山崎 ノンエイジ/NV(ノンヴィンテージ)とは? 味わいとおすすめの飲み方を紹介
- ウイスキー銘柄
宮城峡はニッカウイスキーが販売するシングルモルトの一つであり、力強くクセのある味わいの余市とは対照的に甘くて飲みやすい風味が特徴です。
余市がスコッチウイスキーでいえばキャンベルタウンに近いウイスキーだとすれば、宮城峡はスペイサイドやローランドのウイスキーに近いといえばイメージも湧きやすいかもしれません。
仙台にある宮城峡蒸溜所で製造されるこちらのウイスキーはほぼすべての種類が終売しており、多くのウイスキー愛好家から再販が期待されています。
この記事では、宮城峡の種類とその味わいについて解説し、おすすめの飲み方も紹介します。
この記事のポイント
宮城峡は宮城県仙台市の宮城峡蒸溜所で製造され、ニッカウイスキー(ニッカウヰスキー)で販売されるシングルモルトです。
宮城峡は新川川の水を仕込み水にして製造されますが、ニッカウイスキーの創業者竹鶴政孝氏は仙台で新川川に立ち寄った際にその場で自社のブラックニッカの水割りを作ったといわれています。
この水で作ったウイスキーの水割りに大きな感動を覚えた竹鶴氏はこの地に蒸留所を建設することを決意し、宮城峡が生まれました。
また、宮城峡が生まれた背景には余市と正反対の味わいを持つウイスキーを作り出し、ブレンデッドウイスキーを作り出すという目的があったのです。
それがピュアモルトと呼ばれるモルトウイスキーのみをブレンドしたウイスキーである竹鶴になります。
通常のブレンデッドウイスキーで例えるなら余市がモルト、宮城峡がグレーンであり、宮城峡のスムースな味わいは余市のクセのある味わいと絡み完成度の高いウイスキーに昇華させました。
余市や、ブラックニッカなどニッカウイスキー全体の銘柄について知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
ニッカウイスキーのシングルモルトは、余市と宮城峡の2種類が販売されています。
余市はスコッチ特有のピート香が強く潮気の強い味わいですが、対照的に宮城峡はなめらかな口当たりで飲みやすく、甘い果実香が特徴のウイスキーです。
ニッカウイスキーのウイスキーは竹鶴氏がスコットランドで実地研修をした経験が活かされており、どちらのシングルモルトもスコッチウイスキーを参考にして作られています。
宮城峡がスペイサイドモルトまたは、ローランドモルトだとすれば、余市がキャンベルタウンモルトといえるでしょう。
しかし、ただ模倣しただけではなく、竹鶴氏のこだわりによって仕上げられた宮城峡は世界でも高く評価されており、ウイスキー品評会で多くの賞を受賞するほどです。
余市について詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
ウイスキー余市の特徴と種類!味わいを堪能するおすすめの飲み方は?
それでは、宮城峡のISC(インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ)における受賞歴について下記の表にまとめました。
商品名 | 金賞受賞回数 | 銀賞受賞回数 |
シングルモルト宮城峡 | 1回 | 1回 |
宮城峡10年 | 0回 | 2回 |
宮城峡12年 | 3回 | 4回 |
宮城峡15年 | 0回 | 7回 |
ISCはイギリスの酒類品評会で世界中でも権威や影響力のあるイベントとして知られています。
宮城峡はその中で金賞を複数回受賞し、銀賞は常連になるほど多くの銘柄が受賞してきました。
受賞歴からも宮城峡が日本だけではなく、世界でも高い評価を受けていることが分かります。
宮城峡は飲みやすくウイスキー初心者にもおすすめできる味わいを持ったウイスキーではあるものの、入手難易度の高さから近年では勧めにくい銘柄になってきています。
2017年をもって熟成年数を表記しないノンエイジウイスキーである「シングルモルト宮城峡」以外の宮城峡が終売になったからです。
新たに入荷し販売されることはないので、購入するためにはオンラインショップから在庫のある店を探すか、オークションなどで落札するしかありません。
とにかく飲みたいという方は、宮城峡を取り扱うバーを探して足を運ぶのも1つの選択肢です。
それでは、宮城峡の種類を紹介し、それぞれの味わいについて解説します。
画像引用:https://www.asahibeer.co.jp/products/whisky_brandy/nikkamaltwhisky/miyagikyo/
シングルモルト宮城峡は、ノンエイジウイスキーで、最も入手難易度の低い宮城峡になります。
洋ナシを思わせる果実香に、口当たりがなめらかでまろやかな甘みが特徴です。
シングルモルトでありながらグレーンウイスキーのようにクセがなく飲みやすいため、入手のしやすさからも初心者におすすめの銘柄になります。
10年以上熟成させた宮城峡のみをブレンドしたウイスキーです。
ノンエイジと比較するとなめらかで飲みやすい口当たりは変わりませんが、全体的に深みのある味わいに仕上がっています。
ワンランク上の宮城峡を味わうなら、オンラインショップなどで探して購入する価値があります。
酒齢12年以上の原酒を熟成させ、ISCで3回も金賞受賞したウイスキーが宮城峡12年です。
イチゴや焼きリンゴの風味が強くなったこちらの宮城峡は、よりスペイサイドモルトを思わせるようなフルーティーな味わいに仕上がっています。
複雑な風味が楽しめるこちらのウイスキーは、宮城峡の中でも完成度の高い銘柄です。
15年という長い期間の間、熟成させた宮城峡は他の銘柄と比較しても洗練された味わいに仕上がっています。
レーズン、杏のように熟した果実の風味とメープルシロップの甘みが口一杯に広がる濃厚な味わいにも関わらず、なめらかで飲みやすい宮城峡らしい口当たりは健在です。
宮城峡の長期熟成物に恥じない完成度から、終売後に価値が高まってきている銘柄になります。
画像引用:https://www.asahibeer.co.jp/news/2020/0316.html
2020年に竹鶴政孝と妻リタの結婚100周年を記念して、限定で6,450本販売された宮城峡です。
宮城峡をアップルブランデー樽で再度熟成させたウイスキーですが、りんごはニッカウイスキーの前身である大日本果汁株式会社の主力商品であることからこちらの樽が使用されました。
ニッカウイスキーはこちらのウイスキーを爽やかな甘さと渋みが調和した風味で、フルーツケーキの甘酸っぱさが感じられる味わいであると表現しています。
画像引用:https://www.asahibeer.co.jp/news/2017/0914.html
アップルブランデーウッドフィニッシュよりも古く販売本数の少ない宮城峡の限定商品が、宮城峡 モスカテルウッドフィニッシュであり、2017年に3,500本限定で販売されました。
モスカテルとは極甘口なシェリー酒であり、再熟成の際にウイスキー樽として使用されることがあります。
カシスの甘みやマスカットの風味を与えるモスカテル樽ですが、宮城峡をマスカットのフレッシュな風味に甘くコクのある味わいに仕上げています。
画像引用:https://www.asahibeer.co.jp/news/2017/0914.html
宮城峡 ラムウッドフィニッシュは、2017年に宮城峡 モスカテルウッドフィニッシュと同じタイミングで発売された銘柄ですが、こちらは欧州や米国向けに販売された銘柄です。
ラム樽はその名の通りラム酒を熟成させた樽のことですが、近年ではラム樽で熟成させたウイスキーが増えています。
ラム樽は一般的にトロピカルフルーツの香りとカラメルの苦味と甘みを付与しますが、この樽で再熟させた宮城峡はフルーツとキャラメルの甘くて濃厚な味わいに仕上がっています。
モスカテル樽や、ラム樽などウイスキーの熟成樽について詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
宮城県仙台にある宮城峡蒸留所は、ウイスキーの本場スコットランドに近い風土であるニッカウイスキーのウイスキー工場の一つです。
大麦麦芽を乾燥させる赤いキルン塔は、非常に特徴的な外観をしており蒸留所のシンボルとなっています。
宮城峡蒸留所のポッドスチルはバルジ型が採用されており、通常のポッドスチルと比較して胴体部分に膨らみがあり、上部のラインアームは上向きです。
このポッドスチルを採用すると、軽やかな味わいになめらかな口当たりのウイスキーが生まれやすくなるため、宮城峡の優しい口当たりの秘密はポッドスチルにあります。
またフルーティーで華やかな香りを宮城峡に付与するために、スチーム間接蒸溜という蒸留の方法を採用しています。
スチーム間接蒸溜は、蒸気を利用して通常よりも低温で蒸留することです。
宮城峡は余市とは正反対の味わいでありながら完成度の高いウイスキーにするために、蒸留所においてさまざまな工夫がなされています。
最後に宮城峡のおすすめの飲み方を紹介します。
ウイスキーは香りを楽しむお酒ですが、口当たりが優しく飲みやすい宮城峡はなにも加えずストレートで飲むのが最もおすすめの飲み方です。
宮城峡のフルーティーで華やかな香りを楽しめるだけでなく、チェイサーと交互に飲むように心がければスムースな口当たりを味わい続けられます。
宮城峡を飲むならまずはストレートでそのままの香りと風味を楽しむのがよいでしょう。
アルコールに弱い方や、食中酒として宮城峡を飲みたい方は水割りにするのも選択肢の一つです。
水割りはアルコール度数を減らし、香りを和らげる効果もあるので肉や魚などのメイン料理とも合わせやすくなります。
多少加水しても宮城峡の個性である華やかな香りは失われないので、目的に合わせてお好みの割合で水割りを試してみましょう。
宮城峡は、余市とブレンドしたピュアモルトウイスキー竹鶴の原酒として広く知られていますが、シングルモルトとしても非常に完成度の高いウイスキーです。
ボトルを入手できる機会や、訪れたバーで取り扱いがあれば飲んでみましょう。
また、人気の高い銘柄であることから終売品や限定品は今後も価値が高騰する可能性もあるので、入手できる機会や飲める機会は逃さないようにしたいところです。