山崎 ノンエイジ/NV(ノンヴィンテージ)とは? 味わいとおすすめの飲み方を紹介
- ウイスキー銘柄
バランタインは、世界的な人気を誇るブレンデッドウイスキーです。
香りも口当たりも軽く飲みやすいので、あまりウイスキーを飲みなれていない人にもおすすめできます。
ブレンデッドウイスキーはブレンダーの豊富な経験と研ぎ澄まされた感覚によって作り出される芸術品です。
この記事では、ウイスキーの本場スコットランドが生み出した上質なブレンデッドウイスキー・バランタインの種類や、味の特徴、おすすめの飲み方について解説します。
バランタインは複数の蒸留所でつくられた数多くのモルトをヴァッティングして、そこにさらにブレーンウイスキーをブレンドする形でつくられているブレンデッドウイスキーです。
使用されるモルトは歴代のマスターブレンダーが決定してきました。
中でも重要なのは、「バランタインの魔法の7柱」と呼ばれる7種類のキーモルトです。
1937年、当時マスターブレンダーを務めていた2代目のジョージ・ロバートソン氏の指揮のもと、「スキャパ」「オールドプルトニー」「バルブレア」「グレンカダム」「グレンバーギー」「ミルトンダフ」「アードベッグ」の7種類が選ばれました。
いずれもとても個性が強いシングルモルトなので、それだけを飲もうとすると、かなり飲みにくいと感じます。
お互いぶつかり合いそうな個性を持つモルトを適量ずつ取り、お互いに高め合うようにヴァッティングする技術は、ブレンダーの豊富な経験と繊細な感性のたまものです。
実際に商品化されるものは、キーモルトを含め40種類以上のモルトを選び、ブレンドしています。
その比率は、歴代のマスターブレンドが決定し、企業秘密として厳重に保管されています。
ちなみに、「バランタインの魔法の7柱」が決定された1937年は、「ザ・スコッチ」として世界中、特にヨーロッパで親しまれている「バランタイン17年」が最初につくられた年です。
当然、バランタイン17年のレシピを作ったのも、当時マスターブレンダーをしていたジョージ・ロバートソン氏でした。
その極秘レシピは、脈々と受け継がれ、現在でもほとんど変えられていないといいます。
バランタインの歴史は、創業者ジョージ・バランタイン氏がウイスキーと出会うところから始まります。
ローランドの農民出身だったジョージ氏は、13歳となった1822年、エディンバラの商人のもとに年季奉公に出されました。
偶然にも、その商店は食料品と洋酒を扱う店でした。ジョージ氏は、5年間の奉公を終え、18歳のときに独立して店を構えます。
やはり食料品と洋酒を扱う店です。最初は食料品をメインに扱っていましたが、あるとき、洋酒をメインに扱うチャンスが巡ってきました。
ジョージが奉公に出された翌年、酒税法が改正されたことをきっかけに、政府の公認を受けた蒸溜所が一斉に誕生します。
更に連続式蒸留器が実用化され、グレーンウイスキーの生産も行われるようになりました。
空前のウイスキーバブルが訪れたのです。ジョージ氏は、ターゲットを上流階級に絞り、高級ウイスキーの販売を開始します。
店の場所を移転するたびに売り上げを伸ばしていき、ウイスキー商としての地位を確固たるものにしていきました。
次の転機は、ブレンデッドウイスキーとの出会いです。1853年、同じエディンバラで同じくウイスキー商を営んでいたアンドリュー・アッシャー氏は、ヴァテッド・モルトウイスキーの製造を始めました。
ヴァテッド・モルトウイスキーは、熟成期間が異なるグレンリベットをブレンドしてつくったものです。
彼は更に、1859年にはモルトウイスキーとグレーンウイスキーをブレンドした世界初のブレンデッドウイスキーの発明に成功しました。
一大ウイスキー革命を起こすのです。
アンドリュー氏の成功に感化されたジョージ氏は、10年後の1869年、自分でモルトウイスキーとグレーンウイスキーを掛け合わせたブレンデッドウイスキーの製造を始めました。
当時、流行に乗ってブレンデッドウイスキーを手掛ける商人は大勢いましたが、ジョージ氏のウイスキーにかける情熱は、他とは比べ物にならないものでした。
他よりも良いものを作るために、知識と技術を身につけ、ブレンダーの腕を磨いていったのです。
高い評価を得てブレンダーの道を極めることにしたジョージ氏に代わって、商売は息子のアーチボルト氏が引き継ぎます。
1895年、町で最も人通りが多く目立つ通りに、バランタインの専門店を開店しました。
そのおかげで、
上流階級にバランタインのウイスキーが知れ渡ります。更に同じ年、グラスゴーを訪れたヴィクトリア女王から、バランタイン社は王室御用達の照合を受けました。
このことがきっかけで、バランタインはブレンデッドウイスキーの代表格となっていくのです。
数十種類にも及ぶ原酒を絶妙なバランスで掛け合わせてつくるバランタインは、数限りない組み合わせが可能です。
もちろん、掛け合わせ方や微妙な配合の違いによっておいしさに差が出るため、すべてが商品化されるわけではありません。
しかし、さまざまな挑戦が可能な分、商品化される種類はシングルモルトと比べるとかなり多いといえます。
ここでは、バランタインの種類のうち、代表的なものを紹介します。
バランタインのスタンダードボトルです。
40種類以上の原酒をブレンドしています。
強いクセがなく飲みやすいので、スコッチウイスキーを始めて飲む人や、ウイスキーを飲みなれていない人でも抵抗なく飲めるはずです。
それでいて、きちんとウイスキー本来の苦みや甘味、酸味、ピリッと来るスパイス感などもバランスよく感じられるので、普段からウイスキーを飲んでいる人も満足できるでしょう。
その証拠に、ヨーロッパで消費されるスコッチウイスキーの3本に1本はバランタインファイネストだと言われています。
コストパフォーマンスがよいので、気軽に家呑みを楽しみたい人にもおすすめです。
2019年1月に発売された比較的新しいボトルです。
それまで販売されていたハードファイヤードに代わって登場しました。
内側をしっかり焼いたアメリカンオーク樽でバレルスムース専用にブレンドした原酒をフィニッシュさせています。
キャラメルのような甘い香りと軽いスモーキーさは樽由来のものです。
口当たりは滑らかでクリーミー、蜂蜜のような甘味と穏やかな酸味の赤りんごのフルーツ感の後、バニラのような甘さが長く残ります。バレルスムースという名前がぴったりの香りや味わいです。
2021年3月発売の新作バランタインです。
オーク樽での熟成年数が7年以上の原酒をバーボン樽に移して半年以上後熟させています。
エイジドとしては比較的短めですが、温かみのある黄金色、蜂蜜のような甘く芳醇な香り、熟したりんごや洋ナシのようなフルーツ感は、熟成期間の短さを感じさせません。
甘い余韻も長く続くので、長期熟成のまろやかさとバーボン樽由来の香りをバランスよく楽しめる1本です。
熟成年数12年以上の原酒を40種類以上ブレンドしています。
鮮やかな黄金色は、「スコッチの宝石」という異名で呼ばれるほどです。香りも味も上品で、突出して主張するような強い個性はありません。
蜂蜜やバニラに近い芳醇な甘い香りと、複雑で滑らかな風味が持ち味です。
スタンダードなファイネストはやや粗削りで苦味、甘味、酸味、辛味がそれぞれ分かれて感じられましたが、12年物は角が取れて丸みを帯び、融合しているように感じられます。
柔らかいのに飲み応えがあり、余韻としてかすかな潮の香りが鼻に抜けていくという複雑さに魅了される人も多いことでしょう。
長期熟成したモルト原酒と、軽い味わいのグレーン原酒をブレンドして作り上げたボトルです。
長期熟成の滑らかな口当たりと、シトラス系の爽やかなフルーツ感の両方を味わえます。
このブレンドは、元々3代目のマスターブレンダーであったジャック・ガウディ氏が、プライベート用にブレンドしたもの。
それを、5代目ブレンダーのサンディ・ヒスロップ氏が、彼への感謝を込めて再現したのだと言われています。
ブレンダーの技術の粋が感じられる1本です。
スコットランドの各地でつくられ、最低17年以上長期熟成させたモルト原酒とグレーン原酒を40種類程度組み合わせています。
1937年の発売以来、長年にわたって人気を保ってきました。
グレンバーギー、ミルトンダフなど主要なキーモルトをブレンドしているため、バランタインらしさを存分に楽しめます。
最初に感じるのはバニラの甘味、カカオの香ばしさ、シトラス系のさわやかなフルーツ感、かすかなスモーキーフレーバーがよいアクセントです。口に含むと、華やかで濃厚な蜂蜜の甘味とダークチョコレートのかすかな苦み、後からピート香やスモークが現れるところにバランスの良さを感じます。
香りも口当たりも角がとれ、円熟味と気品が感じられます。
2017年、80周年を記念して発売された日本限定ボトルです。
通常の17年物で用いるアメリカンオーク樽の他に、ヨーロピアンオーク樽と、ファーストフィルのアメリカンオーク樽も熟成に使用しています。また、ノンチルフィルタード製法を採用し、冷却ろ過を行っていません。
アルコール度も通常の17年物よりも高い48度に調整し、飲み応えを前面に押し出しています。
随所にマスターブレンダー・サンダー・ヒスロップ氏のこだわりが込められています。
最初に感じる香りはよく熟れた洋ナシや赤リンゴで、やや強めです。味わいは蜂蜜の甘味、ホワイトチョコレートのようなクリーミーさ、贅沢で複雑な味わいは、ナッティでドライといえます。
甘味、苦み、香ばしさ、スパイスなどがバランスよく長く続くのも、贅沢の極みです。
21年以上熟成させたモルト原酒とグレーン原酒をブレンドしています。
グレードの高いラインナップとしては比較的新しい2007年リリースのボトルです。
17年物を基本に味も香りもグレードアップしたという表現がぴったりでしょう。
17年物と比べて、味わいは濃厚かつまろやかになり、余韻はより長く感じられるようになったという印象です。
甘いバニラに青りんごの甘酸っぱく爽やかな香りがプラスされていて、口に含むとレーズンや蜂蜜のような濃い甘味の奥に薬草に近いスパイスを感じます。
余韻は、シェリー樽由来のフルーティーな甘さにほのかなスモークと潮の香。
複雑で甘美な余韻が長く続くのが特徴です。
熟成期間が30年を超える超長期熟成の原酒のみを40種類以上ブレンドしています。
ブレンドの違いによる種類が多いバランタインの中でも、最高峰のボトルです。樽由来のバニラ香やフルーティーさは、いずれの種類にも共通しているバランタインの魅力で、30年物でも同様に楽しめます。
年を重ねることで、基本の味わいに芳醇さと深いコク、力強さ、複雑さが加わって、高レベルでそれぞれがバランスを取っているというのがふさわしい表現でしょう。
香りはゆっくりと鼻の奥に伝わる印象です。
時間が経つとドライフルーツやバニラの甘く濃厚な香りがしてきます。
そして、その後にかすかに広がるスモークフレーバーも上品です。口の中で広がるシェリーの甘味とビターチョコのほろ苦さと、アンズやドライフルーツのような甘く濃い味わいにはバランスの良さを感じます。
フィニッシュのかすかなスモーク、潮の香まで、十分に時間をかけて楽しみたい1本です。
バランタインはさまざまな飲み方ができるウイスキーですが、まずはストレートで飲んでみましょう。
バランタインの魅力は、香りも味もまろやかでバランスが取れているところです。
40種類以上の原酒を掛け合わせて作り出した複雑な味わいを堪能しましょう。
ただし、アルコール度が40度あるので、チェイサーは必要です。交互に飲んで口の中をリセットすることで、口に含むたびにおいしさを味わえます。
次におすすめなのは、トワイスアップです。常温の水を加えることで、ウイスキー本来の香りや味が引き立ちます。
プロがテイスティングの際にする飲み方なので、一度試してみましょう。水は少し加えるだけでも香りや味わいが変化します。
ほんの少しずつ加水していって、自分の好みの濃さを見つける飲み方もおすすめです。
最後におすすめしたいのがロックです。
香りが華やかで、口当たりが柔らかいウイスキーは、ロックが合います。ロックをおいしく飲むためには、表面が滑らかな大きめの氷を使うのがコツです。
少しずつ氷が解けていくので、ゆっくりと味や香りの変化を楽しめます。
バランタインは、初心者から愛好家までさまざまな人の舌を満足させるウイスキーです。
40種類以上の原酒を絶妙な割合で掛け合わせることにより、強すぎる個性を抑えつつ、それぞれのよさを引き出しています。スコッチウイスキーの特徴をバランスよく網羅している銘柄で、コストパフォーマンスもいいので、自分に合う飲み方を探してみましょう。