、飲料アルコール全体に占めるスピリッツのシェアは7%上昇しており、蒸溜酒カテゴリーが消費者の人気を集めていることを表しています。(ディアジオ社20-F filling 2022,23pより)
このように五大ウイスキーのうち二つを産地として持つ北米においても、いまだにウイスキー市場が成長し続けていることが分かります。
ヨーロッパ地域の売上は成長しているものの、北米やアジア・オセアニアと比較すると安定的に推移しています。
また設備投資に着目すると、全地域の中で一番低い水準で推移しています。
これらから、ヨーロッパ市場はすでに成熟しており、ある程度完成していると見ることができます。
特にディアジオ社はそもそもヨーロッパに本社をおいている会社なので、ヨーロッパにはすでにあらかた進出していることが考えられます。
ただここも2022年に設備投資額が大幅に増加しているので、今後どのように推移するか注目されるところです。
中南米とアフリカは売上面では基本的に横ばいに近いです。
また、2010年代は設備投資も他地域と比べて低い水準で推移していました。
しかしアフリカは2020年、中南米は2022年から設備投資が大幅に増加しています。
今後設備投資が高い水準で維持されるとしたらこれら市場も成長していくと思われます。
さらに、アフリカは今後の経済発展が見込まれる地域なので将来ウイスキー市場が成長する可能性は大いにあると思われます。
以上ディアジオ社の売り上げ推移から見た世界のウイスキー市場でした。
経済発展がウイスキー市場の発展に直結するという視点から見ると、世界経済そのものが成長途上にある現代において、同様にウイスキー市場も拡大途上であると見ることができます。
また、今後経済発展をするであろうアフリカやアジア、先進国でありながらなお人口増加を続けているアメリカなどにおいてウイスキー市場は将来性があるといえるでしょう。
今後の世界のウイスキー市場がどのように変化するのか楽しみです。