山崎 ノンエイジ/NV(ノンヴィンテージ)とは? 味わいとおすすめの飲み方を紹介
- ウイスキー銘柄
グレンアラヒーはスコットランドのスペイサイド地方で作られているシングルモルトウイスキーです。
スペイサイド地方とはスコットランドの北東部にある、スペイ川の周辺エリアということからこの名前が付けられています。
スコットランド全体の約半分、51の蒸留所がこのスペイサイドに存在します。
世界5大ウイスキーにも入っているスコッチウイスキーは各地域のこだわりも強いため、スコットランド内でも明確に産地で分けられているのです。
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グレンアラヒーはベンリアック、グレンドロナック、グレングラッサを所有していたビリーウォーカーが新たに買収しました蒸溜所としても有名です。
以前はブレンデッドウイスキー用に原酒を供給するため1967年に建設された蒸溜所で、シングルモルトの数は少なかったのですが、2017年、ベンリアックの元オーナー、ビリー・ウォーカー氏が買収し、近年は積極的なリリースを行なっています。
この記事のポイント
グレンアラヒーは元はマッキンレーやスコッツクラブなどの、ブレンデッド用に原種を提供する目的で建てられた蒸溜所です。
グレンアラヒーとはゲール語で「岩の谷」という意味を表します。
グレンアラヒー蒸溜所は、アベラワー村から2キロほど南の場所にある。ウイスキー王国として知られるスペイサイドの中心部に位置していますが、51の蒸留所がある中では目立たない方でした。
ビリー・ウォーカーはベンリアックの売却益でグレンアラヒーを買収してから、飛躍的な知名度をあげましたが彼は
「素晴らしい実力を持っているのに、ほぼ無名の道を歩んできた蒸溜所です。ベンリアックで実践してきた私たちの流儀にもぴったりの存在でした。
何も描かれていない、まっさらなキャンバスからビジネスを始められる機会はそんなにありません。スピリッツのバランスと、しっかりしたボディにも魅了されました。」
と述べています。
引用画像:theglenallachie.com
最近では蒸溜所の設備に、樽詰めのシステムが新たに導入されました。
すべてのスピリッツが、蒸溜所の敷地内で熟成されるからです。
使用されていなかった貯蔵庫が、伝統的なダンネージ式の貯蔵庫に改修されました。
グレンアラヒーに使われる原料の麦芽はノンピートとフェノール値60〜80ppmのヘビリーピーテッドの2種類を使って生産しています。
実際のスピリッツでは30〜40ppm程度のピート香が表現されるようです。
使用比率はピーテッドが85%で残りの15%がノンピートとなります。
発酵槽はステンレス製のものが6基で、使用する酵母はケリーのリキッドイーストで1基に対して250リットルを投入します。
酒質にボディとフローラルな特徴を授けるため140時間に及ぶ長時間の発酵はなくてはならない工程です。
グレンアラヒー蒸溜所の建物の造りとして、ポットスチルは初溜2基・再溜2基の合わせて4基が設置されており、ポットスチルは一番低い場所に設置されており、発酵槽は一段高い場所に設置されています。
これは調整が簡単なタイプで温度を下げてミーティーなスピリッツを蒸溜したり、温度を上げてフルーティーなスタイルに変更できます。
このような調整は、垂直ではなく水平方向に設置されたチューブコンデンサーのほうがずっとやりやすいのです。
またスチルにモロミをチャージするウォッシュチャージャーもスチルより高い場所に設置されています。
ポットスチルに落とし込まれたモロミはスチル内で気化して上へ移動し、水平クーラーによって冷却されます。
通常縦に置かれているクーラーを水平式(横向きに設置)にした理由は、その方が冷却がゆっくりと進むのと、銅と接する面積が大きくなるためです。
これは、ウイスキーをつくる工程の順番にそって、上から下へ重力に従って自然に原料が流れる仕組みになっています。
スチル自体にも他とは異なる特徴があり、幅の広い4つのポットは、2つのペアに分けて稼働させることができます。
それぞれのペアに、別のスピリッツセーフとスピリッツレシーバーが取り付けられているのです。
この仕様によって、異なる2種類のスタイルで同時にスピリッツが蒸留できます。
なお、熟成樽はブレンデッドウイスキー「クラン・キャンベル」へ原酒提供していた時代の様々な樽を使用しています。
このようにしてグレンアラヒーのバランスのとれた味わい深いモルトが生まれるわけですね。
引用画像:theglenallachie.com
グレンアラヒー蒸溜所は比較的新しい蒸留所で1967年に設立されました。
創立社はスコティッシュ・ニューカッスル社で、蒸溜所の設計は機能と効率を重んじて設計する建築家のウィリアム・デルメ・エヴァンス氏が担当しました。
過去にはアイル・オブ・ジュラやタリバーディンなど数々の蒸溜所を手掛けてきており、スペイバーン蒸溜所など蒸留所建築の第一人者として知られるチャールズ・ドイグ氏と並んで有名です。
エヴァンス氏が最後に手掛けたのがグレンアラヒー蒸留所になりますが、1985年にインバーゴードン社に買収され、やがて停止までおいこまれます。
しかし、4年後の1989年、ペルノリカール社が買収してしばらく操業、その後約20年間は主にブレンデッド「クランキャンベル」の原酒供給用として操業します。
グレンアラヒー蒸留所に大きな変革が起こったのは2017年、ビリー・ウォーカーによる蒸留所買収でした。
彼が2016年に3つの蒸溜所をブラウンフォーマン社に売却し、翌年新たに手にしたのがグレンアラヒー蒸溜所でした。
購入の動機は、ブレンデッド用に原酒提供していた時代から続く良質な樽がウェアハウスに多く残っており、その樽ごと購入できたからだそうです。
ウォーカー氏は見事にグレンアラヒーを復活させ、グレンアラヒー・コンソシアム社を設立し、シングルモルトのリリースに力をいれました。
その結果、多くのファンを集めることに成功し、シングルモルトの他、現在はブレンデッドウイスキーのマクネアズ、ホワイトヘザーへの原酒提供を行っています。
グレンアラヒーのラインナップをご紹介します。
参考画像:theglenallachie.com
グレンアラヒー12年はグレンアラヒーのオフィシャルボトルともいうべきで、比較的手に入りやすいでしょう。
オークフレーバーの中に微かなシェリー感と、若い原酒由来の酸を感じる構成となっています。
酒齢10年以上の原酒を掛け合わせており、バーボンカスク、シェリーカスクで熟成をおこなっていますが、最近はシェリー感が強く出ているといえます。
アロマはバタースコッチやレーズン、ハチミツ。
味わいはハチミツやバナナや砂糖菓子、微かにモカ。
参考画像:theglenallachie.com
15年はペドロヒメネスシェリーとオロロソシェリーのカスクのみを使用した15年熟成で、ノンチルフィルタリング、ノンカラーリングでボトリングです。
アロマはシェリー樽由来のレーズンの香り、濃厚なバタースコッチ、シナモン。
味わいはアロマと同様にレーズン、バタースコッチ、甘いスパイスが広がり、フィニッシュにかけてバナナ、オレンジピール、ダークチョコレートが現れます。
シェリー樽熟成によるリッチで濃厚な味わい。
引用画像:theglenallachie.com
18年には、1970年代蒸留を含む年数表記以上の熟成を経た原酒が使われており、グレンアラヒーの持つリッチで骨格のしっかりした酒質と熟成感が備わっています。
樽はシェリー樽を主体とする表記も見られますが、そこまで強くシェリー感が主張していません。
アロマはフレッシュなバニラ、トフィー、バタースコッチ、スパイス。
味わいはレーズン、砂糖菓子、ヘザーハニー、ダークチェリー、スパイス、ダークチョコレート。
引用画像:theglenallachie.com
グレンアラヒー25年は現行では最超熟のボトルです。
アメリカンオークのリフィルシェリー樽で熟成させ、アルコール度数は48度にて調整されており、しっかりとした飲みごたえのあるボトルです。
アロマはマーマレードとサルタナレーズンの絶妙なバランス。
味わいはケーキ、マーマレード、スイートスパイスの複雑なレイヤーを伴った、たくさんのサルタナレーズン、トロピカルなフルーティさとビターなチョコレート。
グレンアラヒー10年 カスクストレングスは、グレンアラヒーを加水調整せずそのままボトリングしています。
そのため、味わいに強さが凝縮しています。
逞しく厚みのあるボディが楽しめるバッチリリースのカスクストレングスボトリングです。
毎年2,000本限定にてリリースされる限定ボトルとなっています。
アロマはパワフルでダークチョコレートとアプリコット、ヘザーハニーとトフィーの甘みもあります。
味わいはローズヒップとトフィーを絡ませた感じ、プラム、マーマレードなど。
グレンアラヒーはバタースコッチとシナモンの味わいを崩さないためにも是非ストレートで飲むことをおすすめします。
少し加水するのもいいと思いますが、えぐみが出やすいので加減して加水してみてください。
中々日の目をみることがなかったグレンアラヒーですが、こだわりの製法を貫き、ビリー・ウォーカーの手腕によって息を吹き返しました。
これから、シングルモルトもどんどんリリースされそうなので要チェックの蒸留所ですね。