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- ウイスキー基礎知識
アイラモルトウイスキーは、ピーティ―でスモーキーな味わい深い特徴を持つスコッチウイスキーです。
世界中で多くの愛好家がおり、熟成されたアイラモルトウイスキーには高い価値が付くこともあります。
今回は、アイラモルトウイスキーの特徴やピートを用いた製造方法、製造される蒸留所の特徴などについて紹介していきます。
「アイラモルトウイスキー」とは、スコットランドのアイラ島で製造されたシングルモルトウイスキーのことです。
スコットランドの北と西に点在する島で製造されているモルトウイスキーを通称「アイランズモルト」と呼ばれます。
アイラ島も地理的にはスコットランドの西側に位置する島です。ただ、アイラモルトウイスキーは他の島のモルトウイスキーとは、別の分類になっています。
別の分類となっている理由は、アイラモルトウイスキーが他とは全く違った「スモーキーさ」を持ったシングルモルトウイスキーだからです。
アイラモルトウイスキーは、それ単体でも美味しく味わうことができます。
ただ、さまざまなブレンデッドモルトの原酒としても使われているのです。
たとえば、ジョニーウォーカーのブラックラベルには40種類以上の原酒がブレンドされたスコッチウイスキーであり、アイラモルトウイスキーのカリラなどがブレンドされています。
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また、バランタインにもアイラモルトウイスキーのアードベックが原酒として中核を担っているのです。
ブレンデッドモルトのスモーキーさをもっと堪能したいウイスキー通が辿り着くのが、アイラモルトウイスキーと言っても過言ではありません。
スコットランドで造られるウイスキーのことをスコッチといいます。
アイラ島は、スコットランドにある島であるため、アイラモルトウイスキーはスコッチの分類にとなるので、スコッチの定義にも当てはまるのです。
たとえば、スコットランドの蒸留所で糖化(マッシング)、発酵(ファーメンテーション)、蒸留(ディスティレーション)をしなければなりません。
蒸留するときにはアルコール度数を94.8%以下、樽に詰めるときには容量700リットル以下にする必要があります。また、スコットランド国内にある倉庫にて一定期間は、熟成させる必要があります。
また、添加物についても定められており、水と色を調整するためのカラメル以外はできません。
最低アルコール度数も決められており、瓶に詰めるときに40%未満ではスコッチとして認められないのです。
このような定義に則ったうえでアイル島で作られるスコッチが、アイラモルトウイスキーと呼ばれます。
イギリスのスコットランドの西側にあるアイラ島は、インナー・ヘブリディーズ諸島の南端にある島です。
島の大きさは東京都23区と同じくらいで、面積は600平方kmとなっており島としては小さめです。
人口がおよそ3500人であるため、東京都と比べると人口密度は非常に低いです。 アイラ島は北緯55.77度と高緯度に位置し、北海道稚内市よりも北にあります。
ただ、北大西洋の暖流であるメキシコ湾流によって暖かい海水が運ばれるため、緯度の割には比較的暖かい気候の島です。
冬は海からの風によって寒くなりますが、雪は滅多に降りません。
気温は1月が寒く、8月が暖かくなります。
1月の平均最低気温は3℃前後、8月の平均最高気温は16℃前後と穏やかな気候です。
四季の変化と涼しい気候、湿気の高い夏のおかげで、ウイスキーの原料となる大麦の育成に適している地域となっています。
また、島の四分の一に相当する湿原には、アイラモルトウイスキーの製造に欠かせないピートで覆われています。
樹木がほとんどないアイラ島は、この湿原から湧き出る泉から流れ出る綺麗な水によって潤っているのです。
大麦・ピート・水の3つが揃っていたため、古くからスコッチウイスキー造りが盛んな土地となりました。
アイラモルトウイスキーを楽しんだことのある人の中には「薬品臭い」「煙たい」「匂いがヨードチンキ」「潮くさい」と評価する人もいるでしょう。
1908年、ラフロイグ蒸溜所長に就任したイアン・ハンター氏の口癖に「No half measure」とあります。
「中途半端は無し」という口癖通り、はっきりとアイラモルトウイスキーが嫌いと言う人もいるのですが、熱狂的なファンとなっている人も多いです。
そんなアイラモルトウイスキーに強烈な特徴を生み出しているのがピートです。
ピートとは、ヒースという野草や水生植物などが、炭化した泥炭のことをいいます。
においは、海藻などの水生植物が含まれているため磯の香りがして、見た目は黒に近い焦げ茶色です。
ピート自体に火が付きやすいので、暖房の燃料として使用されることがあります。アイラモルトウイスキーの製造工程で登場するのは、麦芽を乾燥をさせるタイミングです。
ウイスキーは5つの製造工程を経て生み出されています。
製麦、糖化、発酵、蒸留、熟成の5つです。その中で、アイラモルトウイスキーの特徴を出す工程は、製麦と蒸留となります。
最初の製麦では、大麦から麦芽を作る工程です。
グレーンウイスキーでは原料に大麦の他に小麦やトウモロコシなどの穀物などが使用されますが、モルトウイスキーの原料は大麦のみです。
大麦を水に浸して発芽を進めていきます。
発芽をさせることで糖化に必要な酵素を生み出していくのです。
麦芽がある程度成長したら、麦芽を乾燥させて酵素を失わないようにします。
ここで登場するのがピートです。
ピートを燃やして麦芽を乾燥させていくことで、麦芽がピートの煙を吸収していきます。
アイラモルトウイスキーのピーティーなスモーキーフレーバーが生まれる瞬間がこのタイミングです。
このあと、糖化と発酵を行うことでアルコール度数が7~9%くらいの「もろみ(ウォッシュ)」ができあがります。
このあと、蒸留の工程でアルコール度数7~9%のウォッシュを65~70%の高い濃度のアルコールにしていくのです。
蒸留の仕方でも、モルトウイスキーとグレーンウイスキーで違いがあります。
グレーンウイスキーでは連続式蒸留機が使用されていますが、モルトウイスキーで使用されるのは単式蒸留機です。
単式蒸留機の方が、発酵において生じた風味が残るという特徴があります。
よって、アイラモルトウイスキーも風味が残りやすい単式蒸留機が採用されているのです。
アイラ島には8つの蒸留所が存在します。ここから、個性豊かなアイラ島の蒸留所の特徴や背景を紹介していきます。
アイラ島の南部の海沿いにあるラフロイグ蒸留所は、1815年創設されました。
ラフロイグには「広い入り江の美しい窪地」という意味を持っており、蒸留所が海辺と一体となり非常に美しい光景となっています。
1994年には、シングルモルトウイスキーの中で初めて王室御用達にもなりました。
アイラモルトウイスキーの中で、ラフロイグは一番販売量が多く、最も有名な銘柄です。
そんな蒸留所で造られるアイラモルトウイスキーは、非常に強烈なピィーティーな香りがすると有名です。
薬品を連想させるその強い香りは、ラフロイグを好きな者・嫌いな者とハッキリと分けてしまうでしょう。
ラフロイグのラインナップは、非常に多いです。
スタンダードタイプのラフロイグ10年、小さな樽を使って熟成させたラフロイグクォーターカスク、バーボン樽で熟後に赤ワインを醸造したワイン樽で後熟したラフロイグブロディアなどがあります。
また、長期間熟成させたラフロイグ18年、ラフロイグ30年もありますが、年数が経てば経つほど価格も高いです。
カリラには「アイラ海峡」という意味があります。
アイラ島の北東には、細い海峡を挟んで東側にジュラ島があります。
アイラ島とジュラ島の海峡付近にカリラ蒸留所があるため、カリラと名付けられているのです。
1846年に創設されたカリラ蒸留所は、第二次世界大戦などによって何度か操業を停止していた期間もありましたが、古くからブレンデッドウイスキーの原酒としてシングルモルトウイスキーを生産してきました。
1997年には、ジョニーウォーカーの原酒を作るようになり、現在では生産量に関してはラフロイグを上回り1位となっています。
スコッチ全体で見ても上位10位に入るほどの大量生産が可能となっているのです。
原酒としての生産をメインとしてきたカリラ蒸留所でしたが、2000年代になってシングルモルトとして販売されました。
ラインナップは、スタンダードモデルのカリラ12年、年に1回の限定で販売されるカリラ18年、スタンダードモデルよりも熟成期間を短くしたカリラモッホがあります。
カリラ25年も販売されましたが、こちらは毎年販売されるものではなく、2010年に数量限定で販売された希少価値の高いボトルです。
バナハブハイン湾にあるブナハーブン蒸留所は、カリラ蒸留所の3.5kmほど北に位置しており、アイラ島の中で最も北にある蒸留所です。
ブナハーブン蒸留所の創業は1883年で、アイラ島の中でも新しい方の蒸溜所となっています。
ブナハーブンには「河口」という意味があり、マーガデイル川の湧き水を利用してウイスキー造りを行っています。
アイラ島では珍しくピートを使用していないウイスキーを生産しているため、スモーキーさはそこまで強くなく、シトラス感のある味わいとなっているのです。
ラインナップには、スタンダードモデルのブナハーブン12年、柔らかくバニラ感が強くなったブナハーブン18年、凝縮され柔らかな味わいのブナハーブン25年があります。
これら3種類はノンピートであるため、スモーキーさをほとんど感じません。
1990年代後半からピートを効かせたボトルが製造されるようになり、アイラモルトらしい逸品となっています。
スモーキーさと軽快さを兼ね備えたブナハーブントチェックや、さらにスモーキーさを強めたブナハーブンクラックモナなどが販売されているのです。
アイラ島には、ロッホ・インダールと呼ばれる入り江があります。
入り江の西側に位置するブルックラディ蒸留所は、1881年に創業されました。
蒸留所の入り口には、もろみを蒸留するためのポットスチルのオブジェと、イメージカラーの水色と白で書かれた看板があります。
ブルックラディには「海辺の丘の斜面」という意味があり、モルトウイスキー造りに使用される水は丘の上にある貯水池のものです。
ブルックラディ蒸留所は、テロワールと呼ばれる概念を重視しています。
モルトウイスキー造りに欠かせない大麦には、スコットランド産のもので特にアイラ島のものを中心に使用しており、契約農家の名前がボトルに刻まれているのです。
また、熟成させる場所、モルトウイスキーを造る人に至るまでこだわっており、その地にあるものによって生み出される非科学的で不思議な何かを大切にしています。
ラインナップは、ピートを使用していないスタンダードボトルのザ・クラシックラディ、強いスモーキーさを感じることができるポートシャーロット10年があります。また、オクトモア10年は、アイラモルトウイスキーの中で最もスモーキーな銘柄です。
キルホーマン蒸留所はブルックラディ蒸留所の西側に位置し、5km弱くらい離れた内陸部にあらいます。
他の蒸留所と違って、海に面していません。
創業は2005年で、アイラ島の中でかなり新しい蒸留所です。
蒸留所の大きさは、スコットランドの中で最も小さい規模となっています。
年間で2000本のボトルを製造するため、自社農場で大麦を栽培し、製麦からボトルに詰める作業工程の全てを自社で行うことが可能です。
1779年に創業されたボウモア蒸留所は、ブルックラディ蒸留所の入り江の対岸の海沿いに位置します。
アイラ島の中で最も古い蒸留所で、海面よりも低い位置に保存できる伝統的な熟成庫があるのです。
スコッチウイスキーの中でも2番目に古い蒸留所となっています。
ボウモアは「大きな岩礁」という意味を持ち、モルトウイスキー造りに使われている水は、アイラ島最大の川であるラーガン川の水です。
過去にエリザベス女王2世が訪問したこともあり「アイラの女王」とも呼ばれています。女王の名前を持つだけあって、フルーティーな味わいを持ったモルトウイスキーです。
ラインナップはスタンダードモデルのボウモア12年、シェリー樽にかえてさらに3年熟成させたボウモア15年があります。
ボウモア18年は、さらにシェリー樽に保管されているため、非常に柔らかくフルーティーです。
1816年に創業のラガヴーリン蒸留所は、ラガヴーリン湾に面した蒸留所です。
アイラ島の南東に位置し、ラフロイグ蒸留所の東1.5kmほどにあります。
水は、蒸留所の真後ろにあるソラン湖にある湧き水です。 玉ねぎのような形をしたポットスチルが4つあり、2つはウォッシュスチルで、あとの2つはスピリットスチルとなっています。
ホワイトホースのキーモルトで、アイラモルトの中でも濃厚で華やかな味わいであるため「アイラの巨人」と呼ばれているのです。
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そのため、モルトウイスキーの初心者というよりは、最後にたどり着くのがラガヴーリンという人も少なくありません。
ラガヴーリンのラインナップは、ラガヴーリン16年がレギュラーボトルです。
ただ、手間暇がかかるため、市場に出回る数が少なくなっています。
半分の熟成期間であるラガヴーリン8年は、16年に負けないくらいの柔らかさと味わいがあるボトルです。
プレミアムエディションのラガヴーリン12年カスクストレングスは、樽から瓶に詰めるときに水を加えていないので、アルコール度数が約58度と非常に高いボトルとなっています。
1815年に創業のアードベッグ蒸留所は、ラガヴーリン蒸留所の東1.3kmほどにあります。
アイラ島の南東には、西からラフロイグ・ラガヴーリン・アードベックが海岸線に並ぶ形となるのです。
アードベックには「小さな丘」という意味があります。
アイラモルトの中でも多くのピートを使っている蒸留所で、ピーティーで深い味わいがあります。
「アードベギャン」と呼ばれる熱狂的なファンが世界中におり、癖の強い潮と磯の香りに夢中になっている人が多いようです。
ウイスキーなどの液体を保存するために作られた木製の樽のことをカスクといいます。
カスクは、ウイスキーの熟成には欠かせないものです。
カスクの丸い形には、保存するウイスキーが漏れにくい堅牢さと、長期間の保存にも耐えられる強度の効果があります。
また、カスクを運ぶときに転がすことができるなど、さまざまな利便性が兼ね備えられた形となっているのです。
カスクの形に加えて、カスクに用いられる木材によっても、ウイスキーを熟成させる効果があります。
ウイスキーがカスクの中で熟成するために必要な期間は10年~30年と非常に長いです。
カスクに使われる木材からは、香り成分であるバニリンやタンニンといったポリフェノールが溶出されていくため、まろやかな味わいへと変化していきます。
また、色素成分も溶出されていくため、ウイスキーらしい美しい琥珀色へと色づいていくのです。
ウイスキーの風味は大半が熟成中に決まり、熟成が進めば進むほど良くなっていきます。
よって、投資対象として注目されているウイスキーの価値は、熟成によって上がっていくのです。
好き嫌いがハッキリと別れてしまうアイラモルトウイスキーには、全く受け入れられない人もいれば、超個性的な味わいに夢中になってしまう人もいます。
世界中に熱狂的なファンが一定数存在するため、熟成度の高いアイラモルトウイスキーには高い値段が付く場合があるのです。
そのため、ワインだけではなくウイスキーに関しても投資の対象になる可能性が大いにあるといえるでしょう
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