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シングルモルトやダブルモルト、トリプルモルトとは?それぞれの違い

2021.09.29 / 最終更新日:2024.11.11

ウイスキーについて知ろうとすると、専門用語が出てきてよくわからなくなってしまうということはありませんか。たとえば、日本のシングルモルトウイスキーが世界的に注目されているという話を聞いても、シングルモルトがどのようなウイスキーなのかわからなければ、それ以降の話を聞いても理解できないでしょう。

シングルがあるならダブルやトリプルもあるのではないかと感じた人もいるかもしれません。この記事では、シングルモルトとはどのようなウイスキーなのかを解説します。

この記事のポイント

  • シングルモルトについて説明し、ダブル・トリプルがあるのかを解説
  • シングルモルトのよさが感じられる銘柄を紹介

シングルモルトとはどのようなウイスキー?

シングルモルトウイスキーがどのようなウイスキーであるかを説明するためには、先にモルトウイスキーについて説明しなければなりません。まずは、モルトウイスキーについて解説しておきます。

モルトウイスキーとは?

モルトウイスキーは、大麦麦芽=モルトだけを使って作ったウイスキーのことです。モルトウイスキーに使われる大麦は二条大麦という品種で、ビールや麦焼酎の原料にもなります。

ちなみに、麦茶や麦ごはんになるのは六条大麦という別の品種です。では、モルトウイスキー、麦焼酎、ビールは原料が同じ二条大麦なのに、なぜ違うお酒に仕上がるのでしょうか。1つは、糖化という工程の違い、もう1つは蒸留するかしないかの違いです。

モルトウイスキーとビールは、大麦を発芽させた状態、つまり麦芽が使われます。麦芽にはデンプンタンパク質などの栄養素を分解する酵素が豊富に含まれているので、発酵の際に、酵母はそれらをエサにするのです。ウイスキーやビールの原料である麦芽の発酵には約3日~1週間かかります。

一方、焼酎の発酵に使われるのは麹です。麹に水と酵母を加えて約1週間発酵させて一次もろみをつくり、そこに蒸した麦と水を加えて更に約2週間発酵させ二次もろみをつくります。二次もろみを蒸留したものが麦焼酎です。

モルトウイスキーとビールは原料が同じですが、糖化の工程に少し違いがあります。とくに違うのは温度管理です。また、ビールの原料にはホップが含まれますが、モルトウイスキーにはホップは使われません

更に、ビールは糖化が済んだ段階で貯蔵する醸造酒なのに対して、ウイスキーは糖化の後、2または3回蒸留を行ってアルコール度数を上げる蒸留酒です。ビールは糖化が済んだときのアルコール度数のままなのに対して、蒸留を繰り返すウイスキーはアルコール度が高まります

モルトウイスキーについて詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。

ウイスキーのモルトとは?モルトウイスキーの種類と飲み方を紹介!

モルト以外にもあるウイスキーの原料

ウイスキーの原料は大麦だけではありません。トウモロコシやライ麦、小麦などの穀類を主原料とするウイスキーもあります。グレーンウイスキーという種類です。グレーンウイスキーは主原料が穀類というだけで、大麦麦芽を使わないわけではありません。大麦の麦芽を糖化酵素として加えます。

ですから、糖化から、発酵、蒸留、貯蔵という工程をたどるのもモルトウイスキーと同じです。ただし、モルトウイスキーとグレーンウイスキーは蒸留器の形が異なります。必ずというわけではありませんが、モルトウイスキーには単式蒸留器を用いるのに対して、グレーンウイスキーには連続式蒸留器を用いるのが一般的です。

単式蒸留器は1回ずつ中身を取り出して蒸留するタイプの装置なので、原料や蒸留の方法を変えれば何種類でもつくり分けることができます。蒸留の効率はあまりよくない分、原料の風味を残せるため、モルトウイスキーや、ブランデー、本格焼酎、泡盛などの蒸留に用いられる装置です。

それに対して、連続式蒸留器は中身を入れ替えずに繰り返し蒸留できる装置で、高濃度のアルコールを大量につくことができます。ほとんど無味無臭の純度がアルコールをつくれる分、原料由来の成分が残りにくい蒸留装置です。グレーンウイスキーの他、バーボンをはじめとするアメリカンウイスキーやカナディアンウイスキー、ウォッカ、甲類の焼酎などの蒸留に用います。

原料の違いによってモルトウイスキーとグレーンウイスキーに分けられるウイスキーは、それぞれ持ち味にも違いがあります。モルトウイルキーは、蒸留所や熟成樽の影響を受けやすく、味わいや風味も個性的です。主張が強いという意味でラウドスピリッツと呼ばれます。

それに対して、グレーンウイスキーは原料由来の風味があまり残らないため、軽く、あまり突出した個性がありません。主張が弱いということで、サイレントスピリッツと呼ばれています。グレーンウイスキーは、単体で飲まれることは少なく、個性が強すぎるモルトウイスキーを飲みやすくするためのブレンド用として使われるのが一般的です

シングルモルトのシングルとは?

原料の違いによってモルトウイスキーとグレーンウイスキーがあることがわかったところで、シングルモルトウイスキーの説明に移りましょう。シングルモルトウイスキーとは単一蒸留所でつくられたモルト原酒だけをヴァッティングしたウイスキーのことです。

ヴァッティングとは、複数の樽で熟成させた個性の異なる原酒を混ぜ合わせて理想の風味や味わいに仕上げることをいいます。1つ1つ樽に貯蔵した原酒をテイスティングし、どの樽の原酒をどれくらい合わせるかを決めるのが、熟練したブレンダーの技です。

モルトウイスキー同士を合わせるときはヴァッティング、モルトウイスキーとグレーンウイスキーなど異なる原酒を混ぜ合わせるときはブレンディングといいます。

わざわざ「シングルモルトウイスキー」と呼ばれるのは、世の中に出回っているウイスキーの多くが複数の蒸留所の原酒を混ぜ合わせたウイスキーだからです。異なる個性を持ったウイスキーを混ぜ合わせることで、味わいが不足しているものは複雑で厚みのある味わいに、クセが強く飲みにくいものは飲みやすくします。

その点、シングルモルトはヴァッティングしているものの単一蒸留所のウイスキーなので、蒸留所特有の個性が出やすいのです。強烈な個性を出しつつ、味わいに厚みや深さがあれば、それが飲む人を魅了することになります。

ちなみに、すべてのモルトウイスキーが複数樽の原酒をヴァッティングしたものというわけではありません。中には単一の樽からとった原酒だけを瓶詰したものもあり、そのようなものはシングルカスクと呼ばれます。カスクとは樽のことです。

通常、シングルモルトは複数の樽から原酒を少しずつ取って、味や品質を調整して商品化します。しかし、シングルカスクは調整ができません。調整を加えなくても作り手が最高だといえるものを厳選して瓶詰めしたものがシングルカスクです。蒸留所やモルトが持つ個性をストレートに味わえる特別なウイスキーとして珍重されます

ダブルモルトやトリプルモルトはあるの?

シングルモルトがあるなら、複数の蒸留所の原酒を混ぜ合わせたダブルモルトやトリプルモルトが存在するのではないかと思った人もいるでしょう。しかし、残念ながらダブルモルトウイスキーやトリプルモルトウイスキーはありません。

実際、2カ所、3カ所の蒸留所でつくられた原酒をヴァッティングしたモルトウイスキーも存在するのですが、別の名前で呼ばれています。複数のモルト原酒をヴァッティングしているのでヴァッテッドモルトと呼ばれるのが一般的です。しかし、日本では100%モルト原酒のウイスキーという意味で、ピュアモルトと呼ばれています

シングルモルトのよさが感じられる銘柄は?

シングルモルトの魅力は、何といっても蒸留所や銘柄の個性がはっきりわかる点です。他の蒸留所のものと混ぜずに味わうことで、蒸留所が独自に持っている原料選びや樽選びにかける姿勢や、ヴァッティング技術の高さなども感じることができます。ここからは、シングルモルトを飲むなら味わっておきたい銘柄を紹介します。

ザ・マッカランシェリーオーク12年

熟成に用いる樽は、自社で原木の選定から樽づくりまで一貫して管理しています。シェリー樽由来のフルーティーさとドライフルーツを感じるような深みのある甘さ。ほんのりとバニラのような甘みも口の中に広がります。エイジドの中ではもっともスタンダードですが、上品かつ贅沢な味わいの1本です。

グレンフィディック12年スペシャルリザーブ

世界中のシングルモルトウイスキーの中で、販売数がもっとも多いと言われている銘柄です。個性的な味わいの銘柄が目立つスコッチウイスキーの中では、比較的飲みやすい銘柄が多いハイランド地方の蒸留所でつくられています。

熟成に用いられている樽はアメリカンオーク樽ヨーロピアンシェリー樽です。それぞれ最低12年以上熟成させた原酒のみをヴァッティングしています。最初に感じる香りは、フレッシュな洋ナシ、味わいは甘く、余韻は繊細かつ軽やかです

ラフロイグ10年

スモーキーさが魅力とされるアイラモルトの代表的銘柄です。入り江に面した場所に蒸留所が建てられています。仕込みに使われている水は、ピート層を通ってろ過された水です。

麦芽乾燥の燃料として用いられるピートは、蒸留所内で採掘されるもので、海藻やヘザー、苔などを多く含みます。ヨード香が強く、口当たりもややオイリー、バニラ系の甘味とハーブ、スモーキーフレーバーが複雑に絡み合うのが特徴です。クセが強めですが、しっかりとしたボディで飲み応えがあります

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シングルモルトの味わい方

シングルモルトは、個性を楽しむウイスキーです。香りを最大限に引き出して楽しむなら、トワイスアップで飲んでみましょう。トワイスアップとは、ウイスキーを同量の常温水で割って飲む飲み方です。ウイスキーの香りが立ちやすいのは常温です。

グラスも常温のものを使います。複雑な味わいやクセの強さを味わうならストレートもおすすめです。ストレートは単にボトルからグラスに注いで飲む飲み方ではありません。グラスはテイスティングに用いる脚付のテイスティンググラスを選び、チェイサーを用意して、少量ずつじっくり味わいましょう

クセの強さや複雑さはシングルモルトならではの魅力

シングルモルトは蒸留所の個性が色濃く出るため、クセの強いものや複雑な味わいのものが多いといえます。複数の蒸留所の原酒を混ぜ合わせてあるヴァッテッドモルトやブレンデッドウイスキーの方が飲みやすいと感じる人もいるでしょう。

しかし、個性の強さが前面に出ているのがシングルモルトの魅力です。初めから避けずにじっくりと味わってみましょう。苦手だと思っていた風味に気付いたら魅了されているかもしれません。

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