【海外マーケット】WWA2024受賞ボトルを一挙ご紹介!
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大好きなボトルを買い、自宅に長期間保管して少しずつ楽しむのは、ウイスキーならではの楽しみ方。しかし現在、ウイスキー樽のオーナーになれる制度があるとご存じでしょうか? 英国の蒸溜所を中心に、近年ではアメリカや日本の蒸溜所でも行われているウイスキー樽のオーナーシップ(所有)制度。自分でお気に入りの蒸溜所の樽のオーナーになり、熟成の進行を楽しんだり、オリジナルボトルを作ったり、熟成による樽の価値上昇を利用して投資を行うこともできます。
スコッチウイスキー樽のオーナーシップ制度を理解するうえで重要なのが、英国のWOWGR認証制度です。本記事では、WOWGRとは何か、ウイスキー樽のオーナーになるためには認証を受ける必要があるのか、そして樽の所有権は英国でどのように法的に証明されうるのか、樽のオーナーが持つ疑問にお答えするため、実際にイギリス歳入関税庁(HMRC)にお話をお伺いしました!
WOWGRとは、Warehousekeepers and Owners of Warehoused Goods Regulationsを省略したものです。日本語では「倉庫管理者・倉荷所有者規制」と訳すことができるでしょう。この規制は、倉庫の管理者、関税停止中の商品の所有者、および関税代理人(倉庫に商品を預けることを希望する海外貿易業者の代理人として活動する者)に対して登録・認可を義務付けます。認可を受けた事業者は、ウイスキーの樽を含め、特定の免税貨物を取り扱うことができます。
イギリス歳入関税庁(HMRC)は、リスクを最小化するために必要と判断した場合には、承認を拒否したり、取り消したり、条件を課すことができます。
WOWGRの「所有者認可(Owner Approval)」は、英国を拠点とする歳入業者(a revenue trader)である個人が、関税停止措置の下で、特定の物品を税関倉庫に保管したいと希望する場合に必要となります。つまり、英国歳入業者でない場合には、WOWGRが適用されず、登録・認可が不要なのです。
Registration and approval of excise goods held in duty suspension (Excise Notice 196)
5. Registration of owners of excise goods in warehouse (including duty representatives) |
ここで、歳入業者(revenue trader)の定義を確認しましょう。
WOWGRの目的上、歳入業者とは、物品売買、輸出入、取引、または物品取扱に関係する取引または事業を営む者、およびそのような取引または活動の資金調達または促進を行う者と定義されます。
つまり、ビジネスとして歳入業を営んでいる者ではなく、個人として免税貨物を所有する場合には、歳入業者に当てはまらないため、WOWGRの適用範囲外になるというわけです。
Registration and approval of excise goods held in duty suspension (Excise Notice 196)
13. Glossary Revenue trader: |
では、HMRCから免税貨物の取り扱い許可を受けたことを証明するためには、どのような方法があるのでしょうか? WOWGRは、この取り扱い許可を受けたことを証明するために、免税貨物の所有者が倉庫管理者に提示できる証明書を発行しています。倉庫管理者は、その倉庫に免税貨物を置きたいと希望する所有者との取引が合法かどうかを判断するために、この証明書を他のデューディリジェンス・チェックと併せて使用することができます。
さらに、WOWGRは新たな関税の支払い時期の導入も含みます。例えば、倉庫管理者が承認を受けていない物品を保管する場合、または承認を受けていない所有者に代わって物品を保管する場合(72時間の猶予期間経過後)、関税の支払い時期が設定されます。
イギリスにおいて、ウイスキー樽は関税停止商品として扱われ、保管中は税金の支払いが免除される保税倉庫に厳重に保管されます。そのため、ウイスキー樽はWOWGRの事項的管轄内に入ります。
樽のオーナーが、事業としてではなく、単に個人として倉庫に樽を所有している場合、上記のWOWGR上の「英国の歳入業者」という定義に当てはまらないため、樽の保管に際してWOWGRの認可を受ける必要はありません。
イギリス歳入関税庁(HMRC)の基本方針に従えば、物品が保税倉庫に保管されている間に所有者が変更された場合、その物品の所有者または関税代理人は物品税倉庫の管理者に売却を通知しなければなりません。これは、樽オーナーが歳入業者ではない個人である場合にも同様です。
樽のオーナーはどのようにして通知がなされたことを知ることができるでしょうか? 樽のオーナーは、売主および関連する倉庫管理人の両方と直接連絡を取ることを推奨されています。売主または買主が歳入業者の定義に該当する可能性がある場合は、売買を行う前に、関係者はHMRCのヘルプラインに連絡し、提供された登録詳細の確認を求めることができます。
倉庫に保管されている樽の所有者の決定には、それぞれのケースを個別的に検討する必要があります。
WOWGRの目的上、「所有(Ownership)」は通常の意味で理解されます。「所有(Ownership)」とは、当該個人が、当該物品の取り扱いに対して排他的に持つ権利であり、
する権利を含みます。
樽のオーナーシップを購入したら、販売元の会社は、買主に対して「所有権所得証明書」を発行します。この所有権所得証明書という文書の名前自体は、会社によって異なる場合があります。
デリバリーオーダー(Delivery Order)とは、倉庫管理者に対する、樽のオーナーが変更したことの通知書であり、売主・買主の両方によって署名されます。保税倉庫が、歳入業者以外の個人の免税貨物の保管を行っていない場合、デリバリーオーダーが発行されないことも多くあります。その際は、前述の所有権所得証明書のみで、オーナーシップ変更が証明されます。
倉庫に保管されている樽のオーナーシップを検討する際、HMRCはそれぞれのケースを個別に評価します。例えば、先に述べた書類に加えて、買い手または売り手が投資として商品を保有していた個人である場合、旧所有者、新所有者、仲介業者から提供された通信文書も所有権の裏付け証拠として認められます。
WOWGRは、1999年に制定された比較的古い法律です。ウイスキーカスク投資市場がますます拡大するに従い、WOWGRの改正が求める声もあがっています。改正の可能性について、実際にHMRCに伺いました。
「HMRCは、現在WOWGRの見直しを行っています。非公開の協議段階ですので、WOWGRの改正については未決定です。HMRCは暫定的なスケジュールで協議を進めていますが、法改正が行われるとしても、2025年以降のこととなるでしょう。法改正の最終決定は、閣僚によって行われます。」
以上より、WOWGRの改正は2024年時点では見込まれていません。
WOWGRとは、ウイスキーの樽を含め、特定の免税貨物の取扱いを行う事業者の登録・認可を義務付けるイギリスの法律です。イギリス歳入関税庁(HMRC)が管理を行っています。外国の個人がスコッチウイスキー樽を購入するなど、イギリスの歳入業者ではない場合は、改めて認可を受ける必要はありません。
ウイスキー樽を購入する際には、販売元の樽の管理会社が、イギリスの保税倉庫の口座を持ち、認可を受けた歳入業者であることを事前に確認しましょう。また、所有権の証明には、所有権所得証明書やデリバリーオーダー、売買取引の記録などを大切に保管することが大切です。